わたしに無害なひと
★★★★★
十六の夏に出会ったイギョンとスイ。はじまりは小さなアクシデントからだった。ふたりで過ごす時間のすべてが幸せだった。でも、そう言葉にすると上辺だけ取り繕った嘘のように…(「あの夏」)。誰も傷つけたりしないと信じていた。苦痛を与える人になりたくなかった。…だけど、あの頃の私は、まだ何も分かっていなかった。2018年“小説家50人が選ぶ“今年の小説””に選出、第51回韓国日報文学賞受賞作。
大切なことから目をそらし、大事な人の手を離し、求められている時に振り向かず手遅れになってから何度も思い出してしまうのはどうしてなんだろう。
「わたしに無害なひと」という言葉の分かっていなさ…身勝手さ…でもこういう風に誰かのことのカテゴライズした経験は自分にもあって、だからこそこれらの物語が痛い。
救いがない物語が多いけれど、なぜか少しだけあたたかい。
「ショウコの微笑」も好きだったけど、この短編集もとてもよかった。
最後に収められた「アーチディにて」は読み終わって涙がこぼれた。