りつこの読書と落語メモ

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御社のチャラ男

 

 

御社のチャラ男

御社のチャラ男

  • 作者:絲山 秋子
  • 発売日: 2020/01/23
  • メディア: 単行本
 

 ★★★★★

社内でひそかにチャラ男と呼ばれる三芳部長。彼のまわりの人びとが彼を語ることで見えてくる、この世界と私たちの「現実」。すべての働くひとに贈る、新世紀最高“会社員”小説。 

タイトルが秀逸。
最初、この男は「チャラ男」ではないだろうと思いながら読んでいた。もっと悪質じゃないか、と。でも読み進めるうちにこの人を「チャラ男」と呼ぶのは、今の日本の社会の生ぬるさであり優しさであり生きる術でもあるのかもしれないと思えてきた。

会社で働く空気を巧みに伝えているし、人は一方から見ただけでは分からないということや、今の日本が「ヤバい方向」に進んでいることや、この後起こるであろう「とんでもないこと」を予言もしているすごい小説。
だけど思わず吹き出してしまうようなユーモアにも満ちている。読みながら何度も「うまいなぁ」と思った。

ここに登場する人たちは、見たくないものに焦点を合わせないようにして自分の陣地を守ろうとしながらも、誰かのことを大事に思ったり心配したりもしている。絶望と希望、両方を感じた。めちゃくちゃ面白かった。