りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

公園へ行かないか? 火曜日に

 

公園へ行かないか? 火曜日に

公園へ行かないか? 火曜日に

 

 ★★★★★

アメリカにいるから、考えること。そこにいないから、考えられること。2016年11月8日、わたしはアメリカで歴史的瞬間に居合わせた、はずだった――。世界各国から作家や詩人たちが集まる、アイオワ大学のインターナショナル・ライティング・プログラムに参加した著者が、英語で議論をし、街を歩き、大統領選挙を経験した3ヶ月。現地での様々な体験から感じたことを描く11の連作小説集。

わざわざ「小説」と言っているということは、実際に体験したことをベースとしながらも状況とか会話とか登場人物などはフィクションなのだろうか。

アイオワ大学のインターナショナル・ライティング・プログラムに参加した著者が、様々な国から集まった作家たちとともにいろいろなプログラムに参加する。

英語は得意でないと言いながらもみんなの会話に耳を傾け、知りたいと思ったらきちんと尋ね、自分が見たいと思ったものは一人で見に行く。
トランプ大統領誕生の場に居合わせ、直前のSNSの盛り上がりに感じた違和感、アメリカ国内の格差など、その空気がとてもリアルに伝わってきた。

言葉に関する文章も素晴らしかったけれど、個人的には空港でワールドシリーズを見る話が好き。私も野球が大好きなのでワールドシリーズと聞いて血沸き肉躍る感覚、それを誰かと共有したい気持ちがすごくよくわかる。

柴崎さんって小説を読むと凛としていて迷いのない人という印象が強いけれど、これを読むと逡巡したりもやもやしたりもするんだな、と改めて(当たり前だけど)。

紀伊国屋寄席

9/18(火)紀伊国屋寄席に行ってきた。


・松之丞「乳房榎」
~仲入り~
・歌助「権助芝居」&踊り
小三治ちはやふる

小三治師匠「ちはやふる
知らないのに知ったふりをする、のまくらで小学生のころ映画を見た話。
学校の校庭にシーツをつなげたようなものをスクリーンに「鞍馬天狗」を見た。
風が吹くとそのスクリーンがたわんで、鞍馬天狗が歪んで見えた。
クラスの中にはそんなんじゃなく映画館に映画を見に連れて行ってもらったという子どもも3人ほどいて、その中の一人に「お前もいったろ?」と聞かれ、思わず「あ、ああ」と答えてしまった。
「どんなだった?」と聞かれて「え?ええと…風が吹くとこうふわふわっとなって…」
知らないなら知らないと言えばよかったのになぜか言えない。そういうことはいくらもある。
そんなまくらから「ちはやふる」。

小三治師匠の「ちはやふる」は何度も見ているけど、先生と金さんの会話が絶妙。
先生が初めからだましてやれと思っているわけじゃないけど「物知りで高慢な面をしてる」とか言われ、当然知ってるだろうと「教えてくださいよ。どういうわけなんです?」と聞かれて、時間稼ぎをしながら徐々に話を作り上げていく…ただそれだけの噺だけど、なんともいえない楽しさ。
先生が興が乗ってきて「互いに見交わす顔と顔~♪ちゃちゃんちゃんちゃん!!」と浪花節をうなって三味線を鳴らすところが大好き。

「え?5年で大関に?そりゃすごいや」「え?ふられちゃった?ふられちゃったの?」と素直な反応を見せる金さんがかわいい。
なんだかんだ言ってこの二人は仲が良くて会話を楽しんでいるんだな。
小三治師匠が先生と一体化して自分で作ったデタラメな話をするのを楽しんでいて、それを聞く金さんもその話を楽しんでいて、それを見る私もそれが楽しくて楽しくて。
あーーー楽しい。なんて楽しいんだ。小三治師匠の落語は。

席が良かったので小三治師匠の表情一つ一つをじっくり見ることができて、師匠も心なしか満足げでよかった~。幸せだった~。

この日は仕事で遅くなって入ったのが途中になってしまったし、隣の男はこそこそ録音してるし、携帯の着信があちこちで鳴るし…いろいろ冴えなかったんだけど、小三治師匠の高座が素晴らしかったので満足。

さん助ドッポ

9/17(月)、お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」に行ってきた。


・さん助 ご挨拶
・さん助「女郎の強飯」
~仲入り~
・さん助「子別れ」
・さん助「子は鎹」


さん助師匠 ご挨拶
今日は「西海屋騒動」はお休みして「子別れ」を通しでやります、とさん助師匠。
ニツ目の時に「子別れ」の通しを上中下と日を分けてやったことがあったんだけど、その時はお客さんから「なんで日にちを分けるんだ」とおしかりを受けた。
今日は通しでやりますが、上と中はあんまり楽しい噺じゃないので…。
よく「子別れの”中”はなんというタイトルなんですか」と聞かれるんですが、中がいわゆる「子別れ」です。でも今はほとんどやられることはないですね。「子別れ」といえば「子は鎹」になってますね。
今日はたっぷり通しでやるので…さすがにお客様もしんどいと思うので仲入りは入れます。

さん助師匠「女郎の強飯」
くまさんが弔いで酔っ払って寝ているところを起こされるところから。
酒を飲んでたちが悪くなっているところがものすごいリアル。さん助師匠ってお酒飲めないんだよね?っていうのが信じられないような酒乱っぽさ。
機嫌よく笑ってたかと思うと、急に怒り出す。感情の振れ幅が大きくて、見ていて不安な気持ちになる。
弁松の弁当を背中に5つ、懐に3つ入れて、吉原へ。
途中で紙くず屋に会い連れ立ってご機嫌で向かうんだけど、途中で背中を押されてがんもどきの汁がこぼれたり、店の若い衆に背中から弁当を出して渡したりと、結構笑いどころもあった。


さん助師匠「子別れ」
通夜に行って3晩帰らず吉原に居続けしたくまさんが家に帰ってくるところから。
言い訳が長い!そして吉原の女のことをのろける。しかも生々しく。そして痛いところを突かれるとキレる。
おかみさんに「こっちに来いよ」と言うところが、いつもぞくぞくっとする。なんか男のずるさがにじみ出ていて、見てはいけないものを見てしまったような…。
それからおかみさんに離縁状を書いてくれと言われて激高し夫婦別れ。
隣に住んでる男が「謝っちゃえよ」と言うのも聞かず、最悪の展開。


さん助師匠「子は鎹」
吉原から連れ込んだ女が出て行ってようやく目が覚めたくまさん。
すっきりした表情で番頭さんと木場へ向かう途中でかめちゃんに会う。
かめちゃんの友だちのろくちゃんが最高。「かめちゃんかめちゃん、さっきからあそこにいるおじちゃんがかめちゃんのことじーーっと見て笑ったり泣いたりしてるよ。知ってる人?」
そう言われて「ううん、知らない人」と答えるかめちゃん。
声をかけられてろくちゃんに「先に行ってて」と言うのが少し大人びていて、ぐっとくる。
くまさんとかめちゃんの会話がいいなぁ。かめちゃんが最初は警戒して他人行儀なんだけど徐々に子供らしくなって。
「新しいおとっつぁんって?」と不思議がるかめちゃんに「それはですね。昼間は遊びに来てるんだけど夜になると…」と説明するろくちゃんが漫画っぽくておかしい~。
そして興味津々の八百屋もおかしい。
お小遣いをもらって「靴を買う」と言われたくまさんが「かかぁは靴も買ってくれないのか」と言ったときのかめちゃんの反撃も男の子らしくていいなぁ。
さん助師匠の子どもはほんとにかわいい。

家に帰ってからおかみさんとかめちゃんとの会話はおかみさんが静かで抑えた感じ。なんかさん助師匠らしからぬ…もしかするとただ風邪気味だっただけ?(←失礼)
「出てけ」と言われたかめちゃんが「出てけっていうのは言わない約束だよ」と泣くのがもう…。
再会の場面では「ここで押しの一手だよ!」とくまさんにはっぱをかけるかめちゃん。
復縁を言われたおかみさんが「虫が良すぎるんじゃないかい」と言うのもいいなぁ。そうだよ!そうそう!と思う。
「だったら、あたしの分も鰻を頼んでおくれ」と言われたくまさんが「うなぎーーーー」と大声で叫ぶのも好きだー。
そしてこのくまさん、またお酒飲んだらまた同じことをしそうだな、という危うさを感じさせるところも好き。
ちょっともっさりしたところもあったけど、やっぱりさん助師匠の「子別れ」が好きなぁ。解釈というか表現したいと思っていること、そこが好きなんだなということを確認したなー。

こはぜのたび

9/17(月)、落語協会で行われた「こはぜのたび」に行ってきた。

・小はぜ「提灯屋」
・小はぜ「真田小僧
~仲入り~
・小はぜ「へっつい幽霊」


小はぜさん「提灯屋」
今回こちらの会を初めて落語協会の2階でやることについて、あれこれ語る小はぜさん。
あれこれ気にしていることを語る小はぜさんに、なにもそこまで正直に言わなくてもいいよ~と肩を叩いてあげたくなるほど…。
ほんとにいろいろ気にする人なんだなぁ。
こういう気にしぃな人にこの場所はあんまり良くないのでは?と聞いていて思ったり、でもこういう場所でやることの嬉しさもにじみ出ていたり。
ニツ目になりたての頃から比べると会も増えてこの間はついに渋谷らくごにも呼ばれて、あーあたしの小はぜさんが遠くに行っちゃったなぁと、少し寂しい気持ちもあったんだけど、まくらを聞いてると相変わらずでちょっと安心するな。
って最初からあたしのじゃないけど。わかってるけど!

そんなまくらから「提灯屋」。
この地味で笑いどころのない噺をこだわってやってるなぁ、小はぜさん。渋谷らくごでも「提灯屋」やったみたいだもんね。
これで聞くのは3回目か4回目だけど、冗長なところがなくなってきて楽しい感じになってきてる!
難しい噺だよなぁ。そもそも紋についての知識がないと、若い連中がひねり出す口上の楽しさがイマイチ伝わりづらいし。
4人目の若い衆が一番ぼんやりしているのに一番高い提灯を持ってきちゃうのがおかしい。
ムキーってなる提灯屋さんがかわいそうだけど、落ち着いた隠居との対比が楽しい。


小はぜさん「真田小僧
北海道の地震で一時的に牛乳が品薄になった時、初めて豆乳を買ったという小はぜさん。
パンを食べるとき牛乳をゴクゴク飲むのが好きなので、豆乳も同じ勢いでゴクゴクっとやったら、思っていたよりすごい豆味!豆の味がぶわーーーっと口中に広がったので思わずぶわはっ!!とむせてしまって口の中の豆乳がキラキラキラ~そして鼻からも出てしまった。
それを見ていた母親に「鼻から豆乳が」と言うと「やめて。そういうこと言うの。あれでしょ、鼻から牛乳~って言いたいんでしょ。だめ!そういうオヤジギャグは。」
「なんだよオヤジギャグって。そうじゃないよ、鼻から豆乳なんだよ」
「そういうオヤジギャグは言わないの!」
「オヤジギャグじゃないよ、ほら、粗忽の釘で”藪から棒ですな”って言われて”違います、壁から釘です”って言うような。古典的なクスグリだよ!」
「だめ!そういうオヤジクスグリは禁止!」
…ぶわはははは。なんだその会話は。
でもきっとおかあさんはあれですよね、嘉門達夫の「ちゃらりーん、鼻から牛乳~♪」が頭にあったんですよね?違うかな。
そんなまくらから「真田小僧」。これももちろん通しで。
ちょっとお父さんが金坊に真面目に腹を立てすぎてる気が…。自分の息子なんだし、口では悪く言ってもやっぱりほんとはかわいいと思ってるはずだからそれが伝わってくるといいな、と思ったな。


小はぜさん「へっつい幽霊」
くまさんが思ってるより迫力があって素敵。
小はぜさん、怖がるキャラクターがとっても合ってるけど、こういうどしっとしたキャラクターも意外にいいな。
それに対してキャーキャー怖がる若旦那。
気弱な幽霊が、強気なくまさんに腰が引けてなかなか出てこられないのがおかしい。
くまさんと幽霊が根っからの博打打ちだから「半分もらってもしょうがない」と意見が一致するのが面白い。
楽しかった!

憂鬱な10か月

 

憂鬱な10か月 (新潮クレスト・ブックス)

憂鬱な10か月 (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★

誕生の日を待ちながら、母親のお腹のなかにいる「わたし」。胎盤を通して味わうワイン、ポッドキャストで学ぶ国際情勢、そして父ではない男が囁く愛の言葉と、ある不穏な計画―。胎内から窺い知る、まだ見ぬ外の世界。美しい母、詩を愛する父、父の強欲な弟が繰り広げる、まったく新しい『ハムレット』。サスペンスと洞察が冴える極上の長篇小説。

全能だけど無力な胎児が子宮の中で母と愛人の悪だくみを聴く。タイトルにある「10か月」というのは、胎児が子宮の中で過ごす10か月。母が飲むワインに酔いしれ、母から疎まれる父を案じ、愛人への憎悪を募らせながら、生まれ落ちた後の自分の未来を憂う胎児の一人語り。

とんでもなくグロテスクなのだがブラックなユーモアに満ちていてでもちょっぴり切実で…。
胎児がお腹の中でこれだけ物がわかっていたら…と思うと恐怖しかないが、生まれてくる前にこれだけのことが分かってしまっている胎児の方がより気の毒だな…。

いつもは緻密な調査を行って作品を書いてきたマキューアンが自分の想像力だけで自由に書いたというこの作品。やっぱりマキューアンは意地悪だなぁと思いつつ楽しかった。

池袋演芸場9月中席昼の部

9/16(日) 池袋演芸場9月中席昼の部に行ってきた。


・市坊「道灌」
・喬の字「たらちね」
・さん助「代書屋」
・ニックス 漫才
・圓十郎「饅頭こわい」
・さん福「五目講釈」
・アサダ二世 マジック
・正朝「町内の若い衆」
・小燕枝「長短」
笑組 漫才
・小はん「親子酒」
~お仲入り~
・さん若「お菊の皿
・小のぶ「粗忽長屋
・小菊 粋曲
・さん喬「船徳

 

喬の字さん「たらちね」
喬の字さんの「たらちね」は「今朝は土風激しゅう…」の解釈が面白い。古今亭とか土風っていうから里う馬師匠だな、とか。笑った。
でもまくらで「お菊の皿」のサゲまで話したのはいただけない。何も知らずにやったさん若さんが気の毒だったなぁ。

 

さん助師匠「代書屋」
「私は入門した時に上の師匠方からきつく言われました。落語というのは昔の人が作った噺を大切に語り継いできたものなのだから、変えちゃいけない」と、珍しく前方をいじったあと「代書屋」。
おおっ、前にドッポで見て大笑いした、みんながやってるんじゃない型の「代書屋」!
私はすごく楽しかったんだけど、ベソ子ーーーっと絶叫したあたりで、お客さんがひゅーっと引いていく~。
私の隣のほどよく落語好きそうな女性二人も引いてる!きゃ~。あの時の感想で「寄席でやればいいのに!」って書いたけど、寄席でやってこんなふうになるとは。ごめん!でもオラ知らね~。(←無責任)


さん福師匠「五目講釈」
勘当になってる若旦那が講釈をやるっていう噺。もしかして初めて聞いたかも。
講釈部分がツラツラとすごいなめらかなんだけど途中から時代もなにもめちゃくちゃになって、いろんな落語が混ざってくる(さっきでた「たらちね」を盛り込んだり)のが面白い。
楽しかった!

 

正朝師匠「町内の若い衆」
この日のお客さんにすごく合っていて、ものすごい盛り上がり。
横座りしたおかみさんの迫力のあること。笑った。

こういう噺が合うお客さんだったから、誰もやってない「代書屋」はダメだったんだろうなぁ…うーむ。

 

小燕枝師匠「長短」
お辞儀をするなり「今日のあたくしはちゃんとやりますよ」とおっしゃったので大笑い。
しかもそのあとすぐにアサダ先生が「真似しちゃダメ!」と出てきて、「あーびっくりした。もう帰ったかと思ったのに。まだいたとは。暇なんだね」にも笑った。
そんなビックリなまくらから「長短」。
小燕枝師匠を初めて見たのが浅草でその時のネタが「長短」で一目でハートを射抜かれたんだけど、ほんとに小燕枝師匠の長短は最高。
長さんのかわいさと、短さんの憎めなさが炸裂していて、見ていて幸せな気持ちになる。テンポも良くてほんとに気持ちのいい高座。よかったー。


小はん師匠「親子酒」
何度聞いてもいつも楽しい小はん師匠の「親子酒」。
おかみさんにお酒をねだる時に「神様、お釈迦様、弁天様、安室奈美恵様」には大笑い。小はん師匠の口から「安室奈美恵」の名前を聞こうとは!
あと「パワハラ」なんていうワードもあった。
お茶目だなぁ。かわいいー。


さん若さん「お菊の皿
権助提灯」じゃない!(嬉)
生き生きとしていてとても楽しい「お菊の皿」。
私「お菊の皿」はいろいろ変えない方が好みなんだけど、さん若さんのは変えてなくてそれも嬉しかったな。
芸がくさくなったお菊さん。「見得を切る幽霊って初めて見た」のセリフには笑った。


小のぶ師匠「粗忽長屋
兄貴の自信たっぷりぶりがめちゃくちゃおかしい。
ここまで自信たっぷりだったら、自分の死体だと思っちゃう?
陽気でばかばかしくて楽しい。ほんとに小のぶ師匠の高座はいつも全力で楽しい。

 

小菊師匠 粋曲
「寄席スタンダードナンバー」に入ろうとしたところで二の糸が切れた!
「あら、ニの糸が。どうしましょ」と小菊師匠。
楽屋に向かって「私の荷物…持ってきていただけます?」
前座さんがトランクのようなものを持ってくるとそれを開けてポーチ?から糸を出して…「三の糸はね、切れやすいんですよ。だからこうして三味線に付けてるんですけどね、ニの糸が切れるなんてことはめったにないもんですからね。しかも上が切れちゃったでしょ。下の方なら応急処置もできるけど、上じゃね。ま、いいわね。ここで付けますね」。
そう言って、出した糸を着物の袂でしゅっしゅっとしごいて、ささっと付ける…その素早さと美しさにうっとり。糸の扱いがすごくきれいでそして付けるのも早くて落ち着いてて…説明しながら付けてくれたんだけどそれもまた一連の音楽のよう。
「あら。3分も無駄にしちゃったわ。」って時計をちらっと見ながら言ったのも色っぽくて素敵だった。
立ち居振る舞いがきれいなんだなぁ。でも三味線の扱いはまるで一流のギタリストみたい。痺れた。


さん喬師匠「船徳
「小菊師匠っていうのはほんとにお美しくて三味線も素晴らしくて…その糸が切れて張り替えるところを見られるなんてお客様今日はほんとにラッキーですよ」とさん喬師匠。「きょうはもうこれだけで十分でしょう」。わはははは。
そんなまくらから「船徳」。
おととい喬の字さんが「お菊の皿」をやって「もう夏は終わったんだぞ」と師匠に小言を言われたと言っていたけど「船徳」(笑)。ってこの日は夏が戻って来たかのような暑さだったんだ。

さん喬師匠の「船徳」は何度も見ているけど、見るたびに少しずつ変わってる。お客さんに合わせてということもあるのかもしれない。
この日は笑い成分多め。徳さんがいっぱいいっぱいになってお客に横柄な態度をとるのがすごくおかしい。首だけで指示を出すところには大笑い。
楽しかった。

第223回志らく一門会

9/14(金)、お江戸日本橋亭で行われた「第223回志らく一門会」に行ってきた。


・志らぴー「三人旅」
・らく兵「紺屋高尾」
志らく井戸の茶碗」、採点


らく兵さん「紺屋高尾」
あんまり好きじゃない噺なんだよなぁと思いながら聞いていたんだけど、とても面白かった。
恋煩いになって妙な咳をしたり、それを親方が「恋煩いで咳?出るかな?想いがこう喉に来て…?ええ?」と不思議がったり、「面目なくて名前を言えない」と言われた親方が自分のおかみさんかと勘違いして呼んできて、おかみさんもまんざらでもなかったり…すごくおかしい。

藪井先生と出かけながら、初回は花魁の部屋に行くこともできないと知ってショックを受けて、行こうかやめようか悩む久蔵。
こういう展開は今まで見たことがなかった。
それでも「親方は自分のことを思ってそういう嘘をついたんだと思います」という台詞。久蔵が親方の気持ちをちゃんと受け止めていることが伝わってきて素敵だなと思った。

「あいあい」は鷹揚でもなんともなくてむしろ異様(笑)。
藪井先生もいるところで「今度いつ来てくんなますか」と問われて久蔵が本当のことを言おうとして藪井先生が必死に止める、という展開も初めて。
それを聞いて花魁がムッとして、「話を聞いてください」と久蔵が理由を話す。そうすると花魁が部屋に誘う。
確かにその方が納得がいくな。

笑いどころもたくさん作って、でも一途な久蔵とそれにこたえる花魁、それから親方の優しさとそれを受け止める久蔵も描かれていて、よかった。


師匠の採点は「30点」。
こういうところが良くないからこのままでは「売れない」っていう師匠の指摘は…うーん…。まぁ売れてナンボなのかもしれないけど、でもちょっと目指すところが違うんじゃないかな、と思わなくもなかった。でもらく兵さんが何を目指しているのかは私にはわからないし、そもそも私がどうこう言うようなことじゃないし。
でももう師匠が出てくる会は行かなくていいかな、というのが正直な感想。

私はあなたの記憶のなかに

 

私はあなたの記憶のなかに

私はあなたの記憶のなかに

 

 ★★★★

角田ワールド全開!!待望の小説集。「父とガムと彼女」初子さんは扉のような人だった。小学生だった私に、扉の向こうの世界を教えてくれた。「猫男」K和田くんは消しゴムのような男の子だった。他人の弱さに共振して自分をすり減らす。「水曜日の恋人」イワナさんは母の恋人だった。私は、母にふられた彼と遊んであげることにした。「地上発、宇宙経由」大学生・人妻・夫・元恋人。さまざまな男女の過去と現在が織りなす携帯メールの物語。「私はあなたの記憶のなかに」姿を消した妻の書き置きを読んで、僕は記憶をさかのぼる旅に出た。(ほか三篇)

誰かのことを好きになったり憎んだり、好きだったわけではないけどいつまでも引っかかっていたり、何度別れても忘れられなかったり…それは相手によるものというよりは自分の気持ちの問題なんだと思う。
自分がどういう人間で何に憧れどうなりたいのか、どうなりたくないのか。今どういう状態にあるのか。
なにかしら満足しきれていないからこそ誰かのことを強烈に好きになったり憎んだりする。
結局相手と自分ではなく、どこまでも自分ありきなんだな。最初から最後までほんとはずっと「ひとり」なんだ。

そんなことを「猫男」「神さまのタクシー」「空のクロール」を読んで感じた。

好きだったのは「父とガムと彼女」「水曜日の恋人」「おかえりなさい」。これらには、「ひとり」の私が少しだけ誰かと混じりあえる、そんな瞬間が描かれているように感じた。

壮絶な虐めを描いた「空のクロール」は好きな話じゃないけどずっと忘れられそうにない。
酷い場面よりも、なぜか美しい場面が印象に残っている。

表題作の妻は、現実の自分をもっと見てほしかったのかあるいは記憶の中に閉じ込めてもらいたかったのか。ほんとは探してほしいのか、探してほしくないのか。読む人によって答えは違うような気がする。

赤坂倶楽部 小のぶを聴く会

9/13(木)、赤坂会館で行われた「赤坂倶楽部 小のぶを聴く会」に行ってきた。

・市坊「たらちね」
・市童「幇間腹
・小のぶ「金明竹
~仲入り~
・小のぶ「青菜」


市童さん「幇間腹
わー、なんか久しぶりの市童さん。
以前から達者な印象があったけど、なんていうか柔らかさが加わったっていうか余裕が出てきたというか。テンポもよくてしなやかで気持ちのいい落語。


小のぶ師匠「金明竹
江戸から明治にかけて、お医者さんで幇間噺家という人は珍しくなかった、と小のぶ師匠。病気で暗くなっている人の緊張をほぐすために、一席噺をしたり上手に気持ちを盛り上げたりする医者というのがいた。
この噺の前半部分を作ったのはそういう方だったとか。

そして「金明竹」は何回も聞いているけど、「中橋」がどこらへんにあるのか、「ゆうじょうこうじょうそうじょうさんさくのみところもん」「しぶいちごしらえ」「こづかづきのわきざし」がなんなのか、など全然知らなかったし、調べようと思ったこともなかった。
それらを丁寧に説明してくれる小のぶ師匠。この薀蓄がとっても楽しい。
「説明しようと思ったものが一個抜けたみたいだけどなんだっけ…どうせ思い出せないからもういいや」。ちょっとなげやりな小のぶ師匠がまたおかしい。

そんなまくらから「金明竹」。
与太郎がすごくオーバーアクションで子どもっぽくてかわいい。こんなに無邪気でかわいい与太郎は初めて。
そしておじさんとおばさんは品があって、特におばさんは旦那様に仕える感じ。
猫を借りに来たり、旦那に目利きをおねがいしに来た人が与太郎に断られて「それはちっとも存じ上げませんでした」と言って帰って行くんだけど、その時に丁寧に扉を閉める、そのしぐさだけですごくおかしい!

加賀屋の使いの人の言い立ては4回あったけど、途中が抜けたり順番が逆になったり…あとで小のぶ師匠がそのことを気にして謝ってらしたけど、そういうのあんまり気にならない。
いや言葉が出てこなかったりするとひやひやはするけど、でもそれもまた落語っぽいっていうか。
おかみさんがとてもきちんとしているだけに、旦那に聞かれて一生懸命思い出しながらとんでもないことを言いだす面白さが際立つ。
すごく楽しかった~!


小のぶ師匠「青菜」
先ほどは申し訳ございません、と小のぶ師匠。
高座の上で眠くなってしまった。私のせいだけど暑さのせいもある。あと主催者の方に始まる前に「がんばって」と励まされたのもいけなかった。
ほんとはお客様一軒一軒まわっておわびをしないといけないくらい。でも行きません。なので、また次回いらしてください。

…ぶわははは。
市童さんが「こちらの会に来るようなお客様は落語ファンの中でも相当ディープな落語ファン」と言っていたけど、確かにきっとそうなんだろうけど、でも全体的にお客さんがとても温かい雰囲気。だからきっと大丈夫。私は全然大丈夫よっ!

そんなまくらから「青菜」。
植木屋さんが旦那に後ろから声をかけられて「いけね!」って顔するの、かわいい~。
旦那はいかにも鷹揚で品がある。
家に帰っておかみさんに「あれをやろう」「今はこうして馬鹿にされているけど、隠し言葉をやれば、もしかして貴族の出じゃないか?って言われる」と言うと、おかみさんが「ほんと?」とがぜんやる気をだすのがおかしい。

おかみさんは文句も言わず押し入れに入るけど、出てきたときのヨレヨレ加減はかなり激しい。
小のぶ師匠らしい情熱的な「青菜」、楽しかった。

滅びの園

 

滅びの園 (幽BOOKS)

滅びの園 (幽BOOKS)

 

★★★★★

世界は終末に向けて暴走してゆく。 人類に、希望はあるのか――。

突如天空に現れた<未知なるもの>。 世界で増殖する不定形生物プーニー。 抵抗値の低い者はプーニーを見るだけで倒れ、長く活動することはできない。 混迷を極める世界を救う可能性のある作戦は、ただ一つ――。

面白くて一気読み。

ブラック企業に勤め妻とも分かり合えずどん詰まりの鈴上が迷い込んだ異世界はまるでユートピア
生活には困らないし友だちもできて家族もできる。
時々「魔物」が現れるが、それをみんなで撃退し、自分たちの平和な日常を守って暮らしている。
そこへ「あなたは<未知なるもの>の内部、核のすぐ近くに取り込まれている唯一の人間であなただけが地球を救うことができる」という手紙が届く。
すでに地球にいた頃の記憶が曖昧になっているがおそらくこれは本当のことなのだろうと鈴上は悟る。
しかし今の自分は地球にいた頃より格段に幸せに暮らしている。
手紙を燃やし何も知らないふりをして暮らしていると、今度は地球から中月という男が送り込まれてくる。
鈴上をどうにかして説得しようとする中月だが、鈴上はどうしてもこの男のことを好きになることができない。

一方ある日<未知なるもの>が現れた地球では、プーニーと呼ばれる地球外生物がはびこり、その威力に人間は次々死んでいき食べ物は少なくなり精神に異常をきたした人間が殺し合い、ディストピアと化している。
プーニーに対しての耐性が強い者はプーニー駆除隊に入り、どうにかして街を守ろうとする。
中学生の相川聖子は耐性がずば抜けて高かったためプーニー駆除隊に入るが、駆除の現場で自分より耐性が高くプーニーを自由に操る野夏という少年に出会う。彼は自分の力を使いプーニーを空き地に移動させたり孤軍奮闘しているのだが…。

ディストピアと化した地球で奮闘している彼らはまだ子どもで、ただ自分たちの暮らしを守りたいだけなのだ。

最初は鈴上に共感して読んでいたが、ディストピアと化してしまった地球にいて日常生活を破壊されながら必死に戦う聖子たちの章を読むと印象ががらりと変わる。
死を覚悟して異世界に旅立つ若者が放つ「でも死ぬまでは生きてるんだから」という言葉がとても印象的。

SFチックな話なのに、こういうことが実際に起きるかもしれないなぁとものすごいリアルに感じた。

乗客ナンバー23の消失

 

乗客ナンバー23の消失

乗客ナンバー23の消失

 

 ★★★★

乗客の失踪が相次ぐ大西洋横断客船“海のスルタン”号。消えた妻子の行方を追うべく乗船した敏腕捜査官の前に現れる謎、謎、謎。錯綜する謎を解かないかぎり、ニューヨーク到着まで逃げ場はない。無数の謎をちりばめて、ドイツ屈指のベストセラー作家が驀進させる閉鎖空間サスペンス。

久しぶりのサスペンス物だったのでドキドキしながら読んだ。
行方不明者が続出する豪華客船スルタン号。この船で妻と子を失くした覆面捜査官マルティンが船に乗り込み事件を追うのだが、誰もかれも怪しいしマルティンはしょっちゅう頭痛に襲われてフラフラになるし、どこかに監禁されている女の虐待シーンはあるしで、読んでいて息苦しくなる。

そうか、「治療島」の作者だったのか。確かにあれも息苦しい作品だった。

物語が終わり作者あとがきがあったあとに後日談。これが帯の煽り文句になってるわけね…。なるほど。

詰め込みすぎという気もするし、ちょっと人物像が破たんしてる部分もあったが、サービス満点のミステリーだった。

小んぶにだっこ

9/11(火)落語協会で行われた「小んぶにだっこ」に行ってきた。

・小んぶ「あくび指南」
~仲入り~
・小んぶ「転宅」


小んぶさん「あくび指南」
最近時間配分がうまくできなくなって遅刻癖がついてしまった、と言う小んぶさん。
あと30分で出かけなければならないのに洗濯機を回してしまったりするらしい。
…確かに私も数年前から出かけようと思ってる時間に出かけられなくなることが増えて、自分の処理能力の衰えを実感しているけど、小んぶさんはまだそんな年じゃないでしょうに!

それからさん若さんの真打披露目パーティの時の話。
正楽師匠がさん若さんが入門した時から真打になるまでを切ってそれを「川の流れのように」のメロディを流しながらOHPで見せたものがとても素晴らしく感動の嵐。
ではあったんだけど、結構お酒を飲んで酔っ払ってた正楽師匠。用意した紙を無造作に取り出したものだから、途中でうまく流れない部分があって、音楽だけが流れOHPに何も映らない時間帯もあったとか。
音楽が流れてる間に全部見せきれなくなり、えいや!と最後の方のものを出して終了。
それでも本当に素晴らしい作品で、涙する人続出だったらしいのだが、楽屋に戻って来た正楽師匠は「半分しか見せられなかった」と残念そう。
それで楽屋で見せきれなかった部分を流してくれたんだけど、観客は小んぶさん一人。それでも小んぶさんが見て「おおっ」と感動していると、正楽師匠はそれで気が済んだらしく満足して席に戻っていた、と。

…ぶわはははは。正楽師匠って素敵!!
楽屋で一人作品を見せてもらう小んぶさんを思うとほほえましい。

そんな話をしていた小んぶさん、落語に入ろうとして時計を見て「あれ!」。
どうやらまくらを1席分ほど喋ってしまったらしい。
ここにも時間配分ができなくなってる弊害が…(笑)。
そんなまくらから「あくび指南」。
これがもうひっくり返るほどおかしかった。なんでこんな噺がこんなに?!っていうぐらいおかしい。

兄貴分についてきてもらうときに「あの女、おれにとーんと来てるよ」と言っていたのに、行ってみると「はい?どなた?」って覚えてもらってさえいないおかしさ。
そしてあくびを教えてくれるのがその女性じゃなくて亭主の方とわかるところ。あくびの師匠が出てきたのをびっくりまなこでツーっと視線を移すのがおかしい。
あくびの師匠がまたなんともいえず怪しくて、暴言を吐くくまさんに向かって「出来の悪い弟子ほどかわいい」とぼそり…。
またあくびの師匠の模範例が…最初に揺れるともなく揺れてるところがすごく長くてよくわからないぐらいの揺れ方で怪しくておかしい~。
二回目をやったときに「船もいいが一日乗ってると………わい」には大爆笑!よくそういうことを思いつくよ、小んぶさん。最高。

くまがやってみると、揺れながら船頭を振り返って喋る、この独特のリズムが今までに見たことがないぐらいばかばかしくて大笑い。
そして「中に行って」のセリフに入ると嬉しくなってあはあはあはあは笑いだすばかばかしさ。
めちゃくちゃ楽しかった!

 

小んぶさん「転宅」
前半部分はすごくちゃんとしていて、おおっ!こちらは本寸法にやるのね!と思って見ていたら、泥棒がお菊さんに見つかっても食べ続け…飲んでは食べ、お菊さんの顔を見てはまた食べ続ける。わはははは。
基本的にはちゃんとしてるんだけど、時々壊れる(笑)。
お菊さんに何か言われて一応抵抗するんだけど、強く言われるとすぐに「うん、そうだな」と流される。
おかしかったのは次の日タバコ屋さんから事情を聞かされて、だまされたことがわかってからも、「お菊に会いたいなぁ…」。
なんかそのつぶやきがとても小んぶさんらしくてちょっとホロリ。
久しぶりの小んぶにだっこ、楽しかった!

 

池袋演芸場9月上席夜の部

9/10(月)、池袋演芸場9月上席夜の部に行ってきた。

東京ボーイズ 歌謡漫談
・可龍「辰巳の辻占」
・蝠丸「昭和任侠伝(上)」
・正二郎 太神楽
・鯉橋「質屋庫」


東京ボーイズ先生 歌謡漫談
聞いたことがないネタ!うれしい!
テレサテンの「つぐない」を、無茶ぶりの替え歌で。


可龍師匠「辰巳の辻占」
「今日は鯉橋ちゃんの初めてのトリの芝居の千秋楽」「真打のお披露目の時にトリをとるのとはわけが違う」「とても名誉なことだから、応援しているお客様も名誉なことだと一緒に喜んでいただきたい」と、心がこもった言葉にじーん…。
「辰巳の辻占」、すごくよかった。テンポがよくて弾むような高座で、聞いているとテンションが上がってくる感じ。
お玉ちゃんが色っぽくていかにも心がこもってなくて笑える。楽しかった!


蝠丸師匠「昭和任侠伝(上)」
「落語家さんはどこで話を仕込むんですか」と聞かれますけど、日本昔ばなし、あれはネタの宝庫なんです。例えば「桃太郎」なんかは誰でも絶対に知ってる話ですからね。「むかしむかしおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山に芝刈りに…はいきませんでした。風邪をひいていたので。おばあさんは元気だったので川に洗濯に行きました…」。
この「桃太郎」を踏まえたうえでの小噺、面白かった。

たくさんのお客様…鯉橋師匠目当ての方~?まさかとは思いますが私目当てで来たよ~って方~?
蝠丸師匠で手を挙げた人が結構いてそれに動揺されたのか、噺がなかなか決まらない様子。
時計をちらっと見てたからまくらが長すぎて時間が少なくなってるのかな、なにかな、と思っていると、「昭和任侠伝」。
あれ、時間足りるのかな?と思っていたら、やくざ映画を見て家に向かってるところで、「あら、時間が…。あと5分あれば終わりまで行くんですけどね…どうしましょう」と言ってると、前座さんがささっと飛び出してきてバッテン!
「あら…じゃおわります」

…ぶわははははは!!
鯉橋師匠を盛り立てるために邪魔をしないようにという蝠丸師匠のやさしさと、優柔不断がにじみ出ていて最高だった!

 

鯉橋師匠「質屋庫」
菅原道真島流しのまくらから「質屋庫」。このまくら絶対あった方がいい!この仕込みがあるとサゲがちゃんとわかるから。
そして初めてのトリの千秋楽で「質屋庫」っていうのにしびれる!
すごくテンポがよくて流れるような高座。鯉橋師匠ってすごく芸がきれいなんだけど、軽くてなんかこうばかばかしさが漂って面白い。
質屋の主の「質に入れた品物に気が残る」のながーい話。淡々と…確信に満ちた喋り方なのがすごくおかしい。
そしてそれを座って聞いてた小僧が、くまさんを呼びに行って「旦那が怒ってる」ってにおわすんだけど、聞いてみると全然わかってないおかしさ。
彫り物と喧嘩の強さを自慢にしてるくまさんが「化け物」と聞いて、「それじゃあっしはいったん家に戻って改めて出直します」と頭を下げるのも面白い。
そして鳴り物が入るのがいいなぁ。芸協って結構鳴り物を入れるよね。上方の噺家さんもいるからなのかな。鳴り物入った方が断然楽しい。
怖がる二人が離れに行く様子ややけくそになって飲み食いしてるのも楽しいし、それでも「役目だから」とこわごわ覗くのがいい。

鯉橋師匠の初めてのトリ、千秋楽に間に合ってよかった!

さん助 燕弥 ふたり會

9/8(土)、お江戸日本橋亭で行われた「さん助 燕弥 ふたり會」に行ってきた。

・小ごと「道灌」
・燕弥「笠碁」
・さん助「お化け長屋(上)」
~仲入り~
・さん助「お化け長屋(下)」
・燕弥「化け物使い」


さん助師匠の「お化け長屋」通し、面白かった!
怖がりの男の怖がりようが面白い。
大きな声で「きゃ~!!」って言うだけでおかしいんだよなぁ。
あとなんかさん助師匠らしくない素敵なくすぐりが…なんだっけ。「代演?」とか「ディスカバリー?」とか。

「お化け長屋」の後半は、この間白酒師匠で初めて聞いたんだけど、それとも少し違っていたような…。
面白かった~。
またさん助師匠が鈴本のトリに選ばれますように…そしてその時にこの噺を通しでできますように…なーむー。

池袋演芸場9月上席昼の部

9/8(土)、池袋演芸場9月上席昼の部に行ってきた。


・あまぐ鯉「まんじゅうこわい
・明楽「桃太郎」
北見伸 マジック
・吉馬「やかん」
・竹丸 いつもの
・新山真理 いつもの
・昇乃進「幽霊タクシー」
・寿輔「地獄めぐり」
~仲入り~
・ナイツ 漫才
・夢丸「殿様団子」
・夢太郎「置き泥」
ボンボンブラザーズ 曲芸
・楽輔「天狗裁き

 

明楽さん「桃太郎」
わーい、明楽さん!
昔の子どもに読み聞かせる「桃太郎」のあと、「おーい、金坊いつまで起きてるんだ、金坊。おーい金坊、返事ぐらいしないか金坊」。
ようやく起きてきた金坊に「子どもがこんな時間まで起きてちゃだめじゃないか。お父ちゃんが面白い噺をしてやる。むかしむかし…」と言うと金坊が「ええ?寝てたところを起されて…今2時だよ。それでむかしむかし?もう中2ですけど?」。
「え?もう中2?時の過ぎるのは早いな…。5歳ぐらいかと思ってた」。

自信なさげがお父さんが語る「桃太郎」。
金坊に突っ込まれるとどんどん話がぶれていくのがめちゃくちゃ面白い。
あー好きだわー明楽さんのセンス。面白い!

「ここは交互出演になっていて、今日はハズレの日です」って言うけど、私にとったら大当たりですから!もっと自信を持って~。


吉馬さん「やかん」
二ツ目
ニツ目になったときってよく「やかん」やるよね。
ちょっとむずかしめのお客さんだったけど、大きな声での講釈が迫力があってよかった。がんばれ~。


夢丸師匠「殿様団子」
ナイツで盛り上がってそこで帰ったお客さんも何名かいた中で…そしてなかなかむずかしめのお客さんを前に「殿様団子」。落語だけでこれだけ笑いをとるってすごい!かーさんうれしい(勝手に)。


楽輔師匠「天狗裁き
いつもの「熱中症」から始まって、どの話も最後まで聞くと「なんだ、それが言いたかっただけか」というダジャレなんだけど、独特の口調(〇〇なんだな?)も相まって楽しい~。
天狗裁き」楽しかったけど、私サゲはおかみさんの一言でぱっと終わるのが好きだな。そこがちょっと残念。