りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

こびとが打ち上げた小さなボール

 

こびとが打ち上げた小さなボール

こびとが打ち上げた小さなボール

 

 ★★★★★

取り壊された家の前に立っている父さん。小さな父さん。父さんの体から血がぽたぽたとしたたり落ちる。真っ黒な鉄のボールが、見上げる頭上の空を一直線につんざいて上がっていく。父さんが工場の煙突の上に立ち、手を高くかかげてみせる。お父ちゃんをこびとなんて言った悪者は、みんな、殺してしまえばいいのよ。70年代ソウル―急速な都市開発を巡り、極限まで虐げられた者たちの千年の怒りが渦巻く祈りの物語。東仁文学賞受賞。 

急速に経済が発展し都市開発が始まり高級マンションの建設が始まった時期の韓国。

搾取される側は貧しいだけではなく障害を持っていることも蔑まれ虐げられる最底辺の暮らし。抵抗したら職を奪われ再就職もままならない。
低賃金で過重労働を強いられ公害で心身に異常をきたしてもその声を誰も聞いてはくれない。
貧しいのは努力してないからだと蔑まれ、住んでいる家は再開発のために追い出され、新しくできたマンションに住む権利はやると言われてもとても手が出る値段ではない。
自分たちが得ているのは生活費ではない生存費だという彼らの言葉が胸に突き刺さる。

出版物の検閲が厳しかった時代にこの小説が出版できたことにも驚くが、それが韓国で長い間ずっと読み続けられ、そして2016年に日本で翻訳書が出版されたということにも驚く。

こんなことが今でも…?と思うが、この間読んだ「中央駅」も再開発で家を失った人たちの物語だった。
とてもヘヴィな物語で読んでいて顔が険しくなってくるが、決して他人ごとではなく、平和ボケと言われる今の日本でも、これに似たような空気を確かに感じる。
読まれ続けなければいけない物語だと思うが、作者自身がこの本が二百刷を迎えた時に「これは恥ずべき記録だ」と発言したということに、はっとする。

ショパンゾンビ・コンテスタント

 

ショパンゾンビ・コンテスタント

ショパンゾンビ・コンテスタント

  • 作者:町屋 良平
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/10/30
  • メディア: 単行本
 

 ★★★★

おれは音楽の、お前は文学のひかりを浴びて、ゾンビになろう――。音大を中退した小説家志望の「ぼく」、同級生は魔法のような音を奏でるピアニストの卵。その彼女の潮里に、ぼくは片想いしている。才能をもつ者ともたない者。それぞれが生身のからだをもって何百年という時間をこえ体現する、古典を現代に生き継ぐことの苦悩と歓び。才能と絶望と恋と友情と芸術をめぐる新・青春音楽小説! 

 迷いながら何度も文章を書きなおし出だしから進めない「ぼく」とコンクール本番に照準を合わせて一日中ピアノを練習し夜はショパンコンクールの映像を見続ける源元。
ぼくは源元の才能を前に打ちのめされ音大を中退した上、彼の恋人潮里に恋をし、まさにどん詰まりのように見えるが、小説を書くことで自分の気持ちと向き合い現状を俯瞰して見られるようになってくる。

これはつまりまさに青春小説だな、照れるぜ、おい、という今の私と同じ気持ちを主人公が弟に対して思っているところに笑ってしまう。

独特のリズムがある文体が心地いい。なによりも瑞々しくて素敵だ。

村に火をつけ,白痴になれ 伊藤野枝伝

 

村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝

村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝

  • 作者:栗原 康
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2016/03/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 ★★★★

 ほとばしる情熱、躍動する文体で迫る、人間・野枝。筆一本を武器に、結婚制度や社会道徳と対決した伊藤野枝。彼女が生涯をかけて燃やそうとしたものは何なのか。恋も、仕事も、わがまま上等。お金がなくても、なんとかなる。100年前を疾走した彼女が、現代の閉塞を打ち破る。

わざとなのかな。軽すぎる文体がやや鼻につく。でもこの文体による疾走感があったからこそ読みきれたともいえる。

結婚制度や社会道徳と戦い続けた伊藤野枝社会主義者大杉栄と出会ってそれまで一緒に暮らしていた夫を捨て出奔。子どもをもうけるが結婚制度にはあくまでも反対。

家庭でも仕事でも誰かの奴隷になるのはやめろ。腐った社会に怒りの火の玉をぶつけろ、とその主張は単純明快だ。
今の時代でも受け入れられることはないだろうし、この時代ならなおのこと。
官軍から目を付けられた二人は壮絶な最期をとげるのだが、それも覚悟の上だったようにも感じられる。

こうして読むと彼女の生き様は爽快とも思えるけれど、自分勝手といったらこれ以上の自分勝手はないわけで、身近にいたら迷惑だろうな…。
彼女の言うこと、全てに同意するわけではないけれど、確かに…と思う部分もある。でもそうは言ってもねぇ…と思ってしまう私は彼女らに言わせれば奴隷根性に冒されているのか。
結局その結果が今なのだから彼らの言ってたことはあながち間違っていたわけでもなかったのかもしれない。

ぎやまん寄席 柳家さん助の会

2/12(水)、湯島天神で行われた「ぎやまん寄席 柳家さん助の会」に行ってきた。
 
・まめ菊「一目上がり」
・さん助「富久」
~仲入り~
・さん助「莨の火」
 
さん助師匠「富久」
先日仕事で大阪に行ってきました、とさん助師匠。
せっかくだからと前乗りしてちょっと観光もしてベストなコンディションで高座にのぞむことに。
宿泊先のホテルから天守閣が見えてテンションが上がりあそこに上ろう!と決意。歩き始めたのだがお城というのは直線で近づけないようになっているため、歩けど歩けど近づけない。そういう客を見越してエレクトリックカー(?)というのがいて歩き疲れたと見える人に「乗ってきませんか」と絶妙のタイミングで声をかけてくる。
何度も声をかけられたけど歩いて行くんだ!という強い意志でどうにかたどり着いたのが16時28分。入ろうとすると門の所に立っていたおじさんに「今日はもう終いやで。また明日おいでー」。
いやいやいやいや。そこをなんとか入れてくださいよ!と思っていると自分の後ろからロシア人ぽい女性。くっきりした顔立ちに胸もでかい。彼女がおじさんのまえにたったらおじさん「ほな、入り~」。
…これ実話なんですから!!
 
…ぶわはははは。
天守閣にテンション上がるさん助師匠…歩き疲れたおじいさんと思われて車に何度も声をかけられるさん助師匠…目の前で門を閉められるさん助師匠…最高だ。
 
あと繁昌亭に出た時、自分の前に上がったニツ目が鳴り物を入れてたっぷりやったことに驚いたというのと、笛を上手に吹いてるおじいさんがいて、上方ではそういう専門の人がいるのかな、と思っていたら、なんとこれがトリの師匠。
上方の寄席ではトリの師匠が前座がやる時間から楽屋入りしている、ということに驚いたらしい。
 
そんなまくらから「せっかくですので湯島にちなんだ噺を」。
富札はあちこちで売られていたけれど湯島の富札はなかなか売れなかったらしい。
というようなまくらから「富久」。
 
腕はいいけれど酒癖の悪い幇間の久蔵。酒を飲ませてごちそうもしてやったのに最後は酒に酔って絡んできたり喧嘩をふっかけてくるのでお客は「二度とお前なんか呼ぶか」とカンカンになる。
贔屓を何人もしくじり仕事にはぐれ、飽きれ果てて女房も家を出てしまう
1人になり裏長屋に移るが、一日何もせずただぼーっとしているだけ

ある日そんな久蔵を心配した善兵衛が訪ねて来る。
善兵衛は「お前はこんなところにいる男じゃない、なにか商売替えをしたらどうか」と言うが「よしましょう」と久蔵。
元手のいらない商売だってあるぞと自分もやっているという富くじを売る商売はどうか?と勧める久蔵に「富くじそれなら売るより買うほうがいいや」と久蔵。
一分で買って千両当たると聞いて食いつく久蔵に「こんなもん、あたりゃしないんだよ」と善兵衛。
知り合いには売りたくないというのを無理矢理金を出して買う久蔵はすっかり当たる気になっている。
善兵衛は「でも私が部屋に入ってきた時は死んだようになっていたお前さんが富くじを買ったら元気になって目が輝きだしたからよかったのかな」というのは素敵なセリフ。
久蔵というのは根っからの芸人なんだなぁというのが伝わってくるし、善兵衛の優しさが出ている。
お札を大神宮さまのお宮に入れて「どうか千両当たりますように」と手を合わせる久蔵。
 
その晩芝の辺りが火事になり、長屋の連中が「芝にはお前を贔屓にしてくれていた旦那がいただろう?こういう時にいたら詫びがかなうかもしれないよ」と久蔵を揺り起こす。
最初は「どうでもいい」と言っていた久蔵だったが、みんなに説得されて芝を目指して走りだす。
この時にものすごい風にあって吹き飛ばされそうになりながら走って行くところがさん助師匠らしくていい。
犬に吠えられたり(凄まじい鳴き方で笑っちゃう)、想像上の旦那が「おお、久蔵(喜)」となったり「誰だ、お前は」となったり…あの旦那のことだ、きっと喜んでくれるに違いないという思いと、こんなことでわびがかなうはずがないという思い。この葛藤が面白い。
 
いざ再会の場面になると旦那は他の噺家さんがやるように満面の笑みですぐに「許すぞ」とは言わない。
「久蔵、酒はいい加減にしろよ」ときつく言ったあと、「よく来てくれた。寒かったろう」とねぎらい「これからもちょくちょく顔を出せよ」と一言。
芸人らしく目立つように働いてた久蔵、主が「そこにむすびがあるから食いなよ」。
番頭さんも飯を勧めたり、油揚げをやたらと勧めるのがおかしい。
酒がほしくてしょうがない久蔵の意地汚さが酒飲みらしくてリアルだ。
 
冷で5杯飲むと今度は燗を飲みたがる。飲むとろれつが回らなくなり毒々しくなっていく。
その時に旦那も番頭も酒じゃなく飯を勧めたことを久蔵がねちねち文句を言うのがおかしい。
出入り止めになった時も「うちの外にほっぽりだせ」と旦那に言われた番頭が久蔵を蔵の中に入れた、という話。
ちゃんとむしろをしいた上に腕を荒縄で縛って寝かせた、というのがおかしい。
 
今度は自分の家の方が火事だと言われて久蔵が家に戻ると、長屋の連中はみんな無事だがなぜか久蔵から目を逸らす。
聞けば久蔵の家だけが燃えてそこを壊したことで長屋の他の家は助かった、と言う。
そう聞いてがっかりするものの「みなさんが無事でよかった」と言う久蔵。
旦那に優しい言葉をかけられそのまま旦那のところに居候となる。
暮れで忙しくてほったらかしにしてごめんよと謝る旦那が奉加帳を用意してくれる。金を渡された久蔵がかつてのごひいきを回ると旦那が話を付けてくれていたらしく金は集まる。
そこで湯島の富くじの発表があることを聞いた久蔵が湯島の境内へはいって…。
 
上がったり下がったりのジェットコースターではあるんだけど、札がないと金をもらえないと聞いた久蔵が粘るものの「ああ、いいや!くれてやらぁ!」とすぐに自棄になるのが、その前の久蔵の人柄をしのばせて面白い。
町内の頭に会った時も「お宮なんかは持ち出してねぇよな」と言うと「いや、あったあった」と言われ「泥棒!」と食いついて行くのも、いかにもこの人らしい。
 
たっぷりやるところとわりとあっさりやるところがさん助師匠らしい解釈が見えて好き。
この間見た茶楽師匠のお洒落な「富久」とは全然違うけど、さん助師匠らしい「富久」でとてもよかった。
 
さん助師匠「莨の火」
落語にはいろんな噺があります、とさん助師匠。
面白い噺、面白くない噺、人情噺、…なかに、皮肉な噺というのがあります。これなんかはそうだと思います。
そう言って「 莨の火」。
 
車屋の前を一人のいい身なりをした老人が通る。
声をかけられた老人は「私が乗ると助かりますか?では乗りましょう」。
行くあてもないという老人を乗せてとりあえず西の方角を目指すと老人が「江戸で一番の料理屋と言ったらどこですか」と聞く。
それなら柳橋の万平です、と聞くと「私のような田舎者が行ったらバカにされるでしょうね」と老人。
車屋は女中頭と顔だからちゃんと話を通しておくからその点は心配ない、と言う。
 
店について若い衆・伊八が付くと、1両立て替えてくれ、と老人。
帳場に言うと「はい、持ってお行き」と金が出てくる。これがこの後も繰り返されていいリズム。
見習いの芸者、本物の芸者、たいこもち…それらに立て替えてもらった金で祝儀をきる。
店の若い衆たち全員にあげましょうと50両の立て替えを願うと、ついに帳場から断られる。
それを聞いた老人はならば最初に私が預けた風呂敷を出してくれ、という。
その中にはあふれんばかりの金貨。
それを投げて、店の者や芸者などに拾わせて面白がる男。
 
…なんか聞いたことがあったようなないような…と思っていたら、小満ん師匠の在庫棚卸の会の最終回で聞いたことがある噺だった!
確かに皮肉…。でもちょっと洒脱でもある。
金をまくしぐさをしながらさん助師匠が「このぐらいの(客の)数なら大丈夫」と言ったのもおかしかったー。
 
とても楽しかった!

メインテーマは殺人

 

メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

 

 ★★★★★

 自らの葬儀の手配をしたまさにその日、資産家の老婦人は絞殺された。彼女は、自分が殺されると知っていたのか?作家のわたし、ホロヴィッツはドラマの脚本執筆で知りあった元刑事ホーソーンから、この奇妙な事件を捜査する自分を本にしないかと誘われる…。自らをワトスン役に配した、謎解きの魅力全開の犯人当てミステリ!7冠制覇の『カササギ殺人事件』に並ぶ傑作!

楽しかった!

元刑事ホーソーンに事件を捜査する自分を本にしないかと頼まれるアンソニーホロヴィッツいけ好かないホーソーンに翻弄されながらも徐々に謎解きに夢中になるアンソニー

語り口がユーモラスで楽しいし、あちこちに証拠がきちんと散りばめられているところも好き(最近推理する側が後手に回るだけのものも多すぎ!)。
新しいけど古典的なミステリー(前作はクリスティで本作はホームズ!)の香りもするところも好きだー。
シリーズ物になるらしいので次回作も楽しみだ。

そして確かにシェイクスピアがこの物語のカギになっていた!(トーマス先生!)

大学教授のように小説を読む方法

 

大学教授のように小説を読む方法[増補新版]

大学教授のように小説を読む方法[増補新版]

 

 ★★★★★

小説好き必読の一冊がパワーアップして再登場!
筋を楽しむだけでなく、深く読み解くために

キリスト教の象徴、性的暗喩、天気や病気の使い方…。小説の筋を楽しむだけでなく、一歩踏み込んで読み解くための27のヒント。

ひと味違った文学の楽しみ方

小説好き・文学部の学生必読の1冊がパワーアップして再登場!
英米文学を読むのに、ギリシアローマ神話、聖書、シェイクスピアの知識は欠かせないといわれる。ではてっとりばやく知識を仕入れればすむかというと、話はそう単純ではない。読者がなにげなく読み流している文章の中にも、それらの要素は象徴やアイロニーとなって潜んでいたりし、見抜くにはコツが必要だ。本書は長年にわたって文学を教えてきた教授が、学生や一般読者のために、そうしたコツを惜しげもなく伝授すべく書いた解説書である。はじめにあげた3項目はもちろん、天気や病気の象徴性、性描写の意味、隠された作者の政治的意図など、象徴やパターンの読み込み方が、豊富な実例に作品のあらすじをまじえ、27章にわたって説明されている。
まるで授業を聞いているような生き生きとした語り口と、時には有名な映画の一場面も例に挙げる親しみやすさから、本書の旧版はアメリカでロングセラーになった。『老人と海』をはじめとするヘミングウェイの作品や、『デイジー・ミラー』、エドガー・アラン・ポーの作品など、おなじみの小説の違った顔が見えてくる1冊。

登場人物に共感したり反感を覚えたり…そういう感情だけで読むのではなくもう少し深い読み方ができるようになりたいなぁと思い読んでみたのだが、聖書、神話、シェイクスピアが腹に入ってないと英米文学を真には理解できないですかそうですかと若干肩を落としつつ…でもテクストを読み解くためのヒントがいっぱいあってためになった。
一生懸命集中して読んだけど、本を読んでいる時に「あ、なんかそういうことが書いてあったな」と時々取り出して確認するべき本だと思う。

言い切ったかと思えば「文学に絶対〇〇はない!」と言ったり、そういうところも含めて文学部の教授っぽさ満点でそこも楽しかった。

そして読みたい本がたくさん増えてしまった。古典も読まなきゃ!

末廣亭2月上席昼の部~夜の部(途中まで)

2/8(土)、末廣亭2月上席昼の部~夜の部(途中まで)行ってきた。


・左ん坊「からぬけ」
・たん丈「新寿限無
・カンジヤママイム パントマイム
・三朝「やかんなめ」
・天どん「長ネギ」
・紋之助 曲独楽
・圓十郎「まんじゅうこわい
・一九「親子酒」
・小菊 粋曲
・はん治「妻の旅行」
・文生 小噺、志ん生の物まね等
・正楽 紙切り
・小燕枝「権助提灯」
~仲入り~
・小団治「大安売り」
・アサダ二世 マジック
・馬の助「権兵衛狸」&百面相
仙三郎社中 太神楽
・小ゑん「顔の男」


・市松「たらちね(前半)」
・緑太「反対俥」
・おしどり
・きく麿「首領が行く!」

 

たん丈さん「新寿限無
噂のたん丈さん、初めて見た。
なまはげ小噺からの「新寿限無」。な、なるほど(笑)。なにかこう…私が何もできないまま高座に上がってやってしまった…みたいなお生な感じがあってちょっとうおおおっとなったんだけど、でもなまはげ小噺でちょっとツボに入って笑ったら「こちらを向いてやろうかな」と言われてしまった。わははは。

天どん師匠「長ネギ」
20年ぐらい前に38度出てどうしても一晩で治したかったので当時ネットで検索するようなこともできずに、「(イメージ)」のままネギをお尻に入れると熱が下がるという民間療法を試してみた、という話。
ステテコ姿でお尻にネギをはさむ姿を上手にも下手にも見せつける、というサービス(?)ぶり。
笑った笑った。

 

小燕枝師匠「権助提灯」
焼きもち焼きの亭主が5階から冷蔵庫を投げつける小噺でどっかん!とウケて、すごいなー。話し方とか間がいいから初めて聞いた人が本気で笑ったのが伝わってきた。
そんなまくらから「権助提灯」。
旦那をバカにしきっている権助と、律義に本宅と妾宅を行ったり来たりする旦那がおかしい。
小燕枝師匠の「うぇーーーーい。月々おあしを運んでくる旦那が来たぞーーーぃ」の声が好き。楽しかった。

 

小ゑん師匠「顔の男」
おおお。寄席で…しかも池袋以外の寄席で「顔の男」を見られるとは。嬉しい。
電気オタクの部長と部下が自分の行きつけの店(はんだ付けバー、溶接バー、編み物バー)などの様子を説明するところで「ほら、客が付いてこれなくなったぞ」とか「引いてる」とかつぶやくのがおかしい~。
部長行きつけの「顔の店」に入ってからのまぐろとトロの脂ぎり方の違いに笑う。
あとタコの踊り食いをやって親方にキレられるの…最高。
あとで小ゑん師匠のTwitter見たら「ひらめとカレイやるの忘れました」と書いてあってそれもおかしくて。見たかった。ひらめとカレイの違い。

 

緑太さん「反対俥」
まくらで、最近やった自分の独演会…小さな会場で小さな会ですよ、と言いながら…の後の打ち上げで占い師をやっているというお客さんとの会話のまくら。ツボにはまって大笑いしてしまった。

「反対俥」も途中のフェイクに見事にひっかかってまた大笑い。
楽しいなぁ、緑太さんの落語。

 

きく麿師匠「首領が行く!」
さすが一時期見まくっていたというだけのことはあってこの登場人物たちのしゃべるVシネマっぽい話し方が最高だ。
夜席に入ったばかりでお客さんも少し減ってあたたまりきってないところをぐわっと自分の世界に引き込んでいくの、すごいなー。
まーろ様も遠くに行っちゃったなぁ…。嬉しいような寂しいような。

鈴本演芸場2月上席夜の部

2/6(木)、鈴本演芸場2月上席夜の部に行ってきた。
 
・文蔵「道灌」
・文菊「夢の酒」
~仲入り~
・楽一 紙切り
・甚語楼「真田小蔵」
・のだゆき 音楽
・百栄「落語家の夢」
 
文菊師匠「夢の酒」
お花さんが実に女らしく、また御新造さんが実に色っぽい。なんなんだ、この文菊師匠の色っぽさは。前に天どん師匠が文菊師匠のことを「エロ坊主」みたいに言ってたけど…ぶわははは。
(そういえば関係ないけど小ゑん師匠がさん喬師匠のことを「ぱっと見いい男みたいだけど、よく見るとスケベなスヌーピーって言ったの、最高。小ゑん師匠は新作のタイトルもそうだけどほんとにセンスがいいよなぁ…)
大旦那が優しいかどうかが私にとっては結構重要なポイントなんだけど、文菊師匠のは大旦那がとても優しくていい感じ。
「わかったよ。お花。じゃ夜寝る時に(夢の女に会えるように)唱えてみるよ。え?いま?いまじゃなきゃだめ?ああ、泣くんじゃない。いいよ、行くよ。」
あと夢の女に会って冷を勧められた時に「いえ、待ちますよ。燗が付くまで。昔は仕事が終わって帰ってきて膳の上に熱燗が3本ばかりも乗ってないと怒ってずいぶん女房を泣かせましたが。今はすっかり気が長くなりました」と言いながら、しばらくすると「まだですか?」というのに酒飲みの卑しさが出ていて好き。
色っぽい「夢の酒」だったー。
 
楽一さん 紙切り
最初のお題が「きりんの親子」。そう言われた楽一さんが「え?」と聞きなおすと、注文を出したお客さんが「出産した後の赤ちゃんのきりん…」。
「え?出産?出産した直後、ですか?!」
「あーーいや、直後じゃなくていいよ。」
「で、ですよね?しばらくたってからでいいですよね?」
…ぶわはははは。おかしい~。
 
次に「夢の酒」のお題が出たら、「え?あれ?あーさっき出た?文菊師匠が?」と言ったあと、(おそらく独り言で)「聴いてなかったんだよな…しまったな…あ、でも前にテレビで見た…」。
「あれですよね?酒を飲む噺ですよね。色っぽい?女性と差し向かいで…酒を酌み交わす…ですよね?」
で、しばらくして切り始めると、「お囃子もね…お題に合わせて即興で弾いてるんですよ。この曲は…ちょっと…どうかと思いますけど…(酒が飲める酒が飲める酒が飲めるぞ――♪)」
で、取りに来た女性のお客さんが受け取った後に楽一さんに握手を求めると、握手をした後ですごく恥ずかしそうな楽一さん。
「は、恥ずかしいですよ…だって見られてるんだもん…」
 
最後に出たのが「明智光秀」。「え?」と驚く楽一さんに「きりん繋がりで」とお客さん。
しばらくわからなかったらしい楽一さんだけど切り始めてから「ああ、大河ドラマの。麒麟がくる。…それも知らないんだよな…」
そう言いながら出来上がった作品が、テレビの中に明智光秀がいて、それを降板した女優さんが見ている、という絵。
やるなー。
この日は取りに来るお客さんがみんな最初の女性をまねして握手を求めたりするのもおかしくて、楽しかったー。
 
甚語楼師匠「真田小蔵」
お客さんのノリがよかったからなのか、のりのりの「真田小蔵」。
おとっつぁんのきんちゃんの言葉への食いつき方がハンパなくてそれだけでおかしい。
お小遣いをもらって外に遊びに行っちゃった!と聞いて「おまえ!そういうときこそいないとだめじゃないか!」ってほぼ悲鳴(笑)。
考えてみれば父親が息子の話を聞かされてるだけの話なのにこの臨場感。
とっても楽しかった。
 
百栄師匠「落語家の夢」
こういう最中(ウィルス騒ぎ、極寒)にお客様が来てくださるのは本当にありがたいです、と百栄師匠。
もうやらなくなってしまいましたけど、以前はここで早朝寄席というのをやってまして。最後の頃は落語ブームもあって立ち見がでるぐらいになってましたけど、私が二ツ目になりたてのころは本当にお客さんが少なかった。喬太郎、たい平という売れっ子が出ても30名は入ればいい方で。少ない時は3名とかざらでした。
そういう時に来るお客さんはとにかくすごい熱を感じましたね。とにかく安い値段で落語を見るぞ!!という熱。この人たちはたとえばこの会場のエレベータ、エスカレータが止まって階段も水浸しになって入れなくなっても、縄梯子をかけたらそこを伝って登ってくるだろうな、という…熱がありました。
そんなまくらから「落語家の夢」。
この間、はん治師匠を前にこの噺をするという企画があったけれど、あの時はちょっとソフトにやってたんだな、というのがわかる(笑)。
鈴本でこの噺を聞くというのがもうそれだけで二割増しにおかしくて。
「落語家ちゃんを買うことはできますか?」
「え?…あ、そうなりますと私ではちょっと…」
「あらでもあなたはお茶子さんでしょ?売店で…」
「ええ、売店でおせんべいとかお茶をお売りしてますけど、それと落語家ちゃんとはちょっと別なので…上の者を呼んできます。あ、ちょうどよかった。あつしさん!(実名)」
 
〇〇流は野性味が強いからペットとして飼うのはちょっと…とか、あの師匠は見た目もかわいいし落語もかわいいですけど実際は結構めんどくさいですとか、落語家ちゃんはたいへん嫉妬深い生き物なので多頭飼いには向きません、とか。
毒の多さもあのふにゃふにゃした語り口だと猛毒に感じさせないのもすごいところ。
笑った笑った。楽しかった。

出来事

 

出来事

出来事

  • 作者:吉村 萬壱
  • 出版社/メーカー: 鳥影社
  • 発売日: 2019/12/21
  • メディア: 単行本
 

 ★★★★★

仮想と現実を巡る圧倒的言葉の世界。きれいごとを吹き飛ばす圧倒的描写力によって日常世界がめくれあがる。見慣れたはずの外界が何かおかしい。人間の嘘がべろりと浮かび上がる。人間とは何ものか。一見そうは思えないが、本書は脳と文明の虚妄をあばく恐るべき哲学小説である。『季刊文科』連載作、待望の単行本化!

覚悟して読んだけどやはり凄まじかった。静かなタイトルと表紙に騙されちゃいけない。

どこまでが現実でどこからが妄想なのか。その境界が曖昧になるように呪文のように「現実」「偽物」の言葉が繰り返される。
この狂った世界が恐ろしいが、もしかして私が今生きているのも実はこれとあまり変わりがない世界なのかも、とうすら寒くなる。
登場人物がテレビを見ながら「原発のニュースがこんなに軽く扱われて誰も騒ぎもしないところを見てもこの世界は偽物だろう」と思うシーンがあるのだが、確かに…。いつからか私たちはもうあまりにもひどい現実から目を背け見ないように感じないようにして生きていて、ちゃんと目を開けて見ると自分が生きているつもりでいる世界より世界は恐ろしいことになっているのかもしれない。

文明や思考、常識、善意をなんとなく信じて生きているけど、一皮めくればこんなものなのかもしれない?
知らない顔をして生きていると言われると、確かに…とうなづいてしまうのがこの本の恐ろしいところ。

白酒・甚語楼の会

2/4(火)、お江戸日本橋亭で行われた「白酒・甚語楼の会」に行ってきた。
 
・門朗「元犬」
・甚語楼「のめる」
・白酒「突き落とし」
~仲入り~
・白酒「親子酒」
・甚語楼「阿武松
 
甚語楼師匠「のめる」
記憶はないんだけど酔っ払ってどこかにぶつかったかしたらしくひどいタンコブができた、と言う甚語楼師匠。
私はまぁ結構お酒は飲む方ですけどそして酒癖もあまりよろしくないことは自覚しておりますけど、ただ私の場合は人に迷惑をかけることはない。ただ自分だけがひどい目にあって破滅する、というタイプの酒癖の悪さです。
 
…ぶわはははは。
でも酒癖が悪くて人に迷惑をかけてないって言いきれるのはすごい。私なんかほんとに迷惑かけっぱなし…とほほ。
いやでも気を付けてください…タンコブ危ないらしいので…。
 
そんなまくらから「のめる」。
この噺って面白い人と面白くない人がすごくはっきりしてる。リズム感が物を言う噺なのかな。
甚語楼師匠はとにかくリズム感が抜群に良くて半拍ぐらいの間でぐわっぐわっとたたみかけてくるから、もうほんとに楽しい。
そして「一杯のめる」の男のリアクションが思っているより激しいので、そこでまた笑ってしまう。
うーん。かっこいいー。
 
白酒「突き落とし」
ウィルスの問題でクルーズ船が停泊していることについて。
あれに乗ってる芸人は地獄でしょうね、と白酒師匠。
おそらくあのレベルの船であればシルクドソレイユを落ちてもう一度落ちて…ぐらいのレベルの人たちは乗ってますよ。でもそういうところは契約がきっちりしてますから、日にちが延びたからと言って気安く余計に公演をしたりはしないですよ。
そうすると噺家に「落語ならいくらでもできるでしょ」って言って頼んできますよ。
ああいう密封空間ってちょっとしたことで空気が悪くなっちゃうんですよ。
例えば昼間行ったホエールウォッチングでクジラが見られなかった、なんてことがあると、もう一気にお客さんたちの雰囲気が悪くなっちゃう。
そんな中で落語やってもウケるわけがない。「あーだから落語はつまんねぇんだよ」なんて言われちゃったりしてね。
あの船に乗ってる噺家と…あとキルト教室とかの先生は今まさに地獄を見てるはずです。
 
…ぶわはははは!!おかしい!!笑った笑った。
 
そんなまくらから「突き落とし」。
金のない連中が吉原に行って一芝居うって若い衆をお歯黒どぶに突き落として逃げてきちゃえという酷い計画を立てて出かけて行く、という噺。
まぁひどいんだけど、明らかにみんなに「棟梁」って持ち上げられてる男がおよそ大物感がないし、言ってる連中も「そうは見えないけど」「見えないでしょ」ってふざけていて、これならわかりそうなもんじゃないか、というツメの甘さがおかしい。
どうせお金を払わないんだからと、たらいをあつらえたりビールケースを注文したり…それが逃げる時のアクセントになっていて面白い。
楽しかった。
 
 
白酒師匠「親子酒」
聞き飽きた噺でも面白い人がやればこんなに面白いという見本のような「親子酒」。
酔っぱらってどんどんぐずぐずになっていく大旦那が傑作で笑った笑った。

 
甚語楼師匠「阿武松
相撲の親方は声が太くていかにも親方らしい。
おまんまの食べ過ぎのせいで武隈関のところをくびになってしまった小車はいかにも素朴な青年。
ご飯をすごい勢いで食べる客がいると聞いて宿屋の主が見に行くんだけど、「何か事情がありそうだね」と話をしている間にも小車が何度もおかわりをするのが面白い。
主が優しくてさっぱりしていて、ああ、この人にめぐりあえてよかったーとしみじみ思う。
次の日に連れて行く錣山関は武隈よりももっと威厳があって大物感がある。
紹介された 小車が大きな身体を小さく丸めて挨拶をする、というのが目に浮かんで涙…。
小車の身体を改めた親方が「いい!」「いい!」と何度も大きな声を出すのがおかしい。
 
楽しくてじんわりとあたたかい「 阿武松」。ストーリーを知っていても後半の展開には涙。とてもすてきだった。

生命式

 

生命式

生命式

 

 ★★★★

死んだ人間を食べる新たな葬式を描く表題作のほか、著者自身がセレクトした脳そのものを揺さぶる12篇。文学史上、最も危険な短編集 

人間が死んだ人間を調理して食べる、人間が死んだ後の骨や皮や髪の毛 で家具や洋服を作る、死から生を生む「生命式」が受け入れられるようになった世界。それが道徳的に忌み嫌われていた時代からまだたったの30年しか経っていない。

私たちの考える「常識」「善悪」「尊厳」「正常」ってなに?それは本当に正しいの?そんな問題を突きつけられているような作品たち。

正直「もうええわ…」と投げ出したくなる作品もあったけど、でも目が離せない。理解しきれてない部分もあるけど、すごい作家だなということは分かる。

私たちが夢中になって韓国文学を読むように、海外でもこの人の作品が読まれるといいな、と思う。

小満ん夜会

2/3(月)、社会教育会館で行われた「小満ん夜会」に行ってきた。
 
・ぐんま「初天神
小満ん「厄払い」
・茶楽「富久」
~仲入り~
小満ん「うどんや」
 
ぐんまさん「初天神
わーい、ぐんまさん。
出てくるなり笑いが起こり「わかりますよ、みなさんの気持ちは。痛いほど伝わってきてます。…え?おまえ?なんで?」
いやまさか小満ん師匠の会でぐんまさんを見ようとは思ってなかったから…。でも嬉しい!見るほどに好きになるよ。
群馬の物産展を歩くような「初天神」。とっても面白かった!
ぐんまさんの新作、聞いてみたい。
 
小満ん師匠「厄払い」
まくらでは節分の時の厄払いについてたっぷりと。
厄年の人は年の数の豆と小銭をおひねりにしてまくという風習が昔はあった。
小満ん師匠も子どもの頃、母親に言われてそうしたんだけど、「振り向いたり戻ったりしたらいけない」と言われてその場は仕方なく離れたんだけど、次の日気になって見に行っていたらなくなっていて、自分の厄を押し付けたようでちょっと罪悪感を覚えた、というのは面白い。
そんなまくらから「厄払い」。
与太郎さんがご機嫌でかわいい。おじさんの言うことをいちいちまぜっかえすんだけど、小満ん師匠だとそれがシャレがきいていて「うまいこと言うなー」と感心してしまう。
与太郎が厄払いの途中で「うんまぁこれぐらいやればいいや」と逃げて行くのもおかしかったー。
 
茶楽師匠「富久」
おおお。茶楽師匠の落語は小満んファンに受け入れられているようで、なんか嬉しい。まるで自分の手柄のように。って私の手柄でもなんでもないけど。
スピーディで軽くて楽しくてきれいな「富久」。
火事場に駆け付けた久蔵が受付を頼まれて火事見舞いに来た人たちに挨拶をして帳面につけてもらうんだけど、久蔵の如才なさが出ていてとてもきれい。
でもお酒を見ると飲みたくて飲みたくて何度も番頭に「お酒をお持ちいただきました」と言いそのたびに番頭に「そっちにやっておいておくれ」とあっさり言われるのがおかしい。
ようやくお許しが出ると待ってました!と飲み始め口数が多くなるおかしさ。
そして「もう終わりしていいよ」と旦那のお許しが出てからは飲むほどに酒癖の悪さがにじみ出てくる。
その後の展開もスピードがあって見ていて気持ちいい。上がったり下がったり…のまさにジェットコースター。
 
火事が起きた時に「お前がしくじった旦那の家があるところじゃないか」と声をかけてくれたり、本人がいないからと荷物を全部運びだしてくれたり…久蔵の近くにいる人たちの優しさが伝わってきて、なんかいいなぁーと思った。
茶楽師匠、とっても素敵だった。
 
小満ん師匠「うどんや」
3代目小さんの「うどんや」芥川龍之介夏目漱石が好きだった、という話。
夏目漱石が小さんの落語をまねした、という話は面白いなぁ。
そして「うどんや」はネタ出しだったんだけど、「実は先ほど楽屋帳を見ていたら、私2年前にここでやっていたんですね」「まぁ、2年前ですからこの2年で私の芸が…落ちたところを見ていただくというのも…」とにっこり。
 
そんなふうにして始まった「うどんや」。
酔っ払いが絡む、うどんやが謝る、のふわふわした会話の繰り返しが楽しい。
でもこの日の「うどんや」、酔っ払いが帰ってからうどんやに声をかけて食べ始めたおねえさんの色っぽいこと。そしてうどんを食べながらのろけるのがもうなんともいえずかわいくてしゃれてて…サゲも素敵だった!
帰る時に師匠に「あれは?」と聞いたお客さんがいて「オリジナルです」とのこと。
小満ん師匠の落語って誰にも真似できない小満んワールドが広がっていて、それを大の大人が面白いお話を聞かせてもらう気持ちで集まってきている感じがしてすごく楽しい。
 

高架線

 

高架線

高架線

 

 ★★★★★

風呂トイレつき、駅から5分で家賃3万円。古アパート・かたばみ荘では、出るときに次の入居者を自分で探してくることになっていた。部屋を引き継いだ住人がある日失踪して…。人々の記憶と語りで綴られていく16年間の物語。注目の芥川賞作家、初めての長篇小説。 

面白かった!

家賃3万円のオンボロアパート「かたばみ荘」。不動産を通さないかわりに、住人がこのアパートを出て行く時には次の住人を探さないといけないシステム。
この部屋に住んでいてしばらく失踪していた三郎を中心に、同じ部屋に住んでいた人や彼らにかかわりのある人たちが自分語りをする。

彼らの話から浮かび上がってくる誰かが誰かを大切に想う気持ち。友情とか自分がどうしても譲れないものとか、親しくても踏み込んでいかない感じがじんわりと温かい。

西武線沿線の描写も見事で(なにせ地元…!)きれいになる前の駅舎とか商店街とか西武線が高架になる時の瞬間とか…「ああ、わかる!」って何度もうなづいてしまった。

初めて読んだ滝口さん作品。面白かったから他の作品も読んでみたい。

いろは亭

2/1(土)、梶原いろは亭へ行ってきた。


・幸太「寄合酒」
・兼太郎「紀州
・小もん「金明竹
・小助六禁酒番屋
~仲入り~
・鷹治「時そば
・扇兵衛「初天神
・だるま食堂
・鯉橋「蒟蒻問答」

 

助六師匠「禁酒番屋
浅草の昼の部の出番の後に、小痴楽師匠と水口食堂に飲みに行って、途中で米助師匠も合流してお会計してくれて、その後もう少し飲みなおそうかとお店の人に声かけたら「あなた方…いい加減にしたらどうです?」と追い出された、というのがおかしかった。
お酒のまくらから「禁酒番屋」。
助六師匠の「禁酒番屋」は何回か見ているけど、テンポが良くて軽くて楽しい。
「やらせてくださいよ」と言う店の若い衆の気の良さと、番屋のいかめしい侍が久しぶりに酒にありつける!とうきうきしたり飲んでるうちにろれつが回らなくなるのが、わかっているのに何度でも笑ってしまう。
楽しかった。

 

鯉橋師匠「蒟蒻問答」
大学の落研の先輩が国会議員になりその留守番で里光師匠と交代で議員会館に通ったという話。「ちょうど月末の10日間だったので下席は里光と交互出演でした」に笑う。
鯉昇師匠の物まねがそっくりで大笑い。
そんなまくらから「蒟蒻問答」。

頼りになる親分、いい加減な偽和尚、ざっくりした寺男権助、問答をしに来た勇ましい旅の僧侶、と人物がくっきり。
親分のしぐさにいちいち「ははぁーー」となる旅の僧侶がおかしくて、楽しい~。
とても楽しい「蒟蒻問答」だった。

アルジェリア、シャラ通りの小さな書店

 

アルジェリア、シャラ通りの小さな書店

アルジェリア、シャラ通りの小さな書店

 

 ★★★★

1936年、アルジェ。21歳の若さで書店“真の富”を開業し、自らの名を冠した出版社を起こしてアルベール・カミュを世に送り出した男、エドモン・シャルロ。第二次大戦とアルジェリア独立戦争のうねりに翻弄された、実在の出版人の実り豊かな人生と苦難の経営を叙情豊かに描き出す、傑作長編小説。ゴンクール賞、ルノドー賞候補、“高校生のルノドー賞”受賞! 

フランス統治下のアルジェリアで書店兼出版社「真の富」を開いた伝説の出版人エドモン・シャルロの章と、書店の解体整理を行うリヤドの章が交互に語られる。

カミュ、ジッドらの本を出版し文学賞受賞の喜びを味わいながらもレジスタンスの一員と見なされ投獄されインクや紙不足に苦しみ破産してしまうシャルロ。
書店はその後国立図書館となるが国が実業家に売ってしまったため貴重な本や手紙類が全てゴミの山と化す。

自由な思想が弾圧され本や書店が破壊される。どの国も同じ過ちを何度も繰り返すのかと思うと辛いが、読後感は不思議と爽やかだった。