りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

まく子

 

まく子 (福音館の単行本)

まく子 (福音館の単行本)

 

★★★★

小さな温泉街に住む小学五年生の「ぼく」は、子どもと大人の狭間にいた。ぼくは、猛スピードで「大人」になっていく女子たちが恐ろしかった。そし て、否応 なしに変わっていく自分の身体に抗おうとしていた。そんなとき、コズエがやってきたのだ。コズエはとても変だけれど、とてもきれいで、何かになろうとして いなくて、そのままできちんと足りている、そんな感じがした。そして、コズエは「まく」ことが大好きだった。小石、木の実、ホースから流れ出る水、なん だってまきちらした。そして彼女には、秘密があった。彼女の口からその秘密が語られるとき、私たちは思いもかけない大きな優しさに包まれる。信じること、 与えること、受け入れること、変わっていくこと、そして死ぬこと……。この世界が、そしてそこで生きる人たちが、きっとずっと愛おしくなる。

西加奈子直木賞受賞後初の書き下ろし。究極ボーイ・ミーツ・ガールにして、誰しもに訪れる「奇跡」の物語。

 想像の上を行く展開にびっくりしつつ、でもそれがストンと受け入れられる不思議。
主人公の小学五年生男子の慧の心情がとても丁寧に描かれていて、ああ、男の子の思春期ってこんななの?と微笑ましいような胸が締め付けられるような。

自分やまわりの友だちの身体が変化していくことに嫌悪を抱きそれが誰を寄せ付けない潔癖さに繋がっていく。
こんなに簡単に思春期のモヤモヤを乗り越えられないよと思うけれどそれはそれ。

後味の良さはきっと西さんの揺るがない信念によるものなんじゃないかな。