第三回 柳家さん助の楽屋半帖
7/8(月)、駒込落語会で行われた「第三回 柳家さん助の楽屋半帖」に行ってきた。
・さん助「ちりとてちん」
・さん助「ろくろ首」
~仲入り~
・さん助「胴斬り」
・さん助「迷子パンダの夏(三題噺「迷子」「蓮の花」「ほおずき市」)
さん助師匠「ちりとてちん」
旦那が「お料理が余ったから金さんを呼んできておくれ。あの人はお世辞がいい人だから」と女中のお清さんに言うと、お清さんは「金さんはお世辞が下手です」。
え?と聞き返すと「金さん、私のことをきれいだきれいだって。お世辞、下手です」。
…ぶわははは。見たまま言ってます、と言いたいのか、お清さんよ。
そしてお世辞のうまい男、金さんがなんか変なのも、さん助師匠らしい。
「灘の生一本!私そういうものがあるということは知っておりましたけど、口にするのは初めてです」と言うわりに、蘊蓄を語らずにはいられない。決して偉そうではないんだけど、ついつい出ちゃう風なのがおかしい。
「口にするのは初めて」と言われた旦那が「そうなのかい?」とまんざらもなさそうなのが、かわいい。
一方のろくさんは生意気なことばかり言うわりに、案外美味しそうに食べるのが面白い。
「ちりとてちん」を口にした時の、ぷーーっとふくれた顔が「シナの五人兄弟」の海の水を飲みほした男みたい。ちょっと笑った顔みたいになるのもばかばかしくて好きだな。
面白かった。
さん助師匠「ろくろ首」
この会に一回目から来てくださってるお客様はまさに決死隊。どんどん脱落して行って最後は私一人になるかもしれません…。自分でお題を出して誰も聞いてないところで一人で喋って終わる。ある意味理想でしょうか。
そういえば…小沢昭一さんという名優がいましたけど、私はあの人のラジオ番組「小沢昭一的こころ」が大好きでした。
毎回楽しみに聞いていて…当時私は中学生だったんですが…学校があって生では聞けなかったのでラジカセの録音機能で録音して聞いてました。
私が育ったのは茨城の片田舎でしたが、ある時小沢さんのお芝居を近くでやったことがあって、それは見に行きました。
その時私本当に大ファンだったのでどうしてもサインが欲しくてですね…終わった後、楽屋口まで行って…そこには警備員がいて追い返されそうになったんですけど、どうしてもどうしてもサインが欲しいんですと色紙を渡したら、警備員さんが持って行ってくれて、サインをいただくことができました。
あれは本当に嬉しかった。部屋に飾って…宝物でした。
そうしたら…私大学の時に東京に出て来たんですけど。私の部屋はそのまま物置きになってたんですが、ある時帰省したら壁に飾っていてサインがないんです。親に聞いたら「もういらないだろうと思って捨てた」と言われまして…あれはほんとにショックでした。なんで捨てるんだ?と思って。
前座の時に、小三治師匠の芝居で小沢昭一さんが10日間出たことがあって…あの時はもうほんとに興奮しました。大ファンですと声をかけてもう一度サインをもらいたかった。でも素人でもなく前座の分際でそんなこと…どうにか思いとどまりました。
で、なんで小沢昭一さんの話をしたかっていうと、小沢さんがラジオで「一番の贅沢は、大きなホールを借りて観客が1人もない状態で一人芝居をすることだ」と言っていて…さきほどの私の「お客さんが誰もいない中、自分で題を出して一人で落語をやって」と同じだな、と。
いや、全然会場の規模も違いますし。お客さんが1人も来ないのは困るんですが。
…ぶわははは!
中学生で小沢一郎ファン!渋っ!中学生の頃からさん助師匠はさん助師匠だったんだな。面白-い。
そしてサインの話。なんとなくわかる気がするなぁ。親が真っ先に棄てたくなるものかも。壁に飾ってあるサインやポスターって。もういらないやろ!みたいに。私も気を付けよう…。
そんなまくらから「ろくろ首」。
さん助師匠の「ろくろ首」久しぶり!ずっと聞きたいと思っていたから嬉しい。今年の夏はたくさんかけてくれるといいな。
おじさんに「お嫁さんがほしい」となかなか言い出せず、同じことを何度も繰り返す与太郎さん。
「あたいは今年25歳。兄貴は32歳。兄貴にはおかみさんがいてそれがいーーい女。子どももいる。それにひきかえあたいはお袋と二人暮らし。お袋は62歳。しわだらけ。しわしわ。しょわしょわの炭酸ばばぁ」。
このしわしわがしょわしょわーになって炭酸ババァになるの…すごいバカバカしくておかしい。
「およめさんがほしい」をもにょもにょ言っておじさんに何度も促されて「お嫁さんがほしーーい!お嫁さん!お嫁さんがほしーーーい!」の大声も、「わかったわかった。そんな大きな声を出すな」と言われて今度は小さいけどはっきりした声で「お嫁さんがほしい」。
真に迫っていて笑ってしまう。
お見合いでお庭を通るお嬢さんを見て「いい女だなぁ!!」とほんとに嬉しそうなのも、その晩眠れずに寝ているお嬢さんをうっとりと見つめるのもおかしい。
そこでお嬢さんの首が伸びるところ…ほんとに目が点になってゆっくり目線を動かすのが…ほんとにお嬢さんの首が伸びるのが見えてくるようで結構怖い。
いいなぁ。さん助師匠の「ろくろ首」。すごく好きだ。
さん助師匠「胴斬り」「迷子パンダの夏(三題噺「迷子」「蓮の花」「ほおずき市」)
おお、「胴斬り」も久しぶりだ!
胴斬りにあったのに、「お前がフラフラしてるからいけないんだ」と普段の生活に苦言を呈されたり、「これからはちゃんと働かなきゃいけねぇ」と説教されるの、おかしいなぁ。
兄貴分もおかみさんもそんなに驚かないんだよな(笑)。
上半身の方が下半身を「血肉を分けた弟」と言うのもおかしいし、下半身が2日前から喋られるようになったのもおかしい。
そしてあの指でやるこんにゃく踏んでるしぐさがたまらなくバカバカしくておかしい。
で、サゲを言った後に急に「胴斬りにはもう一つサゲがありまして…あんまり女湯の方を見ないようにしてください。どちらがいいかはお客様に選んでいただくということで…。ひとみさんはどっちがいいですか?」
「どっちがいいじゃないわよーーーー!」
…また落語からの流れで三題噺に入った!
しかもひとみさんって…前回出て来たソープランド太閤のひとみさん!
「このネタを今度の会のトリでやろうと思ってまして」
「胴斬りはトリでやるようなネタじゃないでしょ?!ほかにはないの?」
「ええと…文七と芝浜を…」
「聞きたくない!!」
「じゃひとみさん、また次回も稽古よろしくお願いします」
その後、ひとみさんが仕事仲間(わはは)と会話。
「今の落語家?」
「そう。柳家さん助っていう売れない噺家。最近会の前には私のところに稽古に来るようになっちゃって」
それからそれぞれソープ嬢がどうやって職場(太閤)に来てるかの話になり、軽トラだったり3トントラックだったり…。
するとそこに電話。相手は陸上自衛隊。しかもひとみさんのお客さん。
なんでも上野動物園でシャンシャンが暴れている、と。シャンシャンを落ち着かせるにはなぜかいちご大福を口移しであげなければならない。それができるのはひとみさんだけ。
そして暴れるシャンシャンが…巨大化して完全にゴジラみたいになっていて…かわいらしさもパンダ感もゼロ!なんだこれは!
(シャンシャンが暴れている場所が不忍池なのでここに「蓮の花」が…。あと「ほうずき市」も出て来たけどどういう流れだったか忘れた…)
もうこのあたりからどんどんカオスになっていき、戦闘機が出てきたり、シャンシャンが暴れたり、シャンシャンが実は「迷子」で母親パンダがガオガオ言いながら登場したり、ひとみさんがパラシュートで降りてきながら唇を突き出してシャンシャンにいちご大福を口移し…。
なにがなんだか…だったけど、いちご大福を口にしたシャンシャンが急にしゅわしゅわしゅわしゅわ、と縮んでいって可愛らしくなったのには笑った。
これはどうおさめるのかと思ったら特にサゲはなく「この続きはいつか申し上げることに」でモヤモヤっと終わり。
いやぁ…カオスだった(笑)。ついに3回目にしてカオスに。
なんかこれから先はどんなお題でもシャンシャンがゴジラになってしまうのではないかという不安(笑)。
そしてこの噺、良く言えば白鳥師匠、喬太郎師匠の系譜と言えなくもないような気がしないでもない。
そして今回からお客さんがタイトルを決めてそれもさん助師匠がくじで引いて決める、という形。
いろいろ迷走してる感はあるけど、面白いからいい!