りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

二ツ目勉強会

7/26(火)、池袋演芸場で行われた二ツ目勉強会に行ってきた。

・市丸「まんじゅうこわい
・日るね「ろくろ首」
・はな平「宿屋の仇討」
・小んぶ「三方一両損
~仲入り~
・歌扇「締め込み」
・喬の字「千両みかん」

日るねさん「ろくろ首」
私、ぼーっとしているんですけど朝はもっとぼーっとしてるんです。
これじゃいけないと思ってコーヒーの粉を買ってきまして、毎朝これを飲んで頭をすっきりさせようと思ったんです。
お湯を沸かして入れようと思って、なんでだかカップのほうじゃなくてコーヒーの入ってる瓶のほうに入れてしまいまして…。蟻の巣みたいに、ぽつぽつぽつって…わかりますかね?
一回で使えなくなってしまいました。みなさんもお気を付けください。

初めて見た日るねさん。噂にたがわずなんかすごいぞ。いろんな意味で。かわいいけど。
そんなまくらから「ろくろ首」。
おそれていたよりは落語はちゃんと落語らしくてほっ…。
時折素に戻るようなところがあってドキドキしたけど、ところどころがなんか面白い。
なんとなくさん助師匠っぽい「ろくろ首」だった。

はな平さん「宿屋の仇討」
旅の仕事の話。
旅に行くときはその地方でしか食べられないものが食べたいと思い食べログで調べてから行く。
会場の近くで星が3.5以上の店。
でも最近の旅の仕事は泊りはめったになくて主催者もできるだけお金を使いたくないんでしょう。とっとと追い返そうとする。
こちらはそのあたりでおいしいものを食べようと思って、調べはついてるんですよ。
なのに会が終わるとすぐに飛行場に連れていかれちゃう。これがつらい。

かと思えば打ち上げに命かけてる主催者さんもいます。
前にお寺で落語会があったとき。
11時半ぐらいから始まって2時間の予定。前半はフツウだったんですけど仲入りになったらお客さんの席にお膳が並べられまして、さらにお酒とコップも。でも中には入れないんです。完全な「おあずけ」状態。
その状態で落語に入ったんですけど、もうみんな目が血走ってきちゃって…。
落語が終わった瞬間、酒が運ばれてきて「かんぱーい」。
それから本堂で飲みはじめどんちゃん騒ぎ。
「こんな場所でこんなに飲んでいいんですか」と住職に聞くと「お釈迦さまもお喜びでしょう」
…ほんとかよ!

1時から始まった宴会が終わったのが夜の0時。
ホテルに帰ったら一緒だった文菊兄さんから電話がかかってきて「飲みなおそう」。
えええ?もう飲みなおす隙間なんかありませんから!そういったものの「大丈夫大丈夫」と言われ2時まで飲んだ。

そんなまくらから「宿屋の仇討」。
まくらも面白かったけど落語もとっても面白い。
メリハリがあってテンポがよくて。
えばってるお武家様に、はしゃぐ江戸っ子3人組に、間に入って右往左往する伊八。
3人のキャラクターが立っていてなんともいえず楽しい。

隣の部屋でうるさがっているのが侍と聞いてしゅんとなった3人組がすぐにそのことを忘れて相撲をとったり「ゲンちゃんは色男」と歌いだしたりするのが楽しくて大笑いだった。

小んぶさん「三方一両損
小んぶさんの「三方一両損は前に小んぶにだっこで聞いたことがある。
確かあの時はシュールな新作をやったあとに「仲直りのしるしに」と言ってやったんだった。わははは。

この噺、あんまり好きじゃないんだけど、小んぶさんのはなんかこの二人の男たちが面白がりながら意地を張り合っているような感じがあるので、聞いていて楽しい。
そして時々小んぶさんらしい「引いた」セリフがあるところが好き。

お奉行様の前でなんでこうなったかを金太郎が説明してちょっと激昂すると「え?情緒不安定?」っていうのがすごいおかしい。
楽しかった。

歌扇さん「締め込み」
登場するや「待ってました」の掛け声。
おじさんファンがついてる?
「締め込み」はなんかあまりにもよく聞くので正直新鮮味が…

喬の字さん「千両みかん」
ついつい南なん師匠の「千両みかん」と比べてしまうのだが、みかんが見つかって南なん師匠の番頭さんは自分と若旦那の命が助かってよかった~と喜ぶんだけど、喬の字さんのは自分の命が助かったことだけを喜んでいるんだよな
そのちゃっかりさが若々しいともいえるけど、ちょっと「おや」と思ったり。

魔法の夜

魔法の夜

魔法の夜

 

 ★★★

夏の夜更け、町中をさまよう人びとが交叉し、屋根裏部屋の人形たちが目を覚ます…作家の神髄が凝縮された小宇宙!

 大人になれない男、彼を見守り続ける老女、恋に恋する少女、マネキン、マネキンに恋する男、月に呼ばれる少女、不良に憧れる不良になれない少年、少女たちのギャング団。

夜の魔法にかかったひとたちが何かに導かれるように家を飛び出して夜の街をさ迷う。不思議と懐かしく馴染みのある感じがしたのは、私自身も夜の持つ魔法にかかったせいなのだろうか。

ミルハウザーらしいといえばらしいし、物足りないといえば少し物足りない。

さん助 燕弥 ふたり會

7/23(土)、お江戸日本橋亭で行われた「さん助 燕弥 ふたり會」に行ってきた。

・百んが「道具屋」
・さん助「手紙無筆」
・燕弥「お化け長屋」
~仲入り~
・燕弥「干物箱」
・さん助「鰻の幇間

さん助師匠「手紙無筆」
珍しく明るい色の羽織を着て出てきたさん助師匠。新調したらしいのだが思っていたより明るい色が出た。これを楽屋で着たらさぞやからかわれるだろうと思っていたら、みんなイケナイモノを見たかのようにさっと目をそらす…。ぶわははは。

今度仕事で福岡に行くのだけれど、予算があまりないと言われ、格安ツアーを自分で探すことに。
1年前にスマホに変えたけれどまるで使いこなせていない。でもこういうことがあると必死になり、検索して格安のツアーを見つけネットで予約。これがもう大変。ログインしてくださいと言われてもログインの意味がわからない。ええ?なに?ユーザー登録?わからないながらもどうにか入力して予約画面までたどり着けたのだが、そこに予約番号を入れないといけなくて、その番号がメールで送られてきたのだけれど、これぐらいの数字はメモしなくても覚えられるわ!と入れるとエラー。また入れてエラー。何回かエラーになったらまた振り出しに戻ってしまった!そんなこんなで予約するのに3時間もかかってしまった。

そんなまくらから噺に入ろうとしてふと思い直して「普段はこんなことしないんですがせっかくなんでみなさんこの羽織を写真に撮ってください」と。
うおおー。珍しいー。何を思ったーー?
撮りたかったけどスマホの電源を落としてしまっていたのであきらめちゃった。頑張って撮ればよかったかな。

そんなまくらから「手紙無筆」。
明らかに読めてない兄貴の強がりがかわいい。
「それがなによりの手掛かりになる」
何度聞いても好きなセリフ。

燕弥師匠「お化け長屋」
マイクの音、大きくないですか?と燕弥師匠。空調は大丈夫?と聞くと客席から「さむい」という声。「寒いってよー」と声をかけてああだこうだとやっていると、着替え中のさん助師匠がほよっと舞台に出てきた。その姿はまるでおじいちゃんのよう(笑)。いなくなってから燕弥師匠が「なんですかあれは。住職の着替えですか」と言ったのがおかしかった~。

怪談噺をやってみたらどうですかと言われたこともあるんだけど、自分はやるつもりはない。うちの一門のニンじゃないっていうのもあるし、自分はお化けが苦手。前に家で「お菊の皿」をさらっていたとき、お菊の幽霊が出てくるところで背筋がぞぞっとした。気のせいかもしれないけど感じちゃったものはしょうがない。あんなに怖くない噺ですらそうだから本気の怪談なんかできるわけない。

そんなまくらから「お化け長屋」。
苦手と言いながら、もくべえさんが語る怪談の部分がしっかり怖くて面白い。しゅっとしてかっこいいから本気の怪談とかやったら絵になるのになー。
一人目の男の怖がりようと、二人目の男のまるで怖がらないところの対比が楽しい。

燕弥師匠「干物箱」
二人目の子が今小学1年生なんだけどこれが絵に描いたようなバカで、と燕弥師匠。子どもの頃は夏休みが待ち遠しかったけど、親になってみると本当に夏休みが恨めしい。うるさくてしょうがない。早く終わらないかと思ってる。
そんなまくらから「干物箱」。おやじの笑顔より女の子の笑顔がいいとのろける若旦那に思わずにやり。こういう若旦那は燕弥師匠にぴったりだなぁ。
明るくて楽しい「干物箱」だった。

さん助師匠「鰻の幇間
独り言を言いながら歩いている一八。ああだこうだと理屈っぽくてなんかすごく楽しい。羊羹を持ってご贔屓の家を尋ねるも空振り。二軒目では渡さずに帰ろうと思っていた羊羹をとられてしまい「なんだあの家は。魚の方から食いついてきた」。

向こうから来た男が誰だか思い出せないまま知ってるふりをして話を合わせて鰻屋へ。向かいながら下駄を褒められて得意になって薀蓄を語る。こんなに薀蓄を語る一八は初めて見たんだけど「下駄のことだったら1時間でも喋れます」には笑った。

2階に上がってみれば部屋で子どもがコマを回してるわ、酒は頭がくらっとくるぐらいまずいわ、漬物は飲みこめないぐらいまずいわ…。そのくらっとくる様子がなんともいえず楽しい。
そのうち客がはばかりに行ってしまい、「いいお客をつかまえた」とご満悦の一八がめくるめく妄想。これがすごく面白い。

なんと客に逃げられたのが鰻が出てくる前なんだな。こういうの初めて。
それから店の女がいかにも融通が利かなそうで話し方もぞんざいでイラっとくるのが楽しい。何度も「コマを回すな!!」と言うのもおかしくて大笑い。

あんまり好きな噺じゃないんだけどすごく楽しかった。だまされるところじゃなくて調子が良くて妄想激しい一八に焦点があたっていたからかもしれない。

えどはく寄席

7/23(土)、江戸東京博物館で行われた「えどはく寄席」15時の回に行ってきた。

・南玉 江戸曲独楽
・南なん「千両みかん」

南玉先生 江戸曲独楽
何度も見ているけれど、こんなに近くで(ほんとに目の前!)見たことはなかったので、見入ってしまった。五感のすべてを研ぎ澄まさせてものすごい集中力でやられているのが伝わってきて思わずこちらも息を止めてしまう。素晴らしい芸。

南なん師匠「千両みかん」
普段からいろいろネタを探しています、という南なん師匠。以前怖い映画を見たんですが今でも時々それを思い出すとぞっとします。
悪党が家に忍び込んでいてそこの夫婦を縛り上げる。そして狂犬病にかかった犬をロープでつないでそのロープの近くに蝋燭を置いている。蝋燭が徐々に溶けていくとその熱でロープが切れて狂犬が襲ってくる。そんな仕掛けをして悪党は出て行ってしまった。
縛られた奥さんの方が旦那に向かって「ねぇ!なんとかしてよ!」。
「いや…なんとかしろと言われても…」
「だったら何か歌でも歌って!」
「そんな気分じゃないよ。でも…わかったよ。歌うよ。♪ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデーディアわんちゃんー、ハッピバースデートゥーユー♪」
すると犬が思わず蝋燭をふっと消す。

もうこの犬が顔を横に向けて蝋燭をふっと消した姿がたまらなくおかしくて笑った笑った。いつまでもおかしくて、いまも思い出すと笑ってしまう。多分あのおかしさは前の方に座ってないとわからなかったかもしれないけど、もうこれが見られただけで来た甲斐があったなぁ。

そんなまくらから「千両みかん」。
南なん師匠の「千両みかん」はこれで三回目なのだが、やはり大きなざわざわした会場ということで、前に見た時よりわかりやすくやられていて、お客さんや会場でやりようが変わるんだなぁ。それをものすごい近くで見られる幸せ。

若旦那から話を聞いててっきり女の子だと思い込んだ番頭が「つやつやした?」「かおりのいい?」とにやにやするのがかわいい。
みかんを求めてあっちの八百屋こっちの八百屋と走り回る番頭が「みかんありますか?」と聞く言い方によって相手の答え方も変わってくる。最後に店先で倒れ込みながら「みかんあります?」「ないよ!…うちはあらものやだからね!」。

みかん問屋にたどりついて蔵をあけるシーンでは大きな蔵が目の前に見えてきて、涼しい風がこちらにも吹いてくるよう…。

若旦那にみかんを届けた番頭が心の底から若旦那が元気になったことを喜んでいて、そこからわが身を振り返って虚しくなるところが、なんか身につまされておかし悲しい。

オープンなスペースでお客さんは満員だけれど子どもも多くておそらくほとんどが初めて落語を聞くお客さん、というなかなかアウェイな環境。そこで「千両みかん」という地味な噺をやってしまう南なん師匠が大好きだ。

貝がらと海の音

 

貝がらと海の音 (新潮文庫)

貝がらと海の音 (新潮文庫)

 

 ★★★★★

郊外に居を構え、孫の成長を喜び、子供達一家と共に四季折々の暦を楽しむ。友人の娘が出演する芝居に出かけ、買い物帰りの隣人に声をかける―。家族がはら む脆さ、危うさを見据えることから文学の世界に入った著者は、一家の暖かな日々の移りゆく情景を描くことを生涯の仕事と思い定め、金婚式を迎える夫婦の暮 らしを日録風に、平易に綴っていく。しみじみとした共感を呼ぶ長編。  

 いただいたものや作ったものをご近所におすそわけし、娘や息子の家を訪ね、おくりものをし合う。頂いたお花を飾り、頂いたお総菜を味わい、妻の作ったおはぎをお供えし味わい、孫の手紙や習字を楽しむ。

なんて豊かな暮らしなのだろう、昔は物がないからこんなふうに暮らせたんだねと思って読んでいたら、そんなに昔のことではないということに途中で気づいて驚く。

消費することだけが幸福なのではないと教えてくれる。
こんな風に毎日を穏やかに感謝して過ごせたら本当に素敵だと思う。自分の神経が毛羽立ってきているなぁと思ったら読みたい本。心が慰められる。

浅草演芸ホール7月中席夜の部

7/19(火)、浅草演芸ホール7月中席夜の部に行ってきた。

・松之丞「雷電初土俵
・柳之助「家見舞い」
東京ボーイズ ボーイズ
・南なん「短命」
・伸治「棒鱈」
・正二郎 太神楽
・松鯉「小幡小平次

松之丞さん「雷電初土俵
久しぶりの松之丞さん。
前は成金メンバーの会によく行っていたんだけど、人気が出てきてなんか大変そうだなぁと思って足が遠のいてしまった。
特に松之丞さんは売れてるというのをあちこちで耳にしていたのだけれど、確かに前よりも吸引力がさらに上がってる!
笑いのセンスがあるのが強みだなぁ。
爆笑のまくらで「難しいんでしょ?」という講談のハードルをぐっと下げてくれる。これはすごい。

おそらく寄席ではよくかける演目なのだろう。緩急つけてまさに自由自在。思わず引き込まれて夢中になって聞いていた。
あとで思い返してみると、さほど大した話じゃなかった、と気づいてまた笑ってしまった。楽しかった。

柳之助師匠「家見舞い」
何度か見ている師匠。ご本人がおっしゃる通り、西郷隆盛に似てる(気がする)。
テンポがよくてメリハリがあって楽しかった!

南なん師匠「短命」
わーい、南なん師匠。この日浅草に行ったのは南なん師匠が見たかったから。
高座にあがるときにこちらを見てちょっとにこっとはにかんだような気がしないでもないでもない、きゃ~。(妄想力!)
いつものまくらじゃなくて「笑うのは大変よろしいそうです。たとえ愛想笑いでも。だから笑いましょ」。
笑え笑えと客席に強いられるのは苦手だけど、南なん師匠にそう言われるのは全くいやじゃない。やっぱり人柄なのかなぁ。

「おい、あそこをいくのは誰だ?」
「あれはたつんべのところのかみさんだろう」
「いい女だなぁ。前よりいい女になったんじゃねぇか?」
「ああ。後家になると女は急にきれいになるからな」
「そうなのか。じゃうちのかみさんにも早く後家になってもらおう」

もうこの小噺がべらぼうにおかしい。
なんだろう。いい女になったなぁという男の感心具合がほんとに実感がこもっていて、じゃうちも早く後家になってもらおうと本気で言ってて、思わずぶわはは!と笑ってしまう。楽しいなぁ。

そんなまくらから「短命」。
南なん師匠の「短命」は初めてでうれしい~。
察しの悪いくまさんがとてもかわいい。「え?なんでですか?」「たんめい?それはなんです?」「あ、指から毒?」「足と足が触れ合う…指から毒?」。南なん師匠が首をかしげてそう言うだけで笑ってしまう。

また家に帰ってきてから登場するおかみさんが…すごく激しくやってるわけじゃないのになんかとっても強烈で最高におかしい。
「なーにやってるんだよ、おまえさん!」
そのひとことでもう姿が浮かび上がってきてたまらない。
ご飯をよそうスピードも異様にはやいのがたまらなくおかしくて「おめぇしゃもじ使ってねぇな」と言われると「使ったことなんかないよ!」。
「使えよ」
「うるさいねぇ。じゃあ使うよ。だけどもう一生洗わないからね!」
洗わないからねっていうだけでなんでこんなにおかしいんだろう。
特別なくすぐりがあるわけでもなくむしろ結構刈り込まれているのに本当におかしい。
大好きだ、南なん師匠の「短命」。

伸治師匠「棒鱈」
この師匠も楽しそうでのびやかで大好き。
ぐずぐずの酔っ払いと隣の部屋の田舎侍。
最初から最後まで楽しくて笑い通しだった。

松鯉先生「小幡小平次
真打披露目以外で講談のトリを見に行くのは実は初めて。
大丈夫かなぁと思っていたんだけど、もう最初の語りから引き込まれてしまった。
いいなぁ、松鯉先生。
松之丞さんのように力で押すのではなく、地の語りはわりと淡々としたやさしい語り。それがだんだんストーリーが積みあがっていってクライマックスでがーーーっと盛り上がる。
途中で、あれ?楽屋の電気が消えた?もうお帰りの準備?なんてのんきに思っていたら、幽霊が登場するシーンで客電ががん!!と全部消えて真っ暗になってびっくり!!
思わず「ひぃーー」と悲鳴をあげるという思うつぼな反応をしてしまった。

怖かったけどすっごく楽しかった!今まで苦手意識のあった講談がまた少し好きになりそう。

 

彼女に関する十二章

 

彼女に関する十二章

彼女に関する十二章

 

 ★★★★

「50歳になっても、人生はいちいち驚くことばっかり」

息子は巣立ち、夫と二人の暮らしに戻った主婦の聖子が、
ふとしたことで読み始めた60年前の「女性論」。
一見古めかしい昭和の文士の随筆と、
聖子の日々の出来事は不思議と響き合って……

どうしたって違う、これまでとこれから――
更年期世代の感慨と、思いがけない新たな出会い。
上質のユーモアが心地よい、ミドルエイジ応援小説 

 ジャスト同世代なんだけど「わかるわかる」という部分と「いやでもそこはちょっと違うわ」という部分があって、それがまたゆるりと楽しい。

なんでもすぐに体当たりしてしまう私には、ひょいひょいとかわしていく聖子が自分よりずっとおとなに思えてちょっとまぶしかったり…。
最初は時代遅れに思えた随筆「女性に関する十二章」が自分の毎日と不思議とシンクロして心の中にちょっとした波風をたてる。

こういう暮らしぶり、なんかあこがれる。楽しかった。

葵落語会

7/15(金)、葵寿司で行われた「葵落語会」に行ってきた。

・笑坊「子ほめ」
・雲水「まんじゅうこわい
・談幸「佃祭」

雲水師匠「まんじゅうこわい
選挙のポスターの修正しすぎ写真につっこむ雲水師匠。某政治家の息子が両親のプラスの部分を何一つ受け継がずにどこから見ても「与太郎」というのも面白かったけど、バカを武器に独裁者みたいな振る舞いをする政治家が幅をきかせる今のご時世だから笑ってばかりもいられないよな…。

そんなまくらから「まんじゅうこわい」。これがもう見たことがないような「まんじゅうこわい」だった。
若い衆が集まって好きなものの話をあれこれして、次に怖いものを言いあう。
そこにやってきた「親分」。親分なら背筋がぞっとするような怖い目にあったこともあるでしょうというと「あるで」と言って語りだす。これが「え?これ怪談噺?」と思うぐらいのリアリティ。まったく知らない展開なので、どっちに転ぶかドキドキしながら聴いていると…。

あとで打ち上げの時に雲水師匠に伺ったら、枝雀師匠がこういう「まんじゅうこわい」をされていたらしく、持ち時間に応じていくらでも長くしたり短くしたりできるのだそう。
楽しかった~。雲水師匠はいつも聞いたことがないような噺をしてくれるから好き。

談幸師匠「佃祭」
3年ぐらい前から毎年健康診断を受けるようになった談幸師匠。この日もバリウムを飲んできたらしいのだが、バリウムのあとに飲んだ下剤の効果がテキメンで、今日は打ち上げが心配、とおっしゃる。わははは。

そんなまくらから「佃祭」。最初の梨絶ちの願掛けの仕込みからきっちり、なんだけど、語りが明るくて軽いから自然に噺に入って行ける。
次郎兵衛さんも「人情」っぽくなくて軽くて、身投げを助けたのも、たまたま通りかかって5両という金を持っていたからあげたんだとけろっとしている。
やきもちやきの女房とか、弔いに来てパーパーのろけを言う男とか、登場するのがみな能天気で楽しい人物なので、それが噺に色彩を与えている感じ。

いやぁ楽しかったなぁ。こういう季節にぴったりな噺を楽しく聴かせてもらえると本当に幸せ♪

打ち上げも楽しくお料理もおいしく満足満足。

花いちの観笑地帯Vol.16

7/14(木)新宿ベースポイントで行われた「花いちの観笑地帯Vol.16」に行ってきた。
前から深夜寄席やせめ達磨で見て気になっていた花いちさん。
西新宿でネタ卸しの会があることを知ってその日に予約を入れて行ってみたんだけど、歩いている途中で集中豪雨に遭い靴の中までびっしょびしょ。会場に行くと感じのいい女性が受付をされていて、飲み物はお代わり自由ですからいくらでも飲んでくださいと言っていただき癒される。アットホームでいいなぁ。

・花いち トーク
・ふう丈「道灌」
・花いち「?」(ネタ卸しの新作)
~仲入り~
・花いち「酢豆腐

花いちさん トーク
今日の助演、ふう丈さんのことを紹介する花いちさん。
とにかく声が大きくて明るい。前座の時も「兄さん、今日は何の噺をやるんですか?」と、これぐらい(近い!)顔を近づけて聞いてくる。圧がすごい。
「落語界のビリケンさんです」そういうと、後ろに控えていたふう丈さんが「兄さんっ!あたしの唯一のネタを!やめてください!」
「あ、そっか。ごめんごめん。さっき出てくる時も、兄さん余計なこと言わないでくださいよって言われてたんだった。ふふふ。」

うーん、楽しい。
花いちさんは、せめ達磨や深夜寄席で見て「なんか好きかも」と思っていて、今回ようやく会に来たんだけど、ゆるっとした人柄がとっても素敵。

ふう丈さん「道灌」
こんな雨の中大勢来てくださってありがとうございます、とふう丈さん。
すごいですね、この大雨。ここに向かって歩きながら引き返したいなって思われたでしょうに、こんなに大勢来てくださるなんて…あにさんはすごいですね。
みなさん、びしょびしょになったでしょう。
なかでも一番びしょびしょだったのが兄さんですね。スーツケースとカバンを両手に持って全身ぬれねずみで…先輩なので私がこう言ったらなんですけど…絵に描いたようなダメな人でしたね、ほんとに。あ、そこにいるのはダメ人間だ!って指さしたくなるぐらいのダメぶりでしたね。

ここまで聞いていただいてみなさんうすうす感じてるかもしれませんが、私声が大きいです。
私の師匠が三遊亭圓丈といいまして声が大きくて有名なんですが、私師匠の前で落語やって「ばかやろう!!お前は声が大きいよっ!!」って怒られましたから。
そのあと師匠がしんみりと「お前は戦場で落語をやれ」って言ってました。

ふう丈さん、花いちさんに「新作じゃなく古典やって」ときつく言われてたらしく、そこまで言われたら古典やりますけど、私これほぼネタ卸しに近いです。なのでかなりふわっとしています、すみません。
そんなまくらから「道灌」。
歌のくだりでは小野小町の雨乞いなどの話も入って結構たっぷりバージョン。
「道灌」はそれほど面白い噺ではないけれど私は大好き。隠居とハチの会話のざっかけなさが好きなのかな。ゲラゲラは笑えないけどクスっと笑えるところも楽しい。
ふう丈さんはメリハリがあって明るく元気な「道灌」でこれもまた楽しい。
ところどころに入る新作派らしいクスグリも楽しかった~。ふう丈さん好きだ~。

花いちさん「?」(新作)
緑君あにさんとはほんとに仲よくしてもらってるんですが、最近あにさんは悩んでいまして、と花いちさん。
なんでもファッションセンスがないと師匠に言われ悩んでいるらしい。
花いちさんはとっくにあきらめられているらしいのだが、緑君さんのことはまだあきらめてない師匠。自分のおさがりを緑君にあげているらしい。
この間楽屋に入ったら師匠が緑君さんをじーっと見て「お前、なんだよその恰好」といったらしい。
見れば、茶色いシャツに黒いパンツといういで立ちだったのだがもとをただせば両方とも師匠のおさがり。あにさんにしてみれば「師匠からいただいた服を着ていてなぜ怒られなければならない?!」という気持ちだったんでしょうが、師匠は「お前、その組み合わせはないぞ。はっきり言ってそれじゃ…うん○だよ」と。
あにさん反省したらしく次の日は、ブルーのシャツに白いジャケット、みたいな明るい配色の服を着てきたんですけど、「あにさんそれは違うんじゃないですか」と。
イチローはピンクのシャツを着て球場に行ったらチームメイトに指さして笑われた。その次の日はもっと濃いピンクのシャツを着ていって「さすがイチローだ。信念を曲げない」と言われた。
あにさんもうん○と怒られたのだったらもっとうん○色の服を着て行って主張しないと!
「でもあれ以上の色はないよ」というあにさん。
「だったら肩にうん○を載せていくとか」
「お前…たんにネタにしてるだけだろっ!」

そんなまくらから出来立てホヤホヤの新作。
仲良しの鈴木さんと吉田さんが喫茶店で互いの家族の愚痴を言い合う。
36歳の息子が家でずっとゲームをしていると愚痴る鈴木さん。
いっさい家事は手伝わない、それどころか魔法少女○○に夢中でそのフィギュアを肩に乗せてディズニーランドに「デート」に行くほど。
いやになっちゃう、こわいでしょ?怖いと思って、と言いながら、息子が魔法をかけてくると「きゃー」と言って倒れて見せる鈴木さん。
一方吉田さんの息子は会社勤めをして奥さん子供もいていいわねーと鈴木さんが言うと「それがそうでもないのよ」と吉田さん。
嫁の愚痴をこぼしだす。
あたしより遅く起きるからイライラするというのだが聞けば4時起きしている吉田さん。3時半っていったら真夜中よ!!とすかさず突っ込む鈴木さん。
孫におもちゃを買ってやっても喜ばない、と吉田さん。
聞けばデンデン太鼓やウォーターゲーム。
「ウォーターゲームって!指の力加減だけで遊ぶゲーム!」

なんかいちいちおかしい。
グーチョキパーの手遊びをして遊んであげたというのだが、「チョキとチョキで骨上げ」「グーとパーで魂」って…。
もうこのセンスなんなの!面白すぎる。
楽しかった~。

花いちさん「酢豆腐
最初は寄合酒か?と思いながら聞いていたんだけど、途中で腐った豆腐が出てきて、おお、これは酢豆腐か、と。
最近「酢豆腐」をよく見るようになった気がする。

若旦那がとにかく面白い。それにツッコミを入れる若い衆との対話の楽しさ。
笑った笑った。
次回もまた行きたいな。

 

林家きく麿独演会第十五夜『もうすぐ誕生日』

7/13(水)、道楽亭で行われた「林家きく麿独演会第十五夜『もうすぐ誕生日』」に行ってきた。

久しぶりのきく麿師匠。
最近行けていなかったのだけれど、お誕生日の前々々夜祭に行けてよかった!打ち上げも出られてハッピー♪

・きく麿「大山の印」
・きく麿「守護霊」
~仲入り~
・きく麿「千両みかん」

「大山の印」
地元福岡の高校に学校寄席で行ってきたというきく麿師匠。
その高校は自分が学生の頃は「ヤバイ」と評判の学校で、学生たちはパンチパーマや剃り込みを入れ、その学校の生徒が乗る車両に女子は絶対に乗ってはいけない(危ないから)とも言われていた。
そんなところで落語?無理でしょと思い断ると、世話人の人が「いや、いまはそんなでもないですよ。大丈夫です」という。
ほんとですか?だったら…と引きうけたのだが、自分以外は全員上方の落語家さんということで「きく麿師匠だけが頼りですから」と言われる。
いや頼りにされても…。

いざ高座にあがり、まずは軽い小噺から。
たいてい小噺だと、クスっという笑いがおきればいいほうでたいていはしら~っとなるものなのだが、彼らは予想の上をいっていた。
小噺をやると学生たちがみな「うぇ~い!」。
なんなんだこの反応は!!なんか怖い。でも何も反応がないよりはいい?と思いながら、いくつか小噺をやると「うぇ~い!!」。
しかしいざ落語に入ってみるとやはりつまらないのか寝たりおしゃべりをする学生が続出。
あーやっぱりねーと思いながらもこれで終わらせるわけにはいかん!と思い、落語の途中に意味もなく登場人物に「うぇ~い!」と言わせてみると、それまで無反応だった学生が途端に「うぇ~い!!」。
それからはもう「うぇ~い!!」を連発。
大盛り上がりのうちに高座は終わった。
あとで校長先生がやってきて「いやぁ学生があんなにちゃんと落語を聞くとは思いませんでした」とほめられたのだが、いや…それはちょっと違う…と思った、と。

ぶわははは。
もうおかしすぎる。にこにこ顔でポーズをとって「うぇ~い!!」とやるきく麿師匠を思い出すと、つらい時でも笑いがこぼれてしまうよ。素敵すぎる。

そんなまくらから「大山の印」。
これはきく麿師匠が住んでいる三軒茶屋にちなんだ落語をと思い、作った新作らしい。

三軒茶屋という名前になった由来はそのころお茶屋が三軒あったからなのだが、そのうちの一軒におためちゃんという美人のお茶子さんがいて、村の男たちはみなおためちゃんに夢中。彼女見たさにお茶屋に通い仕事が手につかない。
一方他の二軒のお茶屋はお客が来なくなって閑古鳥。
これじゃいかん、三軒の茶屋でこの地域を盛り上げていかなければということで三軒が集まって相談をし、雨乞いに行く若い衆たちがまんべんなく三軒のお茶屋に寄って行くように、スタンプカードをこしらえる。
この三軒のお茶屋のスタンプを全部で12個集めると、おためちゃんと差し向かいでご飯が食べられる権利を与えるというもの。
おためちゃん命の男たちは躍起になってスタンプを集め、三軒のお茶屋は繁盛するのだが、おためちゃんが嫌がって…。

最初の場面で、おためちゃんに夢中になって切なくため息をつく男が出てくるのだが、この男がどれほどおためちゃんに夢中なのかが伝わってくるので、直接おためちゃんの出てくる場面はないのに、ものすごくきれいでかわいいんだろうな、というのが想像できる。
お茶屋さんがこの地域を盛り上げようとあれこれ話し合う場面もばかばかしいエピソードがちりばめられていてなんともいえず楽しい
ちょっと昔話っぽくもあって独特な味わいがあって面白かった。

「守護霊」
最近お姉さんが仕事を作ってくれるようになった。仕事で帰って実家に泊まると夜はお姉さんと二人いろいろ話すのだが、お姉さんの子ども二人はこの会話を聞くのが好きらしく混ざってくる。
そんな時、3人が全員揃って義兄の悪口を言いだすので、「まぁまぁまぁ」とかばうのが大変。
でもきょうだいっていうのは喧嘩してもすぐに仲直りできるから…とまくらをしゃべりながら突然目をつぶって「もにゃもにゃもにゃもにゃもにゃ…」。
え?と思ってるとまた「もにゃもにゃもにゃもにゃもにゃ」

ああ、これは!「守護霊」!
すごい面白い、この入り方!
前はそうじゃなかったよねと自分のブログを検索したら、前に見たのはネタ卸しのときだった。
噺が育ってる!

もうとにかく小学6年生のお兄ちゃんと弟(小学校の低学年ぐらい?)のケンカがかわいい。
兄が弟に向かって「死にますーおまえ死にますー。はい、死亡ー。死亡ー」、言われた弟が「バーカバーカバーカ」しか言えなくなるのがもうおかしくておかしくて。
きく麿師匠の中にはまだしょうもない小学生男子が残ってるんだなぁ。
うるさい!と言って入ってきたお父さんが、息子たちの話を話半分で聞いているのがまたリアル。

弟が将来はホテルを経営したいという夢を持っていてそのホテルのCMソングがいかにもありそうなのがおかしい。
仲入りの時に「あたし、ホテルニュー相模に泊まりたい!」と一緒に行った友達がまじめな顔で言うのがおかしかった。

「千両みかん」
最後は何をやるのかと思っていたらなんと「千両みかん」!
これが意外にも(失礼!)ちゃんとした「千両みかん」なんだけど、ところどころにきく麿テイストが盛り込まれていてとても楽しい。
ちゃんとやっているのに時々不意打ちでギャグが入るので、ぶわはっ!!と笑ってしまう。

若旦那がみかんを食べるところが本当においしそうで私もみかんを食べたくなったぞ!

この日は打ち上げも参加して、きく麿師匠の誕生日をお祝いできてうれしかったー。
ようやくDVDも買うことができて満足満足。

 

 

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蛇を踏む

 

蛇を踏む (文春文庫)

蛇を踏む (文春文庫)

 

★★★★

藪で、蛇を踏んだ。「踏まれたので仕方ありません」と声がして、蛇は女になった。「あなたのお母さんよ」と、部屋で料理を作って待っていた…。若い女性の 自立と孤独を描いた芥川賞受賞作「蛇を踏む」。“消える家族”と“縮む家族”の縁組を通して、現代の家庭を寓意的に描く「消える」。ほか「惜夜記」を収 録。

 川上弘美の「うそばなし」三編。
体温の低いなまめかしさに満ちている。
気持ち悪いような気持ちいいような。熱が出たときに見る夢のような、言葉では言い表せない感覚…なにかがどんどん増えてきたり追いかけてきたり入ってきたり…が見事に表現されていてさすがだなぁと思う。

この世界が好きか嫌いか問われると微妙だが、やっぱりこういう世界あったんだ、夢じゃなくて!と夢の中で思うのにも似た、懐かしさがある。好き。

お江戸上野広小路亭7月上席

7/9(土)、お江戸広小路亭で行われた「お江戸上野広小路亭7月上席」に行ってきた。

・桜子「五郎正宗孝子伝」
・伸しん「桃太郎」
・昇羊「二人だけの秘密」
・愛橋「?」(ショーンKにインタビューするという新作)
・一矢 相撲漫談
・柏枝「禁酒番屋
・小笑「身投げ屋」
・健二 漫談
・楽輔「火焔太鼓
~仲入り~
・蘭「真田幸村 大坂出陣
コントD51 コント
・小文治「幇間腹
・南なん「置き泥」
・小助小時 太神楽
・米多朗「井戸の茶碗

昇羊さん「二人だけの秘密」
二ツ目に昇進して毎日寄席に出していただいているという昇羊さん。噺もたいして持ってないしまくらもいつもほぼ同じ。それを毎日かけ続けているのは正直しんどい、とぶっちゃけ話。
長めのまくらのあと「二人だけの秘密」。いやこれがめちゃくちゃ面白かった!まくらを聴いていた時は「ふーん」って感じだったんだけど落語が面白いって…なかなかないパターン。(たいていまくらが面白くて落語がしょんぼり)良かった。

愛橋師匠「?」
いろいろすごかった。

柏枝師匠「禁酒番屋
まくらなしでいきなり「禁酒番屋」に入ったんだけど、いやぁこれが本当に面白かった。
静かめに噺に入って、番屋の侍もわりとクールな印象だったんだけど、2回目に「油屋です」と言って酒屋が行った時に「中身を確かめる」と言って飲むときにぎょろりと白目を剥いたのがすごい不意打ちでもう大笑い。
ふざけすぎず、でもところどころ不意打ち的に強烈で、この意外性がたまらない。
それまでわりと戸惑い気味だったお客さんがいっきに落語の世界に引き込まれていったのが分かってすごい一体感。

小笑さん「身投げ屋」
前に見た時よりはちょっと面白くなってきたようなきがしないでもないかもしれないかもしれない。

楽輔師匠「火焔太鼓
いつもの漫談。「いつものだなぁ」と思いながらもやっぱりおかしくてげらげら笑っていたんだけど、それで終わりなのかなと思ったらなんと「火焔太鼓」。わーい!
明るくて軽くてスピーディーですごく楽しかった。最高。

蘭先生「真田幸村 大坂出陣
よっぽど前に出ていた噺家さんたちに言われていたのかわからないけど、「もっと笑顔で」「面白くなくても楽しいという気持ちでいたらだんだん楽しくなる」と客席を何度も責めるのでなんかいたたまれない気持ちに…。
確かに重いお客さんだったかもしれないけど「禁酒番屋」や「火焔太鼓」にはドカンドカンうけてたし、相撲甚句ではちゃんと合いの手を入れてたし、笑うつもりで見に行っていて笑えないのはお客のせいなんだろうか。

小文治師匠「幇間腹
わーい、小文治師匠。いつもこの師匠が出てくると毛羽立った心が静まるなぁ。大好きだ。寄席の良心。

南なん師匠「置き泥」
わーい、南なん師匠。重い重いと責められて折れた心をいつもの「眠かったら寝て下さい。邪魔にならないようにそーっとやりますから」のまくらで慰められる…。
前座時代に通りがかりの家の柿をもいでビタミンを補給していたまくらから「置き泥」。
いやもうほんとに独特なんだなぁ、南なん師匠の「置き泥」。どんどん極悪になっていく泥棒に入られた大工と、どんどんまともさが際立ってくる泥棒。
泥棒の煙草をのみながら「こんな長屋に入ってきちゃだめだよ。もっと大きな家に入らなきゃ。大きいって言っても国技館はだめだよ。あそこでとるのは相撲だよ。……笑えよぉ」。
落語にしかない世界がたしかにここにはあってそれがたまらなく好きなんだなぁと南なん師匠の落語を見るといつも思う。

夢丸の〇〇 三笑亭夢丸ひとり会第二回

7/7(木)、上野広小路亭で行われた「夢丸の〇〇 三笑亭夢丸ひとり会第二回」に行ってきた。

・夢丸 挨拶
・金の助「子ほめ」
・夢丸「富士詣り」
・夢丸「船徳
~仲入り~
・夢丸「三枚起請

金の助さん「子ほめ」
夢丸さんが「元ボクサー」と紹介していたけれど、たしかにちょっとコワモテ。ちょっと冷めた落語なので、面白いところもあるんだけど冷めたところはなんか結構しーんとしてしまうので、見ていてひやひやする。強心臓なのかも。

夢丸師匠「富士詣り」
おお、この間夏丸さんで聴いて、そういえば前に聞いたことがあったのは夢丸師匠だったと思い出したところだったから、なんかタイムリー。
山登りをしていてへばってきた男の変な掛け声がばかばかしくて笑える。
邪淫戒を破ったと告白する男がすごく軽いのが面白い。

夢丸師匠「船徳
ネタ卸しとは思えないくらい夢丸師匠に合ってる。お気楽でわがままな徳が時々ちょっと悪い顔をするのがたまらなくおかしい。逆ギレしてもかわいいから見ていて嫌いに慣れないんだな、徳のことを。
すごいアクションで着物がはだけながらの熱演だった。楽しい。

夢丸師匠「三枚起請
こういう若い衆が集まってわいわいする噺、好きだ~。
3人で店へ出かけて行って棟梁が女と話をする間他の二人は棚と屏風の陰に隠れるのだが、二人がああだこうだと出てきては話し出すのがおかしい。
女と直接話をした棟梁が「(女の)口がうまいわぁ…。思わずだまされそうになる」とつぶやいたのがおかしかった。楽しかった~。

毎回出口で夢丸師匠がお見送りをしてくれて、目をあわせて「楽しかったです、ありがとうございました」と言いたい!と思うのだけれど、いつも私の二人前ぐらいにいるおじさん(毎回同じ人のわけではなくそういう人が何人もいる)が写真を撮ったり話が長かったりするので、あきらめてこそこそ帰る。さびしんぼう

週刊キッショウ #23

7/6(水)、連雀亭で行われた「週刊キッショウ #23」に行ってきた。

・小はだ「道灌」
・吉笑「ふすまや」
・吉笑「見たことも聞いたこともない虫」
~仲入り~
・吉笑「舌打たず」

・小はださん「道灌」
おおお、小はださんだ!
小はぜさんとはまた違うタイプだけど、様子がよくて噺家さんらしい。誰かに似てる、誰だろ。こういう前座さんいたよなぁ。
あとで吉笑さんが言っていたんだけど、小はださんはまだ見習い期間中で楽屋に入れないんだけど、連雀亭に出る前座さんが足りてないと聞いたはん治師匠が「だったら勉強に行ってこい」と言ってくださったので、こうして毎晩のように来て働いたり、時に高座をつとめているらしい。

教わった通りにやっているのだろうが、テンポといい話し方といいすごくちゃんとしていてうまい。
知り尽くしているのに思わず「ふふっ」と笑ってしまうところもあって、これから先がすごく楽しみ。

吉笑さん「ふすまや」
1週間続けていたスープダイエットについて。
もともと吉笑さんはとても痩せていたんだけど太った方が着物も似合って貫禄が出ていいだろうと太るに任せてきたのだが、会う人会う人に「太ったね」と言われ続け、これはもうさすがに痩せようと思った、と。
どういうダイエット方法がいいかといろいろ調べて選んだのがスープダイエット。
その7日間の顛末を語ってくれたんだけど、いやぁ面白い。
始めた当初の物珍しさにワクワクする感じから徐々に辛くなってきて部屋で一人泣いちゃう感じから終わり間近のカウントダウンからダイエット終えての体重測定まで。
おかしくておかしくてゲラゲラ笑い通しだった。ほんとに吉笑さんのまくらは面白いなぁ。

そんなまくらから「ふすまや」。
これがまたいかにも吉笑さんらしい噺。
目のつけどころが独自なんだよな。そこにはまらないと多分はまらないんだろうけど、私はそこがツボなので何を聞いても面白い。
次々現れる変な売り物屋に笑った~。

吉笑さん「見たことも聞いたこともない虫」
前座で上がった小はださんについて、「うまいですよね。立川流の前座ランキングに入れたら間違いなくダントツトップ」「私がそこにエントリーしても間違いなく私より上」ってなんのてらいもなく言うのがおかしい。
そうだ。吉笑さんが落語の基本的なところをちゃんと教えてもらおうと決心したのもこの小はださんの落語を見てからではなかったか。

ああいうふうにちゃんとした落語をやればウケなくてもいいんだけど、自分みたいのはだめ。ウケてナンボだからウケないと本当に地獄みたいになっちゃう、っていうのもすごく正直な言葉で最高だなぁ。
すごく頭のいい人だけど手の内をからっと明かす率直さがいいな。

そんなまくらから「見たことも聞いたこともない虫」。
1席目と連続もの?
虫屋をやろうと思って大家さんのところにお金を借りに来る男の噺
ああだこうだと理屈を並べ立てるのがいかにも吉笑さんらしい。
さすがに「週刊」でやっているとネタも尽きてきて後半戦は何をかけるかでかなり七転八倒することになりそう、というのもまた楽しみ。

吉笑さん「舌打たず」
わーーーい「舌打たず」!
私が吉笑さんを初めて見たのが上野広小路亭立川流の寄席でその時に見たのがこの噺だった。
何の前知識もなく期待もなく見て、あまりの面白さにまわりのお客さんが引くほど笑い転げた。
「舌打たず目つむらず」「舌打ち目つむり」とかそういうの、ほんとにいかにも吉笑さんっぽいんだけどこの独特のセンスしびれる~。

逃げ腰だった大家さんがどんどん前のめりになって行くのが楽しい。
最近この噺がまた面白くなってきてよくかけているという吉笑さん。また遭遇できるかも。楽しみ。

まく子

 

まく子 (福音館の単行本)

まく子 (福音館の単行本)

 

★★★★

小さな温泉街に住む小学五年生の「ぼく」は、子どもと大人の狭間にいた。ぼくは、猛スピードで「大人」になっていく女子たちが恐ろしかった。そし て、否応 なしに変わっていく自分の身体に抗おうとしていた。そんなとき、コズエがやってきたのだ。コズエはとても変だけれど、とてもきれいで、何かになろうとして いなくて、そのままできちんと足りている、そんな感じがした。そして、コズエは「まく」ことが大好きだった。小石、木の実、ホースから流れ出る水、なん だってまきちらした。そして彼女には、秘密があった。彼女の口からその秘密が語られるとき、私たちは思いもかけない大きな優しさに包まれる。信じること、 与えること、受け入れること、変わっていくこと、そして死ぬこと……。この世界が、そしてそこで生きる人たちが、きっとずっと愛おしくなる。

西加奈子直木賞受賞後初の書き下ろし。究極ボーイ・ミーツ・ガールにして、誰しもに訪れる「奇跡」の物語。

 想像の上を行く展開にびっくりしつつ、でもそれがストンと受け入れられる不思議。
主人公の小学五年生男子の慧の心情がとても丁寧に描かれていて、ああ、男の子の思春期ってこんななの?と微笑ましいような胸が締め付けられるような。

自分やまわりの友だちの身体が変化していくことに嫌悪を抱きそれが誰を寄せ付けない潔癖さに繋がっていく。
こんなに簡単に思春期のモヤモヤを乗り越えられないよと思うけれどそれはそれ。

後味の良さはきっと西さんの揺るがない信念によるものなんじゃないかな。