りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

梶原いろは亭上中里寄席 週末昼席

3.21(土)、梶原いろは亭で行われた「上中里寄席 週末昼席 」に行ってきた。

 

・どっと鯉「真田小僧
辰之助「鼓ヶ滝」
・扇「松竹梅」
・文ぶん「東北の宿」
~仲入り~
・吉緑「だくだく」
・こなぎ「奴の小万」
・だるま食堂 コント
・圓馬「お見立て」

 

辰之助さん「鼓ヶ滝」
しばらく見ない間に面白くなってた。ちょっとくさくなってたけど。

 

文ぶん師匠「東北の宿」
初めて見る師匠!と思ったけど昔一度だけ末廣亭で見たことがあったらしい。
会で出会った失礼な主催者や学校寄席でもらった生徒の作文などのまくらから「東北の宿」。
長めのまくらからのこの噺という流れが絶妙でなんかめちゃくちゃ面白かった。
文生師匠のお弟子さんなのか。ほー。

 

こなぎさん「奴の小万」
大阪と神戸の行き来が禁止されたりしてますけど、大阪からいらした方いらっしゃいますか?
誰もいない…ならば私の怪しい関西弁に突っ込む方はいませんね。と「奴の小万」。
初めて聴く話。

 

大阪の小間物屋の娘、おはん。
ある日女中のお伝と二人で繁華街を歩いていると、ならず者がおはんのかんざしを抜き取って逃げていく。これをお伝が追いかけて行って男の腕をねじ上げてかんざしを取り返してくれる。
これを見たおはんがいたく感動してお伝に自分にも柔術の稽古をつけてくれ、と頼む。
最初は固辞していたお伝だがそこまで言うのならと内緒で稽古をつけてくれる。

5年たったある日、おせい(おかみさん)、おはん、お伝の3人で出かけると、ならず者が因縁を付けようとぶつかってくる。
おはんはさっと体をかわし、またもう一人が襲い掛かって来ようとするのを見事な腕前で投げ飛ばす。
これを見たおかみさんは帰ってからおはんとお伝を叱りつけ、また勝手に柔術を仕込んだお伝に暇を出す。
外出禁止になったおはんはすっかり生気を失ってしまう。

家に閉じ込め続けるのも可哀そうだと、おかみさんがおはんに供を二人付けて夜桜見物に行かせてやるのだが、そこで前に因縁をつけてきたならず者に会ってしまう。
おはんが何人も投げ飛ばすのだが多勢に無勢、いよいよ連れ去られそうになった時、巨体の女が現れ加勢してくれる。これが三好屋のお禄。またそこに三好屋の親分が現れ、ならず者たちに金を渡してやるとみなぺこぺこ頭を下げて去っていく。

おはんはこの親分のもとを後日訪ね、自分も仲間に入れてくれと頼むが、親分は堅気の娘にそんなことはさせられないとにべもない。お禄に「お嬢さんを家までお送りしろ。また道中、そんな了見を起こしちゃいけねぇと説得しろ」と言う。
お禄は「わかりました」というものの、おはんを送る道すがら「一度であきらめちゃいけない」とおはんのことを焚きつける。
ついにおはんの母親もこれを認め、母娘で親分を訪ねてお願いすると、親分も「親御さんが承知なら」と引き受ける。

 

…この間の講談協会の寄席でも後半部分をちらっとだけ見たこなぎさん。
すごく面白かった。

 

だるま食堂 コント
いろは亭のお客様にはおなじみのようで、すごい盛り上がり。
普段のコール&レスポンスはこのご時世なので封印して、手真似だけだったんだけど、それも大盛り上がりだった。
歌がいいよねぇ…。大好き。

 

圓馬師匠「お見立て」
聖火リレーの話をされたんだけど、あのトーチがいくらするかご存じですか?
と言われた値段がなんとも微妙~と思っていると師匠が絶妙なタイミングで「中途半端でしょう~」と言うのでツボにはまって大笑い。

そんなまくらから「お見立て」。
杢兵衛と喜瀬川花魁の間を行ったり来たりする喜助がいい味出してて笑ってしまう。
花魁から「患ったって言っておくれ」「それじゃ死んじゃったってお言い」と無理を言われて、最初は嫌がるんだけど喜瀬川に「こういえばいいよ」と言われると、「なるほどねぇ…」と思わず納得してしまう人の好さがおかしい。

この日のお客さんにぴったりマッチして、笑いがどんどん大きくなっていくの、気持ちいい~。
楽しかった!

鈴本演芸場3月中席昼の部

3/20(金)、鈴本演芸場3月中席昼の部に行ってきた。

 

・左ん坊「子ほめ」
・さん光「ん廻し」
・ダーク広和 マジック
・半蔵「代書屋」
・権之助「疝気の虫」
・にゃん子・金魚 漫才
・琴調「木村長門守 堪忍袋」
・柳朝「蜘蛛駕籠
・のだゆき 音楽
・歌武蔵
~仲入り~
・二楽 紙切り
・小ゑん「ミステリーな午後」
・小菊 粋曲
・甚五郎「小言幸兵衛」

 

さん光さん「ん廻し」
地元の会に呼んでいただいてそれが昨年に引き続きだったので少し気を良くしていたら「落語は短くていいんで玉すだれをたっぷりお願いします」と言われた。
玉すだれは余芸なんだけどなぁ…と思いつつ仰せの通りたっぷりやって喜ばれた。
次の日鬱憤を晴らすかのように自分の会で3席たっぷり。すると前の日にも来てた方が「いやぁ良かったですねぇ。昨日は落語が短めでしたけど今日はたっぷりで…素晴らしかった。素晴らしかったですけどさん光さんは玉すだれが凄いので次回はぜひ」。
…やっぱり玉すだれかーい!

…ぶわはははは。おかしい!
そんなまくらから「ん廻し」。最初にかくし芸のくだりがあって、それもなんか妙におかしい。
「ん廻し」でも同じセリフを二回言っちゃって「それさっきもやったよ」「あ、間違えた」なんていうのもおかしい。
久しぶりに見たさん光さん、楽しかった。

 

権之助師匠「疝気の虫」
最初に医者と疝気の虫が会話するところでやたらと虫が「痛い!もっとゆるめて!」って言うんだけど、そのセリフが最後の方で効いていて良かった。
こういう噺を寄席でさらっとされるとぐっときちゃうんだなー。よかった。

 

小ゑん師匠「ミステリーな午後」
誰もが知ってる鈴木課長のローテーション。「しゃけべん、のりべん、コロッケべん」。今思い出しても笑ってしまう。
寿司政の寿司桶に小僧寿しを詰め替える時のネタの言い立て(笑)もおかしい。
笑った笑った。

 

甚五郎師匠「小言幸兵衛」
幸兵衛さんがもうめちゃくちゃエキセントリックなので、数々の小言も嫌味な感じじゃなくて笑ってしまう。
最初にやってきた口は悪いけど気のいい男が、おかみさんのことを言われてブチ切れて啖呵を切りながら泣いちゃうのも可愛い。

芝居仕立てのところで終わらずに、その次にやってきた与太者みたいな男に幸兵衛が「お前みたいのが来たら小言の種が尽きなくていいや」と入居を受け入れるところで終わったのもよかったな。

さいはての家

 

さいはての家 (集英社文芸単行本)

さいはての家 (集英社文芸単行本)

 

 ★★★★

家族を捨てて駆け落ちした不倫カップル(「はねつき」)。逃亡中のヒットマンと、事情を知らない元同級生(「ゆすらうめ」)。新興宗教の元教祖だった老婦人(「ひかり」)。親の決めた結婚から逃げてきた女とその妹(「ままごと」)。子育てに戸惑い、仕事を言い訳に家から逃げた男(「かざあな」)。行き詰まった人々が、ひととき住み着く「家」を巡る連作短編集。 

 田舎の庭付き一戸建ての古い貸家。家がトラブルを呼ぶのか訳ありの人がこの家に吸い寄せられるのか。

殺したネズミがゴミ箱の中でたてる音、なんとはなしに付き合っていた恋人に感じる違和感と恐怖。
最終話で「比較的心安く付き合えそう」と思っていた会社の同僚から漏れ出てきた何か。うぎゃぁーーと声を上げたくなるようなおぞましさをちらりと見せながらもどこかハートウォーミングなところもある。

5話のうちどれが好きだったかなと見直すとどれも嫌いだけどどれも好きという不思議。
なんか面白い作家さんだなぁ。他の作品も読んでみよう。

講談協会夜席

3/19(金)、日本橋亭で行われた講談協会夜席に行ってきた。
 

・琴鶴「村越茂助 誉れの使者」
・琴調「大岡政談 五貫裁き
~仲入り ~
・春陽「天保水滸伝 潮来の遊び 」
・凌鶴「浜野矩随 」

 
琴鶴先生「村越茂助 誉れの使者」
初めて聴く話。
秀吉に鎌倉の八幡宮に一万石を寄進するように言われた家康。そんな大金は用意できないと十分の一の一千石だけ寄進したのだが、それを聞いて怒った秀吉が大阪に申し開きに来いと言う。
家康は家臣を集めて、誰か大阪に申し開きに行ってくれる者はおらぬかと聞くのだが誰も行きたがらず重役連中もなんやかんやと言い訳をして行こうとしない。
そんな中「私に行かせてください」と願い出たのが村越茂助。粗忽ものとして評判の 茂助にそんな大役が果たせるわけがないと誰もが思ったのだが、家康は茂助のような者が行ったほうが良いかもしれないと考え、彼に使者を申し付ける。
家康が茂助に口上を教えようとすると、自分は粗忽なので今聞いても忘れてしまう。当日の朝、出立する前に教えてくれと言って引き下がる。
大阪出立の当日、 茂助は口上のことをすっかり忘れ、何も聞かぬまま出かけてしまう。
秀吉の前に行き「なぜ一千石しか寄進しなかったかその理由を申せ」と言われた茂助は…。
 
話自体も面白いし、 琴鶴先生のメリハリのある語りがとても楽しくて夢中になって聞いた。
粗忽だけど肝が据わっている茂助がチャーミングに描かれていて、面白かった。
 
琴調先生「大岡政談 五貫裁き
これは落語でも講談でも聞いたことがある。
講談にも八五郎と大家さんが出てくるんだなぁ…としみじみしてしまった。
こういうお裁きの真の狙いが分かるのは、八五郎じゃなくて大家さんなんだな。だから大家さんは味方につけておかないといけない。
 
  
春陽先生「天保水滸伝 潮来の遊び 」
初めて聴く話だったんだけど、大旦那が固すぎる若旦那を心配して無理やり吉原へ行かせる…わわっ、これは講談版「明烏」! 
落語と違うのは若旦那は大旦那の代わりに寄合に行けと大旦那に言われ、また寄合の後に若旦那連中で吉原に遊びに行くだろうからそれに付き合ってこい、と真正面から言われる。
行きたくないと言う若旦那に大旦那は「行かなかったら勘当だ!」というので、若旦那は渋々寄合へ。
そして遊び人たちが吉原に行く相談をしていると自分も行きます…と自ら進み出る。
4人(いずれもみせの若旦那連中)で店に行き、若旦那一人がもてて翌朝はすっかりめろめろになっている。
ユーモアたっぷりで面白かった!笑った笑った。
 
凌鶴先生「浜野矩随」
講談でも「浜野矩随 」あるんだ!講談で聴くのは初めて。
先代の 矩随 が大酒飲みでそれをおかみさんにとがめられるところから。
また、息子松太郎(だったか)も修行の身の上なのだが下手くそで物にならないのをおかみさんが心配して「あなたがもっと(息子に)厳しく指導してくださらないから」と言うと、父親は「あいつも名人になる素質はある」と言う。ただまだ機が熟していないのだ、と。
これから自分は酒を辞めて仕事に励みお金も残し息子にもみっちり指導するから…と言っていたのだが、父親は翌年肺炎で死んでしまう。
息子は二代目 矩随となるが、父親はお金も残すことができず息子に指導もしきれないまま死んでしまったため、父親を贔屓にしていた店がどんどん離れて行ってしまう。
そんな中 矩随の作品を黙って買ってくれているのが若狭屋。
 矩随が 毎回下手くそな作品を「今回はうまくできたのでは」と思いながら持って行き、若狭屋の主人がそれを手に取って彼を傷つけないように気を付けながら「これは…〇〇かな?」と言うと、そうではなかったりそうだったり…のやりとりが気の弱い 矩随 と優しい若狭屋の主の人物が浮かび上がってきて好きだ。
しかしそれほどまでに優しい若狭屋の主もついに 矩随 を見限る発言をしてしまう。
傷心で帰った 矩随 は叔母さんのところに行ってお金を借りて上方へ修行に行くと言うのだが、母親は 矩随 の嘘を見抜き、形見に観音像を彫ってくれ、という…。
 
淡々とした静かな語りが凌鶴先生らしくて好きだった。
久しぶりに行った講談の寄席、結構お客さんが入っていたし、バラエティに富んでいて楽しかった。
  

如何様 (イカサマ)

 

如何様

如何様

 

 ★★★★

敗戦後に復員した画家は出征前と同じ人物なのか。似ても似つかぬ姿で帰ってきた男は、時をおかずして失踪してしまう。兵役中に嫁いだ妻、調査の依頼主、画廊主、軍部の関係者たち──何人もの証言からあぶり出される真偽のねじれ。「本物」とは何かを問う、いま最も注目の作家による快作。 

「如何様」
復員した男は本人なのかなりすましなのか。ミステリーのような設定にワクワクして読み進めていったけれど、明確な答えがあるわけではなく、むしろ「本物と偽物の境界はなんなのだ?」と疑問を突きつけられる。
分かったようなわからないような…なのだが、画家の妻・タエがふわふわと魅力的でなんとなく楽しい気持ちで読み終わる。

 

「ラピード・レチェ」
駅伝を外国に教えに行く女性コーチとカフェの店主とのやり取り。心温まる部分と冷っとする部分があって不思議な読後感だった。

怪物 (ブッツァーティ短篇集 3)

 

怪物 (ブッツァーティ短篇集 3)

怪物 (ブッツァーティ短篇集 3)

 

 ★★★★★

「なんてこった!おれたちは入っちまった!…」謎のメッセージを残し、地球の周りを回りつづける人工衛星の乗組員が見たものとは?…人類に癒しがたい懊悩をもたらした驚愕の発見を語る「一九五八年三月二十四日」、古代エジプト遺跡の発掘現場で起きた奇跡と災厄を描く「ホルム・エル=ハガルを訪れた王」、屋根裏部屋でこの世のものとは思われない、見るもおぞましい生き物に遭遇した家政婦兼家庭教師の娘が底知れぬ不安と疑念にからめとられてゆく「怪物」など、全18篇を収録。知られざるエッフェル塔建設秘話、流行り病に隠された恐るべき真実、砂漠での謎の任務に出立する若い医師…幻想と寓意とアイロニーが織り成す未邦訳短篇集第三弾。 

久しぶりに読んだブッツァーティ
半世紀以上前の作品なのにまるで古びていない…どころか、今のコロナウィルス騒動やポピュラリズムやヘイトを予感さえるような作品もあって驚く。
人間の抱く欲望、恐怖、不安というのは普遍的なもので、そういう普遍性を描くのが文学なのかなぁ…と思う。

ひょいっと現実を越えるような幻想的な出来事にぞくぞくしたり、寓話的な物語ににんまりしたり楽しい読書。

「もったいぶった男」「ホルム・エル=ハガルを訪れた王」「イニャッツィオ王の奇跡」「怪物」が特に好き。

十二月の十日

 

十二月の十日

十二月の十日

 

 ★★★★★

愛する長女のために素敵な誕生パーティを開こうと格闘する父親(「センプリカ・ガール日記」)、人間モルモットとして感覚を増幅する薬を投与される若者たち(「スパイダーヘッドからの脱出」)、中世テーマパークで働き、薬の力で思考も語彙も騎士となる男(「わが騎士道、轟沈せり」)、戦地から帰還して暗い暴力の衝動を膨れ上がらせる若き元軍人(「ホーム」)…ダメ人間たちが下降のはてに意外な気高さに輝く、現代アメリカ最重要作家の傑作短篇集。 

語り口は軽くてノリノリなんだけど語られる内容はかなりヘヴィだ。

「センプリカ・ガール日記」は貧困の中にあってどうにか子どもに夢を、明るい未来を与えてやりたいと願う父親が語り手。
閉塞感がリアルで叫びだしたくなるほど。そして富の象徴ともいえる「SG」の正体が分かったときのショック。なんてグロテスクな…と思うも、「それを庭先に飾るのがステータス」という世界に生きていたら、違和感を感じなくなってしまうのかもしれないという恐怖も感じる。

一番好きだったのは表題作。絶望の中にあってほんの少しの希望の光が見えたのは良かった。

末廣亭3月中席夜の部

3/16(月)、末廣亭3月中席夜の部に行ってきた。
 
・小さん「替り目」
小満ん「時そば
~仲入り~
・こみち「壺算」
米粒写経 漫才
・きく麿「お餅」
・一朝「看板の一」
・正楽 紙切り
・文蔵「猫の災難」
 
小満ん師匠「時そば
最初の男が食べるそばの美味しそうなこと。次々飛び出すお世辞もこざっぱりしているからわざとらしさよりも粋を感じる。
二番目の男の次々うまくいかないところも、さらっとしていてなんか楽しい。
二杯目を食べられない言い訳に「うまいそばを食ってきちゃったんだ」には大笑い。
楽しかった!
 
こみち師匠「壺算」
私の夢は落語会の上沼恵美子さんになることです、とこみち師匠。
そんな上沼リスペクトのこみち師匠が上沼さんみたいな女性が出てくる「壺算」を。
いやもうこれがほんとにびっくり。こみち師匠、いつのまにこんな技を身に付けました?
買い物に送り出すおかみさんも結構なもんだったけど、買い物をお願いする根岸律子さんが迫力があるといおうか、説得力があるといおうか、とても逆らえないわこれじゃ(笑)。
でもなんかきれいなんだな。押しつけがましくない。芸がきれいだから全然嫌味がない。強烈なんだけどきれい。
私のこみちちゃんがこんなことになっているとは! 
って「私の」言う割にしばらく見に行ってなかったからこんなに驚いているんだけど。
いやぁ笑った笑った。めちゃくちゃ楽しかった。こみち師匠、すごい。
 
きく麿師匠「お餅」
老人ホームのまくらから、なんと「お餅」。
これをぶっこんできますか!ぬおおお。
二人の老人の「お餅」についてのかみ合わない会話が何度か繰り返しているうちにじわじわおかしくなってくる。
そしてこの二人の距離感。会話がお互いに手探りな感じが独特の空気を醸し出してる。
テンション上がった吉田さん(の方だったか?)が美味しさを彦摩呂風味な比喩で表現すると、もう片方が容赦なく否定するおかしさ。
そして会話の最初に名前が挙がっていた老人が参戦してきてからの爆発的なおかしさったら。
前半、ん?ん?ってとまどいがちだった客席がぶわーーーっと盛り上がって行くこの空気がたまらなかった。
最高。
 
一朝師匠「看板の一」
「この後、やりにくいんだぁ」という一朝師匠の第一声に大笑い。一朝師匠でもそうなの?!
気を取り直して…と「看板の一」。
迫力のある親分。そんな親分にちょっと腰が引けながらも隙あり!と思ったら食らいつく江戸っ子のたわいのなさ。
いいなぁ、やってみよ!という男の能天気ぶりも楽しい。
カラッと気持ちのいい「看板の一」だった。
 
文蔵師匠「猫の皿」
くまさんのお酒にこがれる姿がとってもリアルで笑ってしまう。
鯛の頭と尻尾を棄てようとする隣のおかみさんに声をかけて「鯛は捨てるところのない魚だよ」というのは、日ごろ料理をされる文蔵師匠らしいセリフでいいなぁ。
訪ねて来た兄貴分がちょっとこわもて(笑)だから、最初に「猫のお余りをもらった」と言いそびれた気持ちがよくわかる。そりゃ言えないわ。
鯛を買いに出かけた兄貴分がいない間に「お毒見」と言って酒を飲んでしまうのも、最初の焦がれる姿を見ていただけに説得力がある。
飲んでどんどん気が大きくなっていくのも楽しいし、「じょうろ」が見つからないことへの愚痴もすごくおかしかった。
悪事がバレても、ボカン!とやってまた酒に買いに行きそうだな、この兄貴。と思ったら、すごくおかしかった。
 
こんな時でも開けてくれてる寄席に感謝。
仲入りの時に換気と消毒をしてくださったのもありがたかった。

となりのヨンヒさん

 

となりのヨンヒさん

となりのヨンヒさん

 

 ★★★★★

もしも隣人が異星人だったら?もしも並行世界を行き来できたら?もしも私の好きなあの子が、未知のウイルスに侵されてしまったら…?切なさと温かさ、不可思議と宇宙への憧れを詰め込んだ、韓国SF小説集。 

今まで読んできた韓国文学とはまた一味違った味付けで今の韓国文学の層の厚さを感じる。

SFをモチーフにしながら描かれているのは人との人が理解しあうこと、夢を追いかけ諦め…また夢を見つけること、人生を世界を少しでも理解すること。

好きだったのは「アリスとティータイム」「養子縁組」「となりのヨンヒさん」「雨上がり」。
「最初ではないことを」は今のコロナウィルス騒動を予言したような物語でぞわっとした。

できない相談

 

できない相談 (単行本)

できない相談 (単行本)

  • 作者:森 絵都
  • 発売日: 2019/12/10
  • メディア: 単行本
 

 ★★★

ひとがなんと言おうと、わたしはそれを我慢しない。日常の小さな抵抗の物語。人生って、こんなものから成り立っている。そんな気分になる極上の小説集。 

ちっちゃな抵抗、そこだけは譲れない、そんなテーマのショートショート

夫婦の小競り合い、意地の張り合いはなんかちょっとわかるー。
笑っちゃったのは「イマジネーションの檻」「最後の旅行」「世界一平凡な説教」。

でも全体的に毒気が少なくて真面目すぎて私にはちょっと物足りない。
なんとなくこういうのだったら筒井康隆で読みたいかな。

息吹

 

息吹

息吹

 

 ★★★

あなたの人生の物語」を映画化した「メッセージ」で、世界的にブレイクしたテッド・チャン。第一短篇集『あなたの人生の物語』から17年ぶりの刊行となる最新作品集。人間がひとりも出てこない世界、その世界の秘密を探求する科学者の、驚異の物語を描く表題作「息吹」(ヒューゴー賞ローカス賞、英国SF協会賞、SFマガジン読者賞受賞)、『千夜一夜物語』の枠組みを使い、科学的にあり得るタイムトラベルを描いた「商人と錬金術師の門」(ヒューゴー賞ネビュラ賞星雲賞受賞)、「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」(ヒューゴー賞ローカス賞星雲賞受賞)をはじめ、タイムトラベル、AIの未来、量子論、自由意志、創造説など、科学・思想・文学の最新の知見を取り入れた珠玉の9篇を収録。 

 「商品と錬金術師の門」「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」「不安は自由のめまい」が好きだった。特に「商品と錬金術師の門」 は涙腺崩壊。

自分が選ばなかった方の道を選んだ自分はどうなっているかを知るとや、過去の出来事を全て記録して見たい時にすぐに見られるることが幸せなのかどうかとか、身につまされる部分も多かった。

「ソフトウェア…」はAIを自分の子どものように慈しみ育てる姿に驚きと感動。

表題作の「息吹」は私にはちょっとピンと来ず…SF色の強い作品は私には理解が難しいのかも。

あなたの人生の物語」は大好きだったんだけどな、とブログを検索したら★二つ。
私の記憶ってほんとにあてにならない。

僕の人生には事件が起きない

 

僕の人生には事件が起きない

僕の人生には事件が起きない

  • 作者:岩井 勇気
  • 発売日: 2019/09/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 ★★★★

日常に潜む違和感に狂気の牙をむく、ハライチ岩井の初エッセイ集!自筆イラスト満載!

淡々と「何も事件が起きない日常」を綴っているが、世の中をちょっと斜め上から見下ろしながら基本的にしごく真っ当でまっすぐなところが、好感が持てる。

あんかけラーメンのスープを水筒に入れて持ち歩く章にある「水筒を持ち歩いていると、どこか温かみのある人だなと思われる」という文章に爆笑。
同窓会や親せきの集まり、怪談タクシーのエピソードにちょっとこの人の若者らしさととんがったところを感じて、にんまり。

相方の澤部評が秀逸。絶妙のバランスを持ったコンビだ。

マディソン郡の橋

 

マディソン郡の橋 (文春文庫)
 

 ★★★★★

屋根付きの橋を撮るため、アイオワ州の片田舎を訪れた写真家ロバート・キンケイドは、農家の主婦フランチェスカと出会う。漂泊の男と定住する女との4日間だけの恋。時間にしばられ、逆に時間を超えて成就した奇蹟的な愛―じわじわと感動の輪を広げ、シンプルで純粋、涙なくしては読めないと絶賛された不朽のベストセラー。 

 映画が公開されて話題になっていた頃は「でも不倫の話でしょ」とバカにしていたのだが、今になって…この年になって読んで、号泣してしまった。

キンケイドもフランチェスカも孤独だったからこそ惹かれあい、その後の人生をお互いのことを想いながら生きていったのだろう。

人生をまるで変えてしまう…宝物のような4日間。成就しなかったからといって不幸なわけではない。そして他の人に惹かれたからといって家族をないがしろにしたわけでもない。

とてもよかった。読み時、というのがあるんだなぁということを感じた。

教科書で読む名作 山月記・名人伝ほか

 

教科書で読む名作 山月記・名人伝ほか (ちくま文庫)
 

 ★★★★★

これまで高校国語教科書に掲載されたことのある短編を中心に編んだ、中島敦の作品集。教科書に準じた注と図版がついて、読みやすく分かりやすい。理解を深める名評論と、付録として「山月記」のもととなった中国の説話「人虎伝」も収録。 

漢文調の文章なのでとっつきにくさはあるが、「教科書で読む名作」ということでページ内に訳注が入るので存外読みやすかった。ページ内っていい!それに時々挿絵が入っているのも親切。このシリーズいいなぁ。


山月記
虎になってもなお自分の詩を聞いてほしいと語る男に人間の承認欲の強さと弱さを見せつけられる思い。
恐ろしいような静謐な自然描写も素晴らしく胸に迫るものがある。
山月記」は以前阿部壽美子さんの語りで聞いたことがあったんだけど、あれも素晴らしかったなぁ。

「悟浄歎異」
西遊記」の沙悟浄が語り手となって孫悟空三蔵法師のことを語る。
彼らへの憧れや尊敬、感嘆の想いを語りながら、ふがいない自分に対する羞恥の念やこのままではいけないという焦燥をあらわにする沙悟浄は、「山月記」の李微のようでもあり、また私たち自身も彼の姿に自らを投影しないではいられない。
人のことはどうとでもいえるが自分は…。

ラストの場面がとても美しく象徴的だ。

 

「李陵」
前漢の軍人李陵や司馬遷蘇武を描いた物語だが、これが本当に面白かった。
冒険心に富み、多勢に無勢という圧倒的不利な状況の中果敢に戦いながらも匈奴の捕虜となってしまう李陵。国への忠誠心の塊のような男が、間違った噂がもとで家族を武漢に処刑されたことを知り、漢と匈奴との間で揺れ動く。この葛藤がとても人間的で真に迫って素晴らしかった。

 

左龍・甚語楼二人会

3/5(木)、お江戸日本橋亭で行われた「左龍・甚語楼二人会」に行ってきた。
 
・ 左龍・甚語楼 トーク
・きよひこ「狸札」
・甚語楼「のめる」
・左龍「鹿政談」
~仲入り~
・左龍「おせつ徳三郎(上)~花見小僧~」
・甚語楼「 おせつ徳三郎(下)~刀屋~」
 
左龍師匠・甚語楼師匠 トーク
こんな時にいらしていただいてありがとうございます、と左龍師匠。
ことごとく会が中止になってヒマになってるんだけど、寄席だけはやってるから毎日寄席にはいかなくちゃいけない、と 甚語楼師匠。
「この人( 甚語楼師匠)は極端な人なんですよ。0か1かしかない。前に会った時は”コロナなんか怖くもなんともない”って言ってたのに、今日会ったらすっかり怯えモードに入っちゃってます」。
そう言われた 甚語楼師匠が「ええ、もうだめです。家から出たくない。人ごみに出るなんてもってのほかです」。
「じゃぁこの会は?」
「これは…人もまばらですから安全です。人ごみじゃない。井戸端会議に毛が生えた程度」。
…ぶわはははは。
 
それから寄席もお客さんが減っていて、前座さんたちが驚いているという話。
「我々は驚かないです。我々が入ったころや自分が見る側だったころは寄席にお客さんなんか入ってなかったですから。志ん朝がトリという日でも客席はガラガラだった。トリの前にお客さんがようやく入ってくるぐらいのもんで」
「お客ゼロで開演できない、なんてざらでしたよね」
10分ぐらい?話したところで「これ以上二人で話してると(感染が)危ない」と言ってトークコーナーおひらき(笑)。
 
甚語楼師匠「のめる」
先ほどのトークでもありましたけど、私は気にしない時は気にしないけど一度気になるととことん気になってしまう性質。これはもう性分だからどうしようもない。
普段健康に気を使ってる方じゃないけど健診で引っかかったりするともう大変。病院の医院長をやってる知り合いがいるのですぐにすっ飛んで行って全部調べてもらわないと居てもたってもいられなくなる。
腸の検査で引っかかったりすると「ああ、腸のがんか膀胱がんだな」と思い始め、そうすると不思議なことに30分おきにトイレに行きたくなってきて、ネットで調べて「ああ、間違いない…」となってしまう。
コロナの件も…ワイドショーなんか見るもんじゃないですね。不安になるようなことばかり言ってくる。
で、免疫力が大事って聞いて…私自家製ヨーグルト製造機買っちゃいました。
 
 
そんなまくらから「のめる」。
甚語楼師匠の「のめる」はもう猛烈に面白い!
「つまらない」が口癖の男と「のめる」が口癖の男の性格の差がくっきり。特にこの「のめる」男が絶妙の間で言う「一杯のめる!」はもうそれだけでおかしい。
分かっていても全部笑っちゃう。楽しい~。
 
左龍師匠「鹿政談」 
とてもよかった。
豆腐屋さんの実直な人柄、鹿を誤って殺してしまったという罪の重さにおののいているのが伝わってくる。
それだけにお奉行様のどうにかして無罪にしてやろうという優しさが身に沁みる…。
鹿守役を諫めるお奉行様の威厳が素敵ー。
また冒頭にこの豆腐屋の夫婦に子どもがなく今はもう結構な年で(と言いながらお奉行様に年齢を聞かれた時に「60歳」…そうかー60歳は結構な年なんだな…(汗))自分が作った豆腐をご近所の人に美味しく食べていただくことがなによりの楽しみ、という言葉があったので、それが「サゲ」のセリフにつながっていて、おおっ!となった。
 
 
左龍師匠「おせつ徳三郎(上)~花見小僧~」
まさに昨日さん助師匠が言っていた、笑いどころの多い「花見小僧」。
聞いていて番頭になんか腹に一物ありそうな気がしてくるのは前に喬太郎師匠の改作を聞いたせいだろうか。
お嬢様と不義密通した徳三郎が許せなくて、なにも気づいていないぼんやりした旦那に耳打ち。小僧の定吉の弱点も知っているから攻略法も事細かく伝授して…。実は番頭がお節に横恋慕していたのでは…と思ってしまうのは「城木屋」の聞きすぎ?
事の次第をきちんと理解しているわけではないけれど「何かまずそうだぞ」ということを察して途中でどうにかごまかそうとしている定吉が哀れ…。
あとばあやはいったいどういうつもりだったんだろう?明らかに二人をそそのかしているみたいだけど…おせつの傍にいておせつの気持ちを分かっていたから応援してやりたかったのか…まさか店や旦那や番頭に反感を抱いていて意趣返しをしてやろうと企てたわけではない…?
さん助師匠が昨日「刀屋」をやったときに、店に行っておせつとばあやの二人を殺して…と言っていた気がするんだけど、そう考えると徳三郎にもばあやに何か含むところがあったのだろうか。
 
甚語楼師匠「 おせつ徳三郎(下)~刀屋~」
昨日聞いたさん助師匠の「刀屋」を補完するようなちゃんとした「刀屋」(笑)。「え?なんで?」と思ったところが丁寧な説明やセリフで納得できた。
おじさんは徳三郎が暇を出された理由を知らないが、徳三郎は察している。しかしおせつとの絆を信じているのでほとぼりが冷めるまで自分がじっとしていればいつか許される日が来ると信じていた?
それがおじさんに「今夜婚礼」「お嬢様も納得済み」と聞いて我を失ってしまう。
 
刀屋の親父は最初は徳三郎に刀を売る気でいるのだが、最初「(値段は)いくらでも構わない」と言っていたのがたいしてお金を持ってなかったり、血走った眼で「切れますか?」と何度も聞くので、「これは売ってはまずい相手」というのを察する。
昨日のさん助師匠の「刀屋」では、刀屋の主の息子が放蕩息子である日ぼろぼろになって帰ってきてそのまま死んでしまったため、徳三郎のことが他人のようには思えず話を聞かせてくれと言うのだが、甚語楼師匠のでは放蕩息子だが今も生きている。
徳三郎の話を聞いて、恩あるお店のお嬢様と不義密通した挙句、結婚することを恨んで刺し違えようとはとんでもない、非常識、という反応。一度は過ちを犯したけれど親を安心させるためにちゃんとした婿をもらう決意をしたお嬢様を褒める。あくまでも「常識的」な反応。
刀屋はむしろ徳三郎がそれほどまでにお嬢様を想うなら見返すために働け、それでお嬢様よりいい女を嫁にもらえ、と勧める。
あともしどうしても死にたいのなら一人で死ね。そこをお嬢様が通りかかって今も同じ気持ちでいるならば後を追ってくれるだろう、と言う。
そこへ頭が飛び込んできたため、心中を勧めたような形になる。
刀屋を飛び出した徳三郎は両国橋でお嬢様と出会う。「迷子やー」の声に追われるように木場の方に移動してそこから川に身を投げ…
サゲは昨日さん助師匠で聞いた形ではなく、何度か聞いているサゲだった。
 
…なるほどーー。たまたまだったけど同じ会場で同じ噺を連日聞くって面白かったなぁー
そして当たり前だけど噺家さんによって印象ががらりと違う。
甚語楼師匠の「刀屋」では徳三郎のいちずな想いが伝わってくる分、刀屋の主の言葉は常識的でそれほど人間味は感じられなかった。
さん助師匠の「刀屋」は徳三郎が破れかぶれ(笑)で、その分刀屋の主に人間味が。
あんまり好きな噺ではないけれど楽しかった。落語って楽しい!