りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

上方講談を聞く会~東京・八王子公演~

6/30(日)、カサデホールで行われた「上方講談を聞く会~東京・八王子公演~」に行ってきた。
貞寿先生の真打披露興行で一度だけ見た南左衛門先生。やわらかいユーモラスな語りとビシッとかっこいいところの緩急がたまらない。とにかくすごいかっこいいんだ。
もう一度見たい、追いかけたいと思いつつ、なかなか東京で会がなくて大阪に行くしかないのかなぁと思っていたら、こんな会を発見。twitterでつぶやいてくれた犬の人よ、ありがとう。


左文字「細川の福の神」
南左衛門「寛政力士伝・雷電の初相撲」
~仲入り~
左文字「難波戦記・般若寺の焼打ち」
南左衛門「赤穂義士外伝・天野屋利兵衛」


左文字さん「細川の福の神」
南左衛門先生のお弟子さんらしい。己書と二足の草鞋、とのこと。
八王子にちなんだ話ということで「細川の福の神」。
ある雪の日に細川のお城の下を松飾り売りが通る。その声を聞いたお殿様が「雪の中大変だろうから買ってやれ」と家来に命じる。
家来が松飾売りに声をかけると「ありがとうございます」と言うものの「細川のお殿様は貧乏だと聞きますけどちゃんとお金を払ってくれるのか」とかなり失礼な物言い。
むっとした家来がお殿様にそのことを告げに行くと大笑いしたお殿様が小判二枚を渡す。
もらった松飾売りは喜んで「私の作る松飾は福を呼び込むからお殿様は出世されますよ」と言って帰っていく。
その言葉通りに肥後熊本の大名に出世したお殿様は、その松飾売りが八王子から来たという言葉を頼りに家来に探しに行かさせる。
江戸のお城に呼ばれて褒美をもらいご馳走された松飾売り。細川のお殿様の松飾はこれから毎年私が作ります!ますますお家は出世しますよ、と言う。

…面白い話だなぁ。酔いつぶれて朝目が覚めた松飾売りが金ぴかの部屋を見渡して「ああ、死んでしまって仏壇の中に入ってしまった」と嘆くのがすごくおかしかった。

 

南左衛門先生「寛政力士伝・雷電の初相撲」
最近の講談事情について。松之丞くんが売れてテレビに出るようになったおかげで講談の認知度が以前より上がった。松之丞くんとは何年か前に師匠の松鯉先生と私の弟子とで親子会を国立でやったことがある。その時は怪談話をかけるということで4人がみんな陰惨な話を。入場したときは意気揚々と元気だったお客様が帰るときはがっくり肩を落とし生気を吸い取られたようになったあの会…(笑)。あの時はまだそんなに売れてはなかったんですよ、松之丞くん。だから私も先輩風を吹かせて「今度大阪で呼ぶからその時は来てくれ」なんて言ったりして。
それがもうすっかり売れっ子になって電話してもつながったためしがない。いったいどこに電話をすればつかまるのか。師匠の松鯉先生に聞いても「わからない」。
で、この間は名古屋で講談の会がありまして。駅前のホールで毎年やってるんですが、たいていいつもは30名ぐらいのお客様なのにその日はホールが満員御礼。いったい何事かと思ったらその1か月前に松之丞くんが会をやったらしいんですね、同じホールで。それがもう発売と同時に完売。それで会に漏れた方たちが、「あらなに?せっかく講談って聞いてみようと思ったのにチケット買えないの?」ってなって、その時にホールにたまたま私どもの会のポスターが貼ってあったもので「あら、ここにも講談の会がある。じゃ行ってみようかしら」ということになって押し寄せてくださったんですね。あれは…得しちゃった!

…わはははは。そうなんだ、この先生、まくらもとっても楽しいの!

そんなまくらから「寛政力士伝・雷電の初相撲」。
雷電が最初に入門志願に行った部屋で「修行中は兄弟子の金〇を風呂で洗ってもらう」と言われて「そんなことできるか!」と怒って帰ってきて、それを聞いた宿屋の主人が「だったら谷風のところに行ってみろ」と勧める。
谷風は雷電の話を聞いて大笑いし「うちでは3年なんてもんじゃない。10年洗うはめになるかもしれないぞ」と脅す。それがいやだったら一生懸命相撲の稽古をして出世しなくちゃならない、と。
雷電の体をあらためた谷風はその見事な骨格と筋肉にびっくりする。これは一流の力士になるかもしれない、と。

次の日から稽古が始まったが、ぶつかり稽古をするとぶつかられた兄弟子がみな吹き飛ばされてしまう。(このぶつかって吹き飛ばされる繰り返しがめちゃくちゃおかしい!)
それで雷電の稽古は谷風が自ら行うことに。
そしていよいよ雷電初土俵。こんな化け物みたいな力士に最初から勝ち続けられたらたまらないと相手は相撲が上手いと評判の力士。
相手は右が強いから右を取られないように脇を閉めろと谷風はアドバイス
土俵に上がると相手の力士への声しかかからず、ぼーっとする雷電。それを見た客が「雷電!」と声をかけると「なんだね?」と答える雷電。土俵から力士がしゃべりかけてはならないと注意されるのだが「いやでもわしのことを呼んでるから」。
「そうじゃないあれはお前を応援する声だ」と言われて「これがわしの初土俵。おらのことを知ってるやつがいるわけないべ。あれは何かおらに用事があるだ」。
客の掛け声にそうやって応じているうちにぼーっとしていた雷電の気持ちが落ち着いてくる。

そうしていよいよ「はっけよい」の声がかかる。雷電は谷風の忠告とは逆に腕を振り上げて腋が大きくあく。相手はあまりのことに一瞬ひるむが、待ってましたと手を入れると、そこへ雷電が張り手!グローブのような大きな手で思い切り張り手をしたもので相手はそのまま気を失って倒れ次の日には亡くなってしまう。

それで雷電の張り手は禁じ手となり、その後も次々技を禁じられながらも、大活躍をする…という話。

ユーモアたっぷりで笑いどころが多くて楽しかった~。

 

南左衛門先生「赤穂義士外伝・天野屋利兵衛」
これは前に聞いたことがある話。
蔵之助の討ち入りのための武器調達を引きうけた天野屋利兵衛。
妻と離縁し独り身になり秘密裏に忍び道具を用意する。飲んだくれの職人を騙して御法度の武器を作らせるがそこから足が出て捕まってしまう。
幕府への謀反を疑う奉行は毎日利兵衛を拷問するが、口を割ろうとしない。
そこで最後の手段で利兵衛の七歳になる息子を連れてきて、利兵衛の前で拷問する。利兵衛は「自分がされるより辛い」と言いながらも「忠義を誓った方の名前を明かすわけにはいかない。天野屋利兵衛は男でござります」と言う。
息子を連れ去られた女房が半狂乱になってやってきてすべてを告白しだすが、それを聞いた奉行は「この女は気が違っているようだ」と言って最後まで語らせない。
事情を察した奉行はそれ以後利兵衛の取り調べは行わず、討ち入りの後に話を聞き、ごく軽い刑を科すだけに留める。

息子を拷問しようとする場面の迫力が一席目とは打って変わった緊張感。
南左衛門先生が本当に一瞬拷問を受けてげっそりやつれたように見えた。人相もかわるくらいの迫力。 か、かっこよかった…。