りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家さん花 真打昇進披露興行

9/25(土)、鈴本演芸場で行われた 「柳家さん花 真打昇進披露興行」に行ってきた。

・小きち「小野小町
・わん丈「孝行糖」
翁家社中 太神楽
・さん喬「初天神
馬風 漫談
・ニックス 漫才
正蔵「一眼国」
・市馬「狸賽」
・小猫 ものまね
・一之輔「つる」
~仲入り~
・口上(菊之丞:司会、正蔵、さん花、さん喬、馬風、市馬)
ロケット団 漫才
・菊之丞「長短」
・権太楼「町内の若い衆」
・小菊 粋歌
・さん花「井戸の茶碗

 

わん丈さん「孝行糖」
さん花兄さんは優しくて誰もが大好きな兄さんです、とわん丈さん。
それにさん喬師匠にはすごくお世話になってます。古典はさん喬師匠にお稽古をお願いすることが多いので。
この間もうちの師匠に「さん喬師匠に教わりに行きました」と話したら「お前もか…兄弟子たちもみんなさん喬さんのところに教わりに行って…迷惑じゃねぇか。いい加減にしろ」。
そう言ったあとに師匠が「でもさん喬さんのところのお弟子さんはおれに教わりに来ねぇんだよなぁ」。
…ぶわはははははは!!ちゃんとオチがあるんだ!おかしすぎる!!

そして家で稽古をしていると4歳になる娘がすぐに覚えて真似してしまう。
最近稽古してる「孝行糖」も保育園で披露しているらしく、父親が落語家をやってると知られたくない妻は「せめて(有名な)寿限無にして…」。
そんなまくらから「孝行糖」。
まくらも落語も相変わらずソツがないね。ひゅーひゅー。
テンポが良くて時々独自のくすぐりも入っていて、とても面白かった。

 

一之輔師匠「つる」
「つる」という噺をほんとに一度も面白いと思ったことがないんだけど白酒師匠の「つる」と権太楼師匠の「つる」には思わずぶわはは!と笑ったことがあって。
一之輔師匠がやると「つる」もこんなに面白いのか。はぁぁぁーーってなった。
テンポが良くてふにゃっとしたところとぐわっといくところの緩急があるから、聞いていて全然だれない。
噺自体を大きく変えているわけじゃないのに言い回しや反応に独自のところがあって、楽しかったー。

 

口上(菊之丞師匠:司会、正蔵師匠、さん花師匠、さん喬師匠、馬風師匠、市馬師匠)
今回は言い間違えたりそういうこともなくつつがなく…。
馬風師匠が巨人軍の話をしている時のほかの師匠方の表情がなんか面白かった。菊之丞師匠と正蔵師匠が目配せしたり、市馬師匠が笑うでもなく耐えるでもなく微妙な表情をしていたり…。
今回も馬風師匠のどつきで吹き飛ぶさん喬師匠とさん花師匠。
客席にお尻を向けたさん喬師匠が菊之丞師匠に促されて前を向くとマスクをつけていて笑った(芸が細かい!)。


ロケット団 漫才
前回もそうだけど、ワクチンのネタがめちゃくちゃおかしい。
笑ってはいられない出来事をこんな風にブラックな笑いにしてしまうの本当に好きだし元気をもらえる。
書かない方がいいようなネタも多かったけど笑、
自治体によってスピードややり方も様々でね」
練馬区はなんでしたっけ。行きつけの病院で優先的に打てるっていうね」
「行きつけの店みたいに言うなよ。かかりつけ医だろ」
に笑った。わかるー。私もつい言っちゃうもん「行きつけの病院」。

 

さん花師匠「井戸の茶碗
おお、「真打昇進を祝う会」の時と同じ「井戸の茶碗」。
あの時は時間が押しててわやわやっとした印象だったけど、今回は落ち着いた感じで。
身体も声も大きくて貫禄があるから、お侍さんがとてもお侍さんらしい。お殿様もとってつけたような感じがしないのはすごい。
清兵衛さんは心の声がダダ洩れで「え?きもちわるっ」とか「お嬢様が小判から目を離しません」とか「出たーー」とか言っちゃう。
でもお侍さんに威厳があるからそれはそれでなんというか…庶民で正直で今までお侍さんと接した経験がないとこうなってしまうんだなきっと、という妙な説得力が。

くず屋を探して顔を改める時に、顔を上げたくず屋が妙にいい男っぽく気取ってて「おおっ、いい男だなっ」と言われるところ「このくすぐりやるの毎回恥ずかしい…」とさん花師匠がつぶやいたのがおかしかった。

楽しかった~。

柳家さん花 真打昇進披露興行

9/22(水)、鈴本演芸場で行われた「柳家さん花 真打昇進披露興行」に行ってきた。

・左ん坊「寿限無
・花ごめ「無学者論に負けず」
翁家社中 太神楽
・さん喬「時そば
馬風 漫談
米粒写経 漫才
正蔵「茄子娘」
・市馬「芋俵」
・小猫 ものまね
・一之輔「加賀の千代」
~仲入り~
・口上(菊之丞:司会、正蔵、さん花、さん喬、馬風、市馬)
ロケット団 漫才
・菊之丞「町内の若い衆」
・権太楼 漫談
・小菊 粋曲
・さん花「棒鱈」
 
さん喬師匠「時そば
月に20回ぐらい落語に通っていた時は当たり前すぎてなんとも思わなくなっていたけど、こうして改めて聞くとやっぱりさん喬師匠の落語は丁寧でテンポが良くて面白いなぁと思う。
時そば」なんてほんとに聞き飽きた噺だけど、それでも一人目の男のそばがおいしそうで、それに比べて二人目の男のそばがほんとにまずそうで…。
この日は結構暑い日だったけど、自分もちょっと寒い晩に屋台でおそばを食べた気分になってた。

一之輔師匠「加賀の千代」
あーやっぱり一之輔師匠の落語は面白いなぁ!と改めて思った高座だった。
お千代さんの頭の回転の良さ&ちゃっかりさと、それをただただ感心して「付いていきます」という甚兵衛さんのおかしさ。
「あのご隠居はお前さんのこと気に入ってるよ」の言葉通り、甚兵衛さんが訪ねてくるとものすごく喜ぶご隠居。
とんちんかんな受け答えをする甚兵衛さんにご隠居も女中もわくわくしているのが伝わってきて大笑い。
最初から最後までテンポが良くて軽くて明るくてすごく楽しかった
こんな時代だから、ほんとにこういう落語が求められているんだろうな…というか自分もこういう落語を求めていたなぁと感じたのだった。
 
口上(菊之丞師匠:司会、正蔵師匠、さん花師匠、さん喬師匠、馬風師匠、市馬師匠)
「私実はこれが初めての口上の司会です」と菊之丞師匠。
ええ?すごい意外ーー。言葉遣いがきれいで様子がよくて司会にピッタリだわーと思って見ていたけど、確かにそう言われて見ると、結構緊張されていたような…。
そんな菊之丞師匠を隣に座った正蔵師匠がまじまじと見つめているのもおかしい。
その正蔵師匠は、さん花師匠とは家が近いこともあって、会のあとに一緒に帰ったことが何回かある、と。
「土地柄、ちょっと怖い系のお兄さんに絡まれたりすることもあるんですけど彼と一緒に歩いているときはそういう目にあうことはなかったです」に笑う。
馬風師匠はいつものように全く関係ない巨人軍の話。多分小んぶさんの名前も顔も知らないんだろうなぁ…。前は「また昭和なギャグを…」と苦々しく思っていたけど、こんなご時世だとそれすら嬉しい。
馬風師匠がどついて近くの人たちがずっこけるやつも…。
吹っ飛んださん喬師匠に向かって「こんなに機敏な動きをするさん喬師匠を初めて見ました」と声をかけた菊之丞師匠もおかしかった。
 
権太楼師匠 漫談
「今日真打になるあの男は小太郎と二人…でこぼこコンビでね…よくさん喬さんをしくじってました。さん喬さんは私と違ってね…叱るときも小さな声で諭すようにね…”お前ら、そういうことじゃダメなんだぞ。わかってるか?そういうことをすると…権太楼に怒られるぞ”…って…。あたしを悪者にするんじゃないよ!!って思いましたけどね。あたしはそんな怒り方じゃないですから。大きな声でがん!!と江戸っ子らしくね…」
「だからもうあたしにとったら甥っ子みたいなもんなんですよ。もう先輩としてとかじゃなくね。甥っ子がいよいよそんなに立派になったか、みたいなね。だから今日はね…袖から見てやろうかと思ってますよ。あいつの高座をね」
「あたしのほうが断然近しいんだから。(口上には)最高顧問じゃなくてあたしが並んだ方が良かったんじゃないの?」
珍しくつらつらと話が止まらなくて気が付いたら「あら。もう持ち時間終わりだ」。
なんかしんみりといい話だったな…。じーんとした。
 
さん花師匠「棒鱈」
口上で大先輩方に並んでいただいて自分のことを話してもらえるっていうのは本当にうれしいことですね」とさん花師匠。
またまた~!という笑いが起きると「いやあの…私の会に来ていただいていたお客様は…私には心がないと…そう思ってるかもしれないですけど…いや…でもうれしいんですよ、本当に。私のことには1ミリも触れない馬風師匠の口上を聞いていて、なんかもうしみじみと嬉しくて泣きそうになりましたから。でもおかしいでしょう?巨人軍をよろしくと言っているのに真ん中で私が泣いていたら」。
それから後ろ幕のきれいな花の絵について。
柳家といえば最初に教わるのは”道灌”です。なのであれは山吹の花です。私は5代目小さんに憧れて入門したもんですから…入った時は小さんになるんだと思って入ったので…私3年間道灌しかやらなかったんですね。あの頃の私を知ってるお客さんもいらっしゃるかもしれませんが…3年間全く笑っていただいたことがなかったです。」
「そして私が世界で一番美しいと思ってるのがゴッホの”ひまわり”という絵です。これ、今は何言ってんだ?と思われたかもしれないですけど、あとから納得していただけるかと」
「真打になるとき、一度ぐらい名前を変えたいなぁと思って師匠に言ったんです。そうしたら師匠はああいう方ですから60個ぐらい候補をあげて下さったんですね…わかりますか?60個ですよ。もうめんどくさいじゃないですか。それで一番上に”さん花”って書いてあったんですね。これ…花を英語で言うとサンフラワー…つまりひまわり…私の一番好きな…。それでさん花になりました」。
そんなまくらから「棒鱈」。
さん花師匠の「棒鱈」は聞いたことがなかったんだけど、いやもうこれがまためちゃくちゃ面白い。
酔っぱらいのろれつの回らなさが尋常じゃなくてもうそれだけでおかしな人なんだけど、田舎侍の喋り方が…なんだろう、フランス人?みたいな…鼻に抜けた喋り方でもうおかしくておかしくて。
あまりのひどさに(←ほめてます)大笑いしていると、「ほんとにこれを袖で権太楼師匠が見てるんでしょうか…」「でも大丈夫です。今日は自分の会だと思ってるんで」とぽつり。
…わはははは。さすがです。
酔っぱらいと田舎侍の会話も侍の方が悪口言われても「あ…そうですね…(フランスなまりで)」とか言うのでそこがいかにもさん花師匠らしくて笑っちゃう。
さんざん同意しておいて最後けんかになるのはちょっと???とならなくもなかったけど笑、最初から最後までめちゃくちゃ笑える「棒鱈」だった。
真打披露の初日にこれ。すごい心臓だー笑。

楽屋半帖+

9/19(日)、須賀神社社務所で行われた「楽屋半帖+」に行って来た。

・さん助「井戸の茶碗
・さん助「元犬」

日曜日の午前中はなかなかハードルが高い(出かけづらい…)のだが、以前さん助マニア(笑)のお友だちから「さん助さんの”元犬”、めっちゃ面白かった」と聞いていたので、これは聞かねば!と思い、重い足を引きずりつつ(比喩ではなく最近股関節が痛い…)行ってきた。


さん助師匠「井戸の茶碗
え?普通に考えたら「元犬」が先なのでは?と思いつつ…。
さん助師匠の「井戸の茶碗」は初めて!と思ったけど、このブログを検索したら一度聞いたことがあったのだった。
私のような記憶薄い人間にブログや日記はほんとに役に立つのう…しょぼしょぼ。

意外にも(!)ちゃんとした「井戸の茶碗」で、くず屋の清兵衛さんの正直さとお侍さんの正直さの違いがくっきり。

清兵衛さんは正直だけど、くず屋という利の薄い商売で家族を養っていかなければいけないからとても現実的。
一方お侍の二人は武士としての矜持が何よりも大事。
二人のお侍さんの意地の張り合いのために行ったり来たりする清兵衛さんのとほほぶりが楽しかった。

 

さん助師匠「元犬」
「普通は井戸の茶碗をやったらお開き…なんですが、この後続けてやるっていうのもなんか…」とさん助師匠。
え?だから逆にやればよかったのでは?そういう考えはなし?んん?
「でも平気です。そんなことは」。
あ、平気なんですね…ええ。
「せっかく神社でやる会なのでこの噺を」と「元犬」。

満願の日、人間になったシロは裸のまま特に恥ずかしがることもなく立ち上がってみると、お参りにきたかずさやさんを発見。
かずさやさんがご近所の人に会って話をしていると、向こうの方で裸の男が「かずさやさのおじさーん」と呼んでいることに気づく。
「おや、あの人は…裸ですね…」と困惑していると、シロはいつも自分をかわいがってくれてたかずさやさんを見て喜んで近づいてきて「仕事がしたいです!」と叫びながらじゃれつく。
それを見てそっと離れていく近所の人…。

かずさやさんは困惑しつつも「あなたどうして裸…ああ、悪い奴らに身ぐるみはがされたんですね」と言って家に連れて帰る。

家に帰ると女中は旦那様が裸の男を連れてきたことに驚かない。
なぜなら「さっき近所の人が来て、旦那が若い男と抱擁していると聞かされてましたから」。

…ぶわはははは。なんか面白いぞ。

明らかに「変」なシロを見て、「変わった奉公人」を欲しがっていた隠居のところに連れていく。
あとの展開はそのまま、ではあったけど、シロが犬の時も人間に変わってからも特に変化がないのがおかしい。
なんか人間になってからも…何をしでかすか分からないような…はしゃぎすぎて扱いがめんどくさい犬そのもの?みたいな感じ。

この日のさん助師匠はテンション低めではあったけど、これがもっとのりにのってたらますます面白いんだろうな、と思った「元犬」だった。

小んぶの真打昇進を祝う会

8/26(日)、紀尾井ホールで行われた「小んぶの真打昇進を祝う会」に行ってきた。

 
・さん喬「初天神
・小平太「あくび指南」
喬太郎「八月下旬」
~仲入り~
・口上(小平太:司会、小傳次、喬之助、小んぶ、さん喬、喬太郎
・小傳次「いもりの黒焼き」
・喬之助「堪忍袋」
・小んぶ「井戸の茶碗
 
さん喬師匠「初天神
入院していたので八月の寄席をお休みしてしまった、とさん喬師匠。
「寄席を休んだのは噺家になって初めてのことでなんとも落ち着かなかった。楽屋で権太楼が私の悪口を言ってるんじゃないかと気が気じゃなくて」に大笑い。
 
それから自分が真打になった時の話。「みなさまご存じでしょうか。私は真打試験を受けて真打になったんですよ」。
「一緒に試験を受けたのは雲助さんや今松さん…私より少し先輩でした。通達が来た時師匠のところに行って、”私の入門時期はここに書いてある期間より後ですから該当しないんじゃないのでは?”と訴えたら、師匠は間髪入れずに”受けろ”」。
「はい」と従わざるを得なかった。
「今でも思い出します。試験会場は昔の池袋演芸場でそこに小さんや志ん朝、馬生、正蔵が座ってるんです。こんなところで落語をしなきゃいけないなんて。そもそも誰も木戸銭払ってない…」。
しかも初めての試験ということで高座を終えて楽屋を出たら記者がずらり。ぱしゃぱしゃ写真を撮られて「いかがでしたか?」なんて聞かれて。
そんな思いをしてなった真打でしたけど、お披露目の時に口上に師匠方が並んでくださって自分のことを話してくださるのは本当に嬉しかった。
 
そんなまくらから「初天神」。
飴玉、だんご、凧、とたっぷり。
駄々をこねる金坊が子供らしくてかわいい。そして行動がいちいち子供っぽい父親のかわいらしさよ。
久しぶりに聞いた「初天神」、縁日の光景が目に浮かんできて楽しかった。
 
喬太郎師匠「八月下旬」
初めて聴く噺。
夏休みに一人で祖父母のもとへ向かう新幹線に向かう少年。
4人掛けの席の向かいに座るのは見知らぬお姉さん。
次々乗ってはきては降りていく3人の訳ありなお姉さんたちに人生の指南を受ける少年が徐々に擦れていくのが面白い。
駅に着くと父親が待っていて、二人で父親の恩師の元を訪ねる…。
 
夏の終わりにぴったりの噺を聴けて、今年もどこへも出かけたり帰省したりできずに終わった夏を少しだけ取り戻すことができた気分。
すごく面白かった。
 
口上(小平太師匠:司会、小傳次師匠、喬之助師匠、小んぶさん、さん喬師匠、喬太郎師匠)
この一門らしく、仲の良さが伝わってくるリラックスした口上。
おかしかったのは喬之助師匠が話をしながら「あれ?そういえば聞いたことがなかったけど、師匠、なんで小んぶは小んぶになったんでしたっけ?」。
さん喬師匠が「お前そりゃ…適当に決めたに決まってるだろう。今まで話したことなかったけど、なんか現れた時、体がこう大きくてなんか漂うような感じが小んぶって感じがしたんだよ。ってお前、なんだ?!師匠に向かってその口のききかたは!」。
 
それからさん喬師匠の小んぶさん評が「こいつはなんかこう人を食ったところがある」「師匠を師匠とも思わない」「すべてがおおざっぱ」というのにも笑った。
とても楽しい口上で、また一門会に行きたくなったなー。
 
小んぶさん「井戸の茶碗
「今私が高座に上がりましたけど、これ…高座を下りる予定の時間です。みんな…楽しくなっちゃったんでしょうね…」と小んぶさん。
小んぶさんの会はずいぶん通ったけど、落語協会の2階でやってた時と同じような感じでこの大きなホールの高座に上がっていてほんと心臓強いなぁ!と思う。
 
時間も押していたのでまくら短く「井戸の茶碗」。
清兵衛さんを見つけたくて高木が下を通る屑屋に声をかけて顔を改めた時に「きれいな顔をしてるな!」と逆に褒めたり、正直な清兵衛さんが仏像から出たお金を千代田氏の所にもっていった時、千代田は固辞するんだけど「お嬢さんが(お金に)熱い視線を送ってます!」とか…
小んぶさんらしい斜め上を行く井戸の茶碗」で、面白かった~。
 

桃月庵白酒独演会

2021/8/21(土)、北とぴあで行われた「桃月庵白酒独演会」に行ってきた。

・あられ 「堀ノ内」
・白酒 「鰻の幇間
~仲入り~
・こはく 「臆病源兵衛
・白酒 「百川」


あられさん「堀ノ内」
金坊がおっちょこちょいのおとうさんと湯屋に行くとき、何度も通り過ぎて何度も戻ってようやく入れた時に「おとっつぁん…生きづらそうだね」とつぶやいたの、妙におかしかった。


白酒師匠「 鰻の幇間
亡くなった園龍師匠の思い出話。
雲助師匠のお供で浅草のかいば屋という知る人ぞ知る飲み屋に行っていた時期があって園龍師匠もその店の常連だったのでその当時はよく会っていた。
「骨違い」という噺を師匠から教わったんですけど、本当に嫌~な噺なのでさすがにここではやらないです、と。(聞きたかった~!!!!)
園龍師匠は園生師匠の弟子ですけど自分の師匠について「幇間の噺が面白い。特に下品な幇間が合ってる」と言ってたので、それを思い出しながら…と幇間のまくらから「 鰻の幇間」。

丘釣りしようと訪ねた家が稲葉さんと若林さんで笑う。
若林さん宅の女中さんが袂の膨らみから「〇〇のようかん!」と言ってきて慌てて逃げだすんだけど、自分でしみじみ袂を見て「これで〇〇とわかるとは…」と感心するのがおかしい。

鰻屋でうなぎの前に出てきたのがザーサイなのにも笑ったけど、いろんなところに「元中華屋」の片鱗が見られるおかしさ。
さえない鰻屋の女中がいかにも気だるくやる気がないのもおかしかった。

 

白酒師匠「百川」
白酒師匠の百兵衛さんが面白くないはずもなく。
ほんとに見事ななまりっぷりで、これでは聞き間違えるのも無理はないと思わせる。
聞き間違えていちいち気取る八五郎もおかしいんだけど、「ああ、そう言ってたぜ」と気取って同意する友だちもおかしい。

こういう時だから、バカバカしい噺を聞いて、ぐわはははっ!と笑いたいぜという希望を100%かなえてもらえて満足だった。

白酒・甚語楼二人会

8/3(火)、お江戸日本橋亭で行われた「白酒・甚語楼二人会」に行ってきた。

 
・あられ「道灌」
・白酒 「平林 」
・甚語楼「佃祭 」
~仲入り~
・甚語楼 「粗忽の釘
・白酒 「船徳
 

白酒師匠「平林」
オリンピックや警備のため地方から集められた警官、さらに友だちで警察官になった人のこと…白酒師匠らしい毒を交えた話に大笑い。あー楽しい。
「我々噺家が楽屋話で一番好きなのが、誰が誰をしくじったらしいよ、という話です。最近聞いて一番好きだったのが、前座の〇〇くんが席亭をしくじったという話」。
〇〇くんは私が今一番好きな前座さん!
〇〇くんがタップシューズを普段履きにしていてその音のうるささに席亭が怒ったらしい。
「なんでタップシューズを普段履きに?」と尋ねると「あの…安かったので…」。
いったいどこの店に行けばタップシューズを安売りしているんだ?そんな店見たことない!
さらに安かったからといって買ってそれを普段履きにするとは?
階段を上り下りするたびにかちゃかちゃかちゃかちゃいわせていたのかと思うと、もうおかしくておかしくて、と。
…いやぁ、さすがだ。〇〇さん。大好きすぎる。その話を聞いて、めちゃくちゃ彼に会いたくなったわ…。なんの会に行けば高座を聴くことができるだろう?やっぱり一門の会かな?
 
そんなまくらから「平林」。
こんな面白くない噺が白酒師匠にかかるともうずっと笑いっぱなしの噺になる。
定吉のおっちょこちょいぶりが徹底しているのでめちゃくちゃ面白い。
そしてやっぱりテンポ、なのかなぁ。
警官に信号の前で止められて「平林」が吹っ飛んでしまうところで、ああ、だからまくらで警察官の話をしたのかーと気づく。
楽しかった。
 
甚語楼師匠「佃祭 」
船着き場で引き止められるところから。
次郎兵衛さんの人のよさや船宿の夫婦の善良さがにじみ出ている。
次郎兵衛さんが死んだと思い込んだ人たちのドタバタや、胸を打つ与太郎のお悔やみの言葉…と、しつこくないけど要所要所できゅっと心をつかまれる。
うーん…。やっぱり甚語楼師匠の落語はかっこいいな…。
素敵だった。
 
甚語楼師匠「粗忽の釘
昔の洗濯機は二層式で洗濯が終わると今度は脱水の方に入れなおしてやらないといけなかったりしましたけど、今のはほんとに最初から最後まで自動でやってくれるようになりましたね」と 甚語楼師匠。
 
我が家の洗濯機も洗濯物を入れてスイッチを押せば自動で洗剤を入れてくれてすすぎの時には柔軟剤を入れてくれて脱水まで勝手にやってくれる。
でも自動で洗剤を入れるといってもそこに洗剤を入れるのは人間がやるわけで…私この間気づいちゃったんです。この洗剤の目盛りがいつ見ても1/3のところにあるということに。
そして私はそこに一度も洗剤を入れてないことに。
それでかみさんに聞いたんですね。「お前、ここに洗剤入れてる?」って。そうしたらかみさんも「入れたことないよ」って。
…要するに目盛りが壊れていて常に1/3を指していたからお互いに気づかずに相手が補充してくれてると思って入れてなかった。
ということは…、うちでは2年ぐらい、洗濯のつもりでずっとすすぎをしていたんですっ!!
 
…ぶわははははは。
もうおかしくておかしくて今も思い出すと笑ってしまう。本当に甚語楼師匠の話って面白い。大好き。
そんなまくらから「粗忽の釘」。
洗濯のつもりでずっと水ですすいでた甚語楼師匠とおっちょこちょいの亭主が一体化して二倍おかしい。
ものすごいずっと間違え続けているんだけど明るくて堂々としてるから説得力があるのが面白い。楽しかった~。
 
白酒師匠「船徳
テンポがよくて気持ちいい。
しばらくぶりに落語を聞いて白酒師匠の落語が今の自分にマッチしていると感じたのはこのテンポの良さが心地いいからなのかもしれない。
音楽のように落語を奏でてる…だれるところはスピードを速めて、笑いどころはたっぷりと。でもそれが暑苦しくない程のよさ。
 
白酒師匠の徳さんはわがまま言っても何してもかわいい。ぷりぷり怒るのもかわいい。
そして動きがきびきびしていて気持ちいい。
「どうして船頭なんですか」と聞かれた徳さんが「季節を肌で感じたいから」と答えたの、面白かった~。
 

「芸歴20周年を祝う 柳家さん助落語会」みたかのば/「田辺凌鶴の会 あれも凌鶴、これも凌鶴」道楽亭

鈴本の雲助一門会の感想をシレっと書いたけど、考えてみたら1年弱ぶりの更新で、あまりにも愛想がなさすぎやろ。

落語に行かなくなり本も読まなくなり代わりに何をしてたかといえば韓国ドラマにどっぷりハマりドラマを見まくりオーディション番組を見まくり、それらの関連動画を見まくっていた。
せっかくだからドラマに関する感想をここに書くかー?と思いつつ、そもそも本の感想を書くブログだったのが落語にはまって落語の感想も書くようになりさらにここにドラマの感想も書き出したら誰も読んでくれなくなっちゃうだろうよ。
 
雲助一門会の前に行った落語会&講談の会。
 
7/10(土)
「芸歴20周年を祝う 柳家さん助落語会」みたかのば
~昼の部~
・さん助「富士詣り」
・燕弥「粗忽長屋
・さん助「煙草好き」
 
「芸歴20周年を祝う 柳家さん助落語会」
~夜の部~
・さん助「めがね泥」
・おさん「二階ぞめき」
・さん助「佃祭」
 
ほんとに久しぶりのさん助師匠。
20周年を祝う会の演目が「富士詣り」、そして「煙草好き」って…。流石です。
昼夜両方見たけど、一番笑ったのは「めがね泥」。
あと「佃祭」の前に「マイフェバリット小噺」と言ってやった「佃島」も好きな噺。
「佃祭」はさん助師匠らしく、普段聞かないようなセリフや前に聞いてた時とは違う所があって、相変わらずひねくれてるなー(←褒めてます)と思いつつ、やっぱり好きだなーと思ったのだった。

お江戸日本橋亭での燕弥師匠との会、回数を減らしたみたいでとても残念。
って前回も前々回も行ってないお前が言うな、と言われそうだが。


7/17(土)
「田辺凌鶴の会 あれも凌鶴、これも凌鶴」道楽亭
・凌鶴「満州移民を拒否した村長 佐々木忠綱」
・凌天「佐野鹿十郎」
・凌鶴「玉川上水の由来」
仲入り
・凌天「加藤清正誉れの使者」
・凌鶴「有馬頼寧
 
凌鶴先生の会も久しぶり。
有馬頼寧」以外は初めて聴く話だった。
特にぐっときたのが 「満州移民を拒否した村長 佐々木忠綱」。
一介の村長に何ができるのかといえばできることはわずかだと思う
それでも自分で調べ自分の頭で考えてできる限りのことをした。そのことに励まされる。
無力な自分にもできることはあるんじゃないかと思わせてくれる。
 
今のこの辛い状況の中でこの物語を聞けたことに感謝。
凌鶴先生の新作はやっぱり素敵だ。
 

五街道雲助一門会

7/31(土)、鈴本演芸場で行われた「五街道雲助一門会」に行ってきた。

 
・口上(龍玉:司会、白酒、雲助、馬石)
・白酒「臆病源兵衛
・雲助「汲みたて」
~仲入り~
・龍玉「駒長」
・馬石「船徳
 
口上(龍玉師匠:司会、白酒師匠、雲助師匠、馬石師匠)
今回の会は、快気祝いの会、ということらしい。
感染したと聞いた時のそれぞれの反応や、裏話などを面白おかしく…。
笑えない出来事をこうやって笑いに変えてしまうのが噺家さんらしくて好きだなぁ。
「それでは最後に全快を祝して三本締めを…それでは発声は我らが師匠雲助より…」と龍玉師匠が言った時に、雲助師匠が全くの無表情でふわ~んとしていて、ん?!と思ったら、単に聞いてなかっただけだったの、めっちゃおかしかった。
 
白酒師匠「臆病源兵衛
先ほどの口上を「楽屋でするような話をなにも毛氈敷いた上ですることないのに」と言いながら「でも無意味に思われてもこういう形があるとまだいいんです」。
「一門で座談会っていうのを何回かやったことがあるんですけど、ほんとにぐだぐだになりすぎて、そのうちお客さんから”もうやめていいのよ”、”お願いだからもう終わりにして”という悲痛な叫びが聞こえてきた、というのに大笑い。
「なんといっても金原亭の教えは、なんでもいいんだよ、ですから」「それを言うと、まだ馬石などはその教えがわかってない」。
 
それから今日はトリが馬石師匠だからということで「こういうのは結局最後が良ければいいんです。終わりよければすべて良し。トリが良くないと、”あらなんか尻すぼみだったわね”ってことになっちゃいますから。寄席のお客様というのは往々にして会が終わった後に出口に向かいなら”なんか最後がねぇ?””パッとしなかったな”なんて平気で言いますから。聞こえてますからね!!そういうのはやめていただきたい。まぁそんなのも馬石がびしーっとトリネタで唸らせればいいわけですから」。
 
…トリの馬石師匠にプレッシャーをかけるかける笑。
久しぶりに聞く白酒師匠の毒吐きが気持ちいい…。
ああ、そうだ。これだよ、これ。これが楽しいんだ、落語は。
やっぱり生の楽しさ。テレビやラジオでは聞けない話。生の声。それが楽しかったんだ。
 
そんなまくらから「臆病源兵衛」。
源兵衛が兄貴の家に入ってあっちこっち見まわして「ぎゃー」とか「きゃー」とか「わーー」とか言うだけでおかしい。
そして酒を飲みながら怖がるしぐさが一つの「型」みたいになっていて、それがノリのいい音楽を聴いてるようでめちゃくちゃ気持ちいい。左見て右見てまた左見て右見て酒をぐいっと飲んでまた左。
自分が幽霊だと思い込んだはっつぁんの「あーーこりゃ地獄だなーやだなぁーー」とか「あれ?もしかして地獄じゃねぇの?ありがてぇ!蓮の葉っぱがある!」という呑気ぶりもほんとに落語らしくて楽しい。
久しぶりの白酒師匠、めちゃくちゃ笑って楽しかった。
 
雲助師匠「汲みたて」
お稽古ごとのまくらから「汲みたて」。
女の師匠にどうにかして近づこうとする男たちのワイワイガヤガヤがバカバカしくて楽しい。
そして建具屋の半ちゃんがとてもいい男に見えるのは雲助師匠ならでは。
歌ってみせたりするのもいちいちかっこよくて、これじゃ師匠が惚れちゃうのも無理はないな、みたいな。
でもそんな半ちゃんのことを男たちが「片栗粉の袋」と称してるのもおかしい。
そして邪魔をしようという鳴り物隊の男たちのバカバカしさ。
雲助師匠、こういう噺が好きだよねぇ…と思うと微笑ましくてしょうがなかった。
 
龍玉師匠「駒長」
美人局のまくらから「駒長」。
さん助師匠の「駒長」は龍玉師匠から教わったと聞いたことがあるんだけど、さん助師匠のは誰も彼もがなんかバカバカしかったのに対して、龍玉師匠のは誰も彼もが悪人っぽくてそれがなんとも面白い。
丈七にさえ裏がありそうに見えるもんなぁ…。最高だわ。
 
馬石師匠「船徳
最初の口上は本当に緊張しました、と馬石師匠。
高座も緊張しないわけじゃないんですけど、ああいう堅苦しいやつは久しぶりで…私と龍玉はあれで全ての力を使い果たしました…。
トリということでやりますけどね…夏ですからね夏の噺を…ってここで拍手ですか、拍手してますね、ああ、夏ならあれかな、とかね…若旦那のね…ああ…。
ええ、そうです。そういう噺を今からさせていただきます。
 
…ぶわははは。こんな入り方もあり?
「夏の噺」「若旦那」で客席がみんな「きっとあれだな」「わーい、あれだ」と喜んで笑って拍手して、師匠も「からしますね」って。
そして「勘当になった若旦那が船宿に…」で大拍手。
こういうの、ほんとに楽しい。
 
時間が押し気味だったのか、テンポ早めの「船徳」。
もうとにかく徳さんがとってもチャーミング。
「徳と呼び捨てにして」とか「じゃ披露目をやろう」とか、憎めない育ちのいい若旦那がそこにいて。
船を出す前のおかみさんとのやりとりもおかみさんが女らしくて若旦那がふにゃふにゃしてるからなんともいえず可愛くて笑ってしまう。
船を漕ぎだしてからのヘンテコなポーズ、見栄を切ったり、文句を言う客の方をきっ!とにらんだり。この、きっ!!もめちゃくちゃ可愛いのが馬石師匠独自な感じで、客も「あ、にらまれちゃった」って文句を引っ込めてみたり。
石垣にぶち当たってしまうさまや船が揺れるさまも、動きが激しいので分かりやすく面白い。
 
あーーーやっぱりこういう気が滅入るご時世には、こんな風に明るくてがははは!と笑える噺は最高だなー。
楽しかった~。
3人の弟子が三者三様でそれぞれに違っていてでもそれぞれに良くて…。
ほんとに最高だな、雲助一門。
楽しかった!

ぼくは落ち着きがない

 

 

ぼくは落ち着きがない

ぼくは落ち着きがない

  • 作者:長嶋 有
  • 発売日: 2008/06/20
  • メディア: 単行本
 

 ★★★★

青春小説の金字塔、島田雅彦『僕は模造人間』(86年)、山田詠美『ぼくは勉強ができない』(93年)。偉大なる二作に(勝手に)つづく、00年代の『ぼくは~』シリーズとも言うべき最新作!「本が好き!」連載中に大江賞を受賞したことで、ストーリーまでが(過激に)変化。だから(僕だけでなく)登場人物までがドキドキしている(つまり落ち着きがない)、かつてみたことのない(面白)不可思議学園小説の誕生。 

熱心ではない文化部独特の緩めの空気がリアルに伝わってくる。

「部室」という場所があるからこそ集まるメンバー。特別親しいわけでも会話が弾むわけでもないけれど、学校の教室で居心地の悪さを感じる人たちの避難所。

主人公の望美は、誰もが何かの役を演じてるように感じ、定型文的な会話に感じる安心感と違和感を感じている。

特別輝いたり涙があったりするわけじゃないけれど後から考えればあれが青春だったと思うのだろう。

「本を人に勧めるのは何か違う思う」とか「本は役に立つ!」とか「この世界では時々正しい方じゃなく格好いい方が勝つ」とかぐっとくる一文があった。

家族じまい

 

家族じまい (集英社文芸単行本)

家族じまい (集英社文芸単行本)

 

 ★★★★★

札幌近郊の美容院のパートとして働く智代は、子どもたちが独立したいま、夫とふたりで暮らしている。夫にも自分にも老いを感じ始めたある日、妹から母が認知症になったという電話が。横暴な父から離れるため、実家とは長らく距離を置いてきたが、母の様子を見に行くことになり――。別れの手前にある、かすかな光を描く長編小説。 

 痴呆で子どもに返ってしまった母親、その介護に苦しみながら助けを求めることのできない父親、親にされた仕打ちを忘れることが出来ず距離を置く長女、苦しい生活で張りつめた状態から解き放たれたことでむしろ見たくないものが見えて酒に逃げ込む次女。

しんどいけれど目をそらすことが出来ず一気読み。

物語に救いも答えもなく、自分はどんな老後をむかえどんな風に死んでいくのだろうと考える。
唯一分かるのは最後は一人なのだということと家族をお仕舞いにする選択もあるということだった。

持続可能な魂の利用

 

持続可能な魂の利用 (単行本)

持続可能な魂の利用 (単行本)

  • 作者:松田 青子
  • 発売日: 2020/05/19
  • メディア: 単行本
 

 ★★★★

「どうして親は私に殺しのテクニックを叩き込んでくれなかったのだろう」会社に追いつめられ、無職になった30代の敬子。男社会の闇を味わうも、心は裏腹に男が演出する女性アイドルにはまっていく。新米ママ、同性愛者、会社員、多くの人が魂をすり減らす中、敬子は思いがけずこの国の“地獄”を変える“賭け”に挑むことに―。「おじさん」から自由になる世界へ。 

読み始めた時はSFなのかと思いきや、語られるのはまさに今私たちが生きている世界。
「おじさん」が作る「おじさん」だけが、自分たちだけが得をする世界。
「おじさん」というのは中年男性だけではない。若い男もいれば女だって「おじさん」になる。
そして少女の未熟さやかわいらしさを消費する「おじさん」たち。そんな世界に少女や女性たちが…。

政治家が実は日本をたたもうとしていた、というのはリアルすぎて鳥肌。あ、そうだったのか、と思ってしまった。

これは日本版の「キム・ジヨン」だという感想も目にしたが、確かに…。
自分が思い出したくない過去を思い出さずにいられないような作品だった。

さん助ドッポ2020

 10/17(土)、深川江戸資料館小ホールで行われた「さん助ドッポ2020」に行ってきた。
2か月ぶりの落語会。
在宅勤務になって通勤がなくなったことと、あつ森(「あつまれどうぶつの森」というゲーム)にはまって森にこもりっきりになって、すっかり出不精になってしまった。
あんなに落語会や寄席に通っていたのが嘘のように家にこもってゲームして、radikoで深夜ラジオ聞いたりyoutubeでゲーム実況見たりの日々。

こちらの会はコロナで延期になっていたのがようやく開催。さすがにこれに行かないわけにはいかないでしょう。

 

・さん助「十徳」
・おさん「猫と金魚」
・さん助「安兵衛狐」
~仲入り~
・さん助「ねずみ穴」

 

さん助師匠「十徳」
「下足番のさん助です」という挨拶に笑う。
確かにさん助師匠が扉の所にいて開けて出迎えてくれていた。
扉を開けたままにできるストッパーがあったので、これを挟めばいいのに…と思いつつ私はそのまま入ってしまったんだけど、親切なお客さんがそれを設置してくださったらしい。
「私一人ではできませんでした…下足番も満足にできてないですね…」

江戸っ子は宵越しの銭を持たないというまくらから「十徳」。
宵越しの銭を持たないのとこの噺って結びつかなくない?あれ?ほんとは違う噺をしようと思っていて変えたとか?違うかな。

ご隠居がいかにも人が良くてざっくばらんでいい感じ。
「なんで十徳っていうんです?」と聞かれて「知らない」と答えると「だめですよ。ご隠居がそんなんじゃ。あたしとは出来が違うんですから。何か意味があるでしょう?しぼりだして!」と懇願するのがおかしい。

仕方なく隠居が「こじつけだよ」と言って話すのだけれど、全く理解せずに「それでどういう意味なんです?」と繰り返すのも、指を折って「そういうことか!」と納得した様子を見せても、ほんとは分かっていないのでは?という風にも見えるのがさん助師匠らしい。

最初から最後までばかばかしくて楽しかった。

 

おさん師匠「猫と金魚」
さん助師匠は自分の2年先輩で前座を2年ほど一緒にやってとてもお世話になってます、とおさん師匠。

お世話になってますって言っても…まぁあの…いろいろごちそうになりました、と。
で、いろんなお店に食べに行ったんだけど、二人とも全然喋らなくてただ黙々と食べるのであっという間に食べ終わってしまう。
食事の後は喫茶店に入ってコーヒー。喫茶店っていうのはゆっくり飲み物を飲みながら話を楽しむ場所だと思うんですけど、ここでもお互い何もしゃべらず。そしてさん助師匠はコーヒーもせっかちにすぐに飲んでしまうので、そのペースに合わせないといけなくて猫舌の自分は結構きつかった。

そんなまくらから「猫と金魚」。
番頭さんのまぬけぶりがわざとらしくなくてなんともいえずおかしい。
「猫にとって屋根なんてもんは庭みたいなもんだ」と言う主人に「お言葉を返すようですが、屋根は猫にとっても屋根です」と大真面目に返すのも、笑ってしまう。
旦那のたとえ話にいちいち引っかかって言い返すのがおかしいんだけど、その中で「たい焼きにはあんこ」と言われて「クリームもあります」はツボにはまって笑った。

テンポがよくてバカバカしくて楽しかった。

 

さん助師匠「安兵衛狐」
源兵衛がひねくれている自分のことを「いやな性分だな」と言うのが独特。
墓を見ながら酒は案外陽気で楽しそう。
源兵衛に幽霊のおかみさんができたことを知ってうらやましがる安兵衛は確かに「ぐず安」で愚痴っぽい感じ。
安兵衛がお墓に行って狐を捕まえた男に声をかけるあたりからなんか少しテンポが悪くなった感じでなんとなく楽しさが薄まってきたのはなぜだろう。
長屋の連中が怪しがって安兵衛宅を訪ね「お狐様じゃないですか」と言うと、あっという間に狐に戻って出て行ってしまう。
それを聞かされた安兵衛が出会った場所を訪ねて行って再会するんだけど「もどってきてほしい」と言うと首を横に振る狐。安兵衛が諦めて「短い間だったけど楽しい時間だった。ありがとう」と言うのに、ちょっとうるっときてしまった。

 

さん助師匠「ねずみ穴」

店が焼けて商売の元を貸してもらおうと竹次郎が家を訪ねて行った時の兄がもういかにもそういうことを言いそうっていうか、ああ、やっぱりこの兄はそういう人物だったんだなと感じさせる。
さん助師匠、意外とこういう意地の悪い人物が似合う。

もともとあんまり好きな噺じゃないせいもあるけど、全体的にもっさりした印象。
できれば違う噺が聴きたかったな。

結婚の奴

 

結婚の奴

結婚の奴

  • 作者:能町 みね子
  • 発売日: 2019/12/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 ★★

人生を変えるような恋愛だの結婚だのは無理だが、ひとりは嫌だ。ゲイの夫(仮)と、恋愛でも友情でもない生活をつくるまでを綴った能町みね子の最新作。 

 結婚というのは「生活」なので年を経るほどに恋愛要素が薄まっていくことは間違いないが、相手を好きだという気持ちがなければ結婚なんか続けて行けるのだろうかと思ってしまう私は恋愛至上主義におかされているのかもしれない。
能町さんはとてつもなく利己的にも感じられるが正直なだけなのかもしれない。

こういう風に自分の人生を設計していく生き方もあるんだなと思いながら読んだけど、正直ピンとこず。
頭かたくなってるかな、自分。

御社のチャラ男

 

 

御社のチャラ男

御社のチャラ男

  • 作者:絲山 秋子
  • 発売日: 2020/01/23
  • メディア: 単行本
 

 ★★★★★

社内でひそかにチャラ男と呼ばれる三芳部長。彼のまわりの人びとが彼を語ることで見えてくる、この世界と私たちの「現実」。すべての働くひとに贈る、新世紀最高“会社員”小説。 

タイトルが秀逸。
最初、この男は「チャラ男」ではないだろうと思いながら読んでいた。もっと悪質じゃないか、と。でも読み進めるうちにこの人を「チャラ男」と呼ぶのは、今の日本の社会の生ぬるさであり優しさであり生きる術でもあるのかもしれないと思えてきた。

会社で働く空気を巧みに伝えているし、人は一方から見ただけでは分からないということや、今の日本が「ヤバい方向」に進んでいることや、この後起こるであろう「とんでもないこと」を予言もしているすごい小説。
だけど思わず吹き出してしまうようなユーモアにも満ちている。読みながら何度も「うまいなぁ」と思った。

ここに登場する人たちは、見たくないものに焦点を合わせないようにして自分の陣地を守ろうとしながらも、誰かのことを大事に思ったり心配したりもしている。絶望と希望、両方を感じた。めちゃくちゃ面白かった。

あなたならどうする

 

あなたならどうする (文春文庫)

あなたならどうする (文春文庫)

 

 ★★★★

病院で出会った男と女の行き場のない愛―「時の過ぎゆくままに」。カルト宗教の男を愛してしまった女の悲劇―「あなたならどうする」。冷酷非情に女を乗り換える男の理屈―「うそ」。他に「東京砂漠」「ジョニィへの伝言」など昭和歌謡曲の詞にインスパイアされ生れた9つの短篇。愛も裏切りも全てがここにある。 

 昭和歌謡のタイトルがついた短編集。冒頭に歌詞が載せられているんだけど、知ってる曲は懐かしく、知らない曲は「え?ほんとにこんな歌詞だったの?(凄い歌詞だけど大丈夫?)」とドキッとする。

人生の岐路に立たされた時、逃げ込むようにして恋愛や性愛に走る男女。
次から次へと隙のある女性の生活に入り込みぽいっと捨てる男。

恋愛が生きていく上の単なるスパイスの人もいれば、「運命の出会い」と思い全てを捨てて飛び込んでしまう人もいる。愚かよのう…と思いながらも、自分にも思い当たる節がないわけでもなく、ちょっと胸がちくっとする。