明るい夜に出かけて
★★★★
富山は、ある事件がもとで心を閉ざし、大学を休学して海の側の街でコンビニバイトをしながら一人暮らしを始めた。バイトリーダーでネットの「歌い手」の鹿沢、同じラジオ好きの風変りな少女佐古田、ワケありの旧友永川と交流するうちに、色を失った世界が蘇っていく。実在の深夜ラジオ番組を織り込み、夜の中で彷徨う若者たちの孤独と繋がりを暖かく描いた青春小説の傑作。山本周五郎賞受賞作。
若者らしい繊細さと頑なさが描かれていて、読んでいて懐かしいような痛いような気持ちになった。
深夜ラジオ、コンビニ、SNS。いいこともあれば悪いこともあるけれど、「好き」でつながることの心強さ。
差し伸べてくれる手に気づくことができた富山はきっとこれから自分も手を差し伸べる人間になっていくのかな。
清々しい読後感だった。