りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

講談協会定席 広小路亭講談会

8/28(水)、講談協会定席 広小路亭講談会に行ってきた。

・一記「三方ヶ原軍記」
・伊織「源平盛衰記 青葉の笛」
・凌天「村越茂助 左七文字の由来」
・梅湯「谷風の情け相撲」
・すず「仙人」
琴桜おかか衆声合わせ」
~仲入り~
・凌鶴「蒲生三勇士~村上大助誕生」
・貞花「牡丹灯籠 お札はがし」

梅湯さん「谷風の情け相撲」
やっぱり私はかたーい講談より柔らかみのある講談が好きなんだな、と感じる。
途中、行司の物まねがあったり広沢虎造が出てきたりしてとっても楽しかった。


すず先生「仙人」
公団住まいの話から芥川龍之介原作の「仙人」。
口入屋に「仙人になりたい」と言ってやってきた権助。困り果てた口入屋が医者の先生に相談に行くと、そこのおかみさんが「だったら家で引き受けましょう」と言う。
やってきた権助に「20年間、お給金なしで働きなさい。そうすれば仙人の法を教えてあげる」とおかみさん。
果たして20年目になったときに…。

こういうのも講談になるんだね。私は戦記物よりこういう方が好みだなー。面白かった。


琴桜先生「おかか衆声合わせ」
金沢で米の値段が高騰し庶民が困窮する中、どうにかして声をあげて「御救米」を出してもらおうと、おかみさんたちが奮闘する話。
元気なおかみさんたちがとても生き生き描かれていて、前のめりになって聞いた。
いつの世も割を食うのは庶民なんだな…。めでたしめでたしでは終わらない結末が苦い。


凌鶴先生「蒲生三勇士~村上大助誕生」
わーい、凌鶴先生。
凌鶴先生を定席で見るのはとても久しぶりだったんだけど、いいなぁ。爽やかな風が吹き抜ける感じ。ほっとする。
前に道楽亭で聞いた話。
松井と下男の関係がすごく好き。落語の「やかんなめ」みたい。全然松井を恐れてなくて軽口を叩いたり面白がっているところがいい。
妹がどしーんどしーん!と登場するところも落語っぽくて好き。
楽しかった~。

貞花先生「牡丹灯籠 お札はがし」
講談の怪談、前に浅草演芸ホールで松鯉先生のを見に行ったことがあるんだけど、広小路亭はあそこよりずっと狭い空間なので余計に怖かった。
この話、欲に目がくらんだおみねが亭主を説得して二人で今まで世話になっていた新三郎を裏切るところが怖いと感じることも多いんだけど、今日はひたすらにこのお露の情念が怖かった。
新三郎が心変わりをしたと責める女中と、ただただ新三郎に会いたいとだけ繰り返すお露。
どんなに言葉を尽くしても伝わらない気持ちが恐ろしい。

ほぼ暗闇の中で静かに語られるのがほんとに恐ろしくてぞくぞくした。

池袋演芸場8月下席昼の部

8/27(火)、池袋演芸場8月下席昼の部に行ってきた。
予定があったので仲入りまで。

・与いち「やかん」
・まめ平「真田小僧
・さん助「馬の田楽」
・吉窓「近日息子」
・二楽 紙切り
・志ん橋「のめる」
・扇辰「茄子娘」


さん助師匠「馬の田楽」
おおお。この浅い出番で「馬の田楽」。
田舎の馬子の本領発揮や!と嬉しくなる。
笑いどころの少ない噺だけどさん助師匠の「馬の田楽」はのんびりした田舎の光景が浮かんでくるから好きだなー。
耳の遠いおばあさん、何も聞こえてないのに「お前さんの好きな里芋の煮っころがしは今日は売れちまってねぇんだ」がかわいい。
この噺に色気やギャグはいらないなぁ。
おじいさんたちを気持ちよ~く眠らせてた(笑)。


吉窓師匠「近日息子」
とっても面白かった!
小噺も結構しっかりやったあとの「近日息子」だったけどそんなにたっぷり時間がかかった感じでもない。なんでや?
軽くて明るくて楽しかった~。笑った笑った。


二楽師匠 紙切り
カネゴン」の注文に。
SNSの影響でウルトラマン関係のご注文が増えたんですよ。ありがたいんですけどね。この間私と間違えて正楽師匠に”バルタン星人”を注文したお客様がいらっしゃってねぇ。正楽師匠、すごーーく嫌な顔をしながら切ってたそうですよ」に笑った。
紙切り」のお題にはさみと紙を持ったカミキリムシ。これがなんと立体。
「他の寄席だと後ろのお客様に見えないからやらないんですけど、池袋は最後尾でも見えますからね」とのこと。
スペシャルな紙切りが見られて嬉しかった!!
切りながら話していた「がちゃがちゃの大人買い」の話もとってもおかしかった。


志ん橋師匠「のめる」
こんな噺がこんなに面白い。
どうにかして「つまらねぇ」と言わせようとご隠居に相談に行く男のかわいらしいこと。
表情が豊かで間が絶妙で楽しい楽しい。大好きだ。


扇辰師匠「茄子娘」
出てくるなり「志ん橋師匠、いいですねぇー。もうたまらないでしょ。のめるなんて…あんなどうでもいい噺がなんであんなに面白いのか。最高です」。
「のめる」「だくだく」「熊の皮」…若手はたいてい志ん橋師匠に教わってるんですよ。でも教わった通りにやってもあんなふうに面白くならないんですねぇ。

…わーー。そういう話を聞けるとすごくうれしくなっちゃうなぁ。
そんなまくらから「茄子娘」。
好きだなぁこの噺。夏らしくて不思議でかわいくてバカバカしくて。
蚊帳の中で茄子娘と…の部分は「今日はお子さんもいらっしゃるので手短に」。
楽しかった!

明るい夜に出かけて

 

明るい夜に出かけて (新潮文庫)

明るい夜に出かけて (新潮文庫)

 

 ★★★★

富山は、ある事件がもとで心を閉ざし、大学を休学して海の側の街でコンビニバイトをしながら一人暮らしを始めた。バイトリーダーでネットの「歌い手」の鹿沢、同じラジオ好きの風変りな少女佐古田、ワケありの旧友永川と交流するうちに、色を失った世界が蘇っていく。実在の深夜ラジオ番組を織り込み、夜の中で彷徨う若者たちの孤独と繋がりを暖かく描いた青春小説の傑作。山本周五郎賞受賞作。 

若者らしい繊細さと頑なさが描かれていて、読んでいて懐かしいような痛いような気持ちになった。

深夜ラジオ、コンビニ、SNS。いいこともあれば悪いこともあるけれど、「好き」でつながることの心強さ。
差し伸べてくれる手に気づくことができた富山はきっとこれから自分も手を差し伸べる人間になっていくのかな。

清々しい読後感だった。

鈴本演芸場8月下席夜の部(6日目)

8/26(月)、鈴本演芸場8月下席夜の部(6日目)に行ってきた。

・正楽 紙切り
・琴調「清水次郎長伝 お民の度胸」
・扇辰「団子坂奇談」
~仲入り~
・ニックス 漫才
・小里ん「長短」
翁家社中 太神楽
・さん助「らくだ」


琴調先生「清水次郎長伝 お民の度胸」
わー、また初めて聴く話!
都鳥一家に襲われて血だらけになりながら兄弟分の七五郎の家にたどり着いた石松。
七五郎は七松を押し入れに隠し血痕を全て落とすと女房のお民に家を離れるように言う。
しかしお民はここに残る、一緒に殺されればそれも本望だと言う。
都鳥一家が10名で押しかけてくると七五郎は「石松は昨日来たが今日は来てねぇ」と嘯く。
疑っている都鳥一家に向かってお民は…。

読み始めるとあっという間に任侠の世界に入ってしまうのに、最後は笑いも織り交ぜてくれる、このほどの良さ。
かっこいい~。


扇辰師匠「団子坂奇談」
落語というのはほんとにバカバカしいものです。今から申し上げるのはバカバカしいの中でもほんとにバカバカしいお話です。
そう断って「 団子坂奇談」。
初めて聴く噺。
すごくきれいで不気味で…ああ、こういう扇辰師匠は好きだな…。
聞いていてあれ?この展開、聞いたことがある?と思ったら、「腕食い」だ!

すごーく怖くてドキドキして最後にゲラゲラ!
最高だったー。


小里ん師匠「長短」
「長短」ほど演者によって好き嫌いが分かれる 噺はないんだけど、小里ん師匠のは好き好き大好き。
二人のやりとりが楽しくてかわいかった!


さん助師匠「らくだ」
前半の兄貴分の怖さと立場が逆転してからのコミカルさのギャップが大好き。
屑屋さんが酒を飲んで徐々に変わっていくところ。たっぷりやると説得力は増すけどじりじりしてくるんだけど、さん助師匠のは屑屋さんが飲むのは早くてあっという間に変貌(笑)。
でも、大家さんがらくだが死んだと聞いて「(らくだの)頭を潰せ」といった言葉に屑屋さんが腹を立てているというセリフで最初の「死んだら仏」という言葉に嘘がなかったことがわかる。

らくだを坊主にして菜漬けの樽に骨をぼきぼき折りながら入れるところは迫力満点。
そこから二人で担いで友達のやってる焼き場に担ぎ入れるところのスピード感!
途中でわやわやになるのもさん助師匠らしくて大笑い。
「ひや」のサゲまでやりきるところも大好きだ。

楽しかった!

 

鈴本演芸場8月下席夜の部(5日目)

8/25(日)、鈴本演芸場8月下席夜の部(5日目)に行ってきた。

・ひこうき「狸札」
・喬の字「松竹梅」
・アサダ二世 マジック
・玉の輔「マキシム・ド・飲兵衛」
・喬之助「短命」
・正楽 紙切り
・小ゑん「下町せんべい」
・菊之丞「親子酒」
~仲入り~
・ニックス 漫才
・扇遊「一目上がり」
翁家社中 太神楽
・さん助「妾馬」

小ゑん師匠「下町せんべい」
わーい、小ゑん師匠!
最近寄席に若い女性のお客さんが増えた、というまくら。
「昭和落語心中」というドラマを見て「あらー粋な世界ねぇ。しかも落語家ってあんなイケメンなの?」って思って来るみたいですけど、最後まで待っててもイケメンなんかいませんから!きょうなんかトリがさん助だからね。田舎の馬子みたいなやつですから!

…ぶわはははは!!!
「田舎の馬子」って…言いえて妙過ぎて大爆笑。ツボにはまってしばらく笑いが止まらなかった。
そんなまくらから「下町せんべい」。
最初から最後までハイテンションでめちゃくちゃおかしい。
このせんべいやのおやじさんの江戸弁がすごくかっこいいんだ。江戸言葉フェチの主人公じゃなくてもキャーキャー言いたくなるの、わかる。
笑った笑った。

菊之丞師匠「親子酒」
菊之丞師匠も毎日違うネタをかけてくれてめちゃくちゃ嬉しい!
テッパン中のテッパン。もうほんとに目の前で大旦那がどんどん酔っ払っていくおもしろさ。
わかっていても全部笑ってしまう。楽しい~。

扇遊師匠「一目上がり」
わーん、扇遊師匠も毎日違うネタなんだようー。うれしいー。
こちらもテッパン。
弾むような高座。
最初にはっつぁんが来た時のご隠居の嬉しそうなこと。こういうところがもう全然違うんだなぁ…。
二人の仲の良さが伝わってくるし、教えてもらって「やってこよう」と飛び出すはっつぁんのうきうきした気持ちも伝わってくる。

さん助師匠「妾馬」
さん助師匠の「妾馬」はとても独自。そして聞くたびに違う。きっといろいろ考えて噺を構築しなおしているんだろうな。

お殿様がお鶴を見初めて家臣が井戸にいる八五郎に声をかけるところから。
素っ裸の八五郎は大家の家を聞かれて、今自分が何をしようとしていたか、ここの大家かいかにしみったれかをべらべら喋る。
家臣が大家を訪ねてお鶴のことを聞くと、最初粗相をしたのかと思った大家はお鶴を13歳と言うのだが、殿さまの妾にと言われると今度は18歳だと言う。そして八五郎の悪口をべらべら喋る。
これに家臣が「ここはおしゃべり長屋か!」というのがおかしい。
大家が八五郎宅を訪ねると、家賃の取り立てに来たと思った母親はわざとらしい仮病。「妾にしたい」と言われると自分が妾にされるのかと思ったり、激しい母親のリアクションに大笑い。

それからおつるが男の子を産んで八五郎がお城に呼び出されたことを大家が八五郎へ告げる場面へ。
お屋敷へ上がるところはわりと手短で一人だけお殿様の前に通された八五郎
酒宴の席にお殿様は同席せず次の間にいるのだが、声は聞こえるぐらいの距離感。
飲んでるうちにどんどん声が大きくなる八五郎三太夫が「大声を発しないように」と注意を繰り返すんだけど、八五郎がおつるに会いたい、赤ん坊の顔を見たいというと…。

この三太夫とのやりとりやおつると再会の場面はさん助師匠独自なんだけど、これがほんとにいいんだよなぁ…。
普通じゃないけど、兄妹の絆が見えるし、ならず者の八五郎のことをお殿様が気に入るというのもなんとなく理解できる。

さん助師匠らしい「妾馬」が見られて満足満足。
明日はなにかなー。

 

カム・ギャザー・ラウンド・ピープル

 

カム・ギャザー・ラウンド・ピープル

カム・ギャザー・ラウンド・ピープル

 

★★★★

おばあちゃんは背中が一番美しかったこと、下校中知らないおじさんにお腹をなめられたこと、自分の言い分を看板に書いたりする「やりかた」があると知ったこと、高校時代、話のつまらない「ニシダ」という友だちがいたこと…。大人になった「私」は雨宿りのために立ち寄ったお店で「イズミ」と出会う。イズミは東京の記録を撮りため、SNSにアップしている。映像の中、デモの先頭に立っているのは、ドレス姿の美しい男性、成長したニシダだった。第161回芥川賞候補作。

切り取られたエピソードがぽつりぽつりと展開していく。これらがどう繋がっていくのだろう?と首をかしげていると、最後に一ぶわーっと押し寄せてくる。

しわしわのおばあちゃんの意外にも美しい背中。おなかに張り付く男の顔の感触。膝におずおずと置かれた手の感触。
ああ…思い出すのも嫌な思い出が自分にもある。見たくない、思い出したくない、謝られるのだっていやなのだ。

人身事故で見た光景、雪虫という色彩的なイメージも見事で、読み終わって鳥肌。

鈴本演芸場8月下席夜の部(4日目)

8/24(土)、鈴本演芸場8月下席夜の部(4日目)に行ってきた。

・門朗「道灌」
・小んぶ「幇間腹
・アサダ二世 マジック
・玉の輔「紙入れ」
・喬之助「夏泥」
・正楽 紙切り
・琴調「四谷怪談 お岩誕生」
・菊之丞「天狗裁き
~仲入り~
・ニックス 漫才
・扇遊「たらちね」
翁家社中 太神楽
・さん助「佃祭」

小んぶさん「幇間腹
テッパン。これを小んぶさんで初めて見た時の衝撃は忘れられない。確かテイトレコードで小太郎さんとの会だった。
え?小んぶさんが?え?こんな落語を?って驚いてすごく笑ったんだけど、あの時は「教わったまんまやってます」と言っていた。
あれ以来小んぶさんの落語はどんどん進化していっていて、ほんと面白いなぁ。
若旦那が凝った遊びの「カルテ取り」にはいつも笑ってしまう。最高。


琴調先生「四谷怪談 お岩誕生」
わーー。毎日違う話をしてくれてる!琴調先生、たまらない。
なんとこの位置で「お岩誕生」が聞けるとは思わなんだ。
絵が浮かんで鳥肌がぞわぞわ。
読み終わってから、お札をかっと掲げて去って行ったのが、すごくおかしくてかっこよかった。

菊之丞師匠「天狗裁き
羽織を着ている意味と脱ぐタイミングについてのまくら。
「普段こういうことは申し上げないんですが、本日はさん助さんのお客様ですから特別に」。
ぬおおお。もしや毎日通う私たちのために?(←都合のいい解釈)きゃー。

菊之丞師匠の「天狗裁き」はテンポとリズムがいいから聞いているうちに面白さが渦を巻いていく感じ。
この繰り返しの面白さはリズム感がいい噺家さんじゃないとなかなか出せないのかも。
スピード感があるからだれないんだなぁ。
天狗が出てきてからの展開も見事で、サゲでどかん!
かっこいい~。

扇遊師匠「たらちね」
たらちねがなぜこんなに迫力があって面白いのか。やっぱり人物の演じ分けなのかなぁ。
上下の振り方がぴきっとしていて、一瞬でも人が混ざる感じ?がないんだよなー。
この芝居、毎日扇遊師匠を近くで見ていて、表情の豊かさやキレの良さにハートを奪われっぱなし。

さん助師匠「佃祭」
3人の旦那衆が船を出して沖釣り。
船頭といっても宿の者がやっているのでお天気を見誤ることもある。
夢中になって釣っているといきなりの嵐に遭い船はひっくり返り気が付いたら見知らぬ島。
島の様子を見に行った船頭は「どうやらここは日本ではないらしい。真っ黒に日焼けした男たちがへんてこな恰好をしている」と。
どうにか話をつけて日本に送り返してもらおうと4人が島の人間の前に行って片言で話しかけてみるのだが…。

佃島のまくら、おかしい~。
でもそんなに慌てなくていいから。落ち着いて~(親目線)。
そんなまくらから「佃島」。

仕舞船に乗りそびれて引き留めた女に文句を言う治郎兵衛さん。
彼女が自分が3年前に身投げしようとしていたところを止めて命を助けた女だとわかると「ああ、すっかりいいおかみさんになって。だから私が言ったでしょう。生きていればまたいいこともあるって。あの時死んでいたら今みたいにはならなかったんだから」と満面の笑み。
ああ、ほんとにいい人なんだなぁというのが伝わってくる。
船頭をやってる亭主は言葉は乱暴だけど治郎兵衛さんのことをいつも女房と「命の父」と呼んで感謝していたことがわかる、気持ちよさ。

一方、治郎兵衛さんが死んだと思い込んだ近所の人たちのどたばたは落語らしくて面白い。
悔みを言いに行ってのろけを言ったりする人が多い中、一番心配されていた与太郎が「治郎兵衛さんだけは私のことをバカにしないで優しかったです」「あの治郎兵衛さんはどこに行っちゃったんですか」「治郎兵衛さんにもう会えないんですか」。
与太郎の純真さに涙が出る…。
また後日、人助けをしようと身投げを探して歩く与太郎さんもかわいくて…。
なんかこの噺の印象が全然違うんだな。

ちょっとわやわやしちゃった感じはあったけど、さん助師匠らしい楽しい「佃島」だった。
いやぁ…佃島で来るとは思わなかった。
5日目はなにをやるんだろう。楽しみ!!

 

 

夢見る帝国図書館

 

夢見る帝国図書館

夢見る帝国図書館

 

 ★★★★★

「図書館が主人公の小説を書いてみるっていうのはどう?」
作家の〈わたし〉は年上の友人・喜和子さんにそう提案され、帝国図書館の歴史をひもとく小説を書き始める。もし、図書館に心があったなら――資金難に悩まされながら必至に蔵書を増やし守ろうとする司書たち(のちに永井荷風の父となる久一郎もその一人)の悪戦苦闘を、読書に通ってくる樋口一葉の可憐な佇まいを、友との決別の場に図書館を選んだ宮沢賢治の哀しみを、関東大震災を、避けがたく迫ってくる戦争の気配を、どう見守ってきたのか。
日本で最初の図書館をめぐるエピソードを綴るいっぽう、わたしは、敗戦直後に上野で子供時代を過ごし「図書館に住んでるみたいなもんだったんだから」と言う喜和子さんの人生に隠された秘密をたどってゆくことになる。
喜和子さんの「元愛人」だという怒りっぽくて涙もろい大学教授や、下宿人だった元藝大生、行きつけだった古本屋などと共に思い出を語り合い、喜和子さんが少女の頃に一度だけ読んで探していたという幻の絵本「としょかんのこじ」を探すうち、帝国図書館と喜和子さんの物語はわたしの中で分かち難く結びついていく……。

知的好奇心とユーモアと、何より本への愛情にあふれる、すべての本好きに贈る物語!

 

作家の「私」に上野で話しかけてきたのが喜和子さん。白髪で端切れをつなぎ合わせたようなスカートを履いた個性的な女性。喜和子さんは「私」が作家だと聞くと「帝国図書館が主人公の小説を書いてくれ」と頼む。

物語の中で展開する「夢見る帝国図書館」という物語には、図書館を訪れる文豪や歴史に翻弄される図書館の歴史が語られるのだがこれがとても魅力的。

でもなによりも図書館を愛し自由を愛する喜和子さんがとてもチャーミングだ。彼女の棄てた過去が明らかになるにつれ、なぜ彼女がそこまで帝国図書館にこだわったのかがわかってくる。

本を開けば広がる世界。本好き、図書館好きにはたまらない物語だった。

鈴本演芸場8月下席夜の部(3日目)

8/23(金)、鈴本演芸場8月下席夜の部(3日目)に行ってきた。

・琴調「浅妻船」
・扇辰「一眼国」
・扇遊「夢の酒」
・さん助「もう半分」


扇遊師匠「夢の酒」
奥さんがどんどんカリカリしてきているのに気づかずに、「女中があなたが常日頃から恋焦がれている若旦那と言った」とか「びっくりするようないい女」とか鼻の下を伸ばして話す若旦那の能天気ぶりがとっても素敵。
「怒らない?じゃ話すけどさ」ってもう奥さん怒ってますから(笑)。
そして騒ぎを聞いて止めに入った大旦那。
「なんだ、夢の話か。お花、夢なんだから許してあげなよ」と言うと、お花が「私はやきもちを焼いているわけじゃないんです。若旦那は普段からそういことが起こればいいなと思ってるからそういう夢を見るんです。きっとその女には亭主がいるんです。それで亭主が出てきて…なんてことになったらお店の暖簾に傷がつきます」
それを聞いた大旦那が「…はい。」っていうのが、間といい言い方といい、たまらなくおかしくて大笑い。
夢を見てその女の家にあげてもらった大旦那が、お酒が飲みたくて飲みたくてお燗がつくのが待ちきれなくて何度も「まだですか」と尋ねるおかしさ。
それだけにサゲの言葉に実感がこもっていて大笑い。
陽気で楽しい「夢の酒」、よかったーー。


さん助師匠「もう半分」
せっかくの夏なんで怖い話をします、とさん助師匠。
昔の映画で見たんですが、ある家に強盗が入り強盗は夫婦を縛り上げ、その二人の前に狂犬病にかかった犬をつないだ。縄の上にはギロチンがあり、そのギロチンは縄で上げられていてその近くに蝋燭。
蝋燭の炎が縄に移ったら縄が焼けてギロチンが落ちてきて犬をつないでいる鎖の上に落ちる。それで鎖が切れれば獰猛な犬が夫婦に襲い掛かる、というわけ。
いやこの話のオチが最高におかしくて最高にかわいい。
以前、南なん師匠で聞いたことがあったけど、とってもチャーミングな小噺だなぁ。笑った笑った。

これでどかん!と笑わせたあとに、なんと「もう半分」。
「もう半分」と言って飲み続けるおじいさん。
痩せこけて身なりも汚くてどこか不気味だけれど相当な酒好きでご機嫌で飲んでいる。
まわりの客に「私のようなむさい爺が飲んでいると嫌でしょうが」と愛想を振りまき「そもそもむさいという言葉はどこから来てるかというと」とあれこれ蘊蓄のようなでたらめを言うのがおかしい。
芋の煮っころがしをおじいさんが食べるシーンもなんともいえず汚いような不気味なようなユーモラスなような…。

おじいさんが帰ってようやく店じまいをしようとしておじいさんの残した風呂敷包に気が付く亭主。中に五十両入っているとわかったとたん、女房はなんのためらいもなく「この金はもらっちまおう」と言い出す。
亭主の方は「お前何を言い出すんだ」「あんなみすぼらしい爺さんが持ってる金だ。理由のある金に違いない」「じいさんがかわいそうだ」と言うのだけれど、女房は「何を言ってるんだ。世の中はどうせ誰かがかわいそうな目にあうんだ」と動じない。この女房の理屈…こういう風に考える人は今もいるし自分だってそうならないとも限らないと思うとたまらなく怖い。
最初は返さないとだめだと言っていた亭主も女房に押し切られ、やってきたおじいさんに「今日はもう帰ってくれ」と繰り返す。

おじいさんが死んでからの展開は、噺を知っていてもどんどん引き込まれていって、会場中がしーん…。会場の空気が変わっていることを肌で感じてぞくぞくした。

堂々とした高座にびっくり。
さん助師匠がトリで怪談をやるとは思わなんだ。
あーでもこれには「西海屋騒動」が生かされているんだな、と思った。
あんなどうしようもない噺だけど(←ひどい言いよう)あれで陰惨な場面を幾度となくやっているから、大きな声を出さなくても十分に怖い「もう半分」になったのかも。
いやーすごかった。もうほんとに今席のさん助師匠からは何が飛び出すかわからない。
楽しみ!

 

鈴本演芸場8月下席夜の部(2日目)

8/22(木)、鈴本演芸場8月下席夜の部(2日目)に行ってきた。

・琴調「宇喜多秀家 八丈島物語」
・扇辰「麻のれん」
~仲入り~
・扇遊「家見舞い」
翁家社中 太神楽
・さん助「子別れ」


琴調先生「宇喜多秀家 八丈島物語」
福島正則の家臣、大金金衛門が江戸の将軍へ広島の名酒百樽を携えて船で江戸へ渡ろうとするのだが、嵐に遭い立ち往生し、風向きが変わるのを待つことになる。あの島はなんだ?と船頭に訪ねると「あれは八丈島無人島です」という返事。それは面白そうだと足軽を従えて八丈島へ降りて見物していると、向こうからボロボロの身なりの男が魚を手に現れる。
金衛門が勝手に上陸したことを男にわびると、自分はこの島の島民ではないから謝ることはない、と男。
金衛門が自分は福島正則の家臣であることを名乗ると、男は驚きまた懐かしがり、自分は島流しになった秀家であると名乗る。
それを聞いて慌ててひれ伏す金衛門と足軽たち。
秀家は金衛門が酒を江戸へ届けるところだと聞くと、それを飲みたいと言う。
金衛門は本来であれば贈り物なので手を付けることはいけないということを承知で、酒だるを運ばせて秀家へ好きなだけ飲んでくださいと言う。
秀家が酒樽を覗き込むとそこを月が照らし自分のやつれはてた姿を目にする。そして…。

…初めて聴く話だったので必死にくらいつく(笑)。
酒樽を月が照らすシーンがとてもドラマチック。その光景が頭に浮かんできてじーん…。
素敵だった。


扇遊師匠「家見舞い」
楽しい~。
兄貴のところに祝いを持って行かなきゃ!という江戸っ子二人も気がいいけど、道具屋の主人も気のいいざっかけない人物。
食べ物を出されるたびに考え込む弟分がおかしくて笑った笑った。


さん助師匠「子別れ」
朝帰りのまくらで「うおおお、子別れだ」とすぐにわかった。
さん助師匠の「子別れ」が本当に大好きなんだけど、この日の「子別れ」は今までとはまた一味違う…今までよりも太い「子別れ」だったように思う。

お弔いから5日帰って来なかったくまさん。
女房のおふくに今まで何をしてたんだと聞かれ、お弔いの後に紙くず屋のたつ公と一緒に「お通夜」に行ったと言う。
女房にたつ公から全部知ってると言われると、やけになって遊郭でなじみの女に再会した、と。
女がどんなに自分に惚れてると言って引き止めたかをのろけ、「胸の所にぎゅーって抱き着いてきて…こっちだったかな…いや、こっちだったか」。
おふくが「女郎を買ったのろけを女房に聞かせるなんて」と怒ると、最初は謝ったりご機嫌をとったりするんだけど、女房が「離縁状を書いてくれ」と言ってくるので終いには怒り出す。
このくまさんのどうしようもなさ。
離縁状をもらったおふくがかめちゃんを起こして「出て行くよ」と言うと、かめちゃんはくまさんに向かって「とうちゃんはいつもそうやってお酒を飲んでかあちゃんとあたいにだけえばる」「謝っちゃいなよ。いまならまだ間に合うよ」という生意気な物言い。
しかしもう出て行くとなるとおふくに言われるがままお礼を言うかめちゃんが悲しい。

3年経って番頭さんがくまさんを迎えに来て二人で出かけるシーン。
再会した女郎を家に招き入れて…のくだりはなし。
二人で歩いていると番頭さんがかめちゃんを見つける。かめだとわかると「ああ、かめだ。大きくなったなぁ」とくまさん。
ここで登場するろくちゃんが「かめちゃん、さっきからあそこで知らないおじさんがかめちゃんの方を見て泣いたり笑ったりしてるけど、あのおじちゃん知ってる人?」
そこからの父と息子の会話も、いちいちまぜっかえすろくちゃんが出てきたり、二人から目が離せなくなって聞き耳を立てる八百屋が出てきたり。
随所にしめっぽくならない、弾けたおかしさ。

家に帰ってからのおふくさんとかめちゃんのシーンも無駄なところがそり落としてあってあっさりしているけど、かめちゃんが追及されてもうどうしていいかわからなくなるところがとてもリアルで…ああ、こどもってこうだよなぁ…と思ったら涙腺崩壊。

親子3人再会のシーン。
それまでメンツを守ろうとしていたくまさんが自分をさらけ出すところもいいし、なによりそう言われたおふくさんの反応がとっても好き。

ああ、面白いなぁ、さん助師匠の落語は。
そしてなんか今席のさん助師匠は腹をくくってるっていうか肝が据わってるっていうか…そういう太さを少し感じる。
寄席でトリをとるというのはすごい経験。その機会を与えてくれた鈴本演芸場には感謝しかないなぁ。ありがとうありがとう。親類でもないけどありがとう。

鈴本演芸場8月下席夜の部(1日目)

8/21(水)、鈴本演芸場8月下席夜の部(1日目)に行ってきた。

・琴調「清水次郎長外伝 小政の生い立ち」
・菊之丞「紙入れ」
~仲入り~
・扇遊「狸賽」
翁家社中 太神楽
・さん助「鴻池の犬」

琴調先生「清水次郎長外伝 小政の生い立ち」
うーん、かっこいい。最初の張扇の叩き方からしてかっこいい。
子どもたちが博打をやる姿を苦々しく見ていた清水の次郎長と石松。
酔っ払いが割って入ってきて子どもたちがてんでに逃げる中、一人だけその場に残り散らばった金を集めてむしろを店のおばあさんに返す子ども。
酔っ払いがその金を寄こせと子どもに迫ると、彼は棒きれで酔っ払いを打とうとする。
慌てて止めに入った石松が酔っ払いを追い払うと礼を言う子ども。
礼なら俺じゃなく親分に言いな、と次郎長のところに連れて行くと…。

「博打打ち」になりたいと夢見る小政。
子どものかわいらしさと肝の据わったところ。
まわりの大人がたじたじになるのが小気味いい。
楽しかった。

菊之丞師匠「紙入れ」
聞き慣れた「間男」の小噺から楽しくて思わずぶわはっ!と笑ってしまう。
おかみさんの色っぽさと小悪魔っぷりがたまらない。あんなふうに誘われたら誰だってひとたまりもないだろう。
リズムのよさなのかテンポのよさなのか、菊之丞師匠の落語はノリのいい音楽を聴いているようなグルーブ感があるんだよなぁ。楽しい~。

扇遊師匠「狸賽」
うーん、扇遊師匠もまた弾むような高座で楽しい~。
表情や動きに引き込まれる。
聞いていてウキウキしてくるような「狸賽」だった。

さん助師匠「鴻池の犬」
まくらなしで「鴻池の犬」。
うおおお。初日にいきなり「鴻池の犬」とは。
店の前に三匹の捨て犬を見つけた小僧の定吉。乾物屋に犬など置くことはできないという旦那とのやりとりが楽しい。
三匹のうちの黒犬をもらいたいと店を訪ねてくる男。
最初から「もらいたいと言う人がきたらあげてしまうよ」というのが旦那と定吉との約束だったから、旦那に「黒をあげることになった」と言われた定吉は文句は言わないけれど本当に悲しそう…。
ちゃんと餌ももらえなくなった白とブチ。ブチが轢かれて死んでしまい、もうここにはいられないと思い詰めた白は黒あんちゃんのいる大阪を目指して旅に。
途中でお伊勢参りのお礼に向かうおかげ犬と出会い、一緒に旅をする二人。
この二人の別れの場面では涙が…。うううう。なんで犬が別れるシーンで泣くんだ自分と思うも、優しくしてくれたおかげ犬と別れる心細さ、本当に黒あんちゃんに会えるんだろうかという不安を想うと、うるうる…。
一方、鴻池に引き取られて大事に育てられ、江戸っ子気質を発揮して「親分」になった黒犬。
この親分ぶりがなんともいえずばかばかしくておかしい。

自分の世界に客席をぐいっと引き付ける本当に堂々とした高座で、ぬおおお、さん助師匠どうした!すごいぞ!と嬉しい驚き。
いやぁ…心配してたんだようーほんと言うと。
なんか今席のさん助師匠トリはすごい期待できそう!うわーーーい。

平場の月

 

平場の月

平場の月

 

 ★★★★★

朝霞、新座、志木―。家庭を持ってもこのへんに住む元女子たち。元男子の青砥も、このへんで育ち、働き、老いぼれていく連中のひとりである。須藤とは、病院の売店で再会した。中学時代にコクって振られた、芯の太い元女子だ。50年生きてきた男と女には、老いた家族や過去もあり、危うくて静かな世界が縷々と流れる―。心のすき間を埋めるような感情のうねりを、求めあう熱情を、生きる哀しみを、圧倒的な筆致で描く、大人の恋愛小説。 

 50代になって再会した青砥と須藤。お互いバツイチで中学時代は淡い思いを抱いていた相手。時々会ってどうってことない話をしてお互いの屈託をこっそり逃がす、そんな約束で始まった二人の関係は、須藤が癌にかかったことで変化していく。

青砥の須藤を支えたいという気持ちと二人の未来を夢見る気持ち。
須藤の青砥に甘えたい気持ちと二人の未来を想う青砥に真実を伝えられなかった気持ち。
二人のすれ違いが辛いけれど、甘えなかったということがきっと須藤の最期の日々の支えだったようにも思える。

とてもよかった。久しぶりに本を読んで号泣した。

ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短篇29

 

ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短篇29

ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短篇29

 

 ★★★★★

これが、世界で読まれるニッポンの小説! 日本と西洋、男と女、近代的生活その他のナンセンス、災厄など七つのテーマで選ばれたのは、荷風・芥川・川端・三島、そして星新一中上健次から川上未映子星野智幸・松田青子・佐藤友哉までの二十九の珠玉。村上春樹が収録作品を軸に日本文学を深く論じた、必読の序文七十枚を付す。
 

バラエティ豊かで独自のセレクションでとても面白かった。
近代~若手作家まで網羅されていてしかもとても渋好み(笑)。

好きだったのは津島佑子「焔」、河野多恵子「箱の中」、中上健次「残りの花」、大庭みな子「山姥の微笑」、小川洋子「物理の館物語」、澤西裕典「砂糖で満ちてゆく」、内田百聞「件」、青来有一「虫」。

村上春樹の序文もとても分かりやすくて、これらの短編を読む手助けになる。
今まで読んだことのない作家もたくさん出てきたので、これからまた読んでみようと思う。

さん助ドッポ

8/18(日)、お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」に行ってきた。

・さん助 ご挨拶
・さん助 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第三十回「最後の最後の情婦」
・さん助「青菜」
~仲入り~
・さん助「大山詣り

 

さん助師匠 ご挨拶
この日はなんと柳蔭のサービスがあり、また鈴本の下席にみんな来てねと意味をこめての「うなんぷらりー」(鈴本でUnaさんを見つけたらスタンプを押してもらえてスタンプが4つたまったら粗品のプレゼント!)のお知らせもあり、と盛りだくさん。

それから一門会で福岡に行ったときの話。
「私帰るのを2日遅らせまして数少ない私の友人と会ったんです、何年かぶりに。それでその友人が”お前にものすごくうまい串焼きを食わせてやる”と言ってくれまして。なんでもその店、中心街から1時間ほど離れた場所にあって、とても頑固なおじいさんがやっている店なんだけど、とにかく串焼きの常識を覆すうまさんなんだと。基本的にはうすーい豚肉で野菜などを巻いて揚げるらしいんですが、そんなにうまいの?と期待が高まりまして…」。

行ってみると店主は70歳ぐらいの元気なおじいさん。ここの店メニューが置いてないし値段も書いてなくて、店主がその日のオススメのものを勝手に次々出してくる。店主がおしまいと思うまで次々出されたものを食べる、というシステム。
そしてどれもこだわりの食材で「この豚はどこどこの豚でどうしたこうした」「これはどこどこ農場と直接契約していてその日にとれたものを使ってる」などなど。
で、確かにうまい。今まで食べたことがないようなうまさ。
でも私だんだん心配になってきちゃいまして…。というのは私その店に行く前に「今日は俺がおごるよ!」と見栄はっちゃったんです。
現金で3万円おろしてきてたんですけど、どれもこれもこだわりの食材、生ビールなんかもかなり飲んでしまっている、そしてとてもカードなんかは使えそうにない。
これはことによると足りないのでは…そう思うと気が気でない。
結局会計をしてみたら二人で1万円ちょっと。店主が私に向かって言いました。「そんなにびくついちゃいけねぇよ」。
…見透かされていたんですね…。

…ぶわはははは。おかしい!!
会計が心配で挙動不審になるさん助師匠が目に浮かぶ。

さん助師匠 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第三十回「最後の最後の情婦」
なぜ「最後の最後の情婦」かというと、第27回をやったときに、もうさすがに義松もこれで女は作らないだろうと思って「最後の情婦」とタイトルを付けたんですが、ここにきてまさかの…また女を作りました。それで仕方なく「最後の最後の情婦」です。
「西海屋騒動」残りわずかなんですがさらに女を作ると「最後の最後の最後の」になります。

三蔵の口利きがあったおかげで清水の次郎長の子分になった義松。
しかししばらくは特に何もすることがないというので、水口の方に行って賭場に出入りをしたり遊郭に行ったりして遊ぶ毎日。
水口に阿部四郎治という御家人がいて一刀流の達人だった。水口で遊ぶうちに阿部と懇意になった義松は阿部の家に招かれるようになった。
阿部の女房が元は遊女のお関。たいそうな器量よしで色気がある。
お関も江戸の出身ということで3人で江戸の話をしたりして楽しい時を過ごしていたのだが、そのうちお関が義松に色目を使うようになる。
義松はすぐにお席の気持ちに気が付いたが、さすがに阿部の女房に手を出すのは…としばらくは抑えていたのだが、そのうち二人は深い仲になる。

ある時、お関が芝居見物に行って留守だといって呼び出された義松。何事かと思っていると、「情報筋から聞いたところによると徳川家はもうだめらしい。官軍が勝つというもっぱらの評判だ」という阿部。
そこで自分はここで追剥になり駿河中の金を残らず集めその金を持って官軍に寝返ろうと思う。
自分と一緒に追いはぎをやらないか、という相談であった。

それを聞いた義松はすぐにその話に飛びつく。
そして隙があらば阿部の寝首を掻いてしまおうと考える。

駿河の国には土井正作という豪農がいて、二人は土井を襲い千両奪おうと計画を立てる。
夜中土井の屋敷に忍び込むとすぐにその物音に気付いた正作。臆することなく追いはぎ二人を屋敷に入れ、黒装束で顔を隠している阿部に向かって「お前は阿部四郎治だろう」と言い当てる。
肝の据わった土井に逆に気圧されてしまった二人。
いったいこのあとどうなるのか…。

…おいおい。
なんか前回急に清水の次郎長が出てきてそこで今までの悪事を払うだのなんだのきれいごとを言っていたと思ったらもう追いはぎかい?
で、大きなことを言ったわりにじじいに気圧されちゃう阿部もいったいなんなんだ。
そしてこの間は糞尿にまみれいたくせにまた元遊女に色目を使われちゃう義松。
なんだよー。

さん助師匠「青菜」
おおお、さん助師匠の「青菜」久しぶり。前に鈴本で聞いたことがあったっきりだった。
さん助師匠の「青菜」は旦那がちょっと変(笑)。鷹揚で慈愛に満ちているけどどこか少し変人っぽさを醸し出しているところがおかしい。
植木屋さんの酒の飲みっぷりがいいねぇ~。そして鯉もおいしそう!おいしそうなんだけど食べ方が激しいのが面白い。
帰ってからの女房とのやりとりは完全に女房にやられちゃってるのがおかしい。
「お前、やなぎかげって知ってるか?」
「知ってるよ、直しだろ」
「鯉のあらいって言ってもシャボンで洗ったわけじゃねぇんだぞ」
「知ってるよ、刺身だろ」
「おまえ…何でも知ってるんだな」
声をかけられてあがってくる半ちゃんが「大阪の友人?お前に友人なんかいたの?」にも笑うけど「菜はきれぇだよ!」ときっぱり言うのもおかしい。
押し入れから飛び出してくる女房もド迫力で笑ったー。

さん助師匠「大山詣り
この間、燕弥師匠との会で聞いているけど、あの時と結構内容が変わっていた。
「喧嘩したら髷を落とそう」と言い出すのがなんとくまさん。
確かにそれだとやられた二人が先達さんになだめられても納得しなかった理由もわかる。
あとやっぱりくまさんは髷を落とされたことよりも置いて行かれたことに怒ったんだな、と思う。
坊主になったくまを見つけた女中がすごくおかしかった。

あー楽しかった。
いよいよ8/21(水)から鈴本演芸場のトリが始まる。ドキドキー!



 

第11回 夏丸谷中慕情

8/16(金)、chi_zu2号店「第11回 夏丸谷中慕情」に行ってきた。

・夏丸「茄子娘」
・夏丸「青い鳥」
~仲入り~
・夏丸「馬の田楽」

夏丸師匠「茄子娘」
寄席でもよく見る夏丸師匠の「茄子娘」。
もとは扇橋師匠が協会の事務員さん(元噺家)から教わった噺だったとは知らなかった。
こういう不思議な噺が夏丸師匠にはとっても似合う。
夏らしくていいな。楽しかった。

 

夏丸師匠「青い鳥」
いかにも芸協噺っぽい昭和風味の噺だけど、これもまた夏丸師匠にぴったり。
旦那が歌う桜田淳子の「幸せの青い鳥」に合わせて奥さんがあてぶりの踊りを踊る。このあてぶりのくだらなさ。
笑った笑った。


夏丸師匠「馬の田楽」
夏丸師匠の「馬の田楽」は末廣亭の真打披露興行の時に見ているんだけど、その時とは様変わり。ものすごいふざけてる(笑)。特に後半出てくる耳の遠いおばあちゃんはどこをどう見ても志村けん
小三治師匠の「馬の田楽」を見慣れているので「ムムム」だけど、これはこれであり。馬の田楽爆笑編。