御社のチャラ男
★★★★★
社内でひそかにチャラ男と呼ばれる三芳部長。彼のまわりの人びとが彼を語ることで見えてくる、この世界と私たちの「現実」。すべての働くひとに贈る、新世紀最高“会社員”小説。
タイトルが秀逸。
最初、この男は「チャラ男」ではないだろうと思いながら読んでいた。もっと悪質じゃないか、と。でも読み進めるうちにこの人を「チャラ男」と呼ぶのは、今の日本の社会の生ぬるさであり優しさであり生きる術でもあるのかもしれないと思えてきた。
会社で働く空気を巧みに伝えているし、人は一方から見ただけでは分からないということや、今の日本が「ヤバい方向」に進んでいることや、この後起こるであろう「とんでもないこと」を予言もしているすごい小説。
だけど思わず吹き出してしまうようなユーモアにも満ちている。読みながら何度も「うまいなぁ」と思った。
ここに登場する人たちは、見たくないものに焦点を合わせないようにして自分の陣地を守ろうとしながらも、誰かのことを大事に思ったり心配したりもしている。絶望と希望、両方を感じた。めちゃくちゃ面白かった。
あなたならどうする
★★★★
病院で出会った男と女の行き場のない愛―「時の過ぎゆくままに」。カルト宗教の男を愛してしまった女の悲劇―「あなたならどうする」。冷酷非情に女を乗り換える男の理屈―「うそ」。他に「東京砂漠」「ジョニィへの伝言」など昭和歌謡曲の詞にインスパイアされ生れた9つの短篇。愛も裏切りも全てがここにある。
昭和歌謡のタイトルがついた短編集。冒頭に歌詞が載せられているんだけど、知ってる曲は懐かしく、知らない曲は「え?ほんとにこんな歌詞だったの?(凄い歌詞だけど大丈夫?)」とドキッとする。
人生の岐路に立たされた時、逃げ込むようにして恋愛や性愛に走る男女。
次から次へと隙のある女性の生活に入り込みぽいっと捨てる男。
恋愛が生きていく上の単なるスパイスの人もいれば、「運命の出会い」と思い全てを捨てて飛び込んでしまう人もいる。愚かよのう…と思いながらも、自分にも思い当たる節がないわけでもなく、ちょっと胸がちくっとする。
ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい
★★★★
“男らしさ”“女らしさ”のノリが苦手な大学2年生の七森。こわがらせず、侵害せず、誰かと繋がりたいのに。ジェンダー文学の新星!鋭敏な感性光る小説4篇。ぬいぐるみと話すサークル“ぬいサー”の、生きにくく、どうしても鈍くはなれない若者たちの物語。
いまだ男社会、マッチョイムズが続く社会の中でそれと「闘う」と想像しただけで腰が引けてしまうヘタレな自分はそんな時「男もつらいけど~女もつらいのよ~♪」の歌って目を逸らす。
これを読むと辛いのは女だけじゃないな、と思う。
この物語に出てくる人たちはとてもセンシティブでとても優しい。それゆえに弱い。
弱い人に「強くなれ」もセンシティブな人に「鈍くなれ」も違う。
彼らにとって息をするのも苦しくなるような生きづらい世の中だけど、少しでも分かり合える人を見つけて居心地のいい場所を見つけて折り合いをつけて生きていく。それしかないと思う。
この本もきっとそんな人たちがちょっとほっとする場所になるかもしれない。
サキの忘れ物
★★★★
アルバイト先に忘れられた一冊の本。それは誰からもまともに取り合ってもらえなかった千春がはじめて読み通した本となった。十年後、書店員となった彼女の前に現れたのは。(『サキの忘れ物』)。前の東京オリンピック以来の来日で、十二時間待ちの展示の行列に並びはじめた主人公がその果てに出会った光景。(『行列』)。ある晩、家の鍵をなくした私は居場所を探して町内をさまようことに。一篇のなかに無数の物語が展開!(『真夜中をさまようゲームブック』)。
短編集。
些細なことで本の少しだけ会話したり関わりを持ったことが、その後の人生を変えていくこともある。それはきっと自分では意識していなくても変わりたかったり出口を探していたりしたからなのかもしれない。
表題作は以前読んだ津村さんの作品…喫茶店でのなんてことない会話やコンビニの店員さんとの挨拶に救われる話を思い出させる。
「河川敷のガゼル」もいい。写真を撮り情報を集め発信する女性とただひたすらにガゼルの姿を目で追う少年。不思議な光景が何故かリアルだった。
晴れの日散歩
★★★★
京都の卵サンドのおいしさに震え、ドラマロスになり、レモンサワーをこよなく愛す。年を重ねても変わらない、角田光代のかけがえのない日常。オレンジページ人気エッセイ第四弾!
大好きな角田さんのエッセイ。
食べ物の話や好きなこと、苦手なこと、テーマは設けずに「些末なこと」が書かれているが、「わかるわかる」や「なるほど、そんな捉え方があるのか」に溢れていて楽しい。
角田さんと言えば、で知れ渡った「肉好き」や「料理好き」を時を経てやんわりと否定しているところも、誠実さがにじみ出ていて好きだなぁと思う。
年齢とともに変わっていくもの、変わらないもの、薄まっていくものと色濃くなっていくもの。
長年エッセイを読み続けているだけにその変化も楽しめた。
そしてトトはんの写真がファンには嬉しい。
コロナの時代の僕ら
★★★★★
「今まさに読まれるべき本」「コロナ後を考えるうえでも有意義」「感染症の科学についてわかりやすく解説されている」など、感想を続々頂戴しています。私たちは今を、そしてこれからをどう生きるべきか。考える助けとなる一冊です。
話題の本をようやく読んだ。
日本のクルーズ船での感染、イタリアの感染者数が目を見張るほどの勢いで増え続けていた時を思い出す。
ものすごい昔のことのように感じるがほんの半年前のことなんだな…。
あの時期にすでにこういう文章を書いていたことに驚くし、これを書いたのが「素数たちの孤独」の作者であることにも驚く。
そしてパンデミックが国民を分断しヘイトを増長し政治腐敗を白日のもとにさらすのは全世界共通なのだな、ということも知る。
とても面白かったし心が鎮まる文章だった。
祝祭と予感
★★★
大ベストセラー『蜜蜂と遠雷』、待望のスピンオフ短編小説集!大好きな仲間たちの、知らなかった秘密。入賞者ツアーのはざま亜夜とマサルとなぜか塵が二人のピアノの恩師・綿貫先生の墓参りをする「祝祭と掃苔」。芳ヶ江国際ピアノコンクールの審査員ナサニエルと三枝子の若き日の衝撃的な出会いとその後を描いた「獅子と芍薬」。作曲家・菱沼忠明が課題曲「春と修羅」を作るきっかけになった忘れ得ぬ教え子の追憶「袈裟と鞦韆」。ジュリアード音楽院プレ・カレッジ時代のマサルの意外な一面「竪琴と葦笛」。楽器選びに悩むヴィオラ奏者・奏へ天啓を伝える「鈴蘭と階段」。巨匠ホフマンが幼い塵と初めて出会った永遠のような瞬間「伝説と予感」。全6編。
「蜜蜂と遠雷」の続編。というには少し物足りない。それぞれの登場人物たちのスピンオフ。登場人物うろ覚えということもあって、ふーんへーほー…ぐらいの感想しかない。
「蜜蜂と遠雷」と間を置かずに読んだ方がよい。
木になった亜沙
★★★
誰かに食べさせたい。願いがかなって杉の木に転生した亜沙は、わりばしになって、若者と出会った―。奇妙で不穏でうつくしい、三つの愛の物語。
生まれた時から世間とずれている…ないがしろにされたりスルーされる人たちが主人公の3作品。
孤高の彼らが少しだけ世の中に歩み寄ろうとすると、近寄ったことでますますその世界は砕けおかしなことになっていく。
でもこれは悲劇なのだろうか。案外そうでもないのかもしれない。そう思わせるのが独特。
最終話は日常と非日常の境がさらに曖昧でふわっと異世界に行った主人公が何食わぬ顔で日常を生きているのが不思議なような面白いような。今の自分には合わなかったけど違う時に読んだらもっと楽しめたのかもしれない。
わたしに無害なひと
★★★★★
十六の夏に出会ったイギョンとスイ。はじまりは小さなアクシデントからだった。ふたりで過ごす時間のすべてが幸せだった。でも、そう言葉にすると上辺だけ取り繕った嘘のように…(「あの夏」)。誰も傷つけたりしないと信じていた。苦痛を与える人になりたくなかった。…だけど、あの頃の私は、まだ何も分かっていなかった。2018年“小説家50人が選ぶ“今年の小説””に選出、第51回韓国日報文学賞受賞作。
大切なことから目をそらし、大事な人の手を離し、求められている時に振り向かず手遅れになってから何度も思い出してしまうのはどうしてなんだろう。
「わたしに無害なひと」という言葉の分かっていなさ…身勝手さ…でもこういう風に誰かのことのカテゴライズした経験は自分にもあって、だからこそこれらの物語が痛い。
救いがない物語が多いけれど、なぜか少しだけあたたかい。
「ショウコの微笑」も好きだったけど、この短編集もとてもよかった。
最後に収められた「アーチディにて」は読み終わって涙がこぼれた。
柳家小三治 夏の会 昼の部
8/10(月)、よみうりホールで行われた「柳家小三治 夏の会 昼の部」に行ってきた。
・小はぜ「富士詣り」
・三三「金明竹」
~仲入り~
・小八「夏泥」
・小三治「小言念仏」
本当に久しぶりの小三治師匠。
お元気そうな姿にほっとして嬉しくて泣きそうになる。
小三治師匠の落語会は中止続き。頑張って取ったチケットが無駄になり、でも確かに小三治師匠や会に行ったお客さんが感染するようなことになったら…と思うと中止もやむを得ないしなぁ。
久しぶりの小三治師匠は、今まであまり人に話していなかったけれど、ある凄い方が師匠の落語を聞きに行きたいと連絡を下さって国立演芸場が厳戒態勢を敷いたこと…しかし結局それが来られなくなったこと…そんなことが数回あった後、今度は招かれて行って落語をしたという話。
その時にやったのは「青菜」だった、というのは…すごい話だなぁ…。
それからこの間テレビで渥美清さんと藤田まことさん2人を特集した番組を見た、という話。
藤田まことさんには会うことはできなかったけれど、渥美清さんには一度会ったことがある。永六輔さんが間に入ってくれて、和田誠さんと一緒に行って…。
ああ、そういえば和田誠といえば彼の奥さんは面白い子で。私は彼女がまだ出たての頃…「男が出るか女が出るか?」と大声を張り上げてた頃から知ってるんだけど。
会うまではあれはわざとウケると思ってやってるんだろうと思っていたんだけど会ってみたら違ってた。彼女は内面に激しい物を持っていてそれが湧き出してきている。本当に面白い人でそれになによりシャンソンが素晴らしかった。二人が結婚するという報告を受けた時は、これは素晴らしい夫婦になると思った。お互いにとっていい相手だと思ってとても嬉しかった。
で、渥美清さんと一緒に鰻を食べに行ったんだけど…と話しかけたところで、また袖から「師匠、時間が!」の声。
あああーーーその話聞きたかったーー。なにせ私は今年に入ってから寅さんに大ハマりしていて見まくっていて、渥美清さんのこともどういう人だったんだろうと興味があったのだ。
声をかけられた師匠は大慌てで「渥美清さんは一言も発しませんでした。間に入った永さんに一言二言答えただけで。ああ、こういう人なんだなと思った。でも素敵だなと思いました」と。
それからこの間横浜で5か月ぶりに落語をやったら言葉が出てこなかった、という話に。
自分は落語の会話を頭で覚えてやっていなくて、自然に登場人物が出てきてしゃべりだす、というような落語をやってきた。
今になってそれを後悔している。普通に覚えてやっていたら、と。
横浜ではちょっとやけくそになってお客さんからリクエストなんか取ったら…「文七元結」なんて言う人もいて。
そんな話、何十年もやってねぇよ。
で、ためらいながら「青菜」って言ったお客さんがいて、ああ、青菜いいな、と思ってやり始めたんだけど、やり始めてから気が付いた、これは結構厄介な話で。
…で、この日は時間もなかったので「短い噺を」と言って「小言念仏」。
この日の小言念仏では、「飯がこげくせぇぞ。え?お隣?お隣だって飯はこげねぇほうがいいんだから言ってこい。え?行きたくない?お隣とは気が合わない?…おかしいなぁ。こんなセリフはなかったはずなんだが」。
ぶわはははははは。
師匠は不本意だったかもしれないけど、こんな面白いセリフがふわっと出てくるなんて、やっぱり小三治師匠は落語の世界に生きてるんだなぁと思う。
決まり切ったセリフ、展開、サゲ、その面白さももちろんあるけど、登場人物が何言いだすかわからない、そんな落語の楽しさを教えてくれるのが今の小三治師匠なのだ。
人間
★★★★
僕達は人間をやるのが下手だ。38歳の誕生日に届いた、ある騒動の報せ。何者かになろうとあがいた季節の果てで、かつての若者達を待ち受けていたものとは?初の長編小説にして代表作、誕生!!
フィクションではあるけれど、作者本人の肉声を感じる文章やセリフがあってドキドキする。
「創作」を志している人たちが集うシェアハウスに渦巻く嫉妬と羨望と鬱屈した感情。
マイナスな面ばかり目が行ってしまうけれどそこから刺激をもらったり創作の原動力になったりすることももちろんあるわけで、だからこそ永山も影島もここで過ごした数年を完全に断ち切ることはできなかったのだろう。
生々しくて痛々しい箇所もあったけど面白かった。
後半の沖縄の部分はちょっと唐突な印象を受けてしまったのだが、永山のルーツを描きたかった?のだろうか。
「人間をやるのが下手」というワードには少し励まされる。
鴻上尚史のもっとほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋
★★★★★
「人はわかり合えない。その認識に立った回答が
どうしてこんなにもポジティブなのか」「回答が具体的だから、ストンと胸に落ちます」
「語りかけるような言葉が、じんわり心に沁みこむ」
「悩んだら、何度でも鴻上さんの言葉に戻る」…
話題沸騰、作家・鴻上尚史氏の人生相談、第2弾!!
観念的ではなく、理想論でもなく、精神論だけでもなく、
具体的で実行可能なアドバイスを25本+書下ろし原稿2本=計27本収録!「もっとほがらか」の方も引き続き面白い。
ネットで見た時も「いいっ!」と思ったのだが、隠居してこれからは会えていなかった弟と会ったり妻と旅行に行こうと思っていたのに、実はみんなから煙たがられていることを知らされて寂しくてしょうがないという男性への回答が秀逸だ。
穏やかに寄り添いつつ、言うことははっきり言う。
いやしかし…長年「俺が食わせてやってるんだ」「お前が〇〇なのは努力が足りないからだ」と言い続けてきた過去を変えることはできないから、いったん家族との関係修復は諦めて外に目を向けてまずは友達を作れ、というのはすごい回答だなぁ。
自分の今までのキャリアや経歴を知らない人たちの中に入ってそこで新たな関係を築けた時、その姿を見て家族も見方を変えてくれるかもしれない、と。ううむ。
恋愛についての回答はちょっと受け入れがたいものもあったけど(ピンとこなくても付き合ってみろ、とか)、どうしても近視眼的になっていくところを「こんな風に考えてみたら?」と視野を広げさせてくれる回答が素晴らしい。面白かった。
来世の記憶
★★
「あたしの前世は、はっきり言って最悪だった。あたしは、おっさんだった」地球爆発後の近未来。おっさんだったという記憶を持つ「あたし」の親友は、私が前世で殴り殺した妻だった。前世の記憶があるのは私だけ。自分の容姿も、自分が生きてきて得たものすべてが気に入らなかった私は、親友が前世の記憶を思い出すことを恐れている。(「前世の記憶」)「ああもうだめ」私は笑って首を振っている。「うそ、もっとがんばれるでしょ?」「だめ、限界、眠くて」寝ている間に終わった戦争。愛も命も希望も努力も、眠っている間に何もかもが終わっていた。(「眠りの館」)ほか、本書のための書き下ろしを加えた全20篇。その只事でない世界観、圧倒的な美しい文章と表現力により読者を異界へいざない、現実の恐怖へ突き落とす。これぞ世界文学レベルの日本文学。
最初は乾いたユーモアや奇想天外だけど妙にリアルな肌触りを楽しく読んでいたんだけど、後半になるにつれ読んでいてしんどくなった。
この繊細さと研ぎ澄まされ方が今の私にはしんどかった。
読書って自分のコンディションによるところが大きいから、コンディションが良くなったらまた読みなおしたい。
池袋演芸場8月上席昼の部
8/1(土)、池袋演芸場8月上席昼の部に行ってきた。
・小太郎「手水廻し」
・さん助「看板の一」
・マギー隆司 マジック
・たけ平「宿題」
・一之輔「かぼちゃ屋」
~仲入り~
・カンジヤマ・マイム パントマイム
・文蔵「馬のす」
・燕路「鹿政談」
・ロケット団 漫才
・小里ん「夏泥」
~仲入り~
・小傳次「寿司屋水滸伝」
・白酒「親子酒」
・二楽 紙切り
・左龍「壺算」
こんな時に来てくださるお客様は真の落語好き。
将棋に夢中になっている人が何を見ても将棋で考えてしまう小噺。
大好き。何度見ても凄いなぁと思うし感動する。
こちらも毒多めの漫才でスッキリするなぁ。
実は私4月上席の昼の部にトリをとらせていただいてたんです、
十字屋落語会 馬治・さん助ふたり会
7/31(金)、「十字屋落語会 馬治・さん助ふたり会」に行ってきた。
・さん助「鼻ほしい」
・馬治「笠碁」
~仲入り~
・馬治「 代書屋」
・さん助「夏の医者」
さん助師匠「鼻ほしい」
エレベータでこちらの会にいらしてくれたお客さんと一緒になったのに、全く気付かれなかったというさん助師匠。
「私自身も同じ階だったのに向かいのスナックにいらしたお客さんなんだろうと思い込んでたんですが」。
そんなまくらから「鼻ほしい」。
やり始めてすぐに「これ…開口一番でやる噺じゃないですけど…。前回は前座さんが上がったから今回もそうだろうと思ってこの噺に決めて来たんですけど今日は前座さんの高座がなくて…。でも…やります。やるんです!」と再び最初から(笑)。
鼻に抜けたしゃべり方がおかしいんだけど、子どもたちが素直にそのままの発音で繰り返すのがおかしい。さん助師匠の子どもって邪気がないから悪気がないのが伝わってくる。
馬子さんもいかにも気のいい田舎の人で悪気はなくちょっと面白いことを言ったつもりで返歌をしたんだろうけど、侍だからプライドは高いんだね、きっと。
ちょっといけない笑いだけどおかしくて大好きだ。
馬治師匠「笠碁」
初めて落語協会の社員総会に出てきました、と馬治師匠。
私、落語協会の社員だったんですね、知らなかったです。
ちゃんと流れがあって進行していくんですけど、これがやっぱり噺家のやることですから大喜利みたいで面白いんです。みなさんもお金払ってでも見に来た方がいいです。
そんなまくらから「笠碁」。
ご隠居二人がまだ若い感じがしつつ…頭を動かさずにぴょこっぴょこっと様子をうかがう姿がなんともチャーミングでかわいい。独自のサゲが好きだった。
さん助師匠「夏の医者」
小噺をやりかけたんだけどわちゃわちゃに。もう一度やろうとして言えずに断念(笑)。
そんなまくらから「夏の医者」。
訪ねてきたおじさんとその家の息子に呼びかける。返事をしたところで「…まだ鼻ほしいが残ってる…?」に笑う。
隣村の医者の先生を訪ねていくと先生は畑仕事の真っ最中。
先生の種をまく仕草が明らかにおかしい。年を取ってるから?あるいは変人?(笑)。
それじゃお前の家に行こうと二人で歩きだしてから病気の父親が先生と幼馴染であることが分かると、「おらたち若いころはよく二人で悪さをしただ」と言って、夜這いに行った話。それを聞いて「そんな話、聞きたくなかった」と言うセリフがおかしい。
山の頂上で一休み。
ここで先生が一服しながら畑のことばかり話すんだけど、ここ、のんびりしていて大好きな場面。でもここでも先生がちょっと異常な感じすらするのがさん助師匠らしくておかしい。
うわばみに飲まれてからの先生の落ち着きぶりと、下剤を花咲じじいのように撒くのがたのしい。
やつれはてたうわばみもさん助師匠らしくて面白かった!