白酒・甚語楼の会
・甚語楼「のめる」
・白酒「突き落とし」
~仲入り~
・甚語楼「阿武松」
聞き飽きた噺でも面白い人がやればこんなに面白いという見本のような「親子酒」。
酔っぱらってどんどんぐずぐずになっていく大旦那が傑作で笑った笑った。
生命式
★★★★
死んだ人間を食べる新たな葬式を描く表題作のほか、著者自身がセレクトした脳そのものを揺さぶる12篇。文学史上、最も危険な短編集
人間が死んだ人間を調理して食べる、人間が死んだ後の骨や皮や髪の毛 で家具や洋服を作る、死から生を生む「生命式」が受け入れられるようになった世界。それが道徳的に忌み嫌われていた時代からまだたったの30年しか経っていない。
私たちの考える「常識」「善悪」「尊厳」「正常」ってなに?それは本当に正しいの?そんな問題を突きつけられているような作品たち。
正直「もうええわ…」と投げ出したくなる作品もあったけど、でも目が離せない。理解しきれてない部分もあるけど、すごい作家だなということは分かる。
私たちが夢中になって韓国文学を読むように、海外でもこの人の作品が読まれるといいな、と思う。
小満ん夜会
ぐんまさんの新作、聞いてみたい。
高架線
★★★★★
風呂トイレつき、駅から5分で家賃3万円。古アパート・かたばみ荘では、出るときに次の入居者を自分で探してくることになっていた。部屋を引き継いだ住人がある日失踪して…。人々の記憶と語りで綴られていく16年間の物語。注目の芥川賞作家、初めての長篇小説。
面白かった!
家賃3万円のオンボロアパート「かたばみ荘」。不動産を通さないかわりに、住人がこのアパートを出て行く時には次の住人を探さないといけないシステム。
この部屋に住んでいてしばらく失踪していた三郎を中心に、同じ部屋に住んでいた人や彼らにかかわりのある人たちが自分語りをする。
彼らの話から浮かび上がってくる誰かが誰かを大切に想う気持ち。友情とか自分がどうしても譲れないものとか、親しくても踏み込んでいかない感じがじんわりと温かい。
西武線沿線の描写も見事で(なにせ地元…!)きれいになる前の駅舎とか商店街とか西武線が高架になる時の瞬間とか…「ああ、わかる!」って何度もうなづいてしまった。
初めて読んだ滝口さん作品。面白かったから他の作品も読んでみたい。
いろは亭
2/1(土)、梶原いろは亭へ行ってきた。
・幸太「寄合酒」
・兼太郎「紀州」
・小もん「金明竹」
・小助六「禁酒番屋」
~仲入り~
・鷹治「時そば」
・扇兵衛「初天神」
・だるま食堂
・鯉橋「蒟蒻問答」
小助六師匠「禁酒番屋」
浅草の昼の部の出番の後に、小痴楽師匠と水口食堂に飲みに行って、途中で米助師匠も合流してお会計してくれて、その後もう少し飲みなおそうかとお店の人に声かけたら「あなた方…いい加減にしたらどうです?」と追い出された、というのがおかしかった。
お酒のまくらから「禁酒番屋」。
小助六師匠の「禁酒番屋」は何回か見ているけど、テンポが良くて軽くて楽しい。
「やらせてくださいよ」と言う店の若い衆の気の良さと、番屋のいかめしい侍が久しぶりに酒にありつける!とうきうきしたり飲んでるうちにろれつが回らなくなるのが、わかっているのに何度でも笑ってしまう。
楽しかった。
鯉橋師匠「蒟蒻問答」
大学の落研の先輩が国会議員になりその留守番で里光師匠と交代で議員会館に通ったという話。「ちょうど月末の10日間だったので下席は里光と交互出演でした」に笑う。
鯉昇師匠の物まねがそっくりで大笑い。
そんなまくらから「蒟蒻問答」。
頼りになる親分、いい加減な偽和尚、ざっくりした寺男の権助、問答をしに来た勇ましい旅の僧侶、と人物がくっきり。
親分のしぐさにいちいち「ははぁーー」となる旅の僧侶がおかしくて、楽しい~。
とても楽しい「蒟蒻問答」だった。
アルジェリア、シャラ通りの小さな書店
★★★★
1936年、アルジェ。21歳の若さで書店“真の富”を開業し、自らの名を冠した出版社を起こしてアルベール・カミュを世に送り出した男、エドモン・シャルロ。第二次大戦とアルジェリア独立戦争のうねりに翻弄された、実在の出版人の実り豊かな人生と苦難の経営を叙情豊かに描き出す、傑作長編小説。ゴンクール賞、ルノドー賞候補、“高校生のルノドー賞”受賞!
フランス統治下のアルジェリアで書店兼出版社「真の富」を開いた伝説の出版人エドモン・シャルロの章と、書店の解体整理を行うリヤドの章が交互に語られる。
カミュ、ジッドらの本を出版し文学賞受賞の喜びを味わいながらもレジスタンスの一員と見なされ投獄されインクや紙不足に苦しみ破産してしまうシャルロ。
書店はその後国立図書館となるが国が実業家に売ってしまったため貴重な本や手紙類が全てゴミの山と化す。
自由な思想が弾圧され本や書店が破壊される。どの国も同じ過ちを何度も繰り返すのかと思うと辛いが、読後感は不思議と爽やかだった。
雲助の会
雲助師匠「徳ちゃん」
お客様から時々言われることがあります。「雲助さんが吉原に行ってた時はどうでした?」
私が10歳の時に吉原はなくなりましたからどんなませたガキだったからといってさすがに行ってません。
でも私が噺家になったばかりの頃は今みたいにソープランドばかりじゃなく、昔の建物をそのまま「旅館」として使ってるお店もあって、まだ風情も残ってました。
勉強のために通いましたが…と言ってそのころの思い出をあれこれ。これがとっても楽しい。
噺家だということがいつからかバレて、通りかかると「噺家!今日も泊っていきなよ!」と声をかけられるように。
「今日は金がねぇんだよ」と言うと「いいよ。あるだけで」。
おお、これが「なじみ」になるっていうことか、とちょっと嬉しくなって上がると、普通の部屋じゃなくて布団や座布団なんかが置いてある部屋に通された。そこではおかみが座布団カバーにアイロンをかけていて「これやってくれたら今日はタダでいいよ」。
さすがにアイロンは断りました、に大笑い。
そんなまくらから「徳ちゃん」。雲助師匠の「徳ちゃん」は初めて!うれしい~。大好きな噺。
わだかまってる…ぶわはははは!!最高。
花魁が色っぽくてでもちゃっかりしていて、善さんがおまぬけでお人好しで、二人の様子や品川の海が目に浮かんでくる。
海から上がった善さんに犬が吠えかかってくるところがすごくおかしくて(雲助師匠の顔!)大爆笑。
夜中に訪ねて行った親分の家のドタバタにも大笑い。
後半の仕返し部分も好きなので通しで聴けて嬉しかった~。
中央駅
★★★★★
韓国文壇界、新進気鋭の若手作家による長編小説!
日経新聞に書評掲載など、 国内でも反響の大きかった
『娘について』の著者、キム・ヘジンが、
絶望の淵に立つ男女の愛を描き出す…本邦初訳!これがどん底だと思ってるでしょ。
違うよ。底なんてない。
底まで来たと思った瞬間、
さらに下へと転げ落ちるの―― (本文より)路上生活者となった若い男、同じく路上で暮らしながら、
毎晩、際限なく酒をあおる病気持ちの女。
ホームレスがたむろする中央駅を舞台に、
二人の運命は交錯する。『娘について』
(亜紀書房刊)を著したキム・ヘジンによる、
どん底に堕とされた男女の哀切な愛を描き出す長編小説。
主人公は若い男のホームレス。彼がどういう人間で、なぜそうなってしまったのかという事情は一切語られない。
ある晩ふらっと現れて彼の隣で眠り、翌朝全財産が入っている彼のスーツケースを盗んで消えていった女。彼女を探しだして半殺しにしてやると息巻くが、いざ彼女を見つけると離れることができなくなる。
毎晩身体をかわすようになり、男はほんのわずかな希望を抱いてはまた落ち…を繰り返す。
これは愛なのだろうかと男は何度も自問するが、間違いなく愛だったのだとも思えるし、彼が捨て去ったつもりの未来を夢見る道具だったのかもしれないとも思える。
とてもヘヴィな物語で読んでいて何度も目を逸らしたくなったけれど、物語の吸引力が凄くて引きずり込まれるようにして読んだ。キム・ヘジン…凄い作家だ。
紀伊国屋寄席
・一花「黄金の大黒」
柳家小三治独演会
そんなエピソードの後に「公園の手品師」。
楽屋半帖
1/27(月)、駒込落語会で行われた「楽屋半帖」に行ってきた。
~仲入り~
「え?なんで?さっき川口だったのになんでナイロビ?
レンタルなんもしない人のなんもしなかった話
★★★★★
本書は2018年6月3日に「レンタルなんもしない人」というサービスがスタートした時から、2019年1月31日「スッキリ」(日本テレビ)出演まで、半年間におこった出来事をほぼ時系列で(だいたい)紹介するノンフィクション・エッセイです。本当になんもしてないのに次々に起こるちょっと不思議でこころ温まるエピソードの数々。
twitterでは見てるけどこうしてまとめられるとなんとなくこの方のやりたかったことが少しだけわかるような気がする。
実験して観察して考察する、いかにも理系な感じ。これがもう少し文学的というか情緒的になると長続きしないんだろうな、と思う。
人として線の細いところと太いところがあってそのバランスが絶妙。面白い人だなと思うけど、面白すぎないところもいいのかも。
あとやっぱり面白いことが好きなんだろうな。読んでいて何度か声を出して笑ってしまった。
なんもしないにこだわって時にはちょっと頑張って「なんもしないをしている」ところが垣間見れたのも面白かったな。
それにしてもいろんな人がいるなぁ。人間って面白い生き物だな。
あれも凌鶴これも凌鶴
1/26(日)、道楽亭で行われた「あれも凌鶴これも凌鶴」に行ってきた。
・凌鶴「蘇生奇談」
・凌天「吉岡治太夫」
・凌鶴「近衛秀麿」
~仲入り~
・凌天「矢取勘左衛門」
・凌鶴「前座ポスト」
短篇集ダブル サイドB
★★★★★
老境を描いた詩情豊かな作品「昼寝」。息もつかせぬ「ルディ」。兵役を控えた若者たちを描いた「ビーチボーイズ」。奇天烈な宇宙SF「ディルドがわが家を守ってくれました」。暗示的な「膝」。全8篇どこから読んでも傑作!日本の読者へのメッセージも!
サイド Aからあまり間をおけずに読めてよかった。
「昼寝」に描かれるどうしようもない絶望と小さな希望にヒリヒリする。
子どもがいたっていなくたって行きつく先は不自由な体と死ぬのを待つだけの日々なのだろうか。それでも認知症を患った初恋の人の手を握るシーンは美しい。
「ルディ」自分の価値観や善悪が吹き飛ぶような暴力。積み上げてきたつもりのものが失われていく無力感。お互いを憎みあいながらももうお互い無しでは生きていけないような…私とルディはいったい誰と誰なのだろう。
「アスピリン」は理解も納得もしていないけど慣れるのだけが上手な彼らが他人とは思えなかった。
「ティルドがわが家を守ってくれました」は「銀河ヒッチコックガイド」にも共通するユーモアがあって好きだ。八方塞がりの現実、もう逃げ道は宇宙にしかないのかも。
描かれているのは絶望的な状況ばかりなのに少し笑える。このユーモアがたまらなく好きだ。
とてもよかった!