サキの忘れ物
★★★★
アルバイト先に忘れられた一冊の本。それは誰からもまともに取り合ってもらえなかった千春がはじめて読み通した本となった。十年後、書店員となった彼女の前に現れたのは。(『サキの忘れ物』)。前の東京オリンピック以来の来日で、十二時間待ちの展示の行列に並びはじめた主人公がその果てに出会った光景。(『行列』)。ある晩、家の鍵をなくした私は居場所を探して町内をさまようことに。一篇のなかに無数の物語が展開!(『真夜中をさまようゲームブック』)。
短編集。
些細なことで本の少しだけ会話したり関わりを持ったことが、その後の人生を変えていくこともある。それはきっと自分では意識していなくても変わりたかったり出口を探していたりしたからなのかもしれない。
表題作は以前読んだ津村さんの作品…喫茶店でのなんてことない会話やコンビニの店員さんとの挨拶に救われる話を思い出させる。
「河川敷のガゼル」もいい。写真を撮り情報を集め発信する女性とただひたすらにガゼルの姿を目で追う少年。不思議な光景が何故かリアルだった。