りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

楽屋半帖

1/27(月)、駒込落語会で行われた「楽屋半帖」に行ってきた。

 
・さん助「猫の茶碗」
~仲入り~
・さん助「大河は八時」(「初雪」「麒麟がくる」「赤羽」)
・さん助「今戸の狐」
 
さん助師匠「猫の茶碗」
最も古い落語家「三笑亭可楽」の話から文晁と蜀山人のエピソードなどあれこれ。
こういうまくらってとても楽しい。
聞いたことがある話もあれば(文晁が朱を塗った河骨花を蜀山人が見て「珍しい」と言って欲しがるので文晁が渋々譲ってやったのだが、家に帰って水をかけたら普通の黄色い花に戻ってしまった)、聞いたこともない話も。
寄席のようなものが出来た時には武士も町人も席を同じくして聞いたり自分が話したりした、というのは面白いな。
これはいったいどんな噺につながっていくんだろうと思っていたら、なんとこれが「猫の皿」だった。
 
噺に入ってからも、茶店の親父と道具やがずいぶん長い間世間話。
昔江戸にいたという主人に「いつまでいたのか」と聞くと、あの上野の戦の時まで、と。
あれはほんとに酷い戦だった。最初の内は彰義隊だ、官軍だと言って戦っていたが、最後はもう誰が誰だかわからないぐらい入り乱れての殺し合い。あれですっかりいやになってこちらまでやって来た、と店の主人。
嫁さんをもらって子どもも生まれたが嫁は亡くなり子どもたちは東京へ行き、今はこうして一人暮らしをしている、と。
長話の末にお茶を入れに行く時に「こら、小僧。そんなところにいちゃだめじゃないか」と猫に声をかける。
それで道具屋が猫と茶碗に気が付く、という展開。
 
「猫の皿」って季節を感じさせる風景とか田舎の描写がいいな、と思うんだけど、そういうのはあまりなかったかな。
でも二人のいつ終わるとも知れない会話はなんか面白かった。
そこからの展開はわりとポンポンとスピーディ。
ちょっと笑っちゃったのが、道具屋が猫を抱くんだけど、あまり猫に見えない(笑)。なんか妙にでかい…そして触るのもいかにも慣れてない感じ。
「所作!」と心の中で突っ込み(笑)。
 
さん助師匠「大河は八時」(「初雪」「麒麟がくる」「赤羽」)
頭を上げるなり「雑排」に入ったさん助師匠。おお、またこのパターン。
なんか「雑排」久しぶり~と喜んでいたら、「初雪や~」のくだりをいくつかやっていきなり終了。
「いきなり終わったな。唐突だったかな。ここにあんまり時間かけられないからな」(ぶわははは)
で、「あー終わった終わった」とさん助。
「この会もあと少しだ。三題噺の地獄からもようやく逃れられる。はぁー」と言いながら電車へ。
駒込なぁ。これ一駅なんだけど田端で乗り換えないといけないんだよな。これがめんどくさいな。一度田端まで歩いてみたけど、一駅っていってもすごい遠くて30分ぐらいかかっちゃってさ。あれはひどい目にあったな。さ、乗り換え乗り換え。よし、あとはこれで一本。あーー赤羽か。(パチパチ!)」
なんて言っていたさん助。「川口」と聞いて「あと一駅だ。あーなんでかあと一駅って思うと眠くなっちゃうんだな。なんでだろうな。ぐーーーぐーーー」。
眠り始めたさん助。そこへアナウンス。「次はナイロビーーナイロビーーー!」

「え?なんで?さっき川口だったのになんでナイロビ?うわっあつっ!あっついなぁ。(と羽織を脱ぐ)なんだよどういうことだよ。なんでナイロビ?はっ、気づいたら周りは顔の黒いやつばかりだ。ってことはほんとにここはナイロビ?」
慌てていると「あなたーどうしましたー」
いきなり日本語で話しかけられる。
「わ、日本人がいた!」
「ええ、ここで日本人に会うのは珍しいことです。あなたはどうしてここへ?」
「いやわからないんです。京浜東北線に乗ってたはずで川口っていうアナウンスは聞いたんですけど、はっと気づいたらナイロビって」
「ああ、そういうこと、時々ありますね」
「あるんですか?!」
「ええ、あります。ところであなたは何をやってる人ですか」
「私は落語家です」
「ああ、自称」
「自称じゃないですよ!落語で食べてるんです」
「へー」
「あなたは?」
「私はマサイラマ保護区に勤めてます」
「というと?」
「いろんな動物を保護しているんです」
 
というわけで、その人について行くことにしたさん 助 。一緒にパトロールを手伝うことに。
動物を殺して儲けようとするハンターがいるのでこうして毎日パトロールが欠かせないのだという。
ハンターと動物におびえながら男について行くさん助。
「ぱおーーん」
「あ、象だ。こわいっ!」
「ええ、やつら結構獰猛ですから。足でつぶされたらひとたまりもない。」
「あ、バッファローだ!」
 
…いろんな動物が出てくるんだけど、出てくる動物がやたらと吠えて狂暴に暴れまわる。中にはペンギンもいて、これもまた変な所作。
これはこの展開は…と思っているとついに…「近頃はキリンをねらうハンターも多いです。でもキリンはああいうかわいらしい顔をしてるけどすごく危険です。象なら一思いに殺してくれるからいいけど、キリンは少し急所を外していたぶりながら…」
「ああ、やめてください」
そしてハンターも銃で一撃ちではなくナイフで喉を切り裂いてくるので痛い時間が長く続くらしい。
というわけでさん助の怯えもピークに。
「今何時ですか?」
「六時です。」
「ハンターは?」
「まだ出ません」
「今何時ですか?」
「七時です。そろそろ…」
なんて言ってると、出たー。ハンター。そして銃で撃たれて走ってくる象!
また別の動物も走って来た!
「あれはもしかしてキリン?キリンですか?」
「いや。麒麟がくる、は、八時」
 
…ぶわははははは。
しっちゃかめっちゃかでめちゃくちゃな噺だったけどサゲだけ妙にきれいに決まった。
ばかだー(ほめてます)。
 
さん助師匠「今戸の狐」
今戸焼のまくら。
浅草には今戸焼の狐やねずみなどを売ってる店があるとか。
狐の顔を描いたりする内職が昔はあった、というまくらから「今戸の狐」。
 
名人可楽の弟子で前座の良助。
なにやらこそこそ何かをやっているところにご近所の 小間物屋の女房が訪ねて来る。
良助の部屋をのぞき見して今戸焼の彩色の内職をやっていることを知り自分もやりたいという。
この女房が元は千住で女郎をやっていたらしく、「コツのサイ」と呼ばれているんだけど、シナを作って早口でああだこうだというのがすごくおかしい。
前座は大変なんだといろいろ言い訳をする良助だけど、実は前座働きも通いも師匠から免除されていて家賃も払ってもらっていて、「どんだけなまぬるいの!」と言われるのがおかしい。
 
一方、師匠の家に住み込んでいる前座たちは毎日寄席で働き、唯一の楽しみは仲入りの時に売るくじのお金。これだけはそのまま小遣いになるので今日はいくら儲けた!と大盛り上がり。
それを通りかかったやくざな男がばくちをやってると勘違いし、師匠を強請って金を巻き上げようと乗り込んでいく。
ばくち用語で「コツ」「狐」などと言うので前座たちは良助が作っている狐を欲しがってるのかと思い、良助宅を紹介。
男が勇んで出かけて行って良助に掛け合うと、良助も今戸焼の狐を買いに来たのだと思って…。
 
…一度だけ白酒師匠で聞いたことがあったけど、その時は多分噺の内容を把握できてなかった。
ちょっと込み入ってるよなー。でも面白-い。
びくびくしている良助がさん助師匠にピッタリでおかしかった。