りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

はじめての文学

 

はじめての文学 川上弘美

はじめての文学 川上弘美

 

 ★★★★

小説はこんなにおもしろい。文学の入り口に立つ若い読者へ向けた自選アンソロジー。

 知らないで読んだのだがこれは村上春樹宮本輝などの各人気作家が、自身の短編を「はじめての文学」と題してまとめたシリーズなのだった。

既読の作品もあったがこうやって一冊に収められるとまた印象が違って新鮮な気持ちで楽しめた。
孤独なもの同士が一瞬寄り添って少しだけ体温が上がるような、そんな作品が多くて、ああ、川上弘美だなぁと思う。

特に「パレード」と「花野」が好き。

池上落語会

7/2(土)、池上会館で行われた「池上落語会」に行ってきた。

・喬志郎「平林」
・さん助「天狗裁き
・抽選タイム
~仲入り~
・梅湯「谷風の情相撲
・志ん陽「火焔太鼓
・まつ乃家芸者 踊り、俗曲、等

さん助師匠「天狗裁き
おおお、これはさん喬師匠の「天狗裁き」。
天狗裁き」はさん喬師匠のが一番好きでいつも一番笑うんだけど、同じ噺の展開だけどさん喬師匠のとは一味違うさん助師匠らしいテイストが出ていて、すごくよかった。
夢の内容を聞きたがるおかみさん、隣の男、大家さん、お奉行様とそれぞれのキャラクターが出ているので、繰り返しがしつこく感じさせない。
テンポが良くてくどくなくて、でも繰り返しの面白さがあって。楽しかった~。

志ん陽師匠「火焔太鼓
楽しかった~。もともと好きな噺なんだけど、ぼんやりのじんべえさんがかわいらしくておかしい。
300両もらって帰ってきておかみさんがお金を見てびっくりするところで、高座のビールケースが少し動いてどきどき!でもそれもまた楽しかった。

まつ乃家芸者 踊り、俗曲
芸者?え?なにそれ?と思ったのだけれど、すごく良かった~。楽しくて素敵でうっとり。

TWO 夏丸・萬橘二人会

7/1(金)、らくごカフェで行われた「TWO 夏丸・萬橘二人会」に行ってきた。

・夏丸「富士詣り」
・萬橘「酢豆腐
~仲入り~
・萬橘「無精床」
・夏丸「猫怪談」

夏丸さん「富士詣り」
前から見たいと思っていた夏丸さんをようやく見られた。
萬橘師匠とは同期という夏丸さん。かたやあちらは真打ですでに弟子がいる身。一方自分は…と。そうかでももうそろそろなんだな、真打になるのも。楽しみなようなちょっとさみしいような…。

「富士詣り」は以前夢丸さんで聞いたことがあったけれどそれ以来聴いてなかった。芸協の若手って珍しい噺を持ってる方がいてそこが好きだなぁ。
富士山を登っている途中で天気が悪くなり、先達さんに「こういう風に山が荒れるのは登っている中に禁を犯した者がいるときが多い」と言われ、懺悔を始める男たち。最も重い罪「邪淫戒」を破ったと懺悔する熊さんの話のばかばかしさがたまらない。

端正だけどとぼけたおかしみもあって好きだわ~。

萬橘師匠「酢豆腐
人間、心にもないことは案外言えないもので、結構正直にできている、と萬橘師匠。
とある会で自分の落語がウケなかったと落ち込んでこういう時は誰かに言って慰められたいと思っているところへ、前座からお礼の電話がかかってきた。ちょうどいいと思い「昨日オレすべっちゃったから」と言うと、前座はおそらく「そんなことないですよ。これ以上ないくらいウケてましたよ」と言うつもりだったのだろうが「これ以上ないくらいすべってました」。やっぱり思ってることは言葉に出ちゃうんだな、と。

そんなまくらから「酢豆腐」。
暑い暑いと言いながら兄貴分の家に集まる若い衆たち。兄貴は「なんでこんなに大勢で家に来るの?」「(狭い家に男どもが寄り集まっていて)近いよ」「暑苦しい」と、なんかその場面が頭に浮かんできてそれだけでおかしい。

上から目線で腹の立つ若旦那に腐った豆腐を食べさせてやろうと声をかけるんだこの奇怪な若旦那がぴったりはまっていておかしい。「〇〇でげす」という謎の語尾が、話が進むにつれて「〇〇でバス」「〇〇でブス」と変化していくのが意味不明なんだけどやたらとおかしい。

萬橘師匠「無精床」
床屋に入ってきた気のいい男が親方の思わぬ返答に「え?」といちいち驚く様子がおかしい。親方も実は腕がよくないという萬橘師匠独自仕様がまたおかしい。

夏丸さん「猫怪談」
初めて聴く噺。
育ての親が亡くなったのにぼーっとして気づかない与太郎。大家さんがそんなんじゃだめだと叱り、長屋の月番を呼びつけて、死骸を運ぶことに。
途中で早桶のたがが外れてにっちもさっちもいかなくなり、大家と月番が買いに行き、能天気な与太郎が死骸と留守番。

ちょっと不気味な噺だけれど、能天気な与太郎がかわいらしくて怖さよりおかしさが勝る。
こういう噺をこんな風に魅力的にできるってすごいな。もっと他の噺も聴いてみたい。

いつも旅のなか

 

いつも旅のなか (角川文庫)

いつも旅のなか (角川文庫)

 

 ★★★★

仕事も名前も年齢も、なんにも持っていない自分に会いにゆこう。ロシアでは国境の巨人職員に怒鳴られながら激しい尿意に耐え、マレーシアでは釣りに行くの に12時間以上も地元の友達と飲みながら待たされ、キューバでは命そのもののように人々の体にしみついた音楽とリズムに驚かされる。明日にでも旅に出たく なるエピソード満載!五感と思考をフル活動させ、世界中を歩き回る旅を、臨場感たっぷりに描く傑作エッセイ集。  

 読書不調なのでこんなときは読みやすくて元気が出る本をと、大好きな角田さんの旅エッセイを。

いやぁ楽しい。肩肘張らないというか率直というか間正直というか。
モロッコで出会った善意の青年に日本人旅行客の押し付けた理想の商売人を見たり、ペテルブルグに違和感を感じたり、バリでヤクにやられたり。
こういうのを読んで顔をしかめる人もなかにはいるかもしれないけど大丈夫?と心配しつつ、でもそこには必ず作家ならではの視点もあって、そこが面白い。

思わずこえにだして笑ったり涙ぐんだりしながら、旅する気持ちで読んだ。旅好きではない私も旅に対する憧れの気持ちが湧きあがってくる。楽しかった。

末廣亭6月下席夜の部

6/29(水)、末廣亭6月下席夜の部に行ってきた。

・勢朝「袈裟御前」
・夢葉 マジック
・一九「寄合酒」
・南喬「壺算」
~仲入り~
・菊太楼「強情灸」
・正楽 紙切り
・歌る多「つる」
・小団治「ぜんざい公社」
・仙三郎社中 太神楽
小三治粗忽長屋

勢朝師匠「袈裟御前」
地噺…なんだろうけど…漫談の割合が高すぎて落語の世界に入っていけない…。もったいないように思ってしまうけど、好みの問題かな。

一九師匠「寄合酒」
乾物屋さん気の毒だけど楽しい~。
とぼけた味わい。好き好き。

南喬師匠「壺算」
上下を切ることでがらりと雰囲気が変わる。
番頭さんがなんともいえず魅力的でかわいい。
「私あなたを気に入りました。ひとの買い物にこんなに一生懸命になって」。いいセリフ。

正楽師匠 紙切り
なんだか弾むようにご機嫌な正楽師匠。見ていてこちらも楽しくなってくる。
「織姫と彦星」「あやめ祭り」「蛍狩り」。

仙三郎社中 太神楽
わー仙成くんと仙三郎師匠の二人!
舞台に上がる前に二人が楽しそうにリズムをとるところが見えて嬉しくなってしまった。
笠のとりわけで仙成くんが最後にミスをしてしまったんだけど、もう一度やり直して拍手!

小三治師匠「粗忽長屋
小三治師匠の「粗忽長屋」はなんでこんなに楽しいんだろう。
くさい演技をするわけじゃないのに、ちょっと身体を引いたり、ぶんっと上下をきるだけで、もうたまらなくおかしい。

まめでそそっかしくて自信満々の男と、無精でそそっかしくて言いなりになっちゃう男。
ありえないような噺なのに、こんなに自信満々に「おめぇの死骸を引き取りに行くんだよ」と言われたら「え?そうなのかな」と思っちゃいそうだ。

小三治師匠の落語の世界に身を任せる楽しさよ…。こういう高座に出会えるから小三治師匠ファンはやめられないのだ。

鈴本演芸場6月下席昼の部

6/28(火)、鈴本演芸場6月下席昼の部に行ってきた。

・一花「たらちめ」
・花ん謝「権助提灯」
・藤兵衛「つる」
・菊之丞「親子酒」
・ニックス 漫才
・歌之介 漫談
・志ん輔「初天神
・ダーク広和 マジック
・はん治「妻の旅行」
~仲入り~
・あずみ 三味線漫談
・一朝「ちはやふる
・喬之助「宮古川(上)
・正楽 紙切り
・小ゑん「ぐつぐつ」

花ん謝さん「権助提灯」
旦那が奥さんとお妾さんからなんだかんだと言われ「いやでもそれはね、あーうん…あーうん…あーうん」と押し切られるのがおかしい。なかなかのハンサムだけど妙に権助が権助らしいところがいい。

藤兵衛師匠「つる」
もっと見たいと思っていた藤兵衛師匠!
なにゆえ「つる」?他の噺が見たかったなぁ。って私がこの噺を全然面白いと思えないからがっかりしちゃうんだけど。

菊之丞師匠「親子酒」
テッパン。正直「またか」と思うけれど、この日のお客さんは団体客がいたせいか年齢層が高めだったせいか、とにかく重かったので、これぐらいクサくやらないと笑いはとれないよな、たしかに。

歌之介師匠 漫談
いつものハイテンションな漫談。この日一番ウケてた。むーん。

はん治師匠「妻の旅行」
はん治師匠の「妻の旅行」でもドッカンドッカンウケるでもないお客さん。大変だ、これは。

一朝師匠「ちはやふる
おおお、一朝師匠が「ちはやふる」!
この間末廣亭小三治師匠が「ちはやふるをやられたときに一朝師匠も出られていて、それでかけてみようと思われたのかな?なんて勝手に妄想して喜ぶファン。きゃーきゃー。
この噺って案外笑いをとるの難しいんだなー。どっかんどっかんではないけれど好きだなぁ~。

小ゑん師匠「ぐつぐつ」
自分も名前を残したいと小ゑん師匠。どんなふうに名前を残すのがいいかと考え、単位名になるのがいい、と思った。
例えば「ワット」とか「ヘクトパスカル」は人名からきている。
自分の名前もそんな風に単位に使われてるようになったら最高。
例えば「今日の高座は1小ゑんだったな」とか「10小ゑんで1圓丈」とか。
小ゑん師匠らしい発想に大笑い。面白いなぁ。

そんなまくらから「ぐつぐつ」。
ほんというと、七夕が近いから「新竹取物語」を期待したんだけど、団体客がいたからテッパンに行くよね。この日のお客さんに受け入れられるのかしらとドキドキしていたのだけれど、結構ウケてて、ほっとしたりして。(私は何者だ)
ところどころ古典落語っぽいテイストが入るところがおかしい。
私は売れ残ってる「袋」ちゃんが「今日もお茶を引いちゃって」って言うところがとっても好き。

毘沙門寄席 喬太郎と兄弟弟子の会

6/25(土)、「毘沙門寄席 喬太郎と兄弟弟子の会」に行ってきた。

・百んが「浮世根問」
・さん助「かぼちゃや」
・小傳次「空飛ぶハンマー」
・左龍「壺算」
~仲入り~
・喬之助「徳ちゃん」
喬太郎「芝カマ」

百んがさん「浮世根問」
そうだ。この間浅草演芸ホールで聞いたのもこれだった。出てきたときは何だこの人?と思ったけど、徐々に百栄師匠のお弟子さんらしさが出てきている。

さん助師匠「かぼちゃや」
さん助師匠の「かぼちゃや」は初めて聴いたんだけど、心配症のおじさんが出て行く与太郎の後ろ姿に向かってああだこうだと大声で注意を言うのがおかしい。
ぶつくさ言いながら歩く与太郎がおとなのような子どものような奇妙な味わい。「みんなでよってたかって俺をはたちだはたちだって…。ずっと7つでいたかった」には笑った。

かぼちゃを売るのを手伝ってくれたおじさんが、もう一度やってきた与太郎の話を聞いて「お前…路地を広げろとか言ってひょうきんなのかと思ってたけど…本物だったんだな」と感心するのがおかしい。
からっと明るくて楽しい「かぼちゃや」だった。

小傳次師匠「空飛ぶハンマー」
お寺や葬儀会社でやった落語会などの長いまくらのあとに突然手拭いを上で大きく振り回すしぐさで始まったのには大笑い。すごいインパクト。小傳次師匠の新作って初めて聴いたけど、楽しかった。

左龍師匠「壺算」
瀬戸物屋の番頭さんのキャラが立ってて面白い。「壺算」でもこんなにたっぷり笑いを盛り込むことができるのか。うーん、すごい。
寄席でももっといろいろ違う噺をすればいいのになぁ、左龍師匠。

喬之助師匠「徳ちゃん」
同じ一門会でも「さん喬一門会」と言われると緊張するけど「兄弟弟子の会」と言われるとずいぶん気楽です、と喬之助師匠。
雲助一門なんかは3人の弟子が全員師匠の芸を踏襲しているけれど、うちの一門はみんなばらばら。野放し感がすごい。
ぶわははは。でもばらばらなのに一体感があるところがすごくいいよなぁ、この一門。ピリピリしたところがないっていうかのびのびしているっていうか。

喬之助師匠の「徳ちゃん」、楽しかった。この噺大好き。芋を食べながら入ってくる女郎がたまらない。

喬太郎師匠「芝カマ」
初めて聴いた「芝カマ」。いやもうすごい。いろいろすごい(笑)。
いちゃつきあうカップルの表現がものすごくリアルなので、確かにこれは男同士という設定にしないと見ていられないかもしれない。
そこまでやるかと思うぐらいふざけるところもあるのに、でもそこには凄い「愛」があって、ある意味本寸法の「芝浜」よりも「愛」が描かれている気がする。ものすごい熱量、なのにどこか引いた冷たい視線もある。

やっぱり喬太郎師匠ってすごい。圧倒された。

小んぶにだっこ

6/24(金)、落語協会で行われた「小んぶにだっこ」に行ってきた。
もうこの会が楽しみで楽しみで。18時半開演なので会社を18時前に飛び出してとにかく早足!前回は会議が10分ほど長引いたためにまくらの途中からの入場になってしまったのだが今回は間に合ってラッキー。

・「蜘蛛駕籠
・「青菜」

蜘蛛駕籠
いつものように体重報告から。「91キロ」という言葉にみんなが「ほ~」と言うと、「前回が92キロだったので下げ止まりました」。
いやもうほんとにそんなに痩せないでくださいよ。心配になるから。ダイエットしてるわけでもないのに一人暮らしを始めたとたんにどんどん痩せるなんて。
「実はこの体重にはわけがありまして」と小んぶさん。
なんでも浅草のさん喬師匠トリの芝居の最終日、自分の出番はなかったけれど出かけていくと楽屋に入るなりさん若さんが「朝から何も食ってなくてお腹ぺこぺこなんだ。なんか食いに行こう」。
さん若さんにごちそうになり楽屋に戻ると、さん喬師匠が最終日だからということで楽屋にカツサンドの差し入れ。「さあ食え」と言われ「いただきます」。その後打ち上げがあってそこでごちそうに。
というわけでこの日は夜だけで三食。

次の日に師匠が正蔵師匠とやる会の稽古をお寺でやっているというのでお手伝いに行ったら座長である師匠がハンバーガーや甘味の差し入れ。「誰も食わないのか」と師匠に言われ「いただきます」。お寺の人もシュークリームやエクレアを差し入れてくれたのでそれも食べた。
その日の夕飯を食べ終わったころに近所に住むはな平兄さんから電話。「飯を食いに行こう」。
いやいや今食べ終わったところですと言うと「問題ない。行こう」。
兄さんがどじょうをご馳走してくれてその後「まだ食えるな」とおでん屋へ。「もう一軒」と言われてそこで「いやもうむりです」と逆らった。

そんなまくらから「蜘蛛駕籠」。
まだあんまりやり慣れてないのかちょっともたっとするところもあったんだけど、でもなんかところどころがやけにおかしい。もうこれは小んぶマジックとしか言いようがないんだけど、なんだろう、あのおかしさは。
酔っぱらいを駕籠屋の兄貴が鬱陶しがって追い払おうとすると「なんだその手つきは」と言うので怒り出すのかなと思っていると「謝ります」と土下座。こわもての小んぶさんだけど全然怖くなくてそこがこの酔っぱらいの行動とシンクロしてものすごく面白い。

「青菜」
小三治師匠で聴き倒している「青菜」。やっぱり若い人がやるとあの味わいは出ないのかしらねぇなんて途中までは思っていたんだけど、これがまたすごくおもしろい「青菜」だった。

奥様が出てきて例の掛詞をやったあと、旦那にその意味を教えてもらった植木屋さん。「鞍馬から牛若丸が出でまして」の部分が「全部無駄?」。不意打ちのセリフに「そこかよ!」と大爆笑。
そのあとも家に帰ってきてから「やなぎかげもたいしてうまくないんだ」とか「ごちそうっていっても量が少ない」とか言うんだけど、そういう台詞にも毒々しさがなくてとぼけたおかしさがにじみ出てる。
たつ公を相手に旦那の真似をし始めたところでも、たつ公が途中からさからわなくなるところがもうおかしすぎる。

面白い「青菜」だったなぁ。最高だわー。
今回は新作がなくて残念。次回はできてるといいな。

末廣亭6月下席夜の部

6/22(水)、末廣亭6月下席夜の部に行ってきた。

・勢朝 漫談
・夢葉 マジック
・吉窓「半分垢」
・南喬「壺算」
~仲入り~
・菊太楼「あくび指南」
ホンキートンク 漫才
・燕路「辰巳の辻占」
・小里ん「親子酒」
・仙三郎社中 太神楽
小三治「青菜」

勢朝師匠 漫談
同じ芝居に何度も通っている身からすると、同じ内容の漫談は笑えない。
みなさまの知的レベルを測ってると脅されても笑えないものは笑えない。

吉窓師匠「半分垢」
わーい、吉窓師匠。
いつものように髪の毛のまくらから「半分垢」。これがめちゃくちゃ楽しい。
旦那に説教を言われてムっとしたおかみさんがことさら関取のことを「小さく」言う楽しさ。
この噺、好きなんだよなぁ。
そういえば前に遊雀師匠の会で前座で出ていた仙成くんがこの噺をして途中でちょっとわからなくなってまたやり直したりしてかわいかったなぁ、なんてことを思いだした。

南喬師匠「壺算」
楽しかった~。
南喬師匠の落語に出てくる人たちってそんなに激しくキャラが立っているわけでもなくあくまでも普通でそこが落語らしくて好き。
瀬戸物屋の番頭さんが「私、あなたのこと好きですよ」とポツリと言った一言がたまらなくおかしかった。

燕路師匠「辰巳の辻占」
この代演はうれしい。
って実はこの師匠も前は苦手だったんだけど、通っていて毎日見ていて好きになった師匠なんだな。
おたまさんがいい加減に軽くて素敵。男の方だってそれほど真剣じゃないっていうのがまたいいな。


小里ん師匠「親子酒」
正直見飽きた噺なんだけど、楽しかった~。くどくないところが好き。そして酔っ払いがうまいなぁ!
戸をあけてせがれの酔っ払いが入って来るところが最高。

小三治師匠「青菜」
今日は青菜じゃないかと思っていたんだけど、まくらで人形町末広亭の話だったので「馬の田楽」?と思ったらやっぱり「青菜」だった。
今年は青菜の当たり年だなー。でも今年何回か見た中でも一番の「青菜」だった。
二階席まで満員のお客さんと末廣亭のあの場所のマジックかなぁ。素晴らしかった。

ちょうど植木屋さんが女房にお屋敷での出来事を話しているところで携帯が鳴ったんだけど、「おい、俺の話を聞けよ。電話も鳴っただろ」には笑った。小三治師匠にしたら珍しい。
ところでこういう時に電話が鳴ると「もうっ!!」と思って思わずそっちを見てしまうんだけど、鳴らしたのが老夫婦で慌てて止めようとして止められなくて、近くの人もみんなぎろりと睨んでいて、二人がなんか悲しそうだったのに胸が痛んだ。
私も老人になったらそういうことしちゃうのかもなぁ…。それで「信じられない」っていう目で見られて、「ああ、ここにももう来られない」って思うのかも…なんて。
たいていの人は鳴ってもケロっとしてるから(特に浅草)、コノヤローと思うんだけど、昨日はちょっと違う気持ちになったのだった。

末廣亭6月下席夜の部

6/21(火)、末廣亭6月下席夜の部に行ってきた。

・勢朝 漫談
・夢葉 マジック
・一九「都々逸親子」
・南喬「粗忽の釘
~仲入り~
・菊太楼「締め込み」
・ホームラン 漫才
・歌る多「宗論」
・一朝「芝居の喧嘩」
・仙三郎社中 太神楽
小三治ちはやふる

南喬師匠「粗忽の釘
とても楽しい。
大工さんの粗忽ぶりがそれほど激しくないのでこういうのあるなーという感じでなんともいえずほのぼの楽しい。
とんでもなく粗忽なのも面白いけどこんな風に自然体でも楽しいんだな、この噺は。
のろけもそれほど激しくなく、でも出会ったころは初々しかったんだなというのが伝わってきてかわいい。私あの「ふぇ~ふぇ~」は好きじゃないんだよな。
好きだ、この師匠。

歌る多師匠「宗論」
笑いのツボが違うらしく今までこの師匠の落語で一度も笑ったことがない。

一朝師匠「芝居の喧嘩」
こういう噺を「これもん」じゃなくやってとってもかっこいい。
組の者が次々立ち上がる楽しさ。テンポの良さとからっとした明るさで見ていてわくわくしてくる。

小三治師匠「ちはやふる
「かみよもきかず」の部分が抜けて、「歌のわけ」を説明するところになって「言わなかった?」と客席に聞いたのがおかしかった。
しまったって感じで最後までやってから自分で拍手のポーズをして「ごめんね」な終わり方だったけど、それがまた楽しいんだから無敵。

浅草演芸ホール6月上席夜の部

6/17(金)、浅草演芸ホール6月上席夜の部に行ってきた。

・一猿「子ほめ」
・喬の字「権助魚」
・さん助「手紙無筆」
・勝丸 曲芸
・圭花「道具屋」
・ぼたん「シンデレラ伝説」
・ダーク広和 マジック
・文菊「長短」
木久蔵「勘定板」
・二楽 紙切り
・志ん輔「替り目」
~仲入り~
・ぺー 漫談
・喬之助「締め込み」
・種平「忘れ物承り所
ホンキートンク 漫才
・雲助「新版三十石
・小菊 粋曲
・さん喬「幾代餅」

一猿さん「子ほめ」
前座さんらしい大声で素直な落語なんだけど、時折すごく面白い。いいな、この前座さん。

さん助師匠「手紙無筆」
絶対読めてない兄貴のさぐりの入れ方がおかしい。ちょっとお疲れ気味?

雲助師匠「新版三十石
いやもうこの突き抜けた酷さが最高。芝居調でいい男をやる雲助師匠と、なまりまくりで時々入れ歯の外れる浪曲師のギャップに萌えるわー。

さん喬師匠「幾代餅」
さん喬師匠の「幾代餅」でこんなに浅草がどっかんどっかんウケるのっていったい…。
とにかくこの日はお客さんが大勢でノリノリで、中には飲みすぎてえずくオヤジもいたりして一種異様な雰囲気ではあったんだけど、それにしてもいろんな意味ですごい高座だったなぁ。
いやしかし最前列でオヤジが二人で本気飲みしてて地声で喋るわ、いちゃいちゃするわのやりたい放題。仲入りで帰ってくれるかと思ったらそのまま残って今度はおえーおえーやりだすわ、ほんとにカオス。そんなに飲みたきゃ飲み屋に行けばいいのに。

立川流広小路寄席

6/17(金)、立川流広小路寄席に行ってきた。

・だん子「真田小僧
・志ん鈴「たらちね」
・寸志「猫と金魚」
・吉笑「狸の恩返しすぎ
・志の彦「初天神
志ら乃反対俥」
・談四楼「浜野矩随
~仲入り~
・志のぽん「牛ほめ」
・志の春「?」
・龍志「義眼」
・雲水「泣き塩」
・談修「心眼」

寸志さん「猫と金魚」
その前にあがった二人との差がすごい。大きく明るい声とテンポのよさとそこかしこに散りばめられた笑いどころに身を任せて大笑いできる安心感。いやぁ楽しい。前から噂には伺っていたけど、好き好き。
ちょっと変えているところとかくすぐりがいちいちツボで楽しかった~。

吉笑さん「狸の恩返しすぎ
前座さん二人をかばうように(?)いかに立川流の前座は大変かというまくら。
なにせすぐにくびになる。自分の師匠を不快な気持ちにさせてしまうとそのたった一回だけでくびになってしまう。
かくいう自分も入ってまだ1カ月目ぐらいの時に危機にあった、というエピソード。吉笑さんはほんとにいつもまくらが楽しい。頭のいい人だなぁ、と思う。
「狸の恩返しすぎ」は今回で二回目だったんだけど、楽しかった。

志ら乃師匠「反対俥」
まくらより落語の方が面白いって、案外珍しいパターン(笑)。後から出てくる早い俥屋が一番最初に出てきて走り抜けていってしまったり、ちょこちょこ変えてあってそこがどれも面白かった。

談四楼師匠「浜野矩随
自分のあとに仲入りで、その後さらに5人出てくる。すでにお客さんもお疲れでしょう。ここで力を使い果たさないように。のんびり聴いてください。
と言いながら「浜野矩随」!のんびりなんて聴けないよ~。師匠、言ってることとやってることのギャップが~。

と言いながら、あたたかみのある「浜野矩随」でとてもよかった。不器用で融通がきかない矩随に思わず言葉が過ぎてしまう若狭屋さんの気持ちが伝わってきて、今までは何もそこまで言わなくても…と思っていたんだけど、今回見ていて初めて「仕方なかったんだろうな」と思った。
後味もわるくなくてとてもよかった。

志の春さん「?」
学校寄席のまくらからそのまま学校寄席に行った噺家さんと校長先生の会話の新作。これがめちゃくちゃ面白かった。志の輔師匠風味の新作。
「誰も傷つけない落語をお願いします」ってほんとにばかじゃねぇのって思うけど、実際そうなんだろうなぁ。
不快な噺に転びそうなところ、校長先生のキレキレのキャラクターのおかげでそうはならず。面白かった~。

龍志師匠「義眼」
わーい、龍志師匠。
初めて聴く噺だったんだけど、ばかばかしくてシュールで好きだーこういうの。
面白かった~。

雲水師匠「泣き塩」
雲水師匠はいつも珍しい噺をしてくれるから好き~。そしてこう立て続けに落語が続いているところ、一人だけ上方落語でちょっと色が変わってほっとする~。

談修師匠「心眼」
これがとってもよかった…。談修師匠は前に1,2度見ていて、そんなに印象に残ってなかったんだけど、すごくきれいで淡々としていてだけど心がこもっていて…私は喬太郎師匠のより談修師匠の「心眼」の方が好きだなー。よかった。他の噺も見てみたい。

柳家小三治一門会シアター1010 

6/16(木)、シアター1010で行われた柳家小三治一門会に行ってきた。
一年のうち何回も小三治一門会というのはあって、一門会と言いながらもお弟子さんはテッパンネタで軽く流す感じでやっぱり小三治師匠の会だなぁという印象しかなかったんだけど、今回は真打が二名出て力のこもった高座で満足感があった。
〆治師匠も一琴師匠も正直そんなに好きな師匠じゃなくて目当てに会に行くようなこともなかったけれど、こうしてちゃんと聴けてすごくよかった。

・小かじ「狸札」
・〆治「阿武松
~仲入り~
・一琴「夢八」
小三治「青菜」

小かじさん「狸札」
ちょっとやりなれてないのかなという感じで危ういところがあったけれど、以前に比べると明るくなって面白みが出てきている。二ツ目間近!

〆治師匠「阿武松
なんか陰気で声も聞き取りづらくて苦手な師匠だったんだけど、すごくよかった!びっくりした。
淡々とした中になんともいえないおかしさがあって、ちょっとやりすぎ?と思うぐらいのくすぐりもあったりして、とても楽しい。
親方には威厳があるし、宿屋の主人の優しさも出ていて、とても楽しい「阿武松」だった。

一琴師匠「夢八」
前にも一琴師匠で聞いたことがあったんだけど、すごく面白い。
首つりの噺で決して気持ちがいい噺じゃないから「なんでこんな噺を」と思った人も中にはいたかもしれないけれど、こういうことさえも笑い飛ばしてしまう落語の世界が私はとっても好きだ。
「つり」の番をする男の能天気さが、真相がわかって怖がり始めてからも続いていて最後まで大笑いだった。

小三治師匠「青菜」
前にあがった一琴師匠のことを「あれの噺もなんか…形になってきました…というかとても面白かったですね。あいつは近いうち私を抜きますね」と小三治師匠。小三治師匠に褒められたらうれしいだろうなぁ…。
一門会ということで、〆治師匠が入門した時の話や小さん師匠のところに弟子入りしたころの噺や江戸っ子の話や先日ふと思い立って師匠のお宅に伺った話など。
師匠のお宅に電話したら娘さんがいて「今からお線香をあげにいきたい」と言ったら「いいわよ。あたし今お風呂に入っててもうすぐ出るから」と言われた。そのタイミングで行っていいんだろうか?普通だったらよくなさそうだけど、あちらもかなりのお年だから…いいか、もう。(わはは)

それから舛添さんの話になり、名前が出てこなかったのかわざとか「巻き添えさん」と呼び続けていたのがすごくおかしかったなぁ。
馬鹿じゃないかと思ったけどすごく頭がいいんですね。ああいうことをするのはてっきりバカなのかと思った。だからみなさん自分の子どもを東大に行かせようなんて無謀なことを考えちゃダメ。泣いたり血流したりして入ったってろくなことにならない。には笑った。

そんな長いまくらから「青菜」。これが板橋の時とは打って変わってキレキレ。やっぱり小三治師匠は長いまくらをやってからの方がエンジンがかかっていい感じ。だから、なんちゃら名人会とかで決まった時間できっちりやるのはあんまり…なんだよねぇ。
そういう意味では寄席のトリも持ち時間が短いからこんな風な高座にはなかなか当たれない。
ただ寄席は客席の雰囲気やそれまでの流れですごくいい空気になるときがあって、奇跡のような高座にめぐりあえることもあるからなぁ。下席の末廣亭はまた通うぞー。

板橋の時は徳利の中にどんだけ酒が入ってるんだ?と思うぐらい飲んだり食ったりの場面が長かったんだけど、今回はそんなことはなくコンパクト。それでも旦那にごちそうになって嬉しい植木屋さんの気持ちが存分に伝わってくる。
うきうき帰ってきた植木屋さんに「何踊りながら帰ってきてんだい。いわしが冷めちゃうよ」のおかみさん。いつ見ても小三治師匠の「おかみさん」は決して激しくやるわけじゃないのに「恐妻」感が出ていておかしい。

戸惑う半公を軽くいなしながらにこにこ「旦那」をやる植木屋さんが最後までかわいい「青菜」だった。

夏に凍える舟

 

夏に凍える舟 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

夏に凍える舟 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

エーランド島に美しい夏がやってきた。島でリゾートを経営する富裕なクロス一族の末っ子ヨーナスは、海辺で過ごす二年ぶりの夏に心躍らせていた。しかしあ る夜、ボートでひとり海にこぎだした彼の目の前に、幽霊船が現われる。やっとのことで陸に戻ったヨーナスは、元船長イェルロフのボートハウスの扉をたた く。少年から話を聞いたイェルロフは、不吉な予感を覚える…。一方その少し前、復讐を誓うある男が島に帰りついていた。記憶と思いを丹念に描き上げた、 エーランド島四部作をしめくくる傑作ミステリ!

★★★★

エーランド島四部作の最終章。
美しい島とイェルロフの魅力で陰惨な事件に微かな希望を抱かせてくれるのがこのシリーズの好きなところ。

今回は事件が進行していく現在のパートと「帰ってきた男」の壮絶な過去のパートとが交互に語られ、かなりヘヴィ。
義父にソヴィエトに連れて行かれ、語られた「甘い未来」とはあまりにも遠くかけ離れた過酷な労働、そして連行された後、今度は「加害者側」に回ってからの殺戮の日々…。
最初はテロリストにしか思えなかった「帰ってきた男」だが、その人生を知るといつの間にか彼の方に加担したい気持ちにもなってくるのだが…。

イェルロフがヨーナスに言った「全部大人が悪い」という言葉が、最初の場面でたたずんでいたアーロンのその後の人生にも通じていて、なんともやりきれない。
みな生き延びるために必死だったのだろうが、うーん…。

ミステリーの枠からはみ出した部分がとても好きだったこのシリーズ。作者の次の作品が楽しみだ。

天使の運命

 

天使の運命 下

天使の運命 下

 

 ★★★★

最後の5行まで先が読めない面白さ! 次々と襲いかかる試練をのりこえ、主人公はみずからの運命を切り拓けるのか? 傑作中の傑作。 

 

読書不調なので何かとっておきの本を読もうということで、イサベル・アジェンデの「天使の運命」。なぜかamazonに上巻の書影がなかった。絶版なんだろうか。

まるでハーレクインロマンスのような表紙だけどイサベル・アジェンデなのだ。イサベル・アジェンデだけどハーレクインロマンスのような風味もあるのだ、確かに。

輸出業で財をなしたイギリス人の商家ソマーズ家。チリに立派な屋敷を構えるが、家の前にある日捨て子が置いて行かれる。
当主ジェレミーは乗り気ではないが、妹のローズは赤ん坊に夢中になり自分が育てると言い張る。
妹に弱いジェレミーは結局は彼女の意向をくんで、この子をエルサと名付けて育てることになる。
ソマーズ家には船乗りをしているジョンという弟もいて、厳格なジェレミー、淑女として育てようと気まぐれな愛を注ぐローズ、破天荒なジョンのもと、エルサは育つ。

屋敷にはママ・フレシアという家政婦兼料理人がいて、エルサはフレシアの薬草の知識や料理やおしゃべりを吸収していく。

お嬢様として大切に育てられていたエルサだったが、ある日屋敷にジェレミーの会社に勤める貧しい青年ホアキン・アンディエタが訪れたことで、運命が変わる。
初恋の炎に燃やされすべてをなげうって彼に身を任せてしまうのである。

ソマーズ家の慣習や体面に縛られてがんじがらめになっていたエリサが家を飛び出し紆余曲折を経て自分自身を見出だしていく。
それに一役買うのが中国人の伝統医師であるタオ・チェン。この人物がまた一風変わっていてものすごく魅力的。

再会したタオ・チェンとのエピソードはまるでハーレクィンロマンスのよう…。ちょっとお安く思えるところがなくはなかったが、それも含めて楽しい読書だった。
アジェンデってこんなだったっけ?他の作品も読んでみよう。