りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

池袋演芸場8月下席昼の部

8/23(火)、池袋演芸場8月下席昼の部に行ってきた。

池袋演芸場23日

・一花「牛ほめ」
・わん丈「国隠し」
・たけ平「清書無筆」
・さん助「しゃっくり政談」
ホンキートンク 漫才
・小のぶ「粗忽長屋
・菊志ん「鼻ほしい」
~仲入り~
・ろべえ「旅行日記」
・琴柳「小政の生い立ち」
・仙三郎社中 大神楽
・三三「小言幸兵衛」

一花さん「牛ほめ」
ところどころ妙に面白い。どんどん面白くなってきてる!一花さん。

わん丈さん「国隠し」
滋賀県出身なのに「京都」と言い張る旦那と志木市なのに「東京」と言い張る妻。わりとありがちな噺ではあるけれど、なんとも言えずおかしい。語り口に余裕があるから安心して楽しめる。

たけ平さん「清書無筆」
昭和のかほり漂う噺なんだけど、堂々としていて余裕のある語り口なので、心地よく楽しい。
たけ平さん、面白いなぁ!

さん助師匠「しゃっくり政談」
わん丈さんの噺もたけ平さんの噺も題名が分かったのはさん助師匠が「先ほどの噺は〇〇というそうです」と言ってくれたから。
だから終演後に楽屋に電話して来ないでね、と。
で、これから私がするのは「しゃっくり政談」という噺です。

金魚売りの声で夏の昼間、人通りのない町の静けさや不気味さが伝わってくる。こういうところが意外に(失礼!)うまい。
なのに「あ!!」で終わるバカバカしさ。
たまらないなぁ!

小のぶ師匠「粗忽長屋
行き倒れのまくらからの「粗忽長屋」。
特別なクスグリがあるわけじゃないのにたまらなくおかしい。
面倒を見ているおじさんの「いやだよこの人は。バカバカしい」という台詞だけでたまらない。素敵!

菊志ん師匠「鼻ほしい」
死ぬほど笑った。いけない噺だけど最高におかしい。
なんとなくちょっと気持ち悪くて苦手と思っていた師匠なんだけど(失礼!)、面白いわー。

三三師匠「小言幸兵衛」
昨日の台風の中来たお客さんを「決死隊」と呼んだ三三師匠。人数が少ないせいか、極限状態のせいか、妙な一体感が。って三三師匠も同じように感じてたのね!という喜び。
次々繰り出す小言と妄想の楽しさ。あんまり好きな噺じゃなかったけど、淀みなく楽しかった。

池袋演芸場8月下席昼の部

8/22(月)池袋演芸場8月下席昼の部に行ってきた。
この日から1週間夏休みをとっているので、引くぐらい落語に行っちゃうんだよ~。この人いったい何者だろうと芸人さんにも思われたかもしれない…。

・市朗「転失気」
・やなぎ「牛ほめ」
・たけ平「星野屋」
・さん助「馬の田楽」
ホンキートンク 漫才
・金馬「ガマの油
・菊志ん「蚊の戦」
~仲入り~
・ろべえ「初天神
・琴柳「安兵衛道場破り」
・仙三郎社中 大神楽
・三三「はてなの茶碗

やなぎさん「牛ほめ」
やなぎさんの「牛ほめ」久しぶりに聞いた。ホルスタインほめが入るところが北海道育ちらしくておかしい。
でもクスグリでウケると本来の噺の面白さが半減しちゃうのが少し残念かな。

たけ平師匠「星野屋」
これくらいの浅い出番でもこういう噺できるんだ!
やりようによっては嫌な噺だけどあくまでも軽いので嫌味なく楽しい。

さん助師匠「馬の田楽」
さん助師匠の伸びやかで大きな声にのんびりした田舎の風景が浮かんでくる。時間の流れが違う感じ。好きだなぁ。
この噺に色気付いたおばあさんとか要らないよなぁ、としみじみ思う。

ホンキートンク 漫才
台風直撃だったのでお客さん少なめだったんだけど、池袋演芸場でお客さんが少ないとほんとに芸人さんとの距離感がなくなって、アナーキーな雰囲気。いつもの血液型や星座をお客さんも一緒にやったりして、楽しかった~!

金馬師匠「蝦蟇の油
言い立てもまるでよどみがなくそれでいてどうだ?!という感じもなくほんとに素晴らしい。
酔っぱらってからは鼻をこすったりグズグズになってほんとに酔っぱらったみたい。
寄席の宝だなぁ!いつまでも長生きしてください。らぶ。

三三師匠「はてなの茶碗
この距離感で三三師匠を見られる幸せ。
油屋が茶店のおやじを脅して二両で茶碗を手にいれるところ、茶金さんの店でこれが価値のあるものではないと知って諦めるところ、けろっと気持ちを変えるところが落語らしくて好き。楽しかった!

小三治独演会 立川市市民会館(たましんRISURUホール)

8/21(日)立川市市民会館(たましんRISURUホール)で行われた小三治独演会に行ってきた。

・はん治「子ほめ」
小三治「長短」
~仲入り~・小三治「死神」

 

はん治師匠「子ほめ」
はん治師匠が「子ほめ」なんて珍しい!
本当に寄席だと決まった噺しかされないので「いつもの」じゃないだけでかなりのレア感。
新たにお弟子さんが入られたからなのか、小三治師匠に言われたのかわからないけど、うれしい!

多分はん治師匠ってすごい上がり症なんだろうなと勝手に思う。確かに「いつもの」に比べると危ないところがあったり口慣れない感じはあるんだけど、とにかく味があるから面白いのだ。普通にやっていても。
聞き飽きている「子ほめ」なのにじわりじわりと面白い。
手馴れていても面白くもなんともない噺家さんがたくさんいる中、口慣れてないのに普通にやって面白いんだから、もっと新しい噺や違う噺をどんどんかけていってほしいなぁ…。

 

小三治師匠「長短」
「オリンピックをやってますけどね…オリンピックっていうのがこんなにも…」そう言ってお茶を飲むのでなんだなんだ?と思っていると「眠いものだとは思いませんでした」。始まる前はオリンピックなんてやってる場合か!と思っていたのに始まってみると面白くてあれもこれもと一生懸命見てしまう。
12時間ぐらいの時差があるので昼夜逆転しちゃってて、しかも予選から見ていてすぐに決勝が始まらずに3時間後です!なんて言うから「そんなに待っていられるかい!」って思うんだけど、テレビも目を離させまいとあの手この手で今までの軌跡みたいのをやるもんだからついつい見ちゃって毎日寝不足。

それにしてもレスリングの吉田。あれは強いね。強いしかわいい。前は近寄ったら吹っ飛ばされそうだなと、強い印象しかなかったけど、かわいいじゃない。
400M。あれはね。ざまぁみろだったね!
あとバトミントンなんて「こんなの競技にするのかよ。羽根つきじゃねぇか」と思っていたけど見て見ると面白い。
卓球もね。愛ちゃんっていうのは生まれ落ちた日からおぎゃーと泣いてその後もいつも泣いてて、ちゃんとそれが「芸」になってるからすごい。
でも卓球はさ。ドイツと戦うっていうからドイツ人かと思えばどこをどうみても中国人。あれはどうなのよ。なんか素直に受け止められないよね。

こんなこと言ったら怒られちゃうかもしれないけどやっぱり日本人が活躍するから面白いんだよ。
これで日本選手がぱっとしなかったらここまで熱心には見ないよ。

小三治師匠の話がもうミーハーそのもの(笑)でほんとにおかしい。
「今日は長く話しすぎた。落語やらないで帰ってもいいぐらい」と言いながらの「長短」。
小三治師匠の「長短」は久しぶり。
この日は席が後ろの方だったので残念ながら表情まではよく見られなかったんだけど(落語はほんとに近くで見るに限る!)、小三治師匠の「長短」はとにかくかわいい。師匠自分がかわいいの知ってるでしょ?とつっこみたくなるほどかわいい。
近ければ長さんのにへ~とした表情にでれでれできたんだけど遠かったので今回はイライラしながらも長さんのことが好きでああだこうだと構ってしまう短さんがかわいかった。

 

小三治師匠「死神」
黒紋付きに着替えて出てきた師匠、まくらなしで「死神」。
小三治師匠の「死神」は何回か見ているけどこの日は正直言ってちょっとキレが悪かったような…。最近師匠は今日はちょっとあれかなと思うと丁寧にやられるのでそれが少しくどく感じる。それらも含めて小三治師匠の落語が全部好きなのでいいんだけどね。私の場合は。

末廣亭8月中席昼の部

8/20(土)、末廣亭8月中席昼の部に行ってきた。

・かん橋「寿限無
・夏丸「開眼式」
・章司 江戸売り声
・柏枝「地獄めぐり」
・夢丸「しわいや」
コントD51 コント
・遊馬「転失気」
・伝枝「壺算」
・真理 漫談
・圓丸「初天神
・紫「出世の馬揃い」
・ひでや・やすこ 漫才
・南なん「不動坊」

 

夏丸さん「開眼式」
すごく素直なお客さんで噺に聞き入ってサゲに「おおっ(なるほど!)」となったのがおかしかった~。いいなぁ、こういうの。寄席って楽しい!って思う瞬間。

柏枝師匠「地獄めぐり」
お寺で落語をやってきました、というまくら。本堂でやったんだけどああいうところって横幅が広くできている。檀家の人たちが自分の高座の横に回り込むような形で座って自分の前にはお供えの茄子やかぼちゃ。ところでこの日の私の落語、自分で言うのもなんですが素晴らしい出来でした。思うに私は非常に緊張しいなので、目の前にお客さんがいると緊張してしまう。でもこの日は茄子やかぼちゃだったので良かったのではないか、と。なので今日は目の前にお客様がいますが…私これを茄子やかぼちゃが並んでいると思って落語をやらせていだたきます。

そんなまくらから「地獄めぐり」。初めて聴く噺だったんだけど面白い!
遊びに飽きた若旦那が芸者や幇間を連れて地獄へやってくる。観光気分の若旦那。地獄の観光案内所で地獄のことをあれこれ教えてもらう。
まじめに聴いてるとただのダジャレの連発でひたすらにバカバカしい。「ええ?そういう噺なの?」と思っていると「これからもこんな感じで続きます。展開とかしませんから」と。
わはははは。
毎回違う噺で毎回なんか予想の上をいってくるので、この師匠が出てくるとすごくわくわくするなぁ。楽しかった。

夢丸師匠「しわいや」
毎回出てくるたびに毎回うれしい夢丸師匠。そしてやっぱり毎回違う噺をしてくれるんだよなぁ。それが嬉しい。
この芝居、南なん師匠目当てで通っていたけど、夏丸さん、伯枝師匠、夢丸師匠も楽しみだったなぁ。

遊馬師匠「転失気」
この代演はうれしい。好きなんだ、この師匠も。
尊敬していた和尚がもしかして知らないで聞き出そうとしていたのではと気づく小僧がかわいい。はしゃぎすぎない渋めの「転失気」。よかった。

南なん師匠「不動坊」
南なん師匠の「不動坊」、楽しいなぁ。お湯屋で浮かれる吉さんがかわいすぎる。それを見ながら「うめてやれ」「水くさいってよ」「まだ埋まらないよ」と声をかける江戸っ子の優しさよ。
そしていちいち困って確認する前座がかわいい。
ああ、次は南なん師匠、どこに見に行こう。9月の上野広小路亭のトリ、全部平日の昼で有休とろうとしたら「待った」がかかってしまったのが悔しすぎる。うううー。

尻尾と心臓

 

尻尾と心臓

尻尾と心臓

 

 ★★

回り道を通してしか、見えないことがある。仕事にも、人生にも。未知の経験を求めて転職した女と社命を帯びて出向した男が、会社の“闇の奥”に見つけ出したものとは―?仕事とは何か?を問う、文学の新たな試み。傑作長篇小説!  

 ところどころがかなりリアルな会社員小説。リアルなだけに会社嫌いな私には全く楽しくない小説だった…。

下町ロケット読んだときはこんな夢物語、けっ!と思ったが、これを読むとこんなものを本でまで読みたくはないわ!と思ってしまう。私には合わなかったなぁ。

小三治独演会 めぐろパーシモン大ホール

8/16(火)、めぐろパーシモン大ホールで行われた「小三治独演会」に行ってきた。

・こみち「安兵衛狐」
小三治「転宅」
~仲入り~
小三治「青菜」

こみちさん「安兵衛狐」
わーい、こみちさん。
出てきたときに渋いお着物!すてき!と思ったら、座るなり「演歌歌手のような着物ですみません。自分でわかっております」と。
今の家を決めるとき、自分も亭主も家で稽古をするのでそこは大事なポイントでお互いに地声で稽古をしてみてそれを別の部屋でどれぐらい響くかチェックしたりしていた。
一応楽器不可という家だったのだが見学に行ったとき明らかにピアノの音がしていた。
それで大家さんに「ええと、ここは楽器不可ですよね?私たち家で稽古をするのでそれは大丈夫でしょうか」と確認すると「楽しければいいですよ」と言われた。

あら、なんてアバウトな基準。
楽器不可だけどピアノの音は楽しいからOKってことなのか。
というわけで私は家では人情噺は稽古できません。

そんなまくらから「安兵衛狐」。
こみちさんは女性がとてもかわいらしくて色っぽい。
それがほんとに気持ちのいい色っぽさで、見ていてうきうきしてくる。
お酒をかけてもらってお嫁に来た幽霊に、助けてもらってお嫁に来た狐。
両方ともかわいらしくて思わず「そうですか。じゃいてください」っていう気持ちもわかる。

小三治師匠「転宅」
オリンピックの話をしているうちに政治のことを言いかけて「あーこの話はやめましょう」とやめ、でもやっぱりちょっと言いたくて言ってはやっぱりやめ…。
なんかわかる気がする…。でも正直もう政治の話は聞きたくないので(気持ちがざわざわするだけだから)話さないでくれてよかった…。
というかまだ小三治師匠は同じ気持ちでいるから「ああ、同じだなぁ」と思えて安心するんだけど、好きな人が明らかに自分と反対の方向を向いていることが分かると結構なショックだからほんとにそういう話は聞きたくないと思ってしまうんだよな…。

やっぱりこの話はやめましょう!と言って泥棒のまくらに入りつつまた戻りつつやはりやめ…「今日は小三治はダメです。こりゃ大惨事だよ!」と言いながら「転宅」へ。

この日はなんと一列目で師匠が上下を振ったときの目線の位置にいたので、まるで自分がお菊さんになったみたいな気がしてドキドキ。
いやぁもう小三治師匠のまぬけな泥棒がほんとにチャーミング!つねられて「よせよう」とにへぇと笑われた時はもうめまいが…くらくら。
泥棒を親戚と間違えて家に入れたタバコ屋さんが奥にいる奥さんに向かって「ばあさん、ふとんを出しておくれ」と言うだけでぶわははは!と笑ってしまう。
楽しかった!

小三治師匠「青菜」
出てきてすぐに扇子で仰ぎだしたので「青菜だ!」と分かる私は相当な小三治通。ほほほ。
植木屋さんのおかみさんの愚痴がおかしい。
「うちの恥を外にまき散らす」って…いいなぁ。
そのおかみさんが帰ってきた植木屋さんに「何踊りながら帰ってきてるんだい。いわしが冷めちゃうよ!」。このタイミングが思ってるよりすぐに来るのでいつも不意打ちで笑ってしまう。
最後油断したのかちょっとだけもやっとしたけど、楽しい青菜だった。

鈴本演芸場8月中席夜の部 吉例夏夜噺 さん喬・権太楼特選集

8/15(月)「鈴本演芸場8月中席夜の部 吉例夏夜噺 さん喬・権太楼特選集」に行ってきた。

・さん助「夏泥」
・ダーク広和 マジック
・正朝「ん廻し」
・三三「加賀の千代」
・市馬「狸賽」
ホンキートンク 漫才
喬太郎「純情日記渋谷編」
・露の新治「源平盛衰記
~仲入り~
・権太楼「疝気の虫」
・正楽 紙切り
・さん喬「白ざつま」

さん助師匠「夏泥」
昼に南なん師匠の「置泥」、夜にさん助師匠の「夏泥」を両方見られる幸せよ!
さん助師匠の「夏泥」落語協会でほかの人たちがやってるのとは形が違っている。ほかの人がやってる形の方が笑いはとりやすいと思うんだけど、ほんとひねくれてるなぁ。ぷぷっ。

こちらの方の男は博打で全部すられたばっかりで「あーなにもかもなくなっちゃった」と開き直ってる。
だから泥棒が入ってくるのを面白がって見ている。
あぶねえなぁ、そこはどぶ板が腐ってるぞ。あ、ほら、落っこちた。そこをそのまま上がってきちゃだめだって。危ないって。ああ、そうじゃない!ほら、言わないこっちゃない!
かわいらしさはなくてふてぶてしいんだけど、基本的にからっと明るい。そこが魅力。

ダーク広和先生 マジック
いつもとはまた違ったマニアックなマジック。
最後のカッター?の刃をどんどん口に入れてくマジック、いったいどうなってるんだろう。
地味だけど楽しい。そしてすごい!

三三師匠「加賀の千代」
寄席に出てくる三三師匠はほんとにいつも余裕で楽しそうでのびのびしていていいなぁ。
ふんだんにギャグをちりばめた楽しい「加賀の千代」。
時々ぼそっと言う文学的表現がおかしい。

市馬師匠「狸賽」
狸が化けたサイコロを持って博打をする男のかわいらしさよ…。
「だめだよ、かわいそうだろ」
「しょんべんするぞ」
やさしさがにじみ出ていて好きだなぁ。

露の新治師匠「源平盛衰記
素敵な師匠だなぁ…。
ギャグたっぷりの地噺なんだけど今風のギャグを入れても物語を壊すことなく引っ張り続けてくれてそれでいて疲れない。
地噺って気が散るからあんまり得意じゃないんだけどこの師匠のだったら何時間でも聴いていたい。
上手なのに押しつけがましくなくて楽しくてこれっぽっちも下品じゃなくてでも全然気取ってない。
すごい。

さん喬師匠「白ざつま」
3本の指に入るぐらい嫌いな噺(笑)。
生で見たら少しは好きになれるかと思ったけど無理だった。
特に嫌いなのが若旦那が番頭を脅すところ。
いやらしい男だなぁ…。だめ。嫌悪感しか持てないなぁ、この若旦那には。

こういう噺もあるよねという軽い気持ちで聞いてくださいと師匠はおっしゃっていたけど、ついついのめり込んで聞いてしまい、いらいらっときてしまうワタシであった。

それにしても超満員のお客さんですごいなぁ、この二人の師匠の人気は。
席が真ん中の方だったので、前の人の頭が邪魔でよく見えず、一生懸命隙間を探してみていて、えらい疲れた…。

末廣亭8月中席昼の部

8/15(月)、末廣亭8月中席昼の部に行ってきた。

・喜之輔「出張中」
・夏丸「開眼式」
・章司 江戸売り声
・柏枝「時そば
・夢丸「山号寺号」
・ひでや・やすこ 漫才
・伝枝「目薬」
・歌助「桃太郎」
・真理 漫談
・円丸「お菊の皿
・鯉昇「粗忽の釘(ロザリオ編)」
東京ボーイズ 歌謡漫談
・南なん「置泥」

喜之輔さん「出張中」
今丸師匠のお弟子さんと言っていたような…。ということは紙切りの前座さんなんだな。落語家でなくても前座さんは落語を覚えてやらないといけないから大変だよなぁ。明らかに落語で入った人よりたどたどしくてドキドキするんだけどある意味貴重なものを見られた!という喜びが。
喜之輔さん、落語の前座さんに比べるとたどたどしいんだけど、「ディズニーシーがあるならディズニーAやBはあるのか」「あるよ。ディズニーAはアメリカ、ディズニーBはブラジル、ディズニーCは千葉だ」でウケてちょっとうれしそうだったのが印象的。

夏丸さん「開眼式」
いろいろな地方の名産を次々に挙げていく、これってなんの噺だったっけ?「鹿政談」?いやでもまさかこの時間で「鹿政談」をやるわけはないか。
「奈良と言えば鹿。私も一度行ったことがあります。修学旅行で」と言ったあとに「これなんですけどね」と中学時代の集合写真を懐から取り出したのには笑った。

そこから大仏様の眼が崩れて関係者がどうしようかと困っていると現れた親子連れが自分たちに直させてくださいというのでやらせてみると、息子が大仏の中に入って行って眼を直し、鼻の穴から抜け出してくる、という噺。
初めて聴いた!面白い~!!
夏丸さんって見た目とのギャップがあってそこが魅力だなぁ。この芝居で通っているうちにどんどん夏丸さんが好きになってきた!

柏枝師匠「時そば
夏に「時そば」とはちょっと季節外れ?と思ったのだが、これがべらぼうに面白い「時そば」だった。
一人目の客のところはすーっと渋くやっておいて、二人目の客のとほほぶりが顔芸も含めて激しくて大爆笑。
特にうどんのような太いそばを口に入れてぶちゅーっと食べる様子がおかしくておかしくて。
やっぱり計り知れないわ、この師匠。

夢丸師匠「山号寺号」
前にほかの人で聴いて「つまらない噺だ」と思ったのだが、夢丸師匠がやるとこんなに楽しいのか!
客席にお子さんがいたからこの噺にしたのかもしれないな。わかりやすくてお子さんもけらけら笑ってた。

円丸師匠「お菊の皿
沸々とした気持ちを落語らしい落語で落ち着かせてくれる。ほっ。
これがサゲだねと客席が拍手をしたら「え?まだ終わりじゃないんだけど、なに?終われってこと?あ、そうか。ふつうはここでサゲだもんね。でも私の場合はまだ続くんです。やってもいいでしょうか。あ、拍手…していただくほどのものじゃありません」
そう言ってやられたサゲが確かにちょっと一ひねりしてあって面白かった。

鯉昇師匠「粗忽の釘(ロザリオ)」
出囃子が鳴って「ええ?まさか!!」と驚いているとほんとに鯉昇師匠が!わーい!
いつものように熱演はしないまくらから「粗忽の釘」。
何度も見てるけど毎回笑ってしまう。
体の使い方がとってもうまくてちょっと体を斜めにして「ええ?」と驚いたり、目をぎょろっと開けて二度見したり、それだけでどっかんどっかんウケる。すごいなぁ。

南なん師匠「置泥」
南なん師匠の「置泥」はほんとに南なん師匠の魅力が前面に出ていると思う。ほかの誰のとも違う「置泥」。
泥棒の人のよさはほかの噺家さんでも見ることができるけど、入られる方の男をこんな風に魅力的に描かれているのは見たことがない。

最初はほんとに生きる気力も失っていたかのような男が泥棒からお金をもらって徐々に頬に赤みを帯びてくる。
相手に付け込んでるというよりは、甘えられる相手を見つけてほっとしてる感じがして、なんだか憎めない。

最初に合口をチラつかせて脅し文句を言う泥棒が「そう言ってたよな。だから殺してくれ」と言われると「やめろよ。あれは俺たち泥棒の決まり文句なんだよ」と答えるのがなんともかわいい。
しぐさの一つ一つ、言葉の一つ一つが楽しい!

末廣亭8月中席昼の部

8/13(土)、末廣亭8月中席昼の部に行ってきた。

・楽ちん「手紙無筆」
・夏丸「つる」
チャーリーカンパニー コント
・柏枝「牛ほめ」
・夢丸「勘定板」
・京太・ゆめ子 漫才
・伝枝「反対俥」
・松鯉「谷風の情相撲」
・真理 漫談
・紫「井伊直人出世物語
東京ボーイズ 漫歌
・南なん「へっつい幽霊」

夏丸さん「つる」
この芝居では「つる」をかけ倒すおつもりか(笑)。「つる」という単語が出てこずに「鶴岡雅義と東京ロマンチカ」で歌を歌いだす、というのが夏丸さんのアロハマンダラーズの「まくら」代わりになっているのかな。

柏枝師匠「牛ほめ」
この師匠のちょっと冷めた外した落語が私は好きなんだけど、合うお客さんとそうじゃないお客さんがいるのかもなぁ、という感じがした。
この日のお客さんはどちらかというともう少しわかりやすい笑いを求めている感じ。

夢丸師匠「勘定板」
そうそう、この感じ(笑)。まさにこの日のお客さんには夢丸師匠の人懐っこい笑顔とこのわかりやすい噺が合ってたなぁ。

 

京太・ゆめ子先生 漫才
まじなのか芸なのかがわからないスリリングな漫才!ドキドキ!

 

松鯉先生「谷風の情相撲」
この代演は嬉しい。何回か聞いているはなしだけれど、講談こそ何度も聴いてより楽しめるものなのかもしれない。初めて聞くときはストーリーを追うのに一生懸命だけど、何回か聴いてると調子を楽しめるようになるんだな。
松鯉先生の講談、好きだなぁ。男らしいけど基本が穏やかでゆったりしてるから肩に力が入りすぎなくて楽しめる。

 

南なん師匠「へっつい幽霊」
出囃子が鳴って南なん師匠が出てきたときの胸のときめきよ(笑)!
南なん師匠はこういうことが多いのだけれど、ほとんどまくらをやらずにいきなり噺に。出てくる時にこれをやろうと決めてらっしゃるんだな、きっと。

博打で儲かって「ありがてぇなぁ」と喜ぶ男。まとまった金ができたからなんか買おうじゃねぇか、そうだへっついを買おう、と道具屋へ。
これにしようと思ったへっついは10両すると言われ、さすがにそんなに高いのは…というと1両のものをすすめられるのだが、そっちはあきらかに見劣りする。
見ればすごくいいへっついが置いてあるのに気付いて「これはいくら?」と聞くと、これは訳ありで売ることはできないと言われる。
聞けば2両で仕入れて3両で出すとすぐに買い手はつくのだが、みな次の日に返しに来る、と。
2両で引き取るので毎回1両儲かっていい買い物しちゃったなと思ったんですけどね、と店主が見せる笑顔がかわいい。
店の評判が悪くなるので壊そうと思ってると聞いて「おれは返しに来たりしねぇよ」と約束してへっついをもらってくると、真夜中時分にへっついから赤い炎がゆらゆら出てきて幽霊が…。

幽霊に動じない男と、人のいい幽霊との会話がとにかく楽しい。
男の言いなりになって「ええ。そうなんですけどね」「ええ?そんなに取るんですか?」「…じゃぁいいですよ」と少し抵抗しながらも受け入れる幽霊がとってもかわいい。
南なん師匠のちょっとの間がお客さんとぴったり呼吸があってそのたびにどっと笑いが起きるのが気持ち良くてものすごい一体感。

「へっつい幽霊」ってこんなに楽しい噺だったんだ!
師匠目当てで見に来た甲斐があったなぁ。満足。

未成年

 

未成年 (新潮クレスト・ブックス)

未成年 (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★

輸血を拒む少年と、命を委ねられた女性裁判官。深い余韻を残す長篇小説。法廷で様々な家族の問題に接する一方、自らの夫婦関係にも悩む裁判官の元に、信仰 から輸血を拒む少年の審判が持ち込まれる。聡明で思慮深く、しかし成年には数か月足りない少年。宗教と法と命の狭間で言葉を重ねる二人の間には、特別な絆 が生まれるが――。二つの人生の交わりを豊かに描きながら重い問いを投げかける傑作長篇。  

 宗教上の理由から輸血を拒む少年の裁判という極めて難しい判決を行わなければならない女性裁判員のフィオーナ。
難しい案件に頭を悩ませているフィオーナに長年連れ添った夫ジャックから信じられないような言葉を投げつけられる。彼女との結婚生活は今まで通り続けるつもりなので職場の若い女との不倫を認めてほしいと言うのだ。「最後のチャンスなんだ」という身勝手な言葉に呆然とするフィオーナ。

仕事で幾組もの夫婦の離婚に立ち会ってきたフィオーナだが、いざ自分の身に降りかかるとどうすればいいのかわからず右往左往してしまう。
怒りにまかせて鍵を替えてしまったり、謝罪の言葉を期待して何度もメールをチェックしたり。
しかしそんな状態にもかかわらず彼女は難しい裁判に真っ向から挑み、その少年アダムに会いに病院に出向いて行く。

彼女の下した判決は素晴らしいものだったと思う。アダムの生命の危機は彼女の判決のおかげで救われたわけだが、それまでは狂信的な宗教心の中である意味無菌状態で生きてきたアダムにすれば、一人荒野に放り出されたようなもの。
今まで宗教を無心に信じてきたように、今度はフィオーナに救済を求めてしまうもの、無理からぬことにも思える。

しかしフィオーナ自身も個人として見たら完璧な人間ではなく、夫との問題や自分が子どもを持たなかったこと、これからどんどん老いていくことに苦しんでいる。
彼女に自分の未来を全て託そうとするアダムの気持ちを受け止めきれなかったことは彼女の罪ではないけれど、罪悪感はきっと消えることがないだろうし、その痛みを抱えながら生きていくことになるのだ。

人間が人間に与えてしまう影響の大きさ。一歩踏み出してしまったために生まれる悲劇。
マキューアンらしい苦い物語だった。

末廣亭8月中席昼の部

8/11(木)、末廣亭8月中席昼の部に行ってきた。

・かん橋「寿限無
・夏丸「つる」
・章司 江戸売り声
・柏枝「猫と金魚」
・夢丸「味噌豆」
・ひでや・やすこ 漫才
・伝枝「壺算」
・歌助「桃太郎」
・真理 漫談
・昇之進「取り調べ中」
・紫「出世の馬揃い」
東京ボーイズ ボーイズ
・南なん「不動坊」
~仲入り~
・可楽「景清」
・喜楽・喜乃 太神楽
柳橋「替わり目」
・アロハマンダラーズ 大喜利ハワイアン

夏丸さん「つる」
間に昭和歌謡をたっぷり歌ったりしてサービス満点の「つる」。
オスの鶴がつーーーっときてぽんと止まって、メスの鶴がるーーーっと飛んでくるっていうところでどっと笑いが起こったのを久しぶりに見た気がする。
体全体を使って長い腕をすーっと動かすから立体感が出て鶴が飛んでくる様子が浮かんでくる。所作ってすごく大事なんだなぁ。
あと隠居さんの「面白いことを言うぞ」という表情と間で笑った。
いつ聞いても面白くない噺だなぁと思ってしまう「つる」なのだが、久しぶりに面白かった。

 

柏枝師匠「猫と金魚」
この間上野広小路亭で見てから好きになったこの師匠。
淡々としてるのに不意打ちで面白いからぶわはっ!!と笑ってしまう。
番頭さんをとにかく気の利かないおっちょこちょいに描く噺家さんも多いけれど、柏枝師匠の場合は主人と番頭の仲が最初からこじれていて、番頭がムキになっておかしな行動をとってしまっている。面白い。
最後までやらず、猫が金魚鉢に手を突っ込んでいる、というところでまたアッと驚くようなサゲ。
なんじゃこりゃー。
ますますこの師匠のことが気になってきた!

夢丸師匠「味噌豆」
出てきただけでぱーーーっと高座が明るくなって思わずにこにこしてしまう。ほんとに夢丸さんは太陽のような人だ。

幼稚園寄席のまくら。
先生から「所作の説明をお願いします」と言われてやるのだが子供は3分もすると飽きてしまう。
飽きたときの第一段階が足がぷらぷらしだす。自分はこれを初期微動と呼んでいる、に大笑い。
第二段階で頭がゆらゆら。
第三段階で「つまんない!」と先生に言いつける。こうなったらおしまいです。こうなる前に手を打たないと。

たっぷりのまくらから「味噌豆」。
夢丸師匠の定吉はほんとにかわいい。かわいいからブラックなことを言ってもそれが全然嫌味にならない
豆を食べ始めて止まらなくなってどんどん食べ方が激しくなるのがめちゃくちゃ面白い。
トイレのドアを閉める音がすごく丁寧なのもアクセントになっていて、すばらしい!
ほんとに楽しい「味噌豆」だった。

東京ボーイズ ボーイズ
何度も見ているけどいつ見ても楽しくて大好き。
謎かけ問答で必ず新しいネタを入れてくれるのも嬉しいし、テッパンネタはいつ聞いても笑える。
特に菅六郎先生がかわいくてたまらん!

南なん師匠「不動坊」
楽しかった!
南なん師匠の「不動坊」は前に末廣亭で一度見たことがあるんだけど、その時より格段面白かった!お客さんと波長がぴったり合う感じで気持ちいい~。

あこがれのおたきさんとの結婚を大家さんから言い出されて浮かれる吉さん。
嬉しくて鉄瓶を持ってお湯屋に行きそうになったり、湯屋番にのろけを言ったり。
お風呂の中での妄想も、「熱いって言ってるよ」「まだ埋まらないってよ」とほかの客が声をかけるタイミングが絶妙ですごく楽しい。
嫉妬して幽霊を出そうと相談する3人組も情けなくて楽しい。
幽霊役の前座がいかにもまぬけで調子が良くて出てきただけで笑ってしまう。

屋根の上でのやりとりも、バカ呼ばわりされたまんさんが「お前らだってバカじゃねぇかよ。そうじゃなかったら幽霊出そうなんて考えるかよ」と言うのがおかしくて大笑い。
幽霊役をやりながらもいちいち「なんで(出てるん)でしたっけ?」「そうなんですか。ちっとも知らなかったもんですから」と反応する前座がおかしい。

登場人物それぞれが生き生きしていて楽しい「不動坊」だった。
満足!

可楽師匠「景清」
寄席には仕事で来てるんじゃない、リハビリで来ている、と言う可楽師匠。
目が悪くなって片目は全く見えず、もう片方はぼんやりとだけ見える、と。
子供のころから目が悪い人は勘がいい。若いころに目が悪くなった人は体力がある。自分は年をとってから目が悪くなったので勘も悪ければ体力もなくて最悪。
今は外出する時にはヘルパーさんに付き添ってきてもらっている。そうしないとどこにも出られない。

そんなまくらから「景清」。
「おもしろい噺じゃないですよ」の言葉通り、淡々とした展開にそれまで陽気だった客席が静まり返る。
だけど決して陰気ではなくて、投げやりのようだけど負けん気が強くてちょっとひねくれ者の定さんのキャラクターが、可楽師匠とも重なってもうなんともいえない気持ちに。真に迫るとはまさにこのこと。
なんかすごいものを見たなぁという気持ちでいっぱいだった。

アロハマンダラーズ ハワイアン
新メンバー夏丸さんが波の音をやったりマラカスを振ったり自慢ののどを聞かせてくれたりと大活躍。
小柳枝師匠がいらっしゃらないのは寂しかったけど、可楽師匠と夏丸さんのデュエットも聴けて楽しかった!

柳家さん助の真夏の夜の夢

8/6(土)赤坂峰村で行われた「柳家さん助真夏の夜の夢」に行ってきた。
この日は昼間日暮里のスケスケ落語会に行き、その後こちらの会というダブルヘッダー。最初はスケスケは無理かなとあきらめていたんだけど、日暮里と赤坂って意外と近い!ということに気づいて両方行くことに。
しかしほんとに時間ギリギリ。しかも圧倒的な方向音痴。ナビが「目的地に到着しました」と告げてもまだ店が見つからない。ぎゃーーどこーーー!!と焦った焦った。どうにか間に合ったのでよかった。

・さん助「宮戸川(上)」
・さん助「もぐら泥」
・さん助「宮戸川(下)」

さん助師匠「宮戸川(上)」
例によって立ち話。福岡に行った時、主催者さんが気を使って人気の店に連れて行ってくれたんだけど定休日。そういうこともあろうかと人気NO2の店に行ってみると、仕込みのため遠方に行っているため臨時休業。
「仕込みのため遠方へ」というのがツボだったらしいさん助師匠。
いいですね。わたしも使ってみたい。自分の落語会の会場に「仕込みのため遠方へ行ってるためお休みします」。

そんな立ち話から座布団に座った途端「宮戸川(上)」。さん助師匠がこの噺をやるイメージがなかったのでびっくり。でもさん助師匠だからもしかして通しでやるような予感が…。
寄席でよくやられているのとはかなり違う。
はんちゃんが叔父さんのところに行こうとするんだけどお花ちゃんに「あそこは結構さびしいところで怖いわよ」と言われて「怖いよ…一人で行きたくないよ」とはんちゃん。「だったら私も一緒に行ってあげる」と言って手をつないで行くとか、またおじさんの家の戸を叩いて開けるのがおばさんだったりするのも他の人では聞いたことがない。
二階で二人きりになってからの展開もあっという間だったので、おお、これはやっぱり通しでやるんだな、と確信したところで、噺を途中で止めて「あの…これ通しでやるんですけど、後半はかなり陰惨です。」とさん助師匠。「話し始めて、ああこの感じはこれをやるところじゃなかったなと気づいたんですけど…やりますよ!もうやっちゃいます!でも続けてやるとしんどいので途中でちょっと違う噺をはさみます」と。

さん助師匠「もぐら泥」
8/8(月)1時からのラジオ深夜便でさん助師匠の「もぐら泥」が流れるらしい!
でも後から気づいたんですけどこの噺ってしぐさが多くてその間沈黙になっちゃうんです。ラジオに向かない噺でしたね…。今からやりますからこれを頭に入れて起きていられたらラジオ聞いてください。1時なので起きてるの大変かもしれませんが。そこまで頑張って起きていても私の落語を聞いたら寝ちゃうかもしれませんが。

そんなまくらから「もぐら泥」。
確かにしぐさと沈黙が多いので、これをラジオでやったのかとおかしくてしょうがない。
間に別の噺をはさんで上下通しでやるってどうよ?と一瞬思ったのだが、これすごくよかったかも。なんか笑ってその後の陰惨な展開への覚悟ができたというか。

さん助師匠「宮戸川(下)」
下は前に一度か二度聞いたことがあるだけだけど、聞いているとどんどん怖い顔になってしまう。浅草にお参りに行く途中で急な雷雨が来て小僧が店に傘を取りに行っている間に近くで雷が落ちてお花が気を失ってそこをならず者が通りかかる。最初は介抱してやろうと思った二人の男、じっくりとお花を見ているうちにひとりが「こんな女と一生涯寝ることはできない」と言い出し、二人で人気のないところに連れて行って介抱してからなぐさみものにしてやろうということになる。
お花の行方がわからなくなり探しても探しても見つからずついには諦めて弔いを済ませた半七。たまたま乗った船に同乗してきた男が自慢話のようにしてお花を二人で犯したあげく殺した顛末を話し始めるのだが、これがなんか今まで聞いたのとは印象が違っていた。
この男は前にお花の実家の船宿で船頭をしていて、きれいで誰にでも優しいお花のことを悪からず思っていた。自分が襲おうとしている女がお花だとわかり、お花さんにそんなことはできない!と思うのだが、そのお花がバカにしたようにケタケタと笑ったので、屈折した気持ちに火がついて殺してしまった、と。
ここまで聞いてこの男は自慢話をしたかったのではなく、自責の念にかられて精神の均衡を崩しているのだ、ということがわかる。

そしてこの話を半七が聞いたところで芝居調になるのだが、いやぁ…かっこよかった、これがもうびっくりするほど。さん助師匠のたらーと流れる鼻水も気にならなくなるほどに(笑)。
そしてサゲも変わっていて、これがまた独特の後味を残す。良かった、というだけじゃなくて、ちょっとぞくぞくっと…。

こういう陰惨な噺って好きじゃないんだけど、面白かった。やっぱりさん助師匠って文学的なんだな。そこに私は惹かれるのかな。

第三回雷門小助六 雷門音助 スケスケ兄弟会

8/6(土)、日暮里サニーホールで行われた「第三回雷門小助六 雷門音助 スケスケ兄弟会」に行ってきた。

・晴太「寄合酒」
・音助「春雨宿」
・小助六「死神」
~仲入り~
・トークコーナー 小助六師匠、音助さん
・小助六「馬大家」
・音助「宮戸川(上)」

晴太さん「寄合酒」
この間国立で見て面白い!と思った前座さん。
前座さんらしい大きな声の素直な落語なんだけどところどころキラっと光る面白さが。隣に座っていた友だちが何回か「あれ?」という感じに身を乗り出していて、「面白いでしょ、この人」と自分の手柄のように鼻の穴を膨らませて言ってしまった。

音助さん「春雨宿」
とある師匠に頼まれて九州で行われる子ども落語の審査員をしてきた。
小学生の部と中、高校生の部に分かれているんだけど、これが驚くほどうまい。行く前は「声をもう少し大きく」とか「滑舌をよく」みたいなことを言えばいいだろうと思っていたんだけど、みんなそんなレベルはとっくに超えていて、気が付いたら「上下をもう少しこういうふうに大きく振った方が奥行きが出る」とか普段自分が師匠方に言われてることを言っていた。
そんなまくらから「春雨宿」。

江戸っ子二人組が君塚温泉を目指して歩いているのだが途中の宿であとどれぐらい距離があるか聞いてみるとまだまだたどり着けそうにないのでそこの宿に泊まることに。
汚い宿で女中の訛りがひどい。名前をきけば「ケメ子」。「ケメ子?」「んだ。ケメとボクのケメ」。
途中ですごくなまった歌が入ったり、女中をからかうつもりが逆にからかわれていたり、とにかく最初から最後までバカバカしくて楽しい噺だった。
そしてなんかきちんとしたきれいな落語をやる人という音助さんのイメージが(いい意味で)裏切られて、楽しかった~。

助六師匠「死神」
助六師匠が「死神」!フツウの噺もやるんだ(←失礼)!
医者じゃなく行者になるというのは初めて聞いたけどそれ以外はフツウの死神。
テンポが良くて軽めの「死神」だったんだけど、地下に入って行くところでいきなり電気が消えてびっくり!そしてサゲにも…。

トークコーナー 小助六師匠、音助さん
3回目にしてすでにネタ切れということでお客さんからアンケート(質問)を募ってそれに二人で答えるというスタイル。
私の質問「ポケモンGOはやられてますか?」には二人とも「NO」だった。やっぱりね…。でも小助六師匠が「やると絶対にはまりそうなので手を出さないようにしてる」というのはちょっと意外だった。

あとは音助さんの結婚や小助六師匠の結婚しない話が多かったかな。小助六師匠の潔癖症の話が出た時に小助六師匠が「あーだから結婚できないんだ、っていう目で見てる!」って言ったのに大笑い。

助六師匠「馬大家」
馬が大好きな大家さんに馬尽くしのこたえをする、というだけの噺。こういうばかばかしい話好きだー。
助六師匠って上下の振り方が柔らかくてそれが見ていてすごく心地いいんだなぁ。
見たい見たいと思いながらなかなか見に行けなかった小助六師匠を二日連続で見られて満足!

珍品変品の会

8/5(金)、上野広小路亭で行われた「珍品変品の会」に行ってきた。
好きな師匠が3人出て、演じ手の少ない珍品落語をやるという夢のような企画。

・伸力「道灌」
・小助六薙刀
・蝠丸「忍びの医者」
~仲入り~
・夢丸「三くだり半」
・座談会 蝠丸、小助六、夢丸

助六師匠「薙刀傷」

地元でカルチャースクールの落語講座の講師をしているという小助六師匠。一番の古株は子どものころから来ていてかなりの落語通。
この間も生徒たちがそれぞれ1席ずつ落語をやってその後小助六師匠が講評をし、生徒にも意見を聞いたのだが、必ず手を挙げるのがこの子ども。

「語尾に”ね”が多いのが気になります」
「着物の着方がよくないと思います」
いちいち的確なのだが「もう少し古典らしい言葉を使った方がいいです」と言ったときにはさすがに後ろに控えていたお父さんがその子の頭をぽかんと叩いた。
中に最近まだ入ったばかりの中年の女性がいて小噺を披露したのだが「今の時点ではこれぐらいでいいと思います」って思い切り上から目線…。

そんなまくらから「薙刀傷」。
若旦那が具合が悪いと聞いて呼び出された番頭の久蔵。番頭になら話をすると言っていると聞いて若旦那の部屋へ。
ここまでは聞いたことがあるような展開…と思っていると、「わかりました。ってことはあれですね。歌が必要ですね。ワタクシ用意してまいりました」と崇徳院の歌を出したり「え?ちがう?ということはこっちですね。ええ、ええ。ちょっと値は張りましたけどご用意しております」とみかんを出したり、それも違うと言われると「わかりました。でしたらこれですね。これは重かったです。」と橋の欄干を出してきたり。
おそらく小助六師匠が入れたんだと思うけど、落語好きの心をくすぐるなぁ!

浪人の娘を好きになったと聞いて「私に心得がありますのでお任せください」と言って10両をつかんで浪人の家を訪ね、身もふたもない言いようをする番頭がおかしい。
旦那に責められて破れかぶれでもう一度浪人の家に行くと、その破れかぶれが功を奏しめでたく婚礼にこぎつける。店も繁盛して万事順調だったのだがそこにある日泥棒が押し入ってきて…。
サゲは思い切りダジャレでバカバカしくて最高~。
なんかすごくこなれている感があると思ったら、もう5回ぐらい高座にかけているとか。

蝠丸師匠「忍びの医者」

今日やるお噺はまずやってるのを見たことがない。30年前にとある師匠からちゃんと教わった噺なんですが、それから一度もやってなかった。ほったらかしにしてた。
今回「珍品」といったらこれかなとネタ出ししたものの、後からこれはやめておけばよかったと後悔した。
でもそろそろ稽古しないといけないと思いまして。私たいてい夜に石神井公園の川の周りを歩きながら稽古してるんですね。人もいないのでわりと大きな声を出したりして。
そうしたらこの日は後ろからついてくる足音がするんですね。それが私が止まると止まる。ちょっと怖いなと思ってまた稽古しながら歩き出してちょうど噺の切れ目だったので止まって後ろを振り返ってみたんです。そうしたらそこにいたのは60代ぐらいの女性で。「今やってたのは落語ですね?」と話しかけてきた。

いろいろ話してみたらその人は地元で素人を集めて「落語研究会」というのをやっていて老人ホームに慰問に行ったりしてるらしい。「あなた筋がいいからお入りなさい」と言われて、私気が弱いもんですから断れなくて「ええ、はい」。
すると「今度集まりがあるからその時に来て。メンバーに紹介するから」
「えええ?」と思ったんですが私気が弱いもんですからそれにも「はい」。
それで出かけて行ったら、やはり60代ぐらいの男女が集まってまして。その中にいた一人が寄席によく行くひとらしく「蝠丸師匠!なんでここに?!」。
その女性は「なんて失礼なことをするんだ」と怒られてましたが、私反省いたしました。やはりもっとメディアに出ないとだめだな、と。

淡々と話すのがもうおかしくておかしくて大笑い。
そんなまくらから「忍びの医者」。
どうも体の調子が悪いと言う八つぁん。見てもらったのが名代の藪医者でそんなんじゃだめだ、私の知ってる「忍びの医者」がいるから紹介すると言われて訪ねていく。
この医者は忍法を使って体の中にいろんな動物を小さくして入れて治療をするんだけど、病気を治すかわりに必ず何か別の弊害がおきる。最初具合が悪かったのは体の中に虫がわいていたからだと言って蛙を送り込むのだが、虫は食べてくれたものの体に蛙が残ってて頭をぴょこぴょこするのを止められない。
間に師匠の好きな昔の映画の薀蓄が入ったりしてとにかくとっても楽しい。
「バカバカしいお噺を聞いていただきます」の言葉通りとってもバカバカしいんだけどすごく面白い。師匠は「だめだ、これ」と言ってたけどわかりやすく面白いからこれは絶対寄席でもかけたらいいなー。

夢丸師匠「三くだり半」
真打になって地元で落語の講師をやるという仕事が入った、という夢丸師匠。ありがたいなぁと思いながら地元の駅に降り立つとそこにはチラシが貼ってあった。
「三味線や琴なんかと違って落語は簡単にできる芸です!」とあり夢丸師匠の写真に吹き出しが書いてあり「君もすぐに真打だ!」。

…いや、真打になるのに15年かかったんですが。
というのがおかしい。

そんなまくらから「三くだり半」。
長屋に住んでいる浪人はプライドばかりが高くて仕事をせずにお呼びがかかるのを待っているだけ。かわりに妻が働いているのだが稼ぎが少ないため子どもにも満足に食べさせてやることができず井戸端で倒れてしまう。見かねた大家が握り飯を作ってあげて、浪人が字がうまいので手紙の代書をやればいいと話を持って行くのだが、最初に来た客が遊女にラブレターを書けと言うと「そんなものが書けるか!」と追い出してしまう。
次に来たのが女房に三くだり半を書いてほしいという男で最初は断るもののそれならいいかと書いてやると、次から次へと三くだり半を書いてくれという客が訪れて…という噺。
これも夢丸師匠の工夫がきいているのか、噺としても面白いし、全然「あり」な感じ。面白かった。

座談会 蝠丸師匠、小助六師匠、夢丸師匠
3人がそれぞれこの噺をどうやって見つけたかとか誰から教わったかなどを話して言い訳をするという趣旨だったんだけど、主には蝠丸師匠が言い訳をしてそれをあとの二人がなだめる、という図ですごく楽しかった。
蝠丸師匠ってほんとにあのままの人なんだなぁ…。客席に向かって素であれこれ聞いてくるのがほんとに知りたくて聞いていてそれがもうおかしくておかしくて。

この会は蝠丸師匠の気が向いたらやる会らしく、前回が6年前だったけど評判が良かったからまた次回はそんなに間をおかずにやりましょうと二人が言っても、もごもごと言って「そうしよう」とは言わない蝠丸師匠がまたおかしかった~。
すごく楽しい会だったので6年に一度と言わず、半年に一度ぐらいやってほしいなぁ。蝠丸師匠によればとにかくそういう噺を見つけないといけないのでそれがまず大変ということだったけど。

そこのみにて光輝く

 

そこのみにて光輝く (河出文庫)

そこのみにて光輝く (河出文庫)

 

 ★★★★★

北の夏、海辺の街で男はバラックにすむ女に出会った。二人がひきうけなければならない試練とは―にがさと痛みの彼方に生の輝きをみつめつづけながら生き急いだ作家・佐藤泰志がのこした唯一の長篇小説にして代表作。青春の夢と残酷を結晶させた伝説的名作が二〇年をへて甦る。  

 身動きがとれないような閉塞感に満ちているのに少しだけの希望のようなものも感じる。

底辺で虐げられながら生きてきた人間のあきらめや恨みの感情をのぞかせながらも、なににも汚されない純粋さや頑なさを持つ拓児と千夏が魅力的だ。

ドック内での組合と会社との闘争にはあくまでも傍観者でありつづけた達夫が拓児たちの人生に踏み込んで行ったのが意外でもあり感動的でもあった。
彼らを救い出すだけでなく自らも救われている。

決してめでたしめでたしではないがそれでもそこには希望の光が見える。タイトルの通りに。

映画化されているとは知らなかった。見てみたい。