りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ぎやまん寄席 湯島天神編(第83回) 百栄ひとり会

9/8(木)、「ぎやまん寄席 湯島天神編(第83回) 百栄ひとり会」に行ってきた。

・たま平「出来心」
・百栄「寿司屋水滸伝
・百栄「ぞろぞろ」
~仲入り~
・百栄「天使と悪魔」

たま平さん「出来心」
まくらはぎこちないのに落語に入ったとたんにしゃべりが達者になるのが面白い。
おとうさんより声も口跡も滑舌もいい。
でもそれで面白いかというとそこが…というのが落語の面白いところ。


百栄師匠「寿司屋水滸伝
日曜日にこの場所(湯島天神)行われた謝楽祭の話。
雨の予報だったけど当日は晴天。それはよかったけどなにもあそこまで晴れなくても…。とにかく暑くて暑くてどうしようもなかった。
この建物の2階が楽屋になっていたんだけど、噺家っていうのはお喋りが多い。その中でも特におしゃべりな人たちがずっとぎゃあぎゃあ喋っていてもう頭痛くなっちゃった。
特に自分の同期の○○が…同じことをいつまでもいつまでも言っていてそれを焚き付けるやつもいて…内容的にはほんとに小4男子レベルですから。
そしてこの祭り、2年前からこちらでやるようになったんですけど、こちら(湯島天神はとても協力的で気持ちよく場所を貸していただいているんですが、文京区が全く乗り気じゃない。
なのでああだこうだといちゃもん…いちゃもん言っちゃいけないですけど、とにかくあら捜しをしてくる。
あれもだめこれもだめで圓朝祭りの時は出来てた店もこちらではできないなんてこともあって。
私もなんかやってもよかったんですけどね。私だと…寿司、ですかね?
生ものなんてこちらでなくてもできませんから。
寿司なんかやったら逮捕されそうですね。役所にそういう権限がなかったとしても。

そんなまくらから「寿司屋水滸伝」。
何回か聞いているけど、前に聞いた時より刈り込まれて、面白さが凝縮された感じ。
ふにゃふにゃした店主が百栄師匠にとてもよく合ってる。


百栄師匠「ぞろぞろ」
百栄師匠は古典も面白いからすごい。
激しく改変するわけでもないのにちゃんと百栄ワールドになってしまうんだよなぁ。
よく聞く縁結びの神様のまくらだったので、え?たらちね?と思っていると、縁結びの仕事が終わって帰っていく神様の中にはすぐに帰らず道中物見遊山をしながら帰る神様もいる、と。
そんな神様が自分の社に戻ってきて、半年も空けちゃったから埃がすごいな、酒でも飲んで寝ちゃいたいけど酒がない、なんて言ってると、お詣りに来たひとが。
誰だろうと見に行くと荒物屋の娘。父親が長生きしますように、それから店にお客さんが来ますように、売れ残ってるわらじが売れますように。そう祈ってお酒を置いて帰っていく。
美味しいお酒だったので神様が喜んで娘の願いを叶えてあげる。
うおー「ぞろぞろ」だ!こんな入り方初めて聞いた!

床屋の大将が羨ましがって真似をするんだけど、しつこく三回もお願いするものだから、最初は「わかったわかった。叶えてやるよ」と言っていた神様がいらっとするのが面白い。
ふわふわしていてちょっと気持ち悪くて楽しい「ぞろぞろ」だった。


百栄師匠「天使と悪魔」
百栄師匠のダークサイド炸裂で楽しい!
何回か聞いているけど今までで一番ウケていたのは落語通が多かったから?なのかもしれない。
それにのせられて百栄師匠がどんどんテンションが上がっていくのがまたおかしくておかしくて。
楽しかった~。

異類婚姻譚

 

異類婚姻譚

異類婚姻譚

 

 ★★★★

子供もなく職にも就かず、安楽な結婚生活を送る専業主婦の私は、ある日、自分の顔が夫の顔とそっくりになっていることに気付く。「俺は家では何も考えたく ない男だ。」と宣言する夫は大量の揚げものづくりに熱中し、いつの間にか夫婦の輪郭が混じりあって…。「夫婦」という形式への違和を軽妙洒脱に描いた表題 作ほか、自由奔放な想像力で日常を異化する、三島賞&大江賞作家の2年半ぶり最新刊!

 

夫婦というものをものすごくグロテスクに描くとこうなるのだな。家に帰ってきてまでめんどくさいことは考えたくないという夫と、違和感を感じながらも今の生活が楽だからという理由で思考を停止している妻。
最初はこの異常な夫婦関係は夫によるものだと思っていたのだが、後半を読むと、いやそうじゃないのかとも思う。

とにかく気持ち悪い話なのだが表現にユーモアがあるから思わず笑ってしまう。(顔が油断してバラバラになるっていうのには笑った)

好きじゃないけど嫌いでもなくてよく考えると結構好きな気もする。微妙な後味。

第2回鯉丸と音助

9/5(月)、らくごカフェで行われた『第2回「鯉丸と音助」』に行ってきた。

・音助「浮世床(将棋、碁、本)」
・鯉丸「かぼちゃや」
・南なん「猫の災難」
~仲入り~
・鯉丸「野ざらし」
・音助「明烏

音助さん「浮世床(将棋、碁、本)」
第二回目のこの会。
なぜ二回目にゲストを呼ぶことにしたのかといえば、一回目はまだ会自体がどういう趣旨になるのかはっきりしなくて自分たちもふわふわしている。だからゲストを呼ぶような状態ではなかった。
あと一回目はお客さんも行ってみようという気になるけど二回目になると「ま、いいかな」となりがちなのでここでぐっとひきつけなければというのがあった
で、ゲストは誰にしようか、自分たちが好きな人に来てもらおうということになり、迷うことなく南なん師匠を招くことに。
前座時代、入ってきただけで怖くて身体がビクっとしてしまう師匠もいたけれど南なん師匠は本当に僕ら前座にとって「癒し」。
入ってきたら思わず前のめりになって近づきたくなっちゃう。何をするか見ていたい。そんな存在でした、と。

そこまでぶっちゃけますかという内容に笑ってしまった。音助さんって前座時代はとにかくソツがない優等生な印象があったけど、ニツ目になって「ああ、こういう人だったのか」というのが表に出てきてそれが面白い。

長いまくらから「浮世床」。
これがなんだろう。なんかあんまり音助さんらしくないっていうか…誰に教わったんだろう?と気になってくるようなちょっと壊れた「浮世床」で。
特に本のところはたどたどしいというよりはどもりが酷くて激しく速い(笑)。
違和感を覚えつつも結構笑ってしまった。


鯉丸さん「かぼちゃや」
袖で音助さんがしゃべるのを聞いていたんですけどこうやって傍で聞いていると結構失礼な奴だなって思いますね、と鯉丸さん。
ちょっと不遜な感じがするんだな、たぶん。姿が見えずに話してる内容だけ聞いてると。

この間の一回目が終わった後に二人でゲストに誰を呼びたい?誰呼んじゃう?と話していて同時に「南なん師匠!」「よし!じゃお願いしよう!」というような明らかに夜中のテンションで決めた今回のゲスト。
そのままのテンションで次の日寄席に出ている南なん師匠を訪ねて行ってお願いすると快諾していただき、よっしゃ!と大喜び。
3日ほどたって「これは大変なことをしてしまったのではないだろうか」と我に返って青ざめた。

前座時代はよく見ていたけれど二ツ目になってからそれほど見ていなかった鯉丸さん。
鯉八さんとの会では結構無口だった印象があるのでまくらをしゃべる鯉丸さんにちょっと驚いた。丸ちゃん頑張ってる!ってあたしは何者や。

そんなまくらから「かぼちゃや」。
前座時代より滑舌がよくなってる気がする。
そして前はこんなにゆったりやっていなかったような…。
与太郎さんは鯉丸さんには合ってる気がするな。


南なん師匠「猫の災難」
今はこういう小さな会場があっていいですね、と南なん師匠。
20名も入れば満員なんですから。いいですよ。
私もニツ目になったとき、むさしさんと二人で会をやったことがありました。
早稲田の店で。2月でね。そうしたらその日雪が降っちゃった。
来てくれたのは知り合いが2名。こちらも2名だから「あいこ」です。
この会、これが2回目ってことですけど。続けるといいです。続けることが大切です。私のその会はそれっきりになりました。

そんなまくらから「あーせっかくの休みなのになぁ…」となんと「猫の災難」へ。
南なん師匠の「猫の災難」は初めて!うれしい!

一文無しでお酒も飲めなくて「せっかくの休みなのになぁ」とぼやいているくまさん。
そこへ通りかかった隣のおばさんから猫のお見舞いの鯛の頭と尻尾をもらってごきげん。
そこへ兄貴分が訪ねてきて一緒に飲もう、懐があったかいから酒は俺が買ってくるよ、と言われて「ほんと?ありがてぇなぁ」とうれしいくまさん。
ざるでお腹のところ(何もない)を隠した頭と尻尾だけの鯛を見て大喜びの兄貴に「猫のおあまり」と言えず「あ、ああ、それね…。」ともごもご。
酒を買ってくる!と張り切って出かけた兄貴を見送ってすぐに「さてどうしよう」。
すぐに心配しだすところに気が弱くいくまさんがあらわれている。
猫のせいにするしかしょうがない。それしかない。決めた!と決めるのがなんともいえずかわいらしい。
帰ってきた兄貴に猫が鯛を持って行っちゃったといって言い訳するところもいちいちばかばかしくておかしい。

兄貴が酒を置いて鯛を買いに行ったあと、お酒を飲み始めるとほんとにほんとにうれしそう。見てるとこっちも飲みたくなっちゃう。
鯛をどうしようと心配してるのに飲んでいるとどんどん気が大きくなっていくのがすごく楽しい。
「あー今日はいい休日だー」っていうのが最初の「あーせっかくの休みなのに」と対になっていて、見ているこちらも「よかったねぇ」という気持ちに。

最初から最後までとってもチャーミングな「猫の災難」だった。
大好きな噺を大好きな師匠で聴ける幸せ…。
鯉丸さん、音助さん、南なん師匠をゲストに呼んでくれてありがとう!


音助さん「明烏
別の会で音助さんが「明烏」をやったというのを見て、合うだろうなぁと思っていたけれど、とてもよかった。
若旦那と源兵衛、太助の対比がはっきりしていてテンポがよくて見ていて気持ちがいい。
音助さんは芸がきれいなところが好きなんだけどきれいなだけじゃなく引いてる冷静に見ている部分があるからそこがいいな。

浅草演芸ホール9月上席夜の部

9/3(土)、浅草演芸ホール9月上席夜の部に行ってきた。

・歌実「初天神
・やなぎ「自由が丘由来」
・さん助「手紙無筆」
・小菊 粋曲
・菊太楼「あくび指南」
・一朝「芝居の喧嘩」

やなぎさん「自由が丘由来」
うーん。どうも噺自体が好きになれないんだよなぁ。
無理があるっていうか、親が娘に向かって「お前はかごの鳥だ」なんて言うのがあまりにもリアルじゃないっていうか。
せっかくまくらで盛り上がっていてこの噺って…。うーん。

 

さん助師匠「手紙無筆」
なんとなくいつもの明るさが感じられなかったような。


一朝師匠「芝居の喧嘩」
次々に喧嘩が勃発する面白さ。
この噺をこんなに明るく楽しく聴かせられるのは一朝師匠以外ありえない。楽しい!

池袋演芸場9月上席昼の部

9/3(土)、池袋演芸場9月上席昼の部に行ってきた。

・茶光「色事根問」
・竹三「動物園」
・よし乃 太神楽
・笑好「狸札」
・米福「金明竹
コントD51 コント
・南なん「置泥」
・小文治「不動坊」

茶光さん「色事根問」
それほどまだこなれた感じはないのに面白い。
上方落語って2割増しぐらい面白いんだなぁ。そればっかりだと疲れるけどこうやって寄席に何名か上方の人が入ってると無条件に楽しい。
どうしたらもてるかをご隠居に聞きく行くというただひたすらにばかばかしい噺で楽しかったー。

 

米福師匠「金明竹
しーんとなってしまった客席を明るい高座で楽しい雰囲気に戻したのはさすが。
芸協の噺家さんは面白い人とムムムな人の落差が激しいなぁ。
わりと自信たっぷりに間違ったことを言うおかみさんがおかしい。

 

南なん師匠「置き泥」
「置き泥」率高し!(笑)。
泥棒に入られた男が泥棒からお金をもらって少しずつ緩んでくる感じが見ていてたまらない。それまでの絶望感とか孤独感が伝わってくる。悪質な感じがしないんだよなぁ。南なん師匠の「置き泥」は。
「そのうちきっといいことあるよ」も本気で言ってるんだろうな、って感じがする。


小文治師匠「不動坊」
小文治師匠も大好きな師匠。いつ見ても芸がきれいでちゃんとしていてほっとする。寄席の良心。

古今亭志ん丸・古今亭菊太楼・金原亭竜馬『三人寄れば文殊の知恵熱』第4回

9/2(金)、道楽亭で行われた「古今亭志ん丸・古今亭菊太楼・金原亭竜馬『三人寄れば文殊の知恵熱』第4回」に行ってきた。
もともとこの日は会社の引っ越しの荷造りをしないといけなかったので落語に行くつもりはなかったのだが、思いのほか早く終わりそうだったのと、twitterで菊太楼師匠がとても控えめに「来てください~」とつぶやかれていたので、行ってみようかなと思い急きょ行くことに。
もともとは打ち上げにでるつもりはなかったのに、いざ店に行って店長から「打ち上げどうですか?」と聞かれ「じ、じゃ打ち上げも出ます」と。うほほほ。

・龍馬「青菜」
・志ん丸「お茶汲み」
~仲入り~
・菊太楼・龍馬・志ん丸「三題噺/扇子・サークルKサンクス築地市場移転」
・菊太楼「位牌屋」


龍馬師匠「青菜」
この日龍馬師匠が着ていたのが渋い色ながらよく見てみると赤とんぼの柄が入っていて素敵な着物。
実はこれは馬石師匠にいただいたんです、と龍馬師匠。
この季節は着るものもそうですけど噺も難しい。ちょっと先取りして秋の噺もいいけれど、こうも暑いとやはりまだ「夏」ですねぇ、といいながら「青菜」。

この夏はとにかくよく「青菜」を聞いたなぁ。一番よく聴いたのが「小三治師匠」っていうのもかなり贅沢。これだけ小三治師匠を聞いてしまうとどうしても比べてしまいがちなのだが、若い噺家さんの「青菜」はまた小三治師匠とは違った趣があってたのしい。
龍馬師匠の「青菜」はテンポよく若々しくて楽しかった。

志ん丸師匠「お茶汲み」
大好きな噺だけどなかなかやられる方がいないので嬉しい!
もてない男たちがもてない自慢をしているところにやってきた源ちゃん。いつもは同じようにもてない源ちゃんが夕べはひどくもてた、と自慢話。
それを聞いた男が自分もやってみようと同じ花魁を指名する。

青紫花魁がひどい器量っていうの、初めて聞いたかも。
真似をしようと行った男が最初に出てきたお茶を「まずい」と言いながらゴクゴク飲むんだけど、それがおしまいのシーンにつながってくるのが面白い。
こういうバカバカしい噺、好きだなぁ。


菊太楼師匠・龍馬師匠・志ん丸師匠「三題噺/扇子・サークルKサンクス築地市場移転」
お客さんから題をもらって3人がその場で作ってやるという趣向。
「このことはみなさん帰る時には忘れて下さい」とどなたかがおっしゃっていたのでアレなんだが…そして1週間以上たってしまって私の記憶も途絶えがちなんだけど、菊太楼師匠のやられたのが一番面白かった!というのだけは覚えている。


菊太楼師匠「位牌屋」
ケチのまくらからの「位牌屋」だったんだけど、そのまくらで「自分が小学生の頃に目の当たりにしたことがある」と言って、消しゴム忘れたから貸してと隣の子にいったら「消しゴムが減るからだめ」と言われた、というのがおかしかった。いたいたそういう子!そう言われると子どもながらになんともいえず「いやだなぁ」という気持ちになったことを思い出した。ああいう子はどういう大人になったんだろうなぁ…。

「位牌屋」は初めて聞いた噺。
こういう知らない噺をしてくれたっていうだけで、その噺家さんの株がぐっと上がっちゃうんだけど、軽くてばかばかしくて楽しくて好きだったー。いいなぁ、菊太楼師匠。

あと三題噺の時だったか菊太楼師匠が「噺家」という職業について語っていた時に「頑張れば噺家でいられる」といったあとに「その頑張るっていうのは稽古を頑張るっていうことではなく、噺家でいることを頑張る、その場所にいることを頑張る」とおっしゃっていたんだけど、それってすごくよくわかるなぁ。噺家だけじゃなくどの仕事にも通じることだと思う。
とにかくその場にいること。居続けること。それが一つの仕事を長く続ける唯一の術っていう気がする。

打ち上げもほとんどが知らない方ばかりだったのだけれど、師匠方がいろんな話をしてくれて、とても楽しかった!感謝。

あの素晴らしき七年

 

あの素晴らしき七年 (新潮クレスト・ブックス)

あの素晴らしき七年 (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★

戦闘の続くイスラエルで愛しい息子が誕生した年から、ホロコーストを生き延びた父が亡くなった年まで。激動の七年間をめぐる万感の思いを、深い悲しみと類い稀なユーモア、静かな祈りを込めて綴った三十六篇。世界中で人気の掌篇作家による、自伝的エッセイ集。  

 「突然ノックの音が」の作者による自伝的エッセイ。

戦闘の絶えない国で生きていくこと、守らなければならない家族を持つこと、それはもう決して他人事ではなく読んでいて苦しくなってくる。
しかしどんな状況であってもこの人はユーモアを忘れない。何事も笑い飛ばす。戦争さえも。

時には大声をあげて泣いたり言ってはいけないことを口走ったりしながらも、笑いながら生きていこうという強い意思を感じる。笑いながら泣きながら読み終えた。
とても良かった。

月刊少年ワサビ第89号

8/31(水)、らくごカフェで行われた「月刊少年ワサビ第89号」に行ってきた。

・わさび「粗忽の釘
・わさび「ANG(トライアングル)」(三題噺:鈴虫、ピアノ、バミューダ海域)
~仲入り~
・わさび「欠伸指南」

わさびさん「粗忽の釘
予約で満席となった今日の会。何名かお断りした人もいたらしく、皆さんはその人たちの想いも背負って見に来ているのですよ、とわさびさん。
この会を始めたころはお客の数が10数名ぐらいで、だいたい予約でそれぐらいだなとわかっていながらも前の日にプログラムを30部ぐらい刷って「こんなに来るわけないのにな。ふっ」と思っていたのが、今ではこんなに…とうれしそう。
確かにいつもの落語ファン以外に、ライブとかに来ていそうなオシャレピーポーもいて、わさびファンの裾野が広がっているなぁという感じ。

そんなまくらから「粗忽の釘」。
テンポがよく勢いがあってとても楽しい「粗忽の釘」。ところどころにわさびさんらしいクスグリが入ってそれがまた楽しい。

 

わさびさん「ANG(トライアングル)」(三題噺:鈴虫、ピアノ、バミューダ海域)
友人の家に遊びに行くと、冷蔵庫の中に入っていたプロセスチーズが三角じゃなくて細かく砕いてあったり、針金ハンガーが四角形だったり。なんだこれ?と思っていると「実は俺、三角形が怖いんだ」と。
バミューダ海域を信じて恐れている男が仕事で沖縄に行くことになり日本の「バミューダ海域」に飲みこまれてしまうのではないかと不安がり、飛行機でパニックにならないように昼夜逆転して飛行中は寝てしまおうと考える。

毎月ちゃんとお題に沿った噺をちゃんと仕上げてくるところがわさびさんは凄い。
多少無理があってもきちんとオチがついてはなしとして成立している。すばらしい。


三の隣は五号室

 

三の隣は五号室

三の隣は五号室

 

★★★★

傷心のOLがいた。秘密を抱えた男がいた。病を得た伴侶が、異国の者が、単身赴任者が、どら息子が、居候が、苦学生が、ここにいた。―そして全員が去った。それぞれの跡形を残して。

 テレビ番組や小道具(レバー式の蛇口とか水圧の弱いシャワーとか物干し竿にかける自作のアンテナとこ)で時代の空気をダイレクトに伝えてくる。

すごいなー。
だからなに?というようなとりとめもないストーリーの積み重ねなのだが、それぞれの抱えている寂しさとか心の隙間のようなものが見え隠れしてくる。

なかなかの策士よのう…という感じだがあざとすぎないところが好き。
今読書不調なのでそこまで乗りきれなかったけど面白かった。

池袋演芸場8月下席昼の部

8/27(土)、池袋演芸場8月下席昼の部に行ってきた。

・市朗「転失気」
・わん丈「寄合酒」
・燕弥「紙入れ」
・さん助「だくだく」
ホンキートンク 漫才
・金馬「禁酒番屋

わん丈さん「寄合酒」
細かいところが一味違うわん丈さんの「寄合酒」。わん丈さんは前座の時の印象が強いから新作派というイメージがないんだけど、やっぱり新作派なんだなぁ、と感じる。
スピード感があって明るくて楽しい。

 

燕弥師匠「紙入れ」
明るいお客さんだったんだけど「紙入れ」に入ると客席に妙な緊張感が。
あまり落語を聞いたことがないお客さんが多くて展開をドキドキしながら見守っている感じ。
旦那との会話が始まったとたんに安心したようにどっと笑いが起こって、こちらもほっと安心。
この噺は燕弥師匠に合ってるなぁ。やっぱりいい男だからかな(笑)。

 

さん助師匠「だくだく」
さん助師匠の「だくだく」は何回か聴いてるけれど、今まで聞いた中で一番面白かった。
お客さんが最初の方からドカンドカン笑ってさん助師匠もどんどんノっていく感じ。こういうのが寄席って面白いなぁ。
絵を描いてもらってるところでがちゃん!と何かが落ちる音がして、さん助師匠が「なんか落ちたよ」と言ったのがおかしかった~。槍を描いてもらうのをわすれてることに気が付いて「あ!肝心なものを描いてもらうの忘れてた!落ちたのに気をとられてて」にまた大笑い。

目の悪いどろぼうのほんとに怪しい目つきがおかしくて、その後の二人の「粋な」やりとりも楽しく、笑った笑った。
「だくだく」って落語の中で一番好きな噺。

 

金馬師匠「禁酒番屋
金馬師匠が登場すると「待ってました!」の掛け声がかかって、すごくうれしそうな師匠。あーかわいいーーー。
刈り込んだ「禁酒番屋」だったけど、酒を飲んでどんどん酔っぱらってくる番屋の役人とおっちょこちょいで失敗しちゃう酒屋の若い衆とのやりとりが楽しかった~。

 

 

笑福亭たま深川独演会

8/26(金)、深川江戸資料館で行われた「笑福亭たま深川独演会」に行ってきた。
久しぶりのたまさん。好きな噺家さんが増えすぎてなかなか行けなかったんだけど、久しぶりに爆笑しようと思って来た。ゲストが萬橘師匠っていうのもうれしい。

・希光「平林」
・ふう丈「?(ハゲ依存の新作落語)」
・たま「強情」
・たま「船弁慶
~仲入り~
・萬橘「宗論」
・たま「クイズ(新作)」、ショート落語

 

ふう丈さん「?(ハゲ依存の新作落語)」
ちょっとハプニングもあったけどまだまだ若いふう丈さん。がんばれ~。

 

たまさん「強情」
最近のトピックが2つありましてこれ両方話すとものすごく長くなっちゃう、とたまさん。1つを先に話してもう一つは二席目の前にやります、と。
一つ目が神戸に寄席を作るという話。いろいろな政治的(?)事情もあるようなのだが、論理的に「こうや!」と言い切るたまさんが素敵。どんな結果になるんだろうか。気になるところ。
そんなまくらから「強情」。これは「意地比べ」だね。あまりしつこく「強情」じゃなくあっさりしてるところが好み。

たまさん「船弁慶
二つ目のトピックが引っ越ししたこと。
この時に電話番号が変わるかどうかを心配していて、普通だったら変わるところだけど光電話だからもしかして変わらずに済むんじゃないかと思い、OCNに電話して聞いてみた。
もし変わるなら解約するけどもし変わらないなら工事までの間が多少あいても構わないと言うと、変わらないとの返事。それならばと続けることにした。
工事まで1カ月かかると言われたのだが2週間たった時に工事の日取りを決めましょうと電話がかかってきた。そのとき担当者が「電話番号は変わりますが」とあっさり言った。
えええ?変わらない言うとったやん!だから1カ月待つことにしたのに!
あれこれ言い募ると「私ではわかりかねますので後で上司がかけなおします」と。
しばらくすると上司から電話があり「お問い合わせいただいた電話の内容を確認したところ、たまさんが”番号は変わるか”と聞いてオペレーターが”市内局番が変わらない移動であれば変わりません”と答えていた」と。
たまさんにしてみれば市内も市外もなく番号が変わるか?と聞いているのだがオペレータは「市内局番が変わらない移動なら番号は変わらない」と答えているので、両方とも間違っていない、と。
ということは俺だけが悪いわけやないよな?と言うと「ええ。ただこの場合、オペレーターが直接答えずに工事担当に代わるのがベターでした」と。

ベターってなんやベターって?こっちは番号が変わるか聞いているのにわからんこといって「変わらない」答えたんやからバッドやないかい!ベターっていうのはいいってことやろ。なんもよくないわ!グッドとバッドで言うたらどっちや!!と詰め寄ると「バッドです」。
こっちは転居はがきをもう出してしまっていてそれに住所は変わるけど電話番号は変わりませんと書いて出してしまってるんや!その分はどうしてくれるんや!と言うと「今のところその分を出すという判断はしておりません。」
それでも詰め寄ると「私では答えかねます。上の者に聞かないと」
それなら今答えかねるお前が俺に電話で話してるのはグッドとバッドで言ったらどっちや!
「ええと…バッドです」。

うわはははは。脚色してるんだろうけど面白い!
そんなまくらから「船弁慶」。これがまたすごく面白かった。鬼嫁の鬼ぶりが最高におかしい。
でも船のところになると鳴り物が入ったりしてそこがまた楽しい。

萬橘師匠「宗論」
仲入り後に出てきた萬橘師匠。たまさんとはもう7年来の付き合い。こうして呼んでもらえてうれしいですけどあの兄さんを一言で言うならば「めんどくさい」。花形演芸会で二人とも金賞を取ったんだけど、萬橘師匠の方が上に名前が出ていたことが気に入らん!と電話をかけてきたたまさん。
「お前のほうが得点が上っちゅうことやろ!」
「いやあにさん、そうじゃないですよ、きっと。たまたまですよ、たまたま」
「それはどういうことやねん!」
もうそんなん知らんわ!と思って話してると「それはグッドかバッドかどっちやねん!」

絶対話を盛ってるんだろうけど、面白い~。
長男を幼稚園に送って行った時の話もおかしかったなぁ。
そんな長いまくらから「宗論」。テッパンの面白さ。イエーーースキリスト」と言う時の、----でちょっとタメが入るのがわけもなくおかしい。笑った笑った。

たまさん「クイズ(新作)」、ショート落語
ここまでですでに2時間過ぎててほんとにたまさんの会は盛りだくさんだなぁ。
ショート落語、字を書くスペースがなかったからと人文字みたいので表してたのがいかにもたまさんって感じがして楽しい。
クイズチャンピオンの極意がいかにも頭のいいたまさんらしくて面白かった。

池袋演芸場8月下席昼の部

8/26(金)、池袋演芸場8月下席昼の部に行ってきた。

・市朗「転失気」
・やなぎ「穴子でからぬけ
・燕弥「夏泥」
・さん助「真田小僧
ホンキートンク 漫才
・小はん「親子酒」
・菊志ん「看板のピン」
~仲入り~
・ろべえ「千早ふる・素粒子版」
・琴柳「笹野権三郎・海賊退治」
・仙三郎社中 太神楽
・三三「小言幸兵衛」

 

やなぎさん「穴子でからぬけ
地元北海道の長い長いまくら。今日は落語をやらないのかなーと思っていたら「からぬけ」を3分ほどで。やりたい放題ですね(笑)。

 

さん助師匠「真田小僧
これがまた見たことのないような「真田小僧」。
前半の金坊が話を引き延ばしてお金をふんだくるところはあんまさんじゃなくて親父の酒飲みの友だち。酒を買いに行って戻ってみると障子が閉まってて…友だちがおっかさんに襲いかかろうとしているシルエット…。障子に穴をあけてみるとお尻を浮かせておならをしてただけ。ばかばかしい!(笑)
その後、帰ってきたおかみさんに金坊の話から真田幸村公の話を親父が語りだすのだがこれがものすごくうやむや。
それに対しておかみさんが「お前さん、話の内容がよくわからないよ」「どれだけ話ベタなんだよ!」と言うのがおかしい。

帰ってきた金坊に「どこに行ってきた?」と聞くと、講釈を聞いてきたと。真田幸村公の話を聞いてきたと言う金坊に「お前また俺が話してるのを聞いてそんなこと言いやがって、じゃあ語ってみろ」と言うと、これがすらすらとよどみなく講釈を語り始める。
おおお、じゃ、さっきの親父が語れなかったのは、さん助師匠の記憶があいまいで喋れなかったわけじゃないのね!(←失礼!)
いやもうこのよどみなく語るところがおかしくておかしくて。
真田小僧」ってあんまり好きな噺じゃなかったけど面白かったー。

 

小はん師匠「親子酒」
初めて見る師匠。またかーの「親子酒」だったんだけど、ところどころが違っていて面白かった。
お酒を飲みたがるおとうさんがかわいい。

 

ろべえさん「千早ふる・素粒子版」
二回目だったんだけど面白い!
とにかくろべえさんは芸が暗くてまくらからどんどん内にこもっていくような印象。これぐらいはっちゃけたら楽しくていいと思う。がんばれ~。

 

三三師匠「小言幸兵衛」
おおう。また「小言」とは…ちょっとがっかり…。他の噺が聞きたかったなー。

池袋演芸場8月下席昼の部

8/25(木)、池袋演芸場8月下席昼の部に行ってきた。

・一花「堀の内」
・やなぎ「自由が丘由来」
・燕弥「つる」
・さん助「夏泥」
・ニックス 漫才
・金馬「蟇の油」
・菊志ん「初音の鼓」
~仲入~
・ひろ木「熊の皮」
・琴柳「小松屋鶴吉(上)」
・仙三郎社中 太神楽
・三三「居残り佐平次

一花さん「堀の内」
スピードがあって明るくて面白い!一花さんどんどん面白くなってきてるぞう。

 

やなぎさん「自由が丘由来」
噺自体がちょっとうーん…。

 

さん助師匠「夏泥」
この男、明らかに泥棒にたかってるんだけど、不思議と嫌な感じがないのはなんでだろう。
楽しい。

 

菊志ん師匠「初音の鼓」
鼓を打つ回数がどんどん多くなってきて道具屋が「確かめすぎ!」と言ったのがおかしかった。

 

ひろ木さん「熊の皮」
不安を誘うまくら(笑)からの「熊の皮」だったんだけど、その危うさがこの噺にはあってて意外にも(失礼!)面白かった。

 

三三師匠「居残り佐平次
三三師匠は前方の人や噺を取り入れるのがうまいなぁ。佐平次がお座敷に出るシーンでひろ木さんの危うさを口にしたのには笑った。

お江戸日本橋亭定席公演 若手特選会 日本橋成金

8/24(水)、お江戸日本橋亭で行われた「お江戸日本橋亭定席公演 若手特選会 日本橋成金」に行ってきた。

・茶光「つる」
・金の助「道具屋」
・昇也「寄合酒」
・昇々「あごびょん」
・南なん「へっつい幽霊」
~仲入り~
トークコーナー(南なん、昇也、昇々、鯉八、柳若)
・柳若「七戸狐」
・鯉八「長崎」

昇也さん「寄合酒」
浅草で笑三師匠の司会で若手大喜利をやってるという話。
とにかくスピードがあって明るくて楽しい。まくらも面白いし好きだなぁ。
初めてのお客さん(団体客も)の心もグッと掴む。さすが。

昇々さん「あごびょん」
昇々さんの前にお客さんがまたどっと入ってきて会場は一種異様な雰囲気に。なななんだこれ?
そこに出てきた昇々さん。
落語初めてのお客さん多いみたいですけどあらかじめ言っておきますけど私の落語はあくが強いです」
これには大笑い。確かに強い。わはははは。

日曜の昼間にやってる「ザ・ノンフィクション」という番組が大好きだと言う昇々さん。先日見た私立高校の応援団の話をして、それをうまく噺に取り入れつつの「あごびょん」。
いやー笑った笑った。おバカ男子のおバカが全開で楽しかった!

南なん師匠「へっつい幽霊」
南なん師匠だ出てくる前に団体客が一斉に退場。な、なんだこりゃ?いやでも良かったかも。むしろ。なんか異様な雰囲気だったから。
いつもの励まし合っていきましょうからの「へっつい幽霊」。
幽霊がかわいくてかわいくて…。
こんな幽霊いるかもしれないと思わせる何気なさ。
へっついを勝った男のからっとした明るさも楽しい!

トークコーナー(南なん師匠、昇也さん、昇々さん、鯉八さん、柳若さん)
大好きな南なん師匠に若手が次々質問をして芸談を聞くという夢のような企画。

・入門について
寄席に通ってて噺家になりたいなと思ってね。
審査したんですよ、噺家を。何人か候補がいてね。
それで最終的にうちの師匠にしました。
芸協が好きだったから芸協に入ろうと思ってた。
最初は断られた。食えねぇよ、よく考えろと言われて。
それから親と一緒に来いって。
困ったね。親には内緒だったから。
オヤジを説得して一緒に行ったけど、そこでも食えないからよく考えろって言われて。
次の日電話して親も大賛成してますって言ったら、それじゃしゃーねーなって。この電話公衆電話からしたの。家からはかけられなかった。ほんとは反対されてたから。

・見習い時代
半年は鞄持ち。
その頃に師匠が北海道にいくから一緒に来いって。
嬉しくってねえ。北海道に行けるのかって。
船で行ったんだけど台風ですごいしけで。ものすごく揺れて。風呂なんか波打っちゃって風呂の中でちょっと溺れちゃった。
師匠はあとから飛行機で来て。
でもそれからはもう毎日小言。おめえはなにボーッとしてんだ!てきぱき動け!って言われて。
そう言われてもなにもわからないからなにしていいかわからない。
仕方なく体をただこんなふうに(手と足ばらばらに)動かしてみたりしてまたおこられて
行くときは嬉しかったけどもう早く帰りたかった。

・最初に教わった噺、師匠から教わった噺
最初に教わったのは寿限無
師匠からじゃなくて兄弟子の南喬師匠から。
三遍稽古で録音しちゃダメで…あれは覚えるコツがあるんだけど、そんなの知らないから何べんやっても覚えられない。5回、6回と稽古してもらってるうちに、南喬師匠はそのころアパートに住んでたんだけど、隣の家の子供の方が先に覚えちゃった、寿限無あれは悔しかったね。

師匠からも直接噺を教えてもらった。胴切りとか百年目とか。
師匠は自分の高座をビデオに録ってて、それを見ろって言うから、テレビの前に正座してテレビに向かって「よろしくお願いします」。しばらくして、あ、となりに本人がいると気がついて、そっちにも「よろしくお願いします」。
胴切りは素人のときに師匠のを見ていて好きだったんだけど自分が入門してからはやってるのを見たことなくて、あーもうやらねぇのかなぁ忘れちゃったかなぁと思っていたら、ある時ふと寄席でかけたので、いまだ!とおもってすぐに稽古してくださいって、頼んだ。

芸協じゃない師匠からも教わった方がいいなとおもって、落語協会の師匠方に教わりに行ったりしてる。さん喬師匠、とか。
「だから芸協でされてる落語協会の噺は南なん師匠から教わった人が多いんですよね」

・「師匠は志ん朝師匠にもはまってましたよね?」
住吉躍りに参加してたから。落語協会の寄席で出番をいただけたのはありがたかった。いろいろ勉強になった。
膝を悪くしてもう踊れなくなっちゃったけど。
雰囲気は違うし気を使うよね。(その前に昇也さんが住吉踊りに出て楽屋で居場所がないとまくらで話していたので)

・「二ツ目になってからどんな風に過ごしてたか。」(鯉八さん)
最初の半年は先輩から仕事もらえてパラダイスだったけどそのあとは地獄だったね。今みたいに二ツ目が落語やる場所があんまりなくて。
だからいろんなことやったかな。
で、からだ壊しちゃった。栄養とれなくて空気ばっかり吸ってたから。
過呼吸
おれのはそれよりきついやつ。えばって言うけど。あれは空気の吸いすぎ。

・「趣味は?」
いろいろあるよ。映画好きだし芝居も…歌舞伎を見に行った。今は新劇。
あと俳句もやるし。
浪曲を習いに行ったこともあったな。(といってうなる。)

二ツ目のとき、蝠丸師匠と鯉昇師匠が電話してきて、今伊豆にいるから来いよって言われて、仕事かなと行ってみたら、駅に迎えに来てくれた二人が懐中電灯持ってこれから散歩に行く、って。
廃墟になってるホテルがあるから探検に行くって言う。
行ってみると真っ暗でいかにも薄気味悪い。
あたしはそういうのがすごく苦手で。二人はそれを知っててわざと呼んだんだね。
入りたくなかったけど一人で外で待つのも怖いから怖々入ってみたけど。
そのときになにかに…とりつかれちゃった。ああいうのって一番怖がってる人につくんだって。
それから帰ってきて悪いことばかり起きる。ほんとに悪いことが、次から次へと。
これはお祓いしなきゃと思ったけどどこにいったらいいかわからない。とりあえず浅草の観音様行って、あたしになんかわからないけどとりついてます。どうか助けてください、ってお願いしたら、それからなくなった。だからなんかご利益があったんだね。

「もしかするとそれがこんどはうちの師匠にとりついてハゲちゃったのかも。」と柳若さん。
そうか。私を経由して鯉昇師匠のところに行ったのかも。

・「7年ぐらい前の芸協の機関誌に師匠が近くの小学校に行って校庭の鉄棒にぶら下がってるって書いてましたけど今もされてるんですか?」(鯉八さん)

あ、あれはね、学校じゃなくてグラウンド。家の前にグラウンドがあるんだよね。そこの鉄棒にぶら下がるの。懸垂とかなにもできないからぶら下がるだけ。
今日は28秒できた、とか。
「案外短いですね!」(笑)。
最近はもっとできなくなってきて17秒…

・お客さんからの質問コーナー
「いちばんのしくじりは?」

いろいろあるなぁ。いろいろしくじってるんだよね。
師匠の頭にトースター落としちゃったり。
そのときはおかみさんのほうが激怒した。この人になにかあったらあたしと娘は路頭に迷うのよーって。

あと自分の後輩が二人入って嬉しくて師匠の家の掃除をするのに、自分はマッサージチェアに座って、二人に指示してたら、師匠が飛んできて、お前は何様のつもりだ!って。

でもうちの師匠がありがたかったのはそれでも破門にせずにおいていてくれたこと。
他の師匠だったらきっと破門になってた。

「成金のみなさんは南なん師匠のネタで何が好き?」
水屋の富
徳ちゃん
仲村仲蔵

(鯉八さん、水屋の富を熱く語る)

とにかく南なん師匠がお茶目で気さくで意外にも話好きで、成金メンバーが前のめりになって話を楽しんでいて、聞いてる私たちもほんとに楽しくて、最高の時間だった!

柳若さん「七戸狐」
前に小助六師匠で聞いたことのある噺。
狐に化かされてトホホな男二人が楽しい。
汗だくの熱演。

鯉八さん「長崎」
久しぶりに鯉八さんの聞いたことのない新作を聞くドキドキを味わった。
どういう展開をするのか分からずに噺の世界に入り込む楽しさよ。
最初の「今日は蝉がやけにうるさいと思ったら」でハートを鷲掴みに。

旦那の墓の前で妻が、結婚前に二人で初めて行った長崎のことを思い出す。
せっかくの旅行なのに、前に付き合っていた女と行ったことをちょいちょい口走る彼氏にブチキレる彼女。
このハートウォーミングなような非人間的なような、甘くて苦い独特の世界。
やっぱり鯉八さんは面白いなぁ!

5時半開演で終演が9時という長丁場だったけど、ほんとに楽しかった~。満足!

池袋演芸場8月下席昼の部

8/24(水)、池袋演芸場8月下席昼の部に行ってきた。

・小かじ「出来心」
・やなぎ「初天神
・たけ平「相撲場風景」
・さん助「手紙無筆」
ホンキートンク 漫才
・金馬「夏の医者」
・菊志ん「欠伸指南」

小かじさん「出来心」
開口一番で出来心にも驚いたが、ものすごく面白くてそれにも驚いた。
つまらなそうに落語をやるひとだなぁというのが今までの小かじさんの印象だったから。
二ツ目が決まって殻をやぶったんだろうなぁ。そう思うとなんだか感慨深い。

やなぎさん「初天神
やなぎさんが白酒師匠化してる!
早口でスピーディーに展開させつつ、ナンセンスなギャグを入れてくる。
団子買っておくれよ団子ねぇ団子なにも難しいこと頼んでんじゃないよタンゴ踊れなんて言ってねぇよ団子だよ団子。とか、みつがいい!言うのを父親がダメ!絶対ダメ!というと、みつ買ってやれよと加勢するオヤジが次々現れたり。
今までやなぎさんはそんなに好きじゃなかったんだけど(失礼!)ちょっと好きになってきたかも。

たけ平師匠「相撲場風景」
客いじりしつつの漫談はいかにも林家っぽい。お客さんにはうけるけど私は昨日までのたけ平師匠の方が好みだな。

さん助師匠「手紙無筆」
他の人のやる「手紙無筆」とまるで違う。展開もそうだけど漂う空気が違う。なんだろう。
聞きあきた噺(親子酒、短命、締め込み、替わり目)なんかも、さん助師匠がやると全然違うんだろうか。
あーそういえば「宮戸川」も違ったもんなぁ。ちょっと聞いてみたい。

金馬師匠「奈都の医者」
最高に楽しかった。
医者がいないような田舎の村。父親が病気になり心配する息子に、隣村の医者を連れてくればいいと近所の人が教えてくれる。
うだるような暑さの中、山をぐるっと迂回してたずねていくと、医者は畑で野良仕事。いかにものんびりしている。
医者は父親のことも知っていて、あの村行くなら山を越えた方が早く行けるという。

ひいひい言いながら登り頂上で一服。この一服してるところが本当にたまらない。
「今年のきゅうりはどうだんべ?あーやっぱりおめぇのとこもダメか。こう暑くちゃなぁ。スイカはどうだ?」
山の景色や涼しい風が感じられるようでものすごく楽しい。
そこからの展開も楽しくて笑いだしたくなるような幸せ感。
あーーいいものが見られた~。最高。

菊志ん師匠「あくび指南」
なんか独自なあくび指南で面白かった~。あくびの師匠のお手本も今風というか年寄りっぽくない。
面白かった!