りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家さん花 真打昇進披露興行

9/22(水)、鈴本演芸場で行われた「柳家さん花 真打昇進披露興行」に行ってきた。

・左ん坊「寿限無
・花ごめ「無学者論に負けず」
翁家社中 太神楽
・さん喬「時そば
馬風 漫談
米粒写経 漫才
正蔵「茄子娘」
・市馬「芋俵」
・小猫 ものまね
・一之輔「加賀の千代」
~仲入り~
・口上(菊之丞:司会、正蔵、さん花、さん喬、馬風、市馬)
ロケット団 漫才
・菊之丞「町内の若い衆」
・権太楼 漫談
・小菊 粋曲
・さん花「棒鱈」
 
さん喬師匠「時そば
月に20回ぐらい落語に通っていた時は当たり前すぎてなんとも思わなくなっていたけど、こうして改めて聞くとやっぱりさん喬師匠の落語は丁寧でテンポが良くて面白いなぁと思う。
時そば」なんてほんとに聞き飽きた噺だけど、それでも一人目の男のそばがおいしそうで、それに比べて二人目の男のそばがほんとにまずそうで…。
この日は結構暑い日だったけど、自分もちょっと寒い晩に屋台でおそばを食べた気分になってた。

一之輔師匠「加賀の千代」
あーやっぱり一之輔師匠の落語は面白いなぁ!と改めて思った高座だった。
お千代さんの頭の回転の良さ&ちゃっかりさと、それをただただ感心して「付いていきます」という甚兵衛さんのおかしさ。
「あのご隠居はお前さんのこと気に入ってるよ」の言葉通り、甚兵衛さんが訪ねてくるとものすごく喜ぶご隠居。
とんちんかんな受け答えをする甚兵衛さんにご隠居も女中もわくわくしているのが伝わってきて大笑い。
最初から最後までテンポが良くて軽くて明るくてすごく楽しかった
こんな時代だから、ほんとにこういう落語が求められているんだろうな…というか自分もこういう落語を求めていたなぁと感じたのだった。
 
口上(菊之丞師匠:司会、正蔵師匠、さん花師匠、さん喬師匠、馬風師匠、市馬師匠)
「私実はこれが初めての口上の司会です」と菊之丞師匠。
ええ?すごい意外ーー。言葉遣いがきれいで様子がよくて司会にピッタリだわーと思って見ていたけど、確かにそう言われて見ると、結構緊張されていたような…。
そんな菊之丞師匠を隣に座った正蔵師匠がまじまじと見つめているのもおかしい。
その正蔵師匠は、さん花師匠とは家が近いこともあって、会のあとに一緒に帰ったことが何回かある、と。
「土地柄、ちょっと怖い系のお兄さんに絡まれたりすることもあるんですけど彼と一緒に歩いているときはそういう目にあうことはなかったです」に笑う。
馬風師匠はいつものように全く関係ない巨人軍の話。多分小んぶさんの名前も顔も知らないんだろうなぁ…。前は「また昭和なギャグを…」と苦々しく思っていたけど、こんなご時世だとそれすら嬉しい。
馬風師匠がどついて近くの人たちがずっこけるやつも…。
吹っ飛んださん喬師匠に向かって「こんなに機敏な動きをするさん喬師匠を初めて見ました」と声をかけた菊之丞師匠もおかしかった。
 
権太楼師匠 漫談
「今日真打になるあの男は小太郎と二人…でこぼこコンビでね…よくさん喬さんをしくじってました。さん喬さんは私と違ってね…叱るときも小さな声で諭すようにね…”お前ら、そういうことじゃダメなんだぞ。わかってるか?そういうことをすると…権太楼に怒られるぞ”…って…。あたしを悪者にするんじゃないよ!!って思いましたけどね。あたしはそんな怒り方じゃないですから。大きな声でがん!!と江戸っ子らしくね…」
「だからもうあたしにとったら甥っ子みたいなもんなんですよ。もう先輩としてとかじゃなくね。甥っ子がいよいよそんなに立派になったか、みたいなね。だから今日はね…袖から見てやろうかと思ってますよ。あいつの高座をね」
「あたしのほうが断然近しいんだから。(口上には)最高顧問じゃなくてあたしが並んだ方が良かったんじゃないの?」
珍しくつらつらと話が止まらなくて気が付いたら「あら。もう持ち時間終わりだ」。
なんかしんみりといい話だったな…。じーんとした。
 
さん花師匠「棒鱈」
口上で大先輩方に並んでいただいて自分のことを話してもらえるっていうのは本当にうれしいことですね」とさん花師匠。
またまた~!という笑いが起きると「いやあの…私の会に来ていただいていたお客様は…私には心がないと…そう思ってるかもしれないですけど…いや…でもうれしいんですよ、本当に。私のことには1ミリも触れない馬風師匠の口上を聞いていて、なんかもうしみじみと嬉しくて泣きそうになりましたから。でもおかしいでしょう?巨人軍をよろしくと言っているのに真ん中で私が泣いていたら」。
それから後ろ幕のきれいな花の絵について。
柳家といえば最初に教わるのは”道灌”です。なのであれは山吹の花です。私は5代目小さんに憧れて入門したもんですから…入った時は小さんになるんだと思って入ったので…私3年間道灌しかやらなかったんですね。あの頃の私を知ってるお客さんもいらっしゃるかもしれませんが…3年間全く笑っていただいたことがなかったです。」
「そして私が世界で一番美しいと思ってるのがゴッホの”ひまわり”という絵です。これ、今は何言ってんだ?と思われたかもしれないですけど、あとから納得していただけるかと」
「真打になるとき、一度ぐらい名前を変えたいなぁと思って師匠に言ったんです。そうしたら師匠はああいう方ですから60個ぐらい候補をあげて下さったんですね…わかりますか?60個ですよ。もうめんどくさいじゃないですか。それで一番上に”さん花”って書いてあったんですね。これ…花を英語で言うとサンフラワー…つまりひまわり…私の一番好きな…。それでさん花になりました」。
そんなまくらから「棒鱈」。
さん花師匠の「棒鱈」は聞いたことがなかったんだけど、いやもうこれがまためちゃくちゃ面白い。
酔っぱらいのろれつの回らなさが尋常じゃなくてもうそれだけでおかしな人なんだけど、田舎侍の喋り方が…なんだろう、フランス人?みたいな…鼻に抜けた喋り方でもうおかしくておかしくて。
あまりのひどさに(←ほめてます)大笑いしていると、「ほんとにこれを袖で権太楼師匠が見てるんでしょうか…」「でも大丈夫です。今日は自分の会だと思ってるんで」とぽつり。
…わはははは。さすがです。
酔っぱらいと田舎侍の会話も侍の方が悪口言われても「あ…そうですね…(フランスなまりで)」とか言うのでそこがいかにもさん花師匠らしくて笑っちゃう。
さんざん同意しておいて最後けんかになるのはちょっと???とならなくもなかったけど笑、最初から最後までめちゃくちゃ笑える「棒鱈」だった。
真打披露の初日にこれ。すごい心臓だー笑。