りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

五街道雲助一門会

7/31(土)、鈴本演芸場で行われた「五街道雲助一門会」に行ってきた。

 
・口上(龍玉:司会、白酒、雲助、馬石)
・白酒「臆病源兵衛
・雲助「汲みたて」
~仲入り~
・龍玉「駒長」
・馬石「船徳
 
口上(龍玉師匠:司会、白酒師匠、雲助師匠、馬石師匠)
今回の会は、快気祝いの会、ということらしい。
感染したと聞いた時のそれぞれの反応や、裏話などを面白おかしく…。
笑えない出来事をこうやって笑いに変えてしまうのが噺家さんらしくて好きだなぁ。
「それでは最後に全快を祝して三本締めを…それでは発声は我らが師匠雲助より…」と龍玉師匠が言った時に、雲助師匠が全くの無表情でふわ~んとしていて、ん?!と思ったら、単に聞いてなかっただけだったの、めっちゃおかしかった。
 
白酒師匠「臆病源兵衛
先ほどの口上を「楽屋でするような話をなにも毛氈敷いた上ですることないのに」と言いながら「でも無意味に思われてもこういう形があるとまだいいんです」。
「一門で座談会っていうのを何回かやったことがあるんですけど、ほんとにぐだぐだになりすぎて、そのうちお客さんから”もうやめていいのよ”、”お願いだからもう終わりにして”という悲痛な叫びが聞こえてきた、というのに大笑い。
「なんといっても金原亭の教えは、なんでもいいんだよ、ですから」「それを言うと、まだ馬石などはその教えがわかってない」。
 
それから今日はトリが馬石師匠だからということで「こういうのは結局最後が良ければいいんです。終わりよければすべて良し。トリが良くないと、”あらなんか尻すぼみだったわね”ってことになっちゃいますから。寄席のお客様というのは往々にして会が終わった後に出口に向かいなら”なんか最後がねぇ?””パッとしなかったな”なんて平気で言いますから。聞こえてますからね!!そういうのはやめていただきたい。まぁそんなのも馬石がびしーっとトリネタで唸らせればいいわけですから」。
 
…トリの馬石師匠にプレッシャーをかけるかける笑。
久しぶりに聞く白酒師匠の毒吐きが気持ちいい…。
ああ、そうだ。これだよ、これ。これが楽しいんだ、落語は。
やっぱり生の楽しさ。テレビやラジオでは聞けない話。生の声。それが楽しかったんだ。
 
そんなまくらから「臆病源兵衛」。
源兵衛が兄貴の家に入ってあっちこっち見まわして「ぎゃー」とか「きゃー」とか「わーー」とか言うだけでおかしい。
そして酒を飲みながら怖がるしぐさが一つの「型」みたいになっていて、それがノリのいい音楽を聴いてるようでめちゃくちゃ気持ちいい。左見て右見てまた左見て右見て酒をぐいっと飲んでまた左。
自分が幽霊だと思い込んだはっつぁんの「あーーこりゃ地獄だなーやだなぁーー」とか「あれ?もしかして地獄じゃねぇの?ありがてぇ!蓮の葉っぱがある!」という呑気ぶりもほんとに落語らしくて楽しい。
久しぶりの白酒師匠、めちゃくちゃ笑って楽しかった。
 
雲助師匠「汲みたて」
お稽古ごとのまくらから「汲みたて」。
女の師匠にどうにかして近づこうとする男たちのワイワイガヤガヤがバカバカしくて楽しい。
そして建具屋の半ちゃんがとてもいい男に見えるのは雲助師匠ならでは。
歌ってみせたりするのもいちいちかっこよくて、これじゃ師匠が惚れちゃうのも無理はないな、みたいな。
でもそんな半ちゃんのことを男たちが「片栗粉の袋」と称してるのもおかしい。
そして邪魔をしようという鳴り物隊の男たちのバカバカしさ。
雲助師匠、こういう噺が好きだよねぇ…と思うと微笑ましくてしょうがなかった。
 
龍玉師匠「駒長」
美人局のまくらから「駒長」。
さん助師匠の「駒長」は龍玉師匠から教わったと聞いたことがあるんだけど、さん助師匠のは誰も彼もがなんかバカバカしかったのに対して、龍玉師匠のは誰も彼もが悪人っぽくてそれがなんとも面白い。
丈七にさえ裏がありそうに見えるもんなぁ…。最高だわ。
 
馬石師匠「船徳
最初の口上は本当に緊張しました、と馬石師匠。
高座も緊張しないわけじゃないんですけど、ああいう堅苦しいやつは久しぶりで…私と龍玉はあれで全ての力を使い果たしました…。
トリということでやりますけどね…夏ですからね夏の噺を…ってここで拍手ですか、拍手してますね、ああ、夏ならあれかな、とかね…若旦那のね…ああ…。
ええ、そうです。そういう噺を今からさせていただきます。
 
…ぶわははは。こんな入り方もあり?
「夏の噺」「若旦那」で客席がみんな「きっとあれだな」「わーい、あれだ」と喜んで笑って拍手して、師匠も「からしますね」って。
そして「勘当になった若旦那が船宿に…」で大拍手。
こういうの、ほんとに楽しい。
 
時間が押し気味だったのか、テンポ早めの「船徳」。
もうとにかく徳さんがとってもチャーミング。
「徳と呼び捨てにして」とか「じゃ披露目をやろう」とか、憎めない育ちのいい若旦那がそこにいて。
船を出す前のおかみさんとのやりとりもおかみさんが女らしくて若旦那がふにゃふにゃしてるからなんともいえず可愛くて笑ってしまう。
船を漕ぎだしてからのヘンテコなポーズ、見栄を切ったり、文句を言う客の方をきっ!とにらんだり。この、きっ!!もめちゃくちゃ可愛いのが馬石師匠独自な感じで、客も「あ、にらまれちゃった」って文句を引っ込めてみたり。
石垣にぶち当たってしまうさまや船が揺れるさまも、動きが激しいので分かりやすく面白い。
 
あーーーやっぱりこういう気が滅入るご時世には、こんな風に明るくてがははは!と笑える噺は最高だなー。
楽しかった~。
3人の弟子が三者三様でそれぞれに違っていてでもそれぞれに良くて…。
ほんとに最高だな、雲助一門。
楽しかった!