りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

短篇集ダブル サイドB

 

短篇集ダブル サイドB (単行本)

短篇集ダブル サイドB (単行本)

 

 ★★★★★

 老境を描いた詩情豊かな作品「昼寝」。息もつかせぬ「ルディ」。兵役を控えた若者たちを描いた「ビーチボーイズ」。奇天烈な宇宙SF「ディルドがわが家を守ってくれました」。暗示的な「膝」。全8篇どこから読んでも傑作!日本の読者へのメッセージも!

サイド Aからあまり間をおけずに読めてよかった。

「昼寝」に描かれるどうしようもない絶望と小さな希望にヒリヒリする。
子どもがいたっていなくたって行きつく先は不自由な体と死ぬのを待つだけの日々なのだろうか。それでも認知症を患った初恋の人の手を握るシーンは美しい。

「ルディ」自分の価値観や善悪が吹き飛ぶような暴力。積み上げてきたつもりのものが失われていく無力感。お互いを憎みあいながらももうお互い無しでは生きていけないような…私とルディはいったい誰と誰なのだろう。

アスピリン」は理解も納得もしていないけど慣れるのだけが上手な彼らが他人とは思えなかった。

「ティルドがわが家を守ってくれました」は「銀河ヒッチコックガイド」にも共通するユーモアがあって好きだ。八方塞がりの現実、もう逃げ道は宇宙にしかないのかも。

描かれているのは絶望的な状況ばかりなのに少し笑える。このユーモアがたまらなく好きだ。
とてもよかった!