りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ののはな通信

 

ののはな通信

ののはな通信

 

 ★★★★★

最高に甘美で残酷な女子大河小説の最高峰。三浦しをん、小説最新作。

横浜で、ミッション系のお嬢様学校に通う、野々原茜(のの)と牧田はな。
庶民的な家庭で育ち、頭脳明晰、クールで毒舌なののと、
外交官の家に生まれ、天真爛漫で甘え上手のはな。
二人はなぜか気が合い、かけがえのない親友同士となる。
しかし、ののには秘密があった。いつしかはなに抱いた、友情以上の気持ち。
それを強烈に自覚し、ののは玉砕覚悟ではなに告白する。
不器用にはじまった、密やかな恋。
けれどある裏切りによって、少女たちの楽園は、音を立てて崩れはじめ……。

運命の恋を経て、少女たちは大人になる。
女子の生き方を描いた傑作小説。

女子高で出会い親友から恋人になった「のの」と「はな」。毎日交わされる手紙はどんどん濃密なものになっていくが、恋人時代は長く続くことなく終わっていく。
大学生になって再会してまた離れ、40代になって今度はメールのやり取りが始まる。

宝物のような恋愛の記憶はその後の人生で道しるべとなる。

送り先が不明になってもお互いの存在は常に身近にあって気配すら感じられる。
それがその人の全てではなかったとしても、心の一番深いところで通じ合える相手がいることは幸せなことだ。

しをんさんは作品ごとに全くテイストが違う。とても面白かった。

立川流寄席

7/9(火)、日暮里サニーホールで行われた立川流寄席に行ってきた。

・笑二「元犬」
・らく人「粗忽の釘
・談修「宮戸川(上)」
・里う馬「笠碁」
~仲入り~
・志の彦「かぼちゃ屋
・志ら玉「大安売り」&踊り
・龍志「船徳

笑二さん「元犬」
笑二さんの途中から。
かずさ屋さんがシロが元犬と聞いて「ああ、そうだったのかい」と言いながら実は信じていなくて、危ないヤツだと思ってるところから始まって、かなり斜め上を行く「元犬」だった。
普通のところと変化球のところ、両方を淡々とやるからすごくおかしい。楽しかった。


らく人さん「粗忽の釘
ペナルティで前座に戻っていたらく人さん。このたびめでたくニツ目復帰。
師匠のツィートがネットで取り上げられ炎上した結果、芝居のチケットは完売。これぞまさしく炎上商法。
そんなまくらから「粗忽の釘」。初めて見た噺家さんだと思って見ていたけど、ブログを検索したら2回見ていた。
ゆったりした口調に少し癖があるけど、聞きやすくて面白かった。


談修師匠「宮戸川(上)」
うーん、きれいな芸。好きだな、談修師匠。
この噺、ほんとに聞き飽きていて好きじゃないんだけど、お花ちゃんが図々しくなくてかわいらしくてよかった。
「グッジョブ」なんてセリフが入っても思わず笑ってしまう。
サゲは喬之助師匠と同じ。


里う馬師匠「笠碁」
おじいさん二人が生き生きしていて目に浮かぶよう。
ムッとしたり、いらいらしたり、わくわくしたり。
二人で碁を打つのを何より楽しみにしていることが伺える。
「番頭さん、来た来た!」「あそこにいた!!」、いちいち番頭さんに報告する旦那がかわいらしい。
楽しかった。


志の彦さん「かぼちゃ屋
初めて見た噺家さんと思ったけど、ブログを検索したら一度見ていた。おれの記憶って…。
とても面白かった。ギャグも邪魔にならずとっても楽しい。好きなタイプの噺家さんかも。他の噺も聞いてみたい。


志ら玉師匠「大安売り」&踊り
「大安売り」って全然面白くない噺だと思うんだけど、ちょっと面白かった。
繰り返しがしつこいところにもイライラしがちなんだけど、それもなく。
踊りもよかった。立川流って色物が出ないからこういう踊りがあると一息つける感じ。


龍志師匠「船徳
志ら玉師匠の踊りを「結構ですな」と龍志師匠。
「私も習ってたこともあるんですよ、踊り。私の踊りを見た談志…”かっ!”と一言だけ言いましたね。かっ!!ですよ。あー自分には向かねぇなと思ってやめました」。
そんなまくらから「船徳」。

最初から最後までめちゃくちゃ楽しい!
徳さんの若旦那ぶりがとってもチャーミング。
「お店なんかやりたくないよ。そろばんをパチパチやるなんて面白くもなんともない。それより船頭だよ船頭」。
親方に反対されると「じゃいいよ。他の船宿に行ってなるから」。
しょうがないなぁと親方が渋々認めると「ありがとう!じゃみんなを呼んで。披露目をやろう!」

四万六千日に出かけた二人が船宿を訪れた時に徳さんがお茶を出す、というのは初めて見た。
舟をつないだまま出そうとしたり、出すなり竿を流したり、櫓に変えた途端にかっこつけて漕ぎ始めたり、とにかく若旦那がとてもかわいくて調子が良くておかしい。
石垣に寄って行ってからは、「太ってる旦那、そんな帆先に立たない!」「コウモリで突いてください。もうそれしかないんだから。見てたでしょ、竿を流したの」キレるキレる。
文句言ってもなにしてもかわいい。

ほんとにご機嫌な「船徳」で、楽しかったー。いいなぁ、龍志師匠。かっこいい。

三つ編み

 

三つ編み

三つ編み

 

 ★★★★★

3つの大陸、3人の女性、3通りの人生。唯一重なるのは、自分の意志を貫く勇気。インド。不可触民のスミタは、娘を学校に通わせ、悲惨な生活から抜け出せるよう力を尽くしたが、その願いは断ち切られる。イタリア。家族経営の毛髪加工会社で働くジュリアは父の事故を機に、倒産寸前の会社をまかされる。お金持ちとの望まぬ結婚が解決策だと母は言うが…。カナダ。シングルマザーの弁護士サラは女性初のトップの座を目前にして、癌の告知を受ける。それを知った同僚たちの態度は様変わりし…。3人が運命と闘うことを選んだとき、美しい髪をたどってつながるはずのない物語が交差する。文学賞8冠達成!全国図書館協会賞、グローブ・ドゥ・クリスタル賞(文学部門)、「ルレイ」旅する読者賞、女性経済人の文学賞ユリシーズ賞(デビュー小説部門)、フランス・ゾンタクラブ賞、全国医療施設内図書館連盟賞、ドミティス文学賞。 

インドで不可触民として生まれ、夫と娘とともに生きているスミタ、イタリアの毛髪加工工場で働くジュリア、カナダのエリート弁護士サラ。この3人の物語が本当に三つ編みを編むように繋がって行く。

それぞれ過酷な状況に追い込まれて打ちのめされるが、彼女たちはそこで終わらない。どん底から立ち上がる彼女たちがそれぞれしなやかな強さを持っているところも好きだが、彼女たちの周りにいる男性が画一的に描かれてないところがとてもいい。
希望を捨てないこと。大切な人と大切な場所を守ること。私にもこんな生き方ができるだろうか。

素晴らしい作品だった。

第三回 柳家さん助の楽屋半帖

7/8(月)、駒込落語会で行われた「第三回 柳家さん助の楽屋半帖」に行ってきた。

・さん助「ちりとてちん
・さん助「ろくろ首」
~仲入り~
・さん助「胴斬り」
・さん助「迷子パンダの夏(三題噺「迷子」「蓮の花」「ほおずき市」)

さん助師匠「ちりとてちん
旦那が「お料理が余ったから金さんを呼んできておくれ。あの人はお世辞がいい人だから」と女中のお清さんに言うと、お清さんは「金さんはお世辞が下手です」。
え?と聞き返すと「金さん、私のことをきれいだきれいだって。お世辞、下手です」。

…ぶわははは。見たまま言ってます、と言いたいのか、お清さんよ。
そしてお世辞のうまい男、金さんがなんか変なのも、さん助師匠らしい。
「灘の生一本!私そういうものがあるということは知っておりましたけど、口にするのは初めてです」と言うわりに、蘊蓄を語らずにはいられない。決して偉そうではないんだけど、ついつい出ちゃう風なのがおかしい。
「口にするのは初めて」と言われた旦那が「そうなのかい?」とまんざらもなさそうなのが、かわいい。
一方のろくさんは生意気なことばかり言うわりに、案外美味しそうに食べるのが面白い。
ちりとてちん」を口にした時の、ぷーーっとふくれた顔が「シナの五人兄弟」の海の水を飲みほした男みたい。ちょっと笑った顔みたいになるのもばかばかしくて好きだな。
面白かった。

さん助師匠「ろくろ首」
この会に一回目から来てくださってるお客様はまさに決死隊。どんどん脱落して行って最後は私一人になるかもしれません…。自分でお題を出して誰も聞いてないところで一人で喋って終わる。ある意味理想でしょうか。
そういえば…小沢昭一さんという名優がいましたけど、私はあの人のラジオ番組「小沢昭一的こころ」が大好きでした。
毎回楽しみに聞いていて…当時私は中学生だったんですが…学校があって生では聞けなかったのでラジカセの録音機能で録音して聞いてました。
私が育ったのは茨城の片田舎でしたが、ある時小沢さんのお芝居を近くでやったことがあって、それは見に行きました。
その時私本当に大ファンだったのでどうしてもサインが欲しくてですね…終わった後、楽屋口まで行って…そこには警備員がいて追い返されそうになったんですけど、どうしてもどうしてもサインが欲しいんですと色紙を渡したら、警備員さんが持って行ってくれて、サインをいただくことができました。
あれは本当に嬉しかった。部屋に飾って…宝物でした。
そうしたら…私大学の時に東京に出て来たんですけど。私の部屋はそのまま物置きになってたんですが、ある時帰省したら壁に飾っていてサインがないんです。親に聞いたら「もういらないだろうと思って捨てた」と言われまして…あれはほんとにショックでした。なんで捨てるんだ?と思って。
前座の時に、小三治師匠の芝居で小沢昭一さんが10日間出たことがあって…あの時はもうほんとに興奮しました。大ファンですと声をかけてもう一度サインをもらいたかった。でも素人でもなく前座の分際でそんなこと…どうにか思いとどまりました。
で、なんで小沢昭一さんの話をしたかっていうと、小沢さんがラジオで「一番の贅沢は、大きなホールを借りて観客が1人もない状態で一人芝居をすることだ」と言っていて…さきほどの私の「お客さんが誰もいない中、自分で題を出して一人で落語をやって」と同じだな、と。
いや、全然会場の規模も違いますし。お客さんが1人も来ないのは困るんですが。

…ぶわははは!
中学生で小沢一郎ファン!渋っ!中学生の頃からさん助師匠はさん助師匠だったんだな。面白-い。
そしてサインの話。なんとなくわかる気がするなぁ。親が真っ先に棄てたくなるものかも。壁に飾ってあるサインやポスターって。もういらないやろ!みたいに。私も気を付けよう…。

そんなまくらから「ろくろ首」。
さん助師匠の「ろくろ首」久しぶり!ずっと聞きたいと思っていたから嬉しい。今年の夏はたくさんかけてくれるといいな。
おじさんに「お嫁さんがほしい」となかなか言い出せず、同じことを何度も繰り返す与太郎さん。
「あたいは今年25歳。兄貴は32歳。兄貴にはおかみさんがいてそれがいーーい女。子どももいる。それにひきかえあたいはお袋と二人暮らし。お袋は62歳。しわだらけ。しわしわ。しょわしょわの炭酸ばばぁ」。
このしわしわがしょわしょわーになって炭酸ババァになるの…すごいバカバカしくておかしい。
「およめさんがほしい」をもにょもにょ言っておじさんに何度も促されて「お嫁さんがほしーーい!お嫁さん!お嫁さんがほしーーーい!」の大声も、「わかったわかった。そんな大きな声を出すな」と言われて今度は小さいけどはっきりした声で「お嫁さんがほしい」。
真に迫っていて笑ってしまう。

お見合いでお庭を通るお嬢さんを見て「いい女だなぁ!!」とほんとに嬉しそうなのも、その晩眠れずに寝ているお嬢さんをうっとりと見つめるのもおかしい。
そこでお嬢さんの首が伸びるところ…ほんとに目が点になってゆっくり目線を動かすのが…ほんとにお嬢さんの首が伸びるのが見えてくるようで結構怖い。
いいなぁ。さん助師匠の「ろくろ首」。すごく好きだ。


さん助師匠「胴斬り」「迷子パンダの夏(三題噺「迷子」「蓮の花」「ほおずき市」)
おお、「胴斬り」も久しぶりだ!
胴斬りにあったのに、「お前がフラフラしてるからいけないんだ」と普段の生活に苦言を呈されたり、「これからはちゃんと働かなきゃいけねぇ」と説教されるの、おかしいなぁ。
兄貴分もおかみさんもそんなに驚かないんだよな(笑)。
上半身の方が下半身を「血肉を分けた弟」と言うのもおかしいし、下半身が2日前から喋られるようになったのもおかしい。
そしてあの指でやるこんにゃく踏んでるしぐさがたまらなくバカバカしくておかしい。
で、サゲを言った後に急に「胴斬りにはもう一つサゲがありまして…あんまり女湯の方を見ないようにしてください。どちらがいいかはお客様に選んでいただくということで…。ひとみさんはどっちがいいですか?」
「どっちがいいじゃないわよーーーー!」

…また落語からの流れで三題噺に入った!
しかもひとみさんって…前回出て来たソープランド太閤のひとみさん!

「このネタを今度の会のトリでやろうと思ってまして」
「胴斬りはトリでやるようなネタじゃないでしょ?!ほかにはないの?」
「ええと…文七と芝浜を…」
「聞きたくない!!」
「じゃひとみさん、また次回も稽古よろしくお願いします」

その後、ひとみさんが仕事仲間(わはは)と会話。
「今の落語家?」
「そう。柳家さん助っていう売れない噺家。最近会の前には私のところに稽古に来るようになっちゃって」
それからそれぞれソープ嬢がどうやって職場(太閤)に来てるかの話になり、軽トラだったり3トントラックだったり…。
するとそこに電話。相手は陸上自衛隊。しかもひとみさんのお客さん。
なんでも上野動物園でシャンシャンが暴れている、と。シャンシャンを落ち着かせるにはなぜかいちご大福を口移しであげなければならない。それができるのはひとみさんだけ。
そして暴れるシャンシャンが…巨大化して完全にゴジラみたいになっていて…かわいらしさもパンダ感もゼロ!なんだこれは!
(シャンシャンが暴れている場所が不忍池なのでここに「蓮の花」が…。あと「ほうずき市」も出て来たけどどういう流れだったか忘れた…)

もうこのあたりからどんどんカオスになっていき、戦闘機が出てきたり、シャンシャンが暴れたり、シャンシャンが実は「迷子」で母親パンダがガオガオ言いながら登場したり、ひとみさんがパラシュートで降りてきながら唇を突き出してシャンシャンにいちご大福を口移し…。
なにがなんだか…だったけど、いちご大福を口にしたシャンシャンが急にしゅわしゅわしゅわしゅわ、と縮んでいって可愛らしくなったのには笑った。

これはどうおさめるのかと思ったら特にサゲはなく「この続きはいつか申し上げることに」でモヤモヤっと終わり。

いやぁ…カオスだった(笑)。ついに3回目にしてカオスに。
なんかこれから先はどんなお題でもシャンシャンがゴジラになってしまうのではないかという不安(笑)。
そしてこの噺、良く言えば白鳥師匠、喬太郎師匠の系譜と言えなくもないような気がしないでもない。

そして今回からお客さんがタイトルを決めてそれもさん助師匠がくじで引いて決める、という形。
いろいろ迷走してる感はあるけど、面白いからいい!

国立演芸場7月上席昼の部 三遊亭藍馬真打昇進披露

7/6(土)、国立演芸場7月上席昼の部 三遊亭藍馬真打昇進披露に行ってきた。


・馬ん次「芋俵」
・吉馬「寄合酒」
・夢丸「お血脈
・京太・ゆめ子 漫才
・寿輔「地獄巡り」
・遊三「ぱぴぷ」
~仲入り~
・真打昇進披露口上(夢丸、遊雀、圓馬、藍馬、寿輔、遊三)
遊雀悋気の独楽
・圓馬「ちりとてちん
ボンボンブラザーズ ジャグリング
・愛馬「女明烏」&踊り


馬ん次さん「芋俵」
馬ん次さんといい、吉馬さんといい、圓馬師匠のお弟子さんは二人とも心臓強そう(笑)。
ヤンキー風味?な二人が圓馬師匠を師匠に選んだというのもなんか面白いな。
まくらは押しが強めだったけど、落語は前座さんらしい素直な落語。楽しかった。

 

吉馬さん「寄合酒」
馬次さんよりもっとヤンキー風味が強まる感じだけど、前座の時よりキンキンした感じがなくなって、いい感じ。
与太郎が持ってくるのが味噌じゃないのは初めて聞いたな。


夢丸師匠「お血脈
最初から最後まですごく面白かった。
ギャグ多めだったけど、それが噺の世界の邪魔にならず、ひたすらおかしい。
血脈の印を盗みにやる泥棒の名前を挙げる時に、「この間芋俵に入った泥棒3人組」を挙げるのも大笑い。
石川五右衛門の決まり顔が、夢丸師匠のくっきりした顔だとほんとに漫画みたいで最高におかしい。
楽しかった~。初めてのお客さんが多かったけど、会場全体がぐわっと盛り上がったのがわかった。すごい。


寿輔師匠「地獄巡り」
客いじりは嫌いだけど、「お血脈」から「地獄巡り」の流れがたまらなく良くて、三途の川を渡っていくところや地獄の観光案内も、ふわふわしていてすごく楽しかった。
多分すごくデリケートな人なんだろうな。あれで客いじりがなければ最高なんだけどな…。
私の隣には毎日池袋に通ってきてる寿輔ファンの女性。寿輔師匠が出てくる前、口紅を塗りなおしていて、とても微笑ましかった。
寿輔師匠も下がるときに、ちらっとそちらを見て小さく頭を下げたのもかっこよかった。


真打昇進披露口上(夢丸師匠:司会、遊雀師匠、圓馬師匠、藍馬師匠、寿輔師匠、遊三師匠)
わーーー、夢丸師匠が司会!!嬉しい~。来てよかった!
多分とっても緊張されていたと思うんだけど、一人一人の紹介もその後の一言コメントも心がこもっていてユーモアがあって夢丸師匠らしくてとっても素敵だった。
遊雀師匠が意外にも緊張していて、ちゃんとやろうとしているのが微笑ましかった(笑)。後ろ幕を褒めた時に「藍馬だから藍色の…龍?」と言って「いや、馬です!」と夢丸師匠にすかさず言われていたのがおかしくておかしくて。
「だから口上、いやなんだよ!」と言ったのが、普段の余裕綽々の高座姿とはまた違っていて、とってもチャーミング。こういう時に人柄がにじみ出るなぁ。
遊雀師匠を紹介するときに夢丸師匠が「我々若手のあこがれの人」と言っていたのもよかったなぁ。

圓馬師匠は今日もとっても嬉しそう。はにかんだように微笑んでいる姿が素敵~。
米米CLUBに憧れてこの世界に入りました」「米丸米助の看板を米米と読み違えて」には客席がどっかん!とうけていた。

着物で主役より目立ってる寿輔師匠。3人真打になったけど一番いいのが藍馬。とべた褒めしたのを、夢丸師匠が「昨日は鯉斗が一番いいと言ってました」とフォローしたのも素敵だった。

遊三師匠はとにかく声が大きくて太くてすごい迫力。かっこよかった。


遊雀師匠「悋気の独楽
「だから口上はいやなんだよ~」「ほんとに緊張する」「ベテランの師匠方も口上は上がる前に稽古してる。落語の稽古はしないのに」「夢丸と直前までじゃんけんしてた(口上より司会の方がやりたかったらしい)」。
おかしい~。でも一部の隙もなく無難にやるよりずっといい。素敵だなと思った。

口上の憂さ(笑)を晴らすような弾けた高座。まさに自由自在。好き放題。
女中もお妾さんも色気が過剰ですごくおかしい。笑った笑った。


圓馬師匠「ちりとてちん
お世辞のいい男の「私、〇〇というものがこの世の中にあるということは知っていたのですが食べるのは初めてです」という繰り返しが、すごくおかしい。
腐った豆腐を口にした後の悶絶も思ってるより激しくて大笑い。
とっても弾けた高座で楽しかった。


藍馬師匠「女明烏」&踊り
長いまくら(落語家になったいきさつ、旦那さんとのなれそめ、テレビ取材が入ったときのこと、家に師匠が遊びに来たことなど)から「女明烏」。
明烏」を女の側の視点から描いたもの。
最初に出てくる「おばさん」は個性的で面白かった。藍馬師匠に合ってると思った。

第10回 夏丸谷中慕情

7/5(金)、coffee chi_zu2号店で行われた「第10回 夏丸谷中慕情」に行ってきた。


・夏丸「反魂香」
・夏丸「英会話」

~仲入り~
・夏丸「富士詣り」


夏丸師匠「反魂香」
ネタ出ししていた「反魂香」。これは先代の可楽師匠が得意にしていた噺で、当代の可楽師匠も持っていて…ほかにこれをやられる噺家さんはほとんどいないんじゃないか。
当代の可楽師匠、目が不自由なので昼席にしか出ないのだが、ある時珍しく浅草の夜席に出られていた。ちょうど時間も19時過ぎ。浅草だとお客さんが少し減る時間帯。いつもは「イスラム小噺」をやって下がる師匠がこの日は珍しく「反魂香」。先代の雰囲気そのままに外や客席の雰囲気ともマッチしてぞくぞくするような高座。うわ、これは教わりたい!と思ってお願いして稽古をつけていただいた。
浅草の高座では途中で師匠つまっちゃって「珍しいことはするもんじゃない」と嘆いて最後はいつものイスラム小噺で降りて行ったので、稽古の時もイスラム小噺に変わったらどうしようと思ったけど、最後まで教えていただけた。

…素敵な話。
そういえば私もこの噺一度だけ聞いたことがあったけど誰だったっけと調べたら可風師匠だった。可楽師匠のお弟子さん。
そして、夏丸師匠って普段は何考えてるかわからない…ふわっとした感じだけど、やっぱり落語が好きな噺家さんなんだなぁ、と思った。
だから珍しい噺をたくさん持っているんだな。
そして私はそういう噺家さんが好きなんだ。

「反魂香」、隣の坊主が反魂香を焚きながらお経を唱える場面は芝居がかっていて不気味。
それを見て「俺もやりたい!俺の女房も3年前に風邪をこじらせて亡くなってるから会いたい!その薬くれ!」と頼む隣の男。分けてくれないのでぷんすか!怒って、薬屋に買いに行って「反魂香」の名前が出てこなくて、「ほらあれだよあれ!これをくべて焚くと女が出てくるやつ!ほら!」。
なんですかあなた、店に飛び込んできてわけのわからないことを言って、目を血走らせて。
それから一つずつ看板の薬の名前を読み上げて「反魂丹(腹痛の薬)…それだ!」。
帰ってきて焚いても焚いても出てこないので量が少ないのかとどんどんくべるばかばかしさ。

すごく楽しかった。そしてこういう噺を気負いなくふわっとするところがすごくかっこいい。


夏丸師匠「英会話」
こういう昭和なしょうもない噺をほんとに楽しそうにするよね~(笑)。
またこの昭和風味が合ってるんだなぁ、夏丸師匠に。

毎日自分たちの嘘英語で喋っていて、結構流ちょうになってるばかばかしさ。
めちゃくちゃはじけた高座で生き生きしてる夏丸師匠がおかしかった。


夏丸師匠「富士詣り」
これもそんなによく聴く噺じゃないけど、楽しい~。「大山詣り」よりこっちの方が断然好きだなぁ。
山の神様がお怒りになってると聞いて次々自分の罪を告白する男たち。くだらなくておかしい~。
邪淫戒を破ったという男の話のおかしさったら。
湯屋を出たら、ほぼ同時に女湯から出てきた女がいて、それが前から好きだったおかみさん」
「お前、人のかみさんを好きになるなよ」
「だって人のかみさんっていうだけだよ。好きになったっていいじゃねぇか」
こんなやりとりも憎めなくておかしい。

3席全部楽しくてよかった~。

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SMALL GREAT THINGS :小さくても偉大なこと

 

([ひ]4-1)SMALL GREAT THINGS 上: 小さくても偉大なこと (ポプラ文庫)

([ひ]4-1)SMALL GREAT THINGS 上: 小さくても偉大なこと (ポプラ文庫)

 
([ひ]4-2)SMALL GREAT THINGS 下: 小さくても偉大なこと (ポプラ文庫)

([ひ]4-2)SMALL GREAT THINGS 下: 小さくても偉大なこと (ポプラ文庫)

 

 ★★★★★

「ジョディ・ピコーの最高傑作だ。読者は問いを突きつけられ……人種と偏見をめぐる文化的認識の幅を広げられるだろう」(ワシントン・ポスト紙)
「ある冤罪」を着せられて生活が一変した看護師のルースは、若手弁護士のケネディと立ち向かうが、彼女は大きな「嘘」を隠していた――。 

 久しぶりのジョディ・ピコー。
一時期出版されれば必ず読んでいた時期があったが、久しぶりの出版?懐かしい!という気持ちで手に取ったけど、かなり重い内容だった。

ルースは13年間同じ病院に勤めるベテランの看護師。受け持ったターク夫妻の乳児に触れるなと上司から言われ何事かと思えば、ターク夫妻は白人至上主義者で黒人に自分たちの赤ん坊に触れてほしくない、というのである。

怒りに駆られるルースだが、次の日赤ん坊の容体が急変し、彼女がその場にいたことから、殺人の容疑で逮捕されてしまう。

彼女の公費選定弁護人を買って出たのが、若手弁護士のケネディ。彼女はルースに寄り添い彼女の無罪を勝ち取るために自分の今までのキャリアや経験を懸けて弁護にあたろうとするのだが、ルースはなかなか彼女に心を許そうとしてくれず、二人の距離はなかなか縮まらない…。

白人の作家が人種問題を描くことはとても難しいことなのだろうと思う。反発も避けられないし、立場の違いはいかんともしがたいものがある。
それに真っ向から挑む作者の姿とルースの弁護人を買って出たケネディとが重なって見える。

自分は肌の色で差別をしたりはしない、レイシズムとは無縁だと言い切っていたケネディが、ルースの裁判を通して、白人である自分たちの受けてきた優位性に気づき、自分の中にもレイシズムがあることを認める場面には鳥肌がたった。私自身、ヘイトには嫌悪感しかないが、そんな自分もレイシズムとは無関係ではないのだ。
「無知もまた特権」という言葉は重い。

ストーリー的にはこの作者らしい無理な展開もあったけど(笑)、とにかく力のある凄い作品だった。

ファーストラヴ

 

ファーストラヴ

ファーストラヴ

 

 ★★★★

◆第159回直木賞受賞作◆

夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。
彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。
環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。
環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。
なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?
臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。
そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは?
「家族」という名の迷宮を描く長編小説。

 島本さんの小説には性的虐待や淡い想いを抱いていた人からのレイプが描かれることがあったので、そういう意味でこれはそういう問題に真正面から向き合った作品なのだと思う。

父親を刺殺したとして逮捕された環菜だけでなく、主人公の臨床心理士・由紀自身も秘密を抱えているようで読んでいて不安にかられたが、最後まで読んで少しほっとした。

それにしてもここに出てくる父親や母親の気味の悪いことよ…。子どもを守るべき親が子供をずたずたに傷つけるような行為を強いることにも怒りを感じるが、それを見て見ぬふりされたり「それぐらいのこと」と母親に断罪されるのは、実際にされた行為と同じくらい辛いことだ。

彼女が自分の言葉で語り始めたこと。ちゃんとその言葉を受け止める気持ちのある大人に出会えたことにほんの少しの希望を感じる。

さん助ドッポ

6/30(日)、さん助ドッポに行ってきた。

・さん助 ご挨拶
・さん助 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第二十九回「熊吉の亡霊」
~仲入り~
・さん助「京見物」
・さん助「麻のれん」


さん助師匠 ご挨拶
私は、当たり前のことを当たり前に聞いてしまうところがあります、とさん助師匠。
頭痛が続いていて…という話をしている人に向かって「頭痛って辛いんですか?」と聞いてしまったり(頭痛がつらいっていう話をしているんだから辛いに決まってる…)、この間は楽屋で小燕枝師匠と圓丈師匠と一緒になりまして…お二方とも楽屋でぱーぱー話すタイプの師匠じゃないんですが…。我々の着る着物は春、夏、秋、冬といろいろ種類がありまして、中に「綿入れ」というのがあって今では着る人はまずいないです。五代目小さん師匠は季節ごとにきっちりと着物を替える方で、冬には綿入れを着ていらしたという話を小燕枝師匠がされていまして。「らくだ」なんていう長講を綿入れを着て1時間弱やっても汗一つかいてなかったそうです。普通「らくだ」をやるとたいていの噺家は汗だくになるものなんですが。
それ、すごいいい話じゃないですか。私それを聞いて思わず「あの…綿入れって暑いんですか」って聞いちゃったんです。そうしたら小燕枝師匠が一瞬「うっ」って詰まって…その後に「うん…暑いよ」。
そうしたらそれまで黙っていた圓丈師匠が「綿が入ってるからね」。

…ぶわはははは!!最高だな、その話。まるで落語だ。ほんと、面白いわ、さん助師匠って。


さん助師匠 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第二十九回「熊吉の亡霊」
ついに御用となった義松。
親分の平三を始め、その手下の者もみな牢に入れられてしまう。
しばらくお裁きもなく放っておかれたが、何か月か後についにお裁きとなり、義松は今までの悪事が露見して極悪人としての扱いを受ける。籠の中に入れられ糞尿もそこでしなければならない。見せしめの意味もあるのでその状態で町中を引きずり回される。
江戸からは「その者は極悪人のため決して逃がすことのないように。早く引き渡してもらいたい」とのお達し。

義松が連れてこられるという噂が流れると町の人々は極悪人を一目見ようと街道に集まってくる。
その中で「これから通るのはなんという者ですか」と尋ねた旅の男。「八艘飛びの義松」と聞いて顔色を変える。
そのうち義松を入れた籠がやってきて、一目見ようと人々は群がる。その姿を見てはっとした旅の男、その気配に反応する義松。

その晩は大雨に雷。見張りの者たちが雷に怖気づいて中に入ってしまうと、牢に入ってきた男。真っ暗闇の中「親分。義松親分」と声をかける。義松がだれかと尋ねるとこれが木更津で自分の子分になった鷲の三蔵。籠を匕首で引き裂いて義松を出してやる。
長いこと閉じ込められていた義松は糞尿にまみれ一人で歩くこともできない。そんな義松を背負い雨の中駆け出す三蔵。
二人は一軒のあばら家を見つけそこにいた老人に一晩泊まらせてくれと頼むと、老人は何も聞かずに二人を中に入れ雑炊をふるまってくれる。
囲炉裏の脇で眠ればいいと言って老人が部屋に引っ込むと、二人はそれまでの出来事を語り合う。

三蔵は今まで自分の体についた垢を落とそうと思っていると言い、「俺たちの体についた垢が落ちるなんてことがあるか」と笑うのだが、三蔵はそれができるのだ、と言う。
慶喜公は次郎長親分を自分の用心棒にして他にも信頼できるやくざ者を300名集めようとしている。自分はその300名の中に選ばれた。今まで悪いことばかりしてきたが今度は次郎長のもとに行って働こうと思っている、と。
そして自分がそういうふうになれたのは義松のおかげ。木更津の海に落ちた時、これで命は尽きたかと思ったが義松は自分を助け出してくれた。その恩義は忘れない、と言う。
それを聞いて義松は喜ぶが今の自分は一人で歩くこともままならないから足手まといになってしまう。まずはお前が一人で行って、後から自分も追いつくから、と言う。
三蔵はそれならばと闇の中飛び出していく。
一人残った義松がなかなか寝付けずにいると、部屋から老人が出てきて「私の昔話を聞いてくれるか」と言う。

老人は自分の名前は熊蔵といい、自分には熊吉という息子がいた、と語る。
熊吉は子供のころから悪くて、大人になってからは旅商人の魚屋になったがそれは表向きの商売で裏では人買いをしていた。
熊吉は女だけではなく男も好み、そのために命を落としたのだ、と聞いて「それはいったいどういうことで?」と聞くと、土手である男と色事に及びその男に殺された、と。
倅は悪党だったがそれでも自分の子どもには違いない。なぜ命を落とすことになったのかと悔しくて仕方ないのだが、噂では熊吉を殺したのは義松という男…。
そこまで言われて義松が老人の顔をまじまじと見るとなんと老人ではなく熊吉本人。
義松が匕首で熊吉に襲い掛かろうとすると「一度殺した俺をもう一度殺すのか」と熊吉。
すると後ろのふすまがすすすーっと開いて、中から今まで義松が殺した人たちが出てくる。
義松が必死になって匕首を振り回しはっと気づくと、そこには老人が血だらけになって倒れていた。老人は義松に布団をかけてやろうとやってきたところだった…。

…うおおお。なんとまたこれはすごい展開に。
三蔵が義松を助けるくだりでは、はぁ?義松が親分らしいことなんかしてやったことがあった?なんだその命の恩人エピソード。聞いてねぇよ。(聞いたかもしれないけど忘れてるよ!)
次郎長のもとに行っていまさら「いいやくざ」として生まれ変わろうなんてそんな都合のいい話があるかよ!とムカムカ。
でも熊吉の幽霊が現れたところは、そうだよねそうだよねやっぱりそのまま赦されるわけないよね、こういう展開になるわよね!と、ぞくぞくっ。
ふすまが開いて今まで殺した人たちがわら~っと出てきたところでは思わずゲラゲラ笑ってしまった。なんかゾンビ映画みたいで怖いというよりおかしくなっちゃって。

そしてやっぱり義松を泊めると殺される、のジンクスは今回も。


さん助師匠「京見物」
ネタだししている「麻のれん」は扇橋師匠に教わりました、とさん助師匠。
扇橋師匠と言えば雲の上の存在ですけれど、気軽に噺を教えてくださる師匠で、扇橋師匠しかもっていない噺もたくさんあったので若手はこぞって教わりに行っていました。
稽古に伺う時はお礼に何か持っていくんですが、扇橋師匠は甘党でしたので、デパートでは売ってないお店の栗饅頭を持っていきました。
そうしたらその晩…11時頃に携帯に知らない番号から電話が。出られなかったのですが留守電が入っていたので聞いてみると「扇橋です」と一言言って切れた!
うわ、これは私はなにかしくじったんだ!と思いまして。扇橋師匠をしくじるなんてもう噺家ではいられない。師匠に言いに行かなくちゃとか、私の噺家人生もこれで終わりか、と絶望。折り返しかけようと思ってももう11時15分ぐらいですからそれも失礼だろうと思うとかけることもできない。
すると11時半にまたかかってきたんです、扇橋師匠から。
慌てて出ると「あ、扇橋です。さん弥くん、今日持ってきてくれた栗饅頭とってもおいしかったよ。じゃあね」。

…ぶわはははは!!すてきーーー。なにその素敵エピソード。素晴らしすぎる。いいなぁ…扇橋師匠からそんな電話。泣けるー。

それから、「私も時々稽古をつけてください」と頼まれることがあります、と。
この間も稽古を頼まれましてしどろもどろで教えたんですが、お礼ですと渡されたのがハーブティでして。それも代官山とかそういうところにしか売ってないようなやつ…。
おしゃれ女子かよ!私はいったいどういうふうに見られてるんでしょうか。
私もいつか栗饅頭をお礼にもらえるようになりたいです。その時に稽古をつけた噺です、と「京見物」。

おおっ、これ前に末廣亭で聞いたことがある。
江戸っ子二人が京都見物。疲れたもう歩けない足に豆ができたと嘆く男に、豆なんかつぶしちまえ!ともう一人の男。
お前なんでそんなひどいこと言うの?この豆は江戸を出る時に友達に見送ってもらってそこからえっちらおっちら歩いて箱根の山を越えたところでできた豆。そこからずっと一緒に歩いてきた。豆にも京見物をさせてやりてぇじゃねぇか。
京都の名物は女なんだよ、京女っていうのは水がいいから美人が多いんだ、と言われると「え?なに?女?」と目を血走らせる。
どこにいるの?京女は?どこどこ?
ほら、あそこに女がいるじゃないか。
え?あれも京女?おばさんだよ?
湯に入りてぇからあのおばさんに湯の場所を聞いてこいと言われて行くのだが「〇〇どすえ」と言われると「どすで刺すと言ってる!」と怖がって戻ってくる。
そんなことないからちゃんと聞いてこい、江戸弁が通じなかったらしぐさでやってこいと言われて、お風呂を表すしぐさがたどたどしくてめちゃくちゃおかしい!
おばさんに何か言われてそのたびに異様に怖がったり過剰な反応をするのがほんとに面白い。ばかだなー。

それからゆずを湯と聞き間違えて八百屋の前で素っ裸になる二人。
まぁ最初から最後までにぎやかでばかばかしくて楽しかった~。


さん助師匠「麻のれん」
意地っ張りで助けてもらうのを嫌がる按摩の杢市。
療治のあとに旦那から泊っていけと何度も言われるのだが、そのたびに断る。
直しを井戸に冷やしてきたのを寝る前に飲むのを楽しみにしていると言うので、旦那がだったらうちでも直しをご馳走しようと言うと、ようやく泊まると言う。
直しを飲んで枝豆を食べて、奥の八畳に蚊帳を釣っておいたと言われ部屋に入るのだが、麻ののれんを蚊帳と間違えて蚊帳の外で寝てしまって蚊に刺されてしまう。
それから何日か経った後また療治に来た杢市。今度は雷が鳴っているので自分から「泊めてください」と言う。
女中が今度は間違えないようにとのれんを外しておいたために…。

意地っ張りな按摩の杢市がとてもらしくて無理がない。なんかほんとに不思議な人だなぁ、さん助師匠って。ふわっとその人になってるんだな。
でも枝豆を食べるのが下手(笑)。なのにお酒飲むのはすごい上手。お酒の好きさと意地汚さが自然に出てる。

面白かったなぁ。のんびりとした落語の世界、よかった。

 

上方講談を聞く会~東京・八王子公演~

6/30(日)、カサデホールで行われた「上方講談を聞く会~東京・八王子公演~」に行ってきた。
貞寿先生の真打披露興行で一度だけ見た南左衛門先生。やわらかいユーモラスな語りとビシッとかっこいいところの緩急がたまらない。とにかくすごいかっこいいんだ。
もう一度見たい、追いかけたいと思いつつ、なかなか東京で会がなくて大阪に行くしかないのかなぁと思っていたら、こんな会を発見。twitterでつぶやいてくれた犬の人よ、ありがとう。


左文字「細川の福の神」
南左衛門「寛政力士伝・雷電の初相撲」
~仲入り~
左文字「難波戦記・般若寺の焼打ち」
南左衛門「赤穂義士外伝・天野屋利兵衛」


左文字さん「細川の福の神」
南左衛門先生のお弟子さんらしい。己書と二足の草鞋、とのこと。
八王子にちなんだ話ということで「細川の福の神」。
ある雪の日に細川のお城の下を松飾り売りが通る。その声を聞いたお殿様が「雪の中大変だろうから買ってやれ」と家来に命じる。
家来が松飾売りに声をかけると「ありがとうございます」と言うものの「細川のお殿様は貧乏だと聞きますけどちゃんとお金を払ってくれるのか」とかなり失礼な物言い。
むっとした家来がお殿様にそのことを告げに行くと大笑いしたお殿様が小判二枚を渡す。
もらった松飾売りは喜んで「私の作る松飾は福を呼び込むからお殿様は出世されますよ」と言って帰っていく。
その言葉通りに肥後熊本の大名に出世したお殿様は、その松飾売りが八王子から来たという言葉を頼りに家来に探しに行かさせる。
江戸のお城に呼ばれて褒美をもらいご馳走された松飾売り。細川のお殿様の松飾はこれから毎年私が作ります!ますますお家は出世しますよ、と言う。

…面白い話だなぁ。酔いつぶれて朝目が覚めた松飾売りが金ぴかの部屋を見渡して「ああ、死んでしまって仏壇の中に入ってしまった」と嘆くのがすごくおかしかった。

 

南左衛門先生「寛政力士伝・雷電の初相撲」
最近の講談事情について。松之丞くんが売れてテレビに出るようになったおかげで講談の認知度が以前より上がった。松之丞くんとは何年か前に師匠の松鯉先生と私の弟子とで親子会を国立でやったことがある。その時は怪談話をかけるということで4人がみんな陰惨な話を。入場したときは意気揚々と元気だったお客様が帰るときはがっくり肩を落とし生気を吸い取られたようになったあの会…(笑)。あの時はまだそんなに売れてはなかったんですよ、松之丞くん。だから私も先輩風を吹かせて「今度大阪で呼ぶからその時は来てくれ」なんて言ったりして。
それがもうすっかり売れっ子になって電話してもつながったためしがない。いったいどこに電話をすればつかまるのか。師匠の松鯉先生に聞いても「わからない」。
で、この間は名古屋で講談の会がありまして。駅前のホールで毎年やってるんですが、たいていいつもは30名ぐらいのお客様なのにその日はホールが満員御礼。いったい何事かと思ったらその1か月前に松之丞くんが会をやったらしいんですね、同じホールで。それがもう発売と同時に完売。それで会に漏れた方たちが、「あらなに?せっかく講談って聞いてみようと思ったのにチケット買えないの?」ってなって、その時にホールにたまたま私どもの会のポスターが貼ってあったもので「あら、ここにも講談の会がある。じゃ行ってみようかしら」ということになって押し寄せてくださったんですね。あれは…得しちゃった!

…わはははは。そうなんだ、この先生、まくらもとっても楽しいの!

そんなまくらから「寛政力士伝・雷電の初相撲」。
雷電が最初に入門志願に行った部屋で「修行中は兄弟子の金〇を風呂で洗ってもらう」と言われて「そんなことできるか!」と怒って帰ってきて、それを聞いた宿屋の主人が「だったら谷風のところに行ってみろ」と勧める。
谷風は雷電の話を聞いて大笑いし「うちでは3年なんてもんじゃない。10年洗うはめになるかもしれないぞ」と脅す。それがいやだったら一生懸命相撲の稽古をして出世しなくちゃならない、と。
雷電の体をあらためた谷風はその見事な骨格と筋肉にびっくりする。これは一流の力士になるかもしれない、と。

次の日から稽古が始まったが、ぶつかり稽古をするとぶつかられた兄弟子がみな吹き飛ばされてしまう。(このぶつかって吹き飛ばされる繰り返しがめちゃくちゃおかしい!)
それで雷電の稽古は谷風が自ら行うことに。
そしていよいよ雷電初土俵。こんな化け物みたいな力士に最初から勝ち続けられたらたまらないと相手は相撲が上手いと評判の力士。
相手は右が強いから右を取られないように脇を閉めろと谷風はアドバイス
土俵に上がると相手の力士への声しかかからず、ぼーっとする雷電。それを見た客が「雷電!」と声をかけると「なんだね?」と答える雷電。土俵から力士がしゃべりかけてはならないと注意されるのだが「いやでもわしのことを呼んでるから」。
「そうじゃないあれはお前を応援する声だ」と言われて「これがわしの初土俵。おらのことを知ってるやつがいるわけないべ。あれは何かおらに用事があるだ」。
客の掛け声にそうやって応じているうちにぼーっとしていた雷電の気持ちが落ち着いてくる。

そうしていよいよ「はっけよい」の声がかかる。雷電は谷風の忠告とは逆に腕を振り上げて腋が大きくあく。相手はあまりのことに一瞬ひるむが、待ってましたと手を入れると、そこへ雷電が張り手!グローブのような大きな手で思い切り張り手をしたもので相手はそのまま気を失って倒れ次の日には亡くなってしまう。

それで雷電の張り手は禁じ手となり、その後も次々技を禁じられながらも、大活躍をする…という話。

ユーモアたっぷりで笑いどころが多くて楽しかった~。

 

南左衛門先生「赤穂義士外伝・天野屋利兵衛」
これは前に聞いたことがある話。
蔵之助の討ち入りのための武器調達を引きうけた天野屋利兵衛。
妻と離縁し独り身になり秘密裏に忍び道具を用意する。飲んだくれの職人を騙して御法度の武器を作らせるがそこから足が出て捕まってしまう。
幕府への謀反を疑う奉行は毎日利兵衛を拷問するが、口を割ろうとしない。
そこで最後の手段で利兵衛の七歳になる息子を連れてきて、利兵衛の前で拷問する。利兵衛は「自分がされるより辛い」と言いながらも「忠義を誓った方の名前を明かすわけにはいかない。天野屋利兵衛は男でござります」と言う。
息子を連れ去られた女房が半狂乱になってやってきてすべてを告白しだすが、それを聞いた奉行は「この女は気が違っているようだ」と言って最後まで語らせない。
事情を察した奉行はそれ以後利兵衛の取り調べは行わず、討ち入りの後に話を聞き、ごく軽い刑を科すだけに留める。

息子を拷問しようとする場面の迫力が一席目とは打って変わった緊張感。
南左衛門先生が本当に一瞬拷問を受けてげっそりやつれたように見えた。人相もかわるくらいの迫力。 か、かっこよかった…。

 

 

檀 (新潮文庫)

檀 (新潮文庫)

 

 ★★★★★

愛人との暮しを綴って逝った檀一雄。その17回忌も過ぎた頃、妻である私のもとを訪ねる人があった。その方に私は、私の見てきた檀のことをぽつぽつと語り始めた。けれど、それを切掛けに初めて遺作『火宅の人』を通読した私は、作中で描かれた自分の姿に、思わず胸の中で声を上げた。「それは違います、そんなことを思っていたのですか」と――。「作家の妻」30年の愛の痛みと真実。 

「火宅の人」を読んで、妻の側からの物語も読んでみたいと思ったら本当にあったのだった。

妻ヨソ子さんが檀一雄が亡くなって17年経ってから檀一雄のことや結婚生活について語るという内容。
ノンフィクションといっても語る人の想いや作者の解釈が入ることは否めないから、これも小説としてよむべきなのかもしれない。

「火宅の人」を読んでよくここまで書ききったなと思ったが、最終章を病院で口述筆記したとは。作家としての覚悟や生きざまを見せつけられた思いだ。

あれだけのことをされても離婚しなかった理由。「事を起こした」という言葉を聞いて感じた怒りと清々しさ。

ヨソ子さんも天晴れな作家の妻だったのだなと思う。めそめそしていないところがいいなぁ。

「火宅の人」の小説の世界がそのまま続いているような雰囲気で、物語の世界を全く壊してなくて素晴らしかった。

赤坂雲助の会

6/29(土)、赤坂会館で行われた「赤坂雲助の会」に行ってきた。
50人でいっぱいになる小さな会場で雲助師匠を聞けるという贅沢な会。赤坂の雲助師匠の会に行ったときに先行でチケットを売り出していて「ラッキー」と買ったのだが、先行で売り切れてしまうという人気ぶり。すごい。

・市若「平林」
・馬太郎「笠碁」
・雲助「お化け長屋」
~仲入り~
・雲助「干物箱」


馬太郎さん「笠碁」
雲助師匠の会に出させていただくというのは本当に光栄なこと。邪魔にならないようにさらっとやって…と思っていたら楽屋で雲助師匠に「たっぷりやらなきゃ!」と言われてしまい…計画が狂いました…。
そんなまくらからなんと「笠碁」。二ツ目になったばかりで「笠碁」はちょっと背伸び?と思ったんだけど、ゆったりした口調と上品で丁寧な話しぶりが意外にもしっくり。時々、ああ…師匠譲りだなぁと思うようなところもあって微笑ましい。
馬太郎さんはきれいで丁寧な落語をするイメージが強いんだけど、どこかちょっと変なところがあってそこがすごくおかしい。面白かった!


雲助師匠「お化け長屋」
昼の1時なんて噺家にとったらまだ朝みたいなもん。頭も体もまだ目覚めていない。私の方もぼーっとしているのでお客様にもぼーっと聞いていただきたい。
昔の木馬亭の昼席なんて行くと客は10人もいない。それも全員がじじい。空いてるからと思って座ろうとすると「そこは〇〇さんが来るからだめ!」なんて怒られる。
で、おじいさんたちはいかにもだるそうに寝っ転がってたり、腕をこんな風に伸ばしてどこが痛いのか嫌そう~な顔でぼーっとしてる。でも終わると拍手をしたりして「あ、なんだ、聞いてるのか」。

そんなまくらから「お化け長屋」。
一人目の男に向かって木兵衛さんが語る怪談話。茶目っ気たっぷりでおどろおどろしいんだけど全然怖くない(笑)。
二人目の男はいちいちなんだかんだと話の腰を折るんだけどその時に「ふんが!」と鼻を鳴らすのがすごくばかばかしくておかしい。
笑った笑った。めちゃくちゃ楽しい「お化け長屋」だった。


雲助師匠「干物箱」
ふわふわした若旦那、頭のかたい大旦那、間の抜けてる善公、3人の人物像がくっきり。
湯屋に行ってもいいと言われて浮かれ気味に家を出た若旦那、途中で会うのが太鼓医者。ああだこうだと軽口をたたいて、身代わりがほしいという若旦那に「だったら若旦那の声真似の上手な善公に身代わりをさせればいい」とアドバイス。アドバイス代もきっちり請求(笑)。

あなたのためなら命もいらないと言う善公だけど身代わりは嫌がる。大旦那にこれ以上嫌われたくないし、万が一見つかったらあの大旦那は腕に覚えがあるからしめられちゃう!と。
それでもお金と羽織に釣られて若旦那の部屋へ。
部屋に入ると布団や本や持ち物に感心して、酒の支度もできてる、ありがてぇ!と飲み始めると、すぐに気が抜けて俥屋の真似を始めて、下の大旦那に声をかけられてしまう。

雲助師匠が本当に楽しそうで、最初から最後までこちらもにこにこ。楽しかった!

さようなら、ビタミン

 

さようなら、ビタミン

さようなら、ビタミン

 

 ★★

婚約者に去られた30歳のルースは、仕事を辞めてアルツハイマー病の父親の介護を手伝うことに。辛い現実を軽やかなタッチで描き、全米の話題をさらった日記形式の家族小説。 

大学教授の父親がアルツハイマーにかかり、母から自宅に呼び戻された娘。
父の病状を目の当たりにしショックを受けながらも、周りの人の助けを借りて日々をできるだけ楽しく過ごそうとするうちに彼女自身も成長していく。

なんとなく生ぬるい感じを受けてしまうのは私の心が汚れているせいだろうか…。
読んでいるときはそれなりに楽しんだけど、正直あまり心に残るものはなかったかな。

柳家蝠丸独演会 『いつのまにやら』第二回

6/28(金)、道楽亭で行われた「柳家蝠丸独演会 『いつのまにやら』第二回」に行ってきた。


・ふくびき「初天神~凧あげまで」
・蝠丸「ふたなり
~仲入り~
・蝠丸「応挙の幽霊」

 

蝠丸師匠「ふたなり
私は落語がとっても大好きなんです、と蝠丸師匠。
落語家なんだから落語は好きで当たり前だろ!とおっしゃるかもしれませんが、これが意外にそうでもないんです。落語に興味のない落語家って案外多いんです。
その点私は大の落語好きで、小学生の頃から落語を聞いたり本を読むのが好きでした。
だから噺家になって何がつらいって客席から落語を聞けないこと。もうほんとに客席で聞きたい。みなさんが羨ましくってしょうがない。ですから私の夢はいつか噺家をやめて客席に回ってきくことです。いつになるかわからないですけど、そちらに行きますから。その時は…仲良くしてください。
中学の時、自習の時間に読んでいたのが柳家つばめの「お色気落語の研究」。タイトルからもわかるように色っぽい噺やえげつない小咄を集めたもので、読んでいて思わず吹き出したりして先生に見つかって本を取り上げられちゃいました。
その後先生が教壇で本を読み始めたんですけど、時々ふふっと笑ってるのが見えまして…放課後になって返してもらえたんですけど「もっとすごいやつを持ってこい」って言われましたね。

それから高校に入ってからは落語好きが高じて落語研究会を作りました。あの時代に宮城の高校で落語研究会ですよ。かなり先進的だったんじゃないでしょうか。
問題は私のあとに入ってくる部員がいなかったことでして。しかも私はほかにもいろんな部活を掛け持ちしてたんです。フォークソング、テニス、など…。

フォークソングと言えば…私が若いころに流行っていたのがいわゆる和製ロックってやつでして。外国の歌の歌詞を日本語にして歌うんですよ。字余りになっておかしいんですけど、これがなぜか大流行しまして。まぁいまも寄席で時々「ルイジアナママ」なんて歌ってる変な噺家もいますけどね。歌いだすと前座が飛び出して行って踊ったりね…妙にキラキラした衣装を着たやつが出てきたり…。
それから次に流行ったのがフォーク。フォークの祖と言えば岡本信康。この人の作る曲はとにかく暗かった。きたねぇかっこしてね、髪の毛伸ばして、くらーい顔して歌うんです。「今日の仕事はつらかったぁ~♪」。
これね、私も高座が全然うけなかった帰り道、思わず歌ってますね。「今日の高座はつらかったぁ~」。
それから吉田拓郎とかね。あれも最初は暗かった。変わったのは「結婚しようよ」を出したくらいからですかね。それからユーミンが出てきてね。これはもう全然汚くなくてきれいで明るくておしゃれで…。
ってあれ、なんの話でしたっけ。

…もうまくらが楽しくて楽しくてずっと聞いていたい!
そして「今日は何をやろうかなぁと決めないで来ていていまだに決まらないんですが…でもずっとこれ(まくら)やってるわけにもいかないからね。そろそろ決めないとね。なんとなく今日のお客様は…めったにやらないような珍しい噺がいいかな、と思うのでね」と言いながら「ふたなり」。
うおおお!私も前に末廣亭で一度聞いただけだ。

なんでも安請け合いしちゃうかめじいさん。
村の若者二人が5両の借金で村を出ると聞くと、「おれに任せておけ」と安請け合い。
不気味な森を通らないといけないから提灯を持っていくように言われても「たいしたことない」と断ってしまう。

でもいざ森まで来ると「わしは実は怖がりなんだ」とびくびく。
森の中で会った女が死ぬつもりだと聞いて一生懸命止めるが、自分が死んだあと実家に書置きを届けてくれたら5両を差し上げます、と言われると「そっか。じゃおめぇさん、死んだ方がいいな」。

ブラックな噺だけど、蝠丸師匠の淡々とした語りだと、昔話を聞いているようでひたすらにおかしい。
楽しかった~。


蝠丸師匠「応挙の幽霊」
なんでも鑑定団のまくらから「応挙の幽霊」。
大好きな噺を大好きな師匠で聞ける幸せ。
幽霊が色っぽくて品があるけど、すごい飲みたがりなのがおかしい。道具屋の主人も気が良くて軽くて湿っぽいところは一切ない。
「あなた結構いける口だね」
「ええ。幽霊仲間ともよく飲むんです。お菊さんやお露さんと時々は集まって」
「幽霊の女子会ですか」
なんていうばかばかしいくすぐりもたくさんあって笑った笑った。
楽しかった~。

とめどなく囁く

 

とめどなく囁く

とめどなく囁く

 

 ★★★★★

塩崎早樹は、相模湾を望む超高級分譲地「母衣山庭園住宅」の瀟洒な邸宅で、歳の離れた資産家の夫と暮らす。前妻を突然の病気で、前夫を海難事故で、互いに配偶者を亡くした者同士の再婚生活には、悔恨と愛情が入り混じる。そんなある日、早樹の携帯が鳴った。もう縁遠くなったはずの、前夫の母親からだった。 

面白かった!夢中になって読んで、後半は読み始めたら眠れなくなって結局1時半過ぎまでかかって読み終えた。

展開も読めなかったし、なによりも主人公・早樹の心の動きがリアルで彼女の息遣いに耳をすませるようにドキドキしながら読んだ。

自分自身のことだってよくわからないのだから友だちや家族、夫、またその家族のことがわからないのも無理はないのかもしれない。
心が通い合っていたと思っていても見えていないことってあるんだな。

それにしても信頼や愛情、安定した生活のうつろいやすさよ。

結局、起こした事件そのものよりも、人の心がミステリーなのだなぁ…。