りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

かわいい夫

 

かわいい夫

かわいい夫

 

 ★★★★

日々の暮らし。父との死別。流産。ふたたびの妊娠。さまざまな出来事をとおして、浮かび上がってくる、あたらしい結婚の形。変化していく、作家のこころ。毎日、少しずつ読みたくなる、結婚エッセイ集。 

 夫のことを「かわいい」と言うの、面白いなと思う。
ナオコーラさんが旦那さんと一緒に文豪のお墓参りに行くエッセイを前に読んでいたので、ああ、こういう感じなのか(このご夫婦は)とちょっと納得。

旦那さんはきっとデリケートで自分の弱さもよく知っている方なんだろうなと思う。
ナオコーラさん自身もそれほど強い人ではないと思うけれど、お互いに足りないところを補い合い、いいパートナーなんだろうなということが伝わってくる。

旦那さんの帰りを最寄りの駅のカフェで待つエピソードが好き。自分の「パートナー」を待つ安定した気持ちと、自分と相手の気持ち、二人の関係性がずっとこのままではないだろうという少しの不安。

お子さんが2人できて二人はどんな関係になっているのか気になる。

池袋演芸場7月上席昼の部

7/4(土)、池袋演芸場7月上席昼の部に行ってきた。
久しぶりの池袋演芸場。テケツが奥まったところじゃなくなっていてチケット買う時に検温&消毒。中で飲食ができなくなってしまっていたのは残念だけど仕方ない。


・空治「真田小僧
・吉好「反対俥」
・一矢 漫談
・昇りん「ブーケの行方」
・傳枝「壺算」
・真理 漫談
・米多朗「たがや」
・寿輔「親子酒」
~仲入り~
東京ボーイズ 歌謡漫談
・南なん「不動坊」
・蝠丸「弥次郎」
・正二郎 太神楽
・圓輔「船徳

 

昇りんさん「ブーケの行方」
二ツ目に昇進したばかりの昇りんさん。新作。
男同士話をしている。どうやら片方が花屋で片方が明日結婚する新郎。新婦のひまわりちゃんが花好きなので会場にひまわりの花をたくさん飾り、ブーケは薔薇の花束。
「明日は来てくれないのか?」という新郎に「申し訳ないが、おふくろが病気で入院中で」。
「それじゃ仕方ないな。おふくろさんによろしく」
そう言って新郎が去っていくと、元気なおばさんが入ってくる。それが男の母親。
その二人の会話で明らかになる事実。そして男の未練がもたらしたおっちょこちょいな展開…。

分かりやすくて面白かった。無駄に(笑)おっちょこちょいで元気な母親がいい味を出してた。

 

寿輔師匠「親子酒」
いつものように客をいじりつつ…前列の女性が落語本をチェックしながら落語を見ていることをいじりながら、何が聴きたいかと尋ねると、彼女が「師匠の古典が聴きたいです」。

それをうけての「親子酒」。
旦那のお酒の飲み方がとにかく美味しそうでちょっと卑しくて思わずごくり。
またお酒の催促の仕方がふわふわっとしているんだけど絶対断れないわこれ…っていう…小さな声だしふわふわしてるんだけど絶妙に威圧感があっていかにも寿輔師匠らしくて笑ってしまう。

帰って来た若旦那はべろべろで大笑い。
すごく楽しい「親子酒」だったー。「古典が聴きたい」とリクエストした彼女に感謝。

 

東京ボーイズ 歌謡漫談
いつもと違う内容でなんかとっても得した気分。
明らかに即興の「高崎は今日も雨だった」。歌詞に大笑い。あーー楽しい。

 

蝠丸師匠「弥次郎」
噂には聞いていたけどフツウじゃない蝠丸師匠の「弥次郎」。
行った先は北海道じゃなくてハワイ。医者である叔父さんのパーティに呼ばれて。
病院ベスト10は微妙(笑)と思ったんだけど、フルーツベスト10に大爆笑。ということは病院はフリだったのか。
山越えしようとして出会うのはイノシシじゃなくて白クマ。
え?ハワイで白クマ?いやいや白クマじゃなくて白い熊。
ばかばかしさと、時々入る蝠丸師匠のぼやきで大笑いだった。

 

圓輔師匠「船徳
居候のまくらから「船徳」。
若旦那がいかにも若旦那らしく、色気があって甘ちゃんな感じ。「船頭にでもなろうと思うんだ」。
親方に言われて船頭たちを呼びに行く女中がいかにも人を食った感じでおかしい。
ドキッとしたのは、船頭たちを呼ぶ声の大きさ。その声で船頭たちが遠くの方にいる絵が浮かんでくる。奥行きが出るっていうことなんだな。すごい。

親方に小言をくらう覚悟で集まって船頭たちがぎゅっと集まっている絵も浮かんできたのはなんでなんだろう。きっとちょっとしたところ…視線のやり方とか声の大小とかそういうところ?

舟に乗ってからの展開もちょっといいなりをしたお客二人と最初はかっこつける余裕のある徳の絵が浮かんでくる。
船の中から知り合いを見つけて呼ぶ場面もその距離感がしっかり伝わってきて絵が浮かんでくる。

88歳とはとても思えない素敵な「船徳」だったー。かっこよかったー。

 

 

オルガ

 

 ★★★★★

19世紀末、貧しい家庭に生まれたオルガは、誰にも媚びないまっすぐな性格を気に入られて農園主の息子ヘルベルトと恋仲になる。だが結婚は許されず、行き場のないヘルベルトは北極圏への無謀な冒険に出たまま、消息を絶った。その哀しみを乗り越えて半世紀あまり、オルガは途方もない行動に出る―。激動の20世紀ドイツを毅然と生きた女性を描く人気作家の最新長篇。

本が読めなくなっている今日この頃だけど、夢中になって読んだ。

幼いころに両親を亡くし心の通わない祖母に育てられたオルガは自立心と向学心に富み、自分の手で進路を切り開いていく。
金持ちの農場主の長男ヘルベルトとの愛を育みながらも彼の両親や妹の反対にあって二人は一緒になることができない。
一方ヘルベルトの方も自分の中にある情熱や虚栄心に踊らされるようにして北極を目指す。

幸せな家庭に恵まれることなく生きてきたオルガ。
戦争で着の身着のまま逃げ出し、家を失い財産を失っても、自分のできることを必死にやって食いつなぎ人との間にできた絆を大切にし生きていく。
さまざまな困難に出会いながらも自分で道を切り開いていくオルガの逞しさと純粋さ。

強さと優しさと柔らかさに励まされる想い。とてもよかった。

水無月の独り看板 林家きく麿独演会

 6/30(火) 東京芸術劇場で行われた「水無月の独り看板 林家きく麿独演会」に行ってきた。
入り口で消毒と検温。チケットは自分でもぎって置く。座席はソーシャルディスタンスを保って配置。 
 

・きく麿 オープニングトーク
・やまびこ「牛の部位6」
・きく麿「記憶喪失」
~仲入り~
・きく麿「だし昆布」
・上の助空五郎 ヴォードヴィル
・ きく麿「2コ上の先輩」

 
きく麿師匠 「記憶喪失」
この間、道楽亭の配信で見た「記憶喪失」。あの時より、面白さがぐっと増していた。
何を足して何を引いていたのか細かいことは全然分からないんだけど、その足し算と引き算で面白さが増しているのは間違いない。
最後にたたみかけていくところが、もうちょっとだけたたみかけてほしい!というあたりで止めておくところも心憎いなぁ!
これはもう落語ファン、きく麿師匠ファンにはたまらない。みんなに聞いてほしい。最高。
 
きく麿師匠「だし昆布」
この独特な世界、これはまさにきく麿師匠にしか出せない味でこれを聴くといつもほんとにこの方の新作が好きだーと思う。
不可解さというか、え?という意表をついた設定に、とてもリアルなセリフ(愛人宅から帰ってこなかった旦那が帰ってくるようになったとか)、普通に何度も言ってるけどなんか不思議なセリフ(「リュックを使うことを覚えたので」)とか。
シュールだけどシュールに終わらない。この噺、ほんとに好き。
 
上の助空五郎さん ヴォードヴィル
プログラムを見て 上の助空五郎?誰それ?と思ってたんだけど、登場してすぐに「あ!バロンさん!」。  
前にもきく麿師匠の独演会のゲストで出ていて「大好き!!」と思ったんだけど、いやぁほんとにいいよ~。めっちゃかっこいい。
ウクレレ弾きながらふわっと歌ってタップ踏んで…音楽でテンションが上がって優しい歌声に肩の力が抜ける感じ。
とってもとってもよかった。
 
 きく麿師匠「2コ上の先輩」
これこれ、これもたまらなく好き。
先輩の不条理さ。でもどこか憎めない幼さ。
その理由が明らかになっていく展開。めちゃくちゃおかしい。
特に後半の怪談話がたまらなくて、この怪談、ずっと聞いていたい。  このだらだらした楽しさってまさに落語の楽しさ。
さすがの3席で大満足だった。

さん助・燕弥二人會

6/29(月)、お江戸日本橋亭で行われた「さん助・燕弥二人會」に行ってきた。
入り口で消毒、検温。席はソーシャルディスタンス。マスク着用。

 
・さん助「熊の皮」
・燕弥「三方一両損
~仲入り~
・燕弥「辰巳の辻占」
・さん助「化け物使い」
 
さん助師匠「熊の皮」
まくらなしで「熊の皮」。
わーーーい。さん助師匠の「熊の皮」見たかった!とことんバカバカしい噺が聴きたかった!ありがとうありがとう。
旦那使いが荒いおかみさん、時々鬼嫁に見えてしまうことがあるけど、今日のおかみさんはいい感じ。
「全部売れたから早く帰って来た」という甚兵衛さんに「あんたはいい品物を安く仕入れて売ってるから」と褒めたり、先生からもらった赤飯も「お前さんが一人で食べなよ」と…この緊張と緩和(笑)。これがいいんだな。
水を汲んで来い、お米を洗って、お米炊いて、洗濯をしたり…おかみさんに言われて一度は抵抗するものの、「わかった」ってやり始めるタイミングが絶妙でおかしい。
お赤飯があると言われて「一緒に食べよう」とおかみさんに言う甚兵衛さんもいいな。この夫婦の仲の良さが伝わってくる。
そしてお医者の先生も相変わらずいい味だしてる。
常識という概念を覆されたり、正直すぎる甚兵衛さんに「いいねぇ~」と言う先生。
自分が診てお嬢さんの病気が治ったと言った先生に「珍しいですね」と言う甚兵衛さんがちょっと嫌いになる先生。
最初から最後まで楽しくて大爆笑だった。
 
燕弥師匠「三方一両損
さん助師匠は近況報告的なことを一言も言いませんでしたね、と燕弥師匠。
「ひとことぐらいなんか言えばいいのにね。ああでもそうだ。ああいう人だった」。
それから自粛中はおとなしく家にいたという話。
「もともと噺家はステイホームには慣れてるんです。仕事がなけりゃ家にいますから」。
そしてこの会も入り口で消毒したり客がマスクをしたり席も離して設置して休憩の時にはドアを開けて換気。
「でもあれです。この会はそもそも…ソーシャルディスタンスの会なので。お客さんもいつもこれぐらい…。なんならいつもは来てないお客さんも何名か今日はいらっしゃるぐらいで…。みんなどんだけ落語に飢えてたんだよ!」に大笑い。
 
そんなまくらから「 三方一両損」。
リズムがよくてスピード感があって何より燕弥師匠自身が楽しそうで気持ちよさそうでニコニコしてしまう。
 噺家さんの気持ちがお客さんに届いて一緒に楽しくなって笑いが生まれてそれがまた高座に届いて波状攻撃で空気がぐわっと熱くなる。
ああっ。やっぱり落語は生に限るなぁ。  
普段はそんなに好きじゃないこの噺、スカっとカラっとすごく楽しかった。
 
燕弥師匠「辰巳の辻占」
これもまたテンポが良くて楽しい 。
特に 燕弥師匠のおたまちゃんがいいんだなぁ。 色っぽくてけろっとしていていい女で。こういう悪女、ほんとに似合う。
楽しかった。
 
さん助師匠「化け物使い」
 奉公人の権助が旦那様に暇を願い出るところから。
旦那様の人使いが荒さにとことん参って以前から暇をもらいたいと思っていたけど今自分が辞めたら旦那様が困るだろうと思って遠慮していた。でも最近この近くにいい物件が出て、それがなんでも願うことを勝手にやってくれる家。
そろそろご飯が食べたいなぁーと思ったら勝手にお米が研がれて窯にかけられてご飯を炊いてくれる。
おかずはどうすべーと思うと勝手に古漬けが刻まれて目の前に出てくる。
荒い物すべーと思ってると勝手に茶碗が洗われる。
眠くなってきたなーと思うと勝手に布団がさーっと敷かれる。
「それはいったいどういうことだ?」と旦那が聞くと「まぁあれだ。いるだね。なにかが。で、思うままにやってくれるだ」
「そんな都合のいい話があるのか?」
「大丈夫だよー。旦那様のその人使いの荒さだったら、化け物だってやってくれるだ」
 
旦那がその家に行ってみると立派な家で値段も破格。で、ここに引っ越してくることになる。
引っ越しを手伝う権助
人当たりは良さそうなんだけど、「ご苦労様」と言いながら「じゃお前、今から乾物屋に行って味噌を買ってきてくれ」と旦那。
権助が帰ってくると「初日だから甘いものが食いたいな。乾物屋に行ってきてくれ」。
また権助に「じゃ乾物屋に行って…」。
「どんだけ乾物屋に行かすだよ!」に笑う。
 
権助が帰った後、背中がぞくぞくっとして何かと思っていると、現れたのが一つ目小僧。
しかし臆することなくあれこれ用事を言いつける旦那。
それから次から次へと出てくる化け物にもああだこうだと言いつける。
 
最初のところは初めて聴く展開だったけど、後半はよく聴く通常の展開。
ぞくぞくっとするのが3回続くと旦那が「いいねぇ~このぞくぞくっが好きになって来たよ」。
次々化け物が出てきて次々用事をやってもらうところ、途中でなんかごちゃっとなったりもしたんだけど、それを上回るおかしさがあって最高だった。
化け物が結構本気で気持ち悪い系で脅しにかかっているのに、 旦那が全く動じず彼らを歓迎してお世辞を言うのがすごくおかしいし、その後に容赦なく用事を言いつける…それも無駄の多い分かりづらい頼み方、というのもおかしい。
抱腹絶倒の面白さで笑った笑った。楽しかったー。
 
 

第382回圓橘の会

6/27(土)、深川東京モダン館で行われた「第382回圓橘の会」に行ってきた。
久しぶりの圓橘師匠の会。入り口で消毒。席も以前より離れて配置。
それでも始まってみればこの3か月が逆に嘘みたいにいつも通り。

 

・萬丸「小言念仏」
・圓橘「包丁」
~仲入り~
・圓橘 圓朝作「業平文治漂流奇談」その一


萬丸さん「小言念仏」
二ツ目になったばかりでこれから自分の会をやっていこうと思った矢先のコロナ自粛。
最初のうちはどうしようかと思ったんですけど、人間慣れるもんですね、と萬丸さん。
今、徐々に会ができるようになってきて、ただやはりそれは以前と同じというわけにはいかず、席も離して設置したり入り口で消毒、検温。
接触で測れる体温計を主催者さんが用意してくれるんですけど、この間の会ではどうもその体温計の調子が悪い。5人ほどは検温できたんだけどその後の人に反応しなくなっちゃって「あの…熱あります?」って聞いたりして、意味ないですねぇー。

そんなまくらから「小言念仏」。
小三治師匠の「小言念仏」を何十回と聴いてる私の前で「小言念仏」かい?(←エラソー)と思ったけど、これはこれで若々しくてかわいらしい「小言念仏」で楽しかった。
ってやっぱりエラソー?すみません!

 

圓橘師匠「音曲風呂」「包丁」
今度、一門会で都都逸をやることになった、と圓橘師匠。
楽屋雀は「あれは圓橘が歌いたいだけだ」なんて悪口言ってますけど…まぁそうかもしれないですけど…。
この間新内の師匠さんに別件で電話をして「今はどうやってお稽古してるんですか」と聞いたら、向かい合わずに斜めになってやってるらしい。確かにあれは声を張るから唾も飛びますからね…。いろいろ新しい習慣というのができてくるものですね…。

江戸っ子はお稽古事が好きで職人さんも習いに行った。もちろん師匠は女性に限る。
そんなまくらから。
ある男が往来で友達に会い「お前今も常磐津のお稽古に行ってる?」と聞くと「ああ、行ってるよ」。
今何をやってると言われて答えると「まだそこから進んでないのか」。
「師匠にはどうもお前さんの声は歌に向かないって言うんだな…」。
それを聞いた友だちが「だったらお前、常磐津の湯に行きなよ」と勧める。なんでもその湯に3廻(21日間)り通うと声が良くなるとか。
そう言われた男は言われた通り3廻通い、「よし、これで声が良くなったはず」と喜んで、人通りの少ない路地に入り声ならし。
ここで圓橘師匠がびっくりするような大きな声!しかも「まずい歌声」を出したので、もうびっくりするやらおかしいやらで大笑い!!
そこに通りかかった住民が「なんだお前のその酷い声は」と言ってきたので、男が説明すると「声っていうのはこうやって出すんだ」と言って、大きな声で「火の用心」の声を…こちらが今度はすごくいい声!!
で、そこからサゲ。


…うわーーーー。初めて聴いた噺!面白い。(あとからtwitterで「音曲風呂」という噺と教えていただいた!)
そしてこの落語から「包丁」へ。(嬉しすぎる流れ!!)

一文無しで帰って来た男が昔の友だちとばったり出会う。
友だちの方は立派な身なりをして羽振りがよさそう。
聞いてみると常磐津の師匠と一緒になってその女が稼いでくれている、という。
「お前、顔がいいからなぁ。いい思いしてやがるなぁ」と男が言うと「実はもう一人若い女といい仲になったから別れたいんだけどそう簡単に別れてくれそうにない」。
「いいことを思いついた。お前今から俺の家に行ってくれ。その時に酒を手土産に持って行け。で、女房に”ちょっと待たせてもらいたい”と言って家に上がり込め。そこで自分で持って行った酒をしこたま飲んで酔ったところで女房にしがみつけ。そこに俺が帰ってきて女房をどやしてつけて金をふんだくって山分けしよう」。

男は言われた通り家を訪ね上がり込んで酒を飲み、聞いていた通り佃煮や漬物を出して食い、女房にちょっかいを出すのだが…。

…まぁひどい男たちなんだけど、言われるがままに家に行って飲み食いする男がけろっとしていて実に落語っぽくって憎めない。
そして女房の方がとにかく強い。圓橘師匠の「女性」はほんとに強くて気持ちがいい。
何が最高ってサゲが実にもう落語っぽくて、なんだろう、緊張と緩和?こういう噺に目くじらをたてちゃいけないよ!っていうお手本のような…とにかく絶品で「ああっ、落語っていいなぁ!!」という気持ちでいっぱいに。
素晴らしかったーーー。大好きだ。

 

圓橘師匠 圓朝作「業平文治漂流奇談」その一
男気に溢れていて怪力(「七人力」←中途半端な数字に思えるが、当時「七福神」が大変な人気で「七」という数に拘っての「七人力」らしい)、しかも「業平」と呼ばれるほどの美男子、業平文治が活躍する物語をこれからこの会で連続でやっていくらしい。楽しみ。

当時の江戸は「入込」といって混浴の風呂が結構あった。
「混浴」を「入込」とは粋な呼び方、と圓橘師匠。
そういえば自分が二ツ目の時に会津磐梯山へ司会の仕事で行った時、泊まった宿が混浴で…番頭さんが「朝や夕方に入っても女性は入って来ないから夜遅くに行くといいですよ」とアドバイスされて、打ち上げが終わってからウキウキと風呂に入り女性が入ってくるのを待っていたら…。
…この話がおかしくておかしくて大笑い。
渋い圓橘師匠がこういうめちゃくちゃ茶目っ気のある一面をのぞかせてくれるともうたまらないなぁ…。

噺の途中でそんな脱線が入りながら。
入込に毎晩やってくる小股の切れ上がったいい女。
この女に岡惚れしたある店の番頭が風呂の中でこの女に近づいて触ったところ、持っていた手拭を女に取り上げられてしまう。
風呂屋の番頭に「この手拭を持っていた男が私にいたずらをしたからここに連れてきてほしい」というのだが、番頭はこの女が亭主と一緒になって強請たかりを生業にしているお浪という女と知っていたので、いたずらをした男を逃がしてやろうとする。
しかしそれに気づいたお浪、逃げ出そうとした男を裸のまま痛めつけ、番頭もどうしていいか分からず大騒ぎに。
そこにやってきたのが業平文治。
最初は穏やかにお浪を説得しようとするがどうにもならないと分かると、二本の入れ墨が入っている方のお浪の腕を2発でへし折る。
お浪は家に帰り亭主にこの話をすると亭主は「いい強請のたねができた」と喜んで…。


圓朝物だから油断はできないけれど、今度の主人公は分かりやすく強そうで義侠心もありそうだから、楽しめるかも。

末廣亭6月中席夜の部

6/19(金)、末廣亭6月中席夜の部に行ってきた。

 

・遊吉「青菜」
・小すみ 俗曲
・幸丸 漫談
・松鯉「天野屋利兵衛 雪江茶入れ」
~仲入り~
・藍馬「街角のあの娘」
・カントリーズ 漫才
雀々「ん廻し」
・米福「置き泥」
・喜楽・喜乃 太神楽
・圓馬「試し酒」

 

遊吉師匠「青菜」
いつもの小噺に新しい小噺が追加されていて大笑いしてしまった。おかしい。
そしてびっくりの「青菜」。
口調の滑らかさ&速さでいったらこの師匠が今最高峰なんじゃないかと思う。
流れるようなスピードなんだけどとても聞き取りやすい。
そのスピードに乗って気持ちのいい軽快な「青菜」。
スピーディであっさりしているんだけど「いわしが冷めちゃうよ」のおかみさんが「お前さんほどいつもびっくりしてるやつはいないよ。このびっくりやろう」とスピードに乗ってしっかり毒づくのがおかしい。
くどくなくてとっても楽しい「青菜」だった。

 

小すみさん 俗曲
超絶うまい三味線とお腹の底から出す気持ちのいい歌声。もうこれだけで鬱々とした気分を吹き飛ばしてくれる。
お客さんの中にお子さんがいたことに気づいて「月の砂漠」。これがもう…。途中ジャズのフレーズが入ったりオペラのように歌ったり、ああ、音楽っていいなぁ…頭の中に砂漠が広がってほんとに素敵だった。

 

幸丸師匠 漫談
コロナでずっと家にいて奥さんとしか会話をしていなかったことや電車に乗るのも久しぶり過ぎて「最近電車はどうなってますかね」とずっと通勤している人に電話して聞いた話など。
そこから胃腸炎を起こしてえらい目に遭った時の話。もうこれが抱腹絶倒。笑った笑った。最高。


松鯉先生「天野屋利兵衛 雪江茶入れ」
赤穂浪士は冬の話だけではない、と「天野屋利兵衛 雪江茶入れ」。
お殿様に気に入られていた商人・ 天野屋利兵衛が家宝の雪江茶入れを殿から直々に見せてもらう。
その日、その茶入れが紛失し、重役二人は責任を取って切腹をするしかないと相談を受けた大石内蔵助。天野屋利兵衛を訪ねて事情を話すと「実は私が盗んだ」という。
それなら茶入れを返してくれと内蔵助が言うと、転んで割ってしまったからここにはない、という。
それを聞いた内蔵助が殿の元へ参りそのことを話すと「利兵衛がそんなことをするわけがない」という。なぜなら茶入れは自分が飾っておこうと思って取り出したのだから、と。
慌てて利兵衛のもとへ戻った内蔵助が「なぜそのような嘘を申した?」と尋ねると利兵衛は「自分の元へ内蔵助様が訪ねてきたということは自分を疑っているということ。信用を失ったらもう死んだも同然。このままでは重役二人が切腹することになるのであれば、自分が罪をかぶればよいと思った」と答える。
それを聞いた殿は深く感動し、また内蔵助も利兵衛と深い親交を持つようになった。

 

…初めて聞く物語に引き込まれ、利兵衛の真意が分かった時には思わず涙がポロリ…。
武士の話は私の好みではないのだが、松鯉先生の静かで迫力のある語りに素直に感動してしまった。よかったー。

 

雀々師匠「ん廻し」
寄席の主任に連れて行ってもらったビールのぬるい乾き物しか食べられない酷い居酒屋のまくらから「ん廻し」。
前にも聞いたことがあったんだけど、とにかく面白い。「ん廻し」がこんなに面白いっていったい。笑った。

 

米福師匠「置き泥」
ああ、芸協の落語だなぁ…という感じがする「置き泥」。
お人好しで言われるがままに財布からどんどん金を出してしまう泥棒に心温まる。好き。

 

圓馬師匠「試し酒」
東京アラート、レインボーをやっちゃったらその上はないんじゃないか。いったい何色にするつもりなのか…のまくらに大爆笑。
酒のまくらから「試し酒」。

飾り気のない久蔵が登場からして豪快で、でも自分が飲めないと主人に迷惑がかかると聞くと急に心配しだす律義さもあって、なんともチャーミング。
酒を飲むほどにご機嫌になっていく様子もリアルだし、なによりもお酒の飲み方が豪快できれい。見ていて何度もごくり…。の、飲みたい。
分かっていても最後まで飲み干したところでは拍手をしたくなるし、サゲがいいなぁ。この人の豪気さと小心さが出ていて、好きだなぁと思う。

久しぶりに見た圓馬師匠。伸び伸びと大らかな圓馬師匠らしい落語に心洗われた。よかった。

八月の六日間

 

八月の六日間 (角川文庫)

八月の六日間 (角川文庫)

  • 作者:北村 薫
  • 発売日: 2016/06/18
  • メディア: 文庫
 

 ★★★★★

雑誌の副編集長をしている「わたし」。柄に合わない上司と部下の調整役、パートナーや友人との別れ…日々の出来事に心を擦り減らしていた時、山の魅力に出会った。四季折々の美しさ、恐ろしさ、人との一期一会。一人で黙々と足を動かす時間。山登りは、わたしの心を開いてくれる。そんなある日、わたしは思いがけない知らせを耳にして…。日常の困難と向き合う勇気をくれる、山と「わたし」の特別な数日間。

副編集長のアラフォー女子が主人公。
一人山登りが趣味の彼女は少し長い休みが取れると山に登る。着替え、食料、登山グッズの他に空いた時間に読む本をリュックに詰める。この描写が山に登らない自分でも読んでいてとても楽しい。特に持って行く本を選ぶくだりはワクワク。

「わたし」はストレスフルな日常から離れて一人山に登り、すれ違う誰かに助けられたり、広大な自然に触れて心洗われたり、時にはヒヤッとする体験もする。
大自然の中、私が消えてなくなっても山はあり川は流れ草木は生えることを実感する。

自然の中で、自分の存在のちっぽけさを実感することは案外心強いことなのかもしれないなぁとしみじみ思った。

この時期に読めてよかった。楽しかった。

第四回 una cafe(さん助師匠のオンライン落語会)

6/13(土)、「第四回 una cafe(さん助師匠のオンライン落語会)」に参加した。

 

・さん助師匠「茶の湯
・さん助師匠 トーク

「私今日バスに乗ってびっくりしたんですけども」とさん助師匠。

なんでもバスに「乗車中、他のお客様とのお喋りはおやめください」という張り紙がしてあったらしい。
「なるべくお控えください」ではなく「やめてください」と書いてあったことにドキッとしたというさん助師匠。

ほんとにこんな世界になるなんて…たくさんフィクションを読んできたけど想像もしていなかったな。

それから「昔から三道楽と言いまして…」と言って「買う」を一番最初に言うので「ええ?」と思っていると「女性と博打と…あれ?あとなんでしたっけ?」。

ひぃーーーー。飲む打つ買うでしょうーー?大丈夫か?

「あー…飲む…お酒か。なんか度忘れしちゃた…。よく噺家さんは美味しい店をたくさん知ってるんでしょう?なんて言われたりしますけどそんなことないです。隠れ家的な店なんて…全然知りませんし…。あ、でも、一軒ありました。浅草橋にあった喫茶店コーヒーゼリーがとても美味しいお店がありました。店も広くてゆっくりできるんですよね…。もうなくなっちゃいましたが」。

そんな冷やっとするまくらから「茶の湯」。
おおお、さん助師匠の「茶の湯」はとても久しぶり。

ご隠居さんが定吉を呼ぶところから。
定吉はさん助師匠らしくかわいい。かわいいんだけどなんか登場した時からなんかちょっと変。
というか、呼んでるご隠居がすでに変。
え?なに、これ?
妙にしゃべり方がゆーっくりでそれがなんかなんだろう…悪の組織っぽい?異常者?(笑)。
すでに二人で悪だくみを始めている感じ。

それから定吉がご隠居に何か道楽を始めたらいいと勧めるんだけど、お隣の家のお嬢さんがお琴の稽古をするところを覗き見…それも遠くからだと見えないので庭に入り込んで…そこでも見えないのでもっと近づいて…なんかここもちょっと異常者のかほりが…。

で、間違った道具を買ってきて間違った入れ方をして二人で吐きそうになりながら飲むんだけど、もう最初から二人が異常者っぽいので飲み物が異常なのもさもありなん…。

二人でお腹を壊して定吉が「お願いですから他のお客さんを呼びましょう。それでがぶがぶ飲ませてお腹を壊させましょう」。

長屋の人たちが茶の湯の誘いを受けて右往左往するところはカット。
近所の人たちが次々茶の湯の被害に遭い、ようかん泥棒に行く人たちの会話からご隠居が「りきゅう饅頭」の製造を始めるところ、それから蔵前の時のお客が訪ねてくるところ。

このお客がまずい茶とまんじゅうを口にして慌ててまんじゅうを袂に入れて捨て場所を探しに廊下に出ると、人格が変わって職人みたいになっちゃう(笑)。

なんか最初から最後までハイテンションで異常者続出の「茶の湯」だった。


いやぁどうしたんださん助師匠。
確かに前回の「青菜」で、「さん助師匠らしいもっと異常な落語が見たい」とは書いたけれど。そこまで異常である必要は…もごもご…。
まさかここを見てたりはしないよね…(どきどき)。

さん助師匠 トーク
実は最初、落語の部分は録画を流そうかと思った、とさん助師匠。
それでunaさんに録画してもらったらしいんだけど、間違えてボロボロだったらしい。
で、結局生でやることにしたらしいんだけど、いろいろカットしてやったにも関わらず長くなってしまった、と。
なんで長くなったんだろう?と首をかしげるさん助師匠とunaさんだったけど、私は言いたい。ご隠居のしゃべり方が悪の結社の親玉みたいな喋り方だったからですよ、と。妙にゆっくりした大仰なしゃべり方だったから二人の会話でえらい時間を食ってしまったんだと思う。

そこから、お客さんのノリが悪いと噺家の高座が短くなりがち、という話へ。
ウケないから早く終わらせようという心理が働くわけじゃないだろうけど、そういう傾向があるらしい。

そんな話から「めがね泥」という噺がありまして。
それを教わった時、教えてくださった師匠はまくらを含めて12分だったんです。
でも自分がやると20分。
師匠には「12分だからやる場所があんまりないよ」と言われたんだけど、自分の場合は20分になってしまい、それはそれでやる場所があんまりない(笑)。

で、また今回もさん助師匠があしたのジョーモードに入ったところで強制終了。わはははは。

7月もuna cafeやります、とのこと。

 

死にたいけどトッポッキは食べたい

 

 

死にたいけどトッポッキは食べたい

死にたいけどトッポッキは食べたい

 

 

 ★★★★

もっと気楽に、自分を愛したいあなたへ。200冊限定のブックファンドから、40万部を超えるベストセラーに。不安定な心をありのまま描き韓国で話題となったエッセイ、待望の日本語訳。

著者がうつ症状で精神科にかかっていたときのカウンセリング記録。

自己肯定感の低さから他人との関係に激しく依存してしまう。他人の視線や評価が気になり、白か黒かという極端な考えをしてしまう。友達や恋人の態度に一喜一憂し、最初は分かり合える相手と出会えたと思うのだがすぐに相手に嫌われたのでは…失望されたのではという不安に苛まれ試すような言動をしてしまう。

など、とても他人事とは思えない。
しかしこれだけ精神的に苦しみながらもそれを記録し分析する客観性も持っていることに感動する。
またカウンセリングをしたお医者さんの所感が掲載されいてることも凄いと思った。ずいぶん頭の柔らかいお医者さんだな…。お医者さん自身も語っていたけれど、精神科医の言葉に即効性はないかもしれないが助けにはなると思った。

勧之助の会

6/10(水)

らくごカフェで行われた「勧之助の会」に行ってきた。

・勧之助 トーク  
・勧之助「短命」
~仲入り~
・勧之助「寝床」
 
勧之助師匠  トーク&「短命」
自粛要請期間の間ずっと家にいたという勧之助師匠。
何人かの方たちからネット配信のお誘いもあったけどやらなかった、と。
自分はやっぱり落語はお客さんの前でやるもの、そこで笑いが生まれると思っているので、「お客さんの前で生で落語をやること」にこだわってしまった。
もちろん気になったから他の噺家の動画や配信もいくつかチェックはしていた。
自分が見ていて一番面白かったのはふう丈のアサダ三世。あいつはこの期間で一番売れた噺家なんじゃないだろうか。ほんとに面白くて何度か吹き出した。
あとお勧めなのがときん兄さんの動画。これは見てほしい。私が何か言うとお客さんの先入観になってしまうから何も言いません。とにかく見てほしい。
それにしても若手の噺家twitterとかで「落語しゃべりてぇ!」ってつぶやいてるのを目にしましたけど、ほんとに?3か月でそんなにしゃべりたくなる?私は…もしかして何かが欠けているんですかね…。
この期間、稽古にも行けないしね…家の中とか散歩で歩きながらとか一応喋ってはいましたけどね…でも小さい声でぼそぼそ言ってるだけで…ほんとにこうして大きな声出して喋るの3か月ぶりですよ。
 
それから師匠から電話がかかってきて30分話した話や、どんな日々を送っていたかとか、そんな話をあれこれと1時間近く。
毒舌を交えながらいろんな話をしてくれたんだけど、時々噺家としての矜持がちらりと見える。
例えばこういう無収入の時期について泣き言を言わないで面白がるとか、自分からいろんな人にあえて連絡をとらないとか…。
自分は噺家になろうと思って東京に出てきたとき、パンツ3枚ぐらいと5万円ぐらいしか持ってなかったので、あれを思えばなんてことない、と言っていたのが印象的だった。
 
「今日はネタおろしをするって言ってますけど、寄席でもよくかかる噺でたいして面白くないですけど、まぁ気楽に聴いてもらえたら…ってなんか全然噺に入らねぇじゃねぇかって思ってるでしょ。…そうなんですよ。まぁこういう…噺家が右往左往する姿を見るのもいいでしょ…」
全然顔にも態度にも出てなかったけど、噺に入りづらかった?(笑)
そんな長いトークから「短命」。
ネタ卸しもブランクも感じさせない。
察しの悪いはっつぁんと察してほしいご隠居のやりとり。
確かに大爆笑の噺じゃないけど、ぷぷっとおかしい。なによりも、これぐらいのくだらないことでご隠居に聞きに行くこの二人の関係性が…人と会うことを禁じられてきた日々の後に沁みるぜ…。
楽しかった~。
 
勧之助師匠「寝床」
まさかトークと一席目があんなに長くなるとは思わなかった、と 勧之助師匠 。
今日会場入りした時に係りの方に「今日は短めにします。江戸前で!」って言ってたのに、トークだけで1時間って…。楽しかったんです。に大笑い。
二席目は好きな噺を大きな声でやります、と「寝床」。
 
繁蔵のちょいちょい漏れ出る本音がおかしいし、声ならしで十分その破壊力が伺われる大旦那の義太夫がおかしい。
「じゃ誰も来ないのかい?」と大旦那に言われた繁蔵が「ええ、ですから今日の義太夫の会は中止に…(にやり)」もおかしい。
好きだと言うだけあって最初から最後までとっても楽しい「寝床」
ああ、やっぱり生はいいなぁ、ってあの場にいたお客さんは全員思ったと思うなぁ。(マスクしてるから表情はわからないのがちょっと寂しいね)
 

暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて: ル=グウィンのエッセイ

 

 ★★★★★

ル=グウィン生前最後のエッセイ集。ファンタジーの法則、ユートピアディストピアホメロス論から、内なる子ども、植物の感受性、罵り言葉、愛猫パード、朝食の半熟卵まで。“ゲド戦記”など数多の傑作を遺した巨匠の繊細かつ大胆で機知に富んだ思考。2018年ヒューゴー賞(関連書籍部門)受賞。 

 いろんなことに心乱されて不安でいっぱいの私に「落ち着いて自分の頭で考えなさい」と諭してくれるようで、今読むのに相応しい本だった。
彼女がこのパンデミックや政治や分断していく国民について何を語るのか聞いてみたかった…。

はっとしたのが「嘘がすべてを駄目にする」。
かつては大統領が国民にお願いをした時代があったのだと驚きを持って語る彼女に、日本の今の政治家は臆面もなく自粛を要請し同調圧力に期待し「日本人は民意が高い」と真顔で言うのだが、それは信頼ではなくまやかしにしか見えない。こんな世界で私たちはどう生きて行けばいいのか。彼女ならどう言っただろう。

末廣亭6月上席昼の部

6/4(木)、末廣亭6月上席昼の部に行ってきた。
最後に落語会に行ったのが3/25(水)道楽亭の貞寿先生と小助六師匠の会、寄席が3/21(土)のいろは亭。それ以来の寄席。くぅーーー。
そんなに間空いてねぇじゃねぇかと言われそうだけど、週3、4ぐらいのペースで落語に行っていた身からすると、ようやく!の想いが強い。
この芝居、大好きな南喬師匠のトリだったのでなんとしても行きたかったのだけれど、混んでたら嫌だなぁと思い平日休みをとって。初日は夜の部の喬太郎師匠目当てで昼夜通しの人も多かったようだけど、2日目から入れ替え制にしたので混むこともなく。ありがたかった。


でももちろんまだまだ平常とは程遠い状態。
末廣亭でも人数は100名に限定。入り口でアルコール消毒&検温。
会場も3列目から。1列おき、一人おき。(今は布陣がまた変わってるらしい。確かに1列おきにすると椅子席だと後ろになりがちだから勿体ない気が)
トイレの洗面に自動ハンドソープの機械が設置。泣ける。「この量で充分です」と注意書きがしてあったけどものすごい少量だったので笑う。わははははは。


・市松「たらちね」
・扇「平林」
・正楽 紙切り(「線香花火」「東京アラート」「あずみさん」「あじさい」)
・彦三「初音の鼓」
・左橋「子ほめ」
・ホームラン 漫才
・扇好「のっぺらぼう」
正蔵「鼓ヶ滝」
~仲入り(換気)~
・夢葉 マジック
・白酒「権助魚」
・鉄平「大安売り」
・あずみ 俗曲
・扇遊「干物箱」
~仲入り(換気、消毒)~
・一之輔「真田小僧
ロケット団 漫才
・正朝「悋気の火の玉」
・朝馬「浮世床(夢)」
仙三郎社中 太神楽
・南喬「家見舞」

 

正楽師匠 紙切り(「線香花火」「東京アラート」「あずみさん」「あじさい」)
わーーい、正楽師匠!お元気そうでなにより。嬉しい。
そして今回あまり声をかける人がいなかったので私は初めて自分で声をかけて切っていただいてしまった。「あじさい」。
在宅勤務になって毎朝散歩をするようになった。今まで目が行かなかった道端に咲いてる花、どこかのお宅の玄関先の花、都営住宅の花壇、公園に咲いている木に心慰められることが多い。中でも好きなのがあじさい。梅雨に入る憂鬱な時期に、この花が徐々に花びらを咲かせ色を濃くしていくことに慰められる。
そんな気持ちから声をかけさせていただいたら「あじさいね。あじさい。…よかったですよ。何を隠そう私が一番得意にしているのがあじさい。…その次があずみさん」。
いつものセリフなんだけど、こんな時だけにとても嬉しかったな。

 

彦三さん「初音の鼓」
二ツ目昇進おめでとう!!な彦三さん。黒い羽織が初々しい。
こういう日に来てくれたお客さんへの感謝を一生懸命伝えようとしたあとで「お世辞もまだおぼつかないんですが」とぽつりと言うのがおかしい。
せっかくの昇進がこんな時期と重なってしまって可哀そうだけれど、緊急事態宣言が解除されて初めて行った寄席で昇進したばかりの彦三さんを見たことはきっとずっと忘れないと思う。

「初音の鼓」。道具屋とぐずぐずの仲(笑)の三太夫さんが一生懸命狐の物まね。最後に「すぽぽんすぽぽんすぽぽんぽん!」と息もつかずにやったら咳き込み「あ、コロナじゃないです」と言ったのがめちゃくちゃおかしかった。
清々しくて気持ちのいい高座だった。きれいな噺家さん。

 

ホームラン先生 漫才
わーーーホームラン先生もお久しぶり。病気で療養していたことは聞いていたけど、杖もつかずに元気に登場されて嬉しい。
寄席で漫才をできるのが嬉しい!という喜びに満ちていて、「いつもの」じゃない、雑談をそのまま漫才にしちゃったみたい。楽しかった!

 

扇好師匠「のっぺらぼう」
まくらなしで「これは終わりのない永遠に続く落語です」とのっぺらぼう。
この繰り返しがバカバカしくて楽しいんだ。
落語にあまり慣れてない感じのお客様が「怪談」と聞いて最初はびくびく聴いていたのが徐々に「なんだ、こういうことか」と分かってほっとするのが伝わってきて嬉しくなる。
こういう客席の空気が大好き。だから何度も行きたくなるんだな。

 

白酒師匠「権助魚」
寄席も落語会も全部なくなって家にこもりっきりでいて、寄席が復活して噺家はみんな「寄席で喋ること」の幸せを噛みしめてます、と白酒師匠。
これからは一席一席大事にするぞ、という気持ちでいましたけどそろそろ今日あたりが限界です。明日からみんな手を抜き始めると思いますので、今日がぎりぎりセーフです、に笑う。

そんなまくらから「権助魚」。
おこづかいをやると言われたとたんに「おら、どっちかっていうとおかみさんの方が好きだ」とケロッという権助
「そこまで言われたら(場所を)言いますだ」とひそひそ声。
毒舌なのに意地悪さがない。白酒師匠にぴったりだ。
最初から最後まで楽しい「権助魚」だった。

 

鉄平師匠「大安売り」
お相撲さんと個人的に少し親しくさせていただいている、というまくら。
そんなまくらから「大安売り」。この噺って全然面白くないなーと思っていつも聴いているんだけど、これがすごく面白くて!なんでこんなに面白かったのか謎なんだけど。
負け続けの取り組みの6日目ぐらいで「ここらへんから危なくなる」、9日目で「ここまでくればもう安心」とちょいちょい入る心の声と、お世辞のきかない関取の語りがまじりあってすごくおかしい。
そして「大安売り」のタイトルの意味がわかるサゲまでやってくれたのも嬉しかった。

 

扇遊師匠「干物箱」
高座で落語を喋る喜びが溢れてくるような弾むような高座。
花魁に会いたい若旦那、お調子者の善公、頭の固い大旦那。
身代わりだからおとなしくしてないといけないのにすぐに我を忘れて大騒ぎしてしまう善公。
テンポの良さと展開のスピードの丁度よさ。こういうのはやっぱり生でないとねぇ。
大盛り上がりで仲入り。

 

一之輔師匠「真田小僧
こういう日に来てくださるのがほんとの落語好き、ほんとのお客さん。我慢できなかったんでしょうね。わかります。
でもそういうお客さんが良く笑ってくれるとは限らない。
わざわざこういう日に駆けつけてクスリともしないとはどういうこと?いったいなにしに来てるの?
と言いたくもなりますけど、それも楽しみ方の一つ…なんでしょうな。

そんなまくらから「真田小僧」。
金坊とおとっつぁんの攻防の楽しさ。金坊が実に言葉巧みではあるんだけど、子供らしくていやらしさがないのが不思議。
話にのめりこんだおとっつぁんが相手が「あんまさん」だったと分かった時の「あーーーよかったー。ほっとしたーーー」と心の底から安堵しているのがたまらなくおかしい。
笑った笑った。

 

ロケット団 漫才
例のマスクへのいじりはきっとあるだろうと思っていたけど、他の件についても毒を交えて笑いに変えてくれるの、ほんとに楽しい。
家でネットニュースやtwitterに流れてくるニュースを見ているとどんどん深刻になって鬱になっていくので、こうやって笑い飛ばせる幸せを噛みしめた。笑った笑った。

 

南喬師匠「家見舞」
まくらなしで「家見舞」。
この時節にこの噺を選んだのは、とことんバカバカしい噺で笑ってもらおうという気持ちだったんだろうな。
表情が豊かでしぐさが大きいから「ええええ?」って驚いただけでバカバカしくて大笑いしちゃう。
「お前、首をかしげるなよ。お前が首をかしげただけでこっちはぞっとしちゃうんだよ」。
ああ、こういうしょうもないことで笑えるの、ほんとに幸せだ。こういう時間がほんとに大切。そんな思いでいっぱいになった。

 

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正楽師匠「あじさい」

 

瓦礫の死角

 

瓦礫の死角

瓦礫の死角

  • 作者:西村 賢太
  • 発売日: 2019/12/11
  • メディア: 単行本
 

 ★★★★

その逮捕を機に瓦解した家族。刑期を終えようとする父。出所後の夫の復讐に怯える母。家出し、消息不明となった姉。十七歳、無職の北町貫多は、如何なる行動に出るのか―。犯罪加害者家族の十字架を描く表題作と、その表裏をなすも“不”連作である「病院裏に埋める」の両篇に加え、快作「四冊目の『根津権現裏』」に、怪作「崩折れるにはまだ早い」(「乃東枯(なつかれくさかるる)」改題)の全四篇を収録。比類なき文学。 

貫多と久しぶりの再会。2019年に発表した作品だが、1,2話目は10代の頃の貫多。
服役中の父親が出所してくることに怯え、母親にたかり、そして逃げ出す。
劣等感と自惚れ、暴力性と小心さ。人間らしいといえば人間らしいが、お知り合いにはなりたくないタイプ。

私小説だから作者自身に重ねて読んでしまうわけだが、独特のユーモアについ笑ってしまう。

正直、初めて読んだ時の新鮮さはもうないんだけど、時々読みたくなる。なんて言ったら失礼か。初期の頃の内から沸々と煮えたぎるような感じはなくなって、その分貫多の孤立感や寄る辺なさが際立つ。

4話目の「崩折れるにはまだ早い」は今までの私小説とは毛色の違う作品で、新鮮な驚きがあった。

配信で見た落語会など

【5月に配信で見たもの、聴いたもの】

 

・5/2(土)『しししし3』&『めんどくさい本屋』同時刊行イベント!(話者:田中佳祐さん+竹田信弥さん)

 

・5/9(土)第二回 una cafe(さん助師匠のオンライン落語会)

 

・5/15(金)「上原落語会オンライン」
・かしめさん「金明竹

 

・5/22(金)第8回道楽亭ネット寄席
立川談幸・三笑亭可龍・三笑亭夢丸★
「芸協三人衆揃い踏み」

・夢丸師匠「夢八」
・可龍師匠「粗忽長屋
~仲入り~
・可龍師匠、談幸師匠、夢丸師匠 トーク
・談幸師匠「質屋庫」

 

・5/27(水)坂本頼光さん「サザザさん 7」

 

・5/30(土)第三回 una cafe(さん助師匠のオンライン落語会)

 

・5/31(日)梶原いろは亭 生配信 第2回
・圓馬師匠「こんにゃく問答」