りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

あれも凌鶴これも凌鶴

1/26(日)、道楽亭で行われた「あれも凌鶴これも凌鶴」に行ってきた。

・凌鶴「蘇生奇談」
・凌天「吉岡治太夫
・凌鶴「近衛秀麿
~仲入り~
・凌天「矢取勘左衛門」
・凌鶴「前座ポスト」

 
凌鶴先生「蘇生奇談」
健康の秘訣は腹八分目、というようなまくらから「 蘇生奇談」。
初めて聴く話。
植木屋の五兵衛がお得意様の造り酒屋に仕事に行くと主人にせんべいを勧められる。
自分は大食いなのでちょっと食べるくらいだと逆に腹が空いてしまうので要りません、と言うとならば何枚食べられる?と賭けになる。
50枚食べてお金をもらった五兵衛。
次の日は鍋に入った汁粉。
その次の日は焼酎。
酒にそれほど強くない五兵衛がべろべろで家に帰り、女房に引っ張られた拍子に倒れ、胸を打ちつけて気を失ってしまう。
医者が診て死んだと言われ棺に入れられて埋められるが、実は気を失っていただけだったので目覚めて起きだす。
途中で会った巡査も一緒に家に帰ってみると…。
 
こんな講談もあるんだ!なんか落語みたいだ。
五兵衛さんがのんきで優しくていいな。楽しかった。
 
凌鶴先生「近衛秀麿
日本のオーケストラの祖、 近衛秀麿の一代記。
なんという劇的な人生なんだろうと思うけれど、それもこれも戦争があったせいなのだよな。
軍国主義になって戦争に負けて今度はそちら側の人は戦犯になる。
巻き込まれて命を落とす人たちが本当に哀れだ。
秀麿は家柄も良くて大臣の兄を持って…恵まれていたんだろうけど、それだけに危険と隣り合わせだったともいえる。
ネルソンとのエピソードには涙が出た。
ユダヤ人の音楽家を大勢救ったのは勇気ある行動だったなぁ、と思う。
いろいろ感じるところが多い話だった。
 
凌鶴先生「前座ポスト」
この世界、師匠に「破門だ」と言われてしまうともういることができなくなる。これは実に残念なこと、と 凌鶴先生。
落語家だと協会を変えて別の師匠に入門しなおす人もいるみたいだけど、それでもその時はまた前座からやり直し。それもなんかもったいないような気がします。
自分は、結婚式の時に母親から強いリクエストがあったので師匠である一鶴先生に来てもらった。
そこで師匠が披露してくれた講談が妖怪軍団修羅場。結婚式で妖怪かい…と思ったけど、そういう常識外れのところが魅力の師匠だった。
母親が師匠と話をしていた時も「〇〇くん(弟弟子)がいい感じに育ってきていてねぇ。彼は売れますよ!実にいい!」と 凌鶴先生のことには触れず弟弟子をべた褒め。
まぁ母親が「〇〇くんがいるから一門も安心ね」と納得していたから最終的にはよかったけど…。
そんなまくらから、「前座ポスト」。入門して8年目ぐらいの時に作った話だとか。
 
久しぶりに一鶴先生の旅の仕事のおともに呼ばれた凌鶴。
普段は師匠がグリーン車、自分は自由席なのに、この日はどういうわけか師匠の隣の席。
そして師匠が「このお弁当、君が食べていいよ」「肩でも揉もうか」とやたらと親切にしてくれる。
なんかおかしいなと思いながらも楽しく過ごしていると師匠が「あのね…実は…今日君にきてもらったのは仕事じゃないんだよ」
「え?」
「君…最近前座ポストというのができたのは知ってるかい?」
「ああ、なんか聞いたことあります」
 
いらなくなった前座を破門にするのではなく前座ポストに入れることで、逆に弟子が欲しい師匠や相性のいい師匠が見つかるかもしれない、という画期的なシステムがこの度導入されることになり、新しもの好きの一鶴先生がなんと 凌鶴を前座ポストに入れることに…!
「え、だって私…前座じゃありませんよ。二ツ目ですし。言っちゃなんですけど私よりダメな弟子もいるじゃないですか!」
「そうなんだよ。でもほんとにダメな人をポストに入れても拾ってもらえないじゃない。その点君はほら…ちゃんとしてるから…」
 
…ぶわはははは!
この後の展開もすごくおかしくて…あと細部がたまらないんだ…面白くて。
凌鶴先生ってなんか…勇気がある(笑)。
最高に面白かったから、戦記物や張扇をこれ見よがしにバンバン叩くような講談はちょっと…という人は 凌鶴先生の新作を聴くといいと思うよ!まじでまじで。