りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

中央駅

 

中央駅

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 ★★★★★

韓国文壇界、新進気鋭の若手作家による長編小説!

日経新聞に書評掲載など、 国内でも反響の大きかった
『娘について』の著者、キム・ヘジンが、
絶望の淵に立つ男女の愛を描き出す…本邦初訳!

これがどん底だと思ってるでしょ。
違うよ。底なんてない。
底まで来たと思った瞬間、
さらに下へと転げ落ちるの―― (本文より)

路上生活者となった若い男、同じく路上で暮らしながら、
毎晩、際限なく酒をあおる病気持ちの女。
ホームレスがたむろする中央駅を舞台に、
二人の運命は交錯する。『娘について』
(亜紀書房刊)を著したキム・ヘジンによる、
どん底に堕とされた男女の哀切な愛を描き出す長編小説。

主人公は若い男のホームレス。彼がどういう人間で、なぜそうなってしまったのかという事情は一切語られない。

ある晩ふらっと現れて彼の隣で眠り、翌朝全財産が入っている彼のスーツケースを盗んで消えていった女。彼女を探しだして半殺しにしてやると息巻くが、いざ彼女を見つけると離れることができなくなる。
毎晩身体をかわすようになり、男はほんのわずかな希望を抱いてはまた落ち…を繰り返す。
これは愛なのだろうかと男は何度も自問するが、間違いなく愛だったのだとも思えるし、彼が捨て去ったつもりの未来を夢見る道具だったのかもしれないとも思える。

とてもヘヴィな物語で読んでいて何度も目を逸らしたくなったけれど、物語の吸引力が凄くて引きずり込まれるようにして読んだ。キム・ヘジン…凄い作家だ。