りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

国立演芸場8月上席

8/10(木)、国立演芸場8月上席に行ってきた。


・市坊「子ほめ」
・市楽「芝居の喧嘩」
・さん助「二十四孝」
・東京ガールズ 三味線
・玉の輔「マキシムド呑兵衛」
・小のぶ「厩火事
~仲入り~
・カンジヤマ・マイム パントマイム
・菊太楼「家見舞」
・ダーク広和 マジック
・市馬「寝床」

 

市楽さん「芝居の喧嘩」
明るくて自信もあって元気で客席をぐっとひきつける。
うしろの席に座っていた笑点至上主義おばちゃんたちもようやく口を閉じて噺に聞き入っていた。さすが。


さん助師匠「二十四孝」
うひょー。こういう噺をしちゃうところがさん助師匠ってたまらない。
さん助師匠の「二十四孝」は前にも聞いたことがあったけど、その時よりもっと面白くなっていた。
自分の親を「ちょうちんばばあ」と呼び蹴っ飛ばしてしまうくまさん。
しょうもないけどからっとしていてなんか憎めない。
「唐のばばあは何かと食いたがるな」っていうのもおかしい。

自分が蚊に食われてやろうと酒を注ぐものの、口に含むとついつい飲んじゃうのがおかしい。
ごちゃっとしていたけど楽しかった!

さん助師匠が下がって行くとき、隣に座っていたおばあ様が「面白かったわね」と話しかけてきて、うれしかった!


小のぶ師匠「厩火事
おさきさんがかわいい。このおさきさんがかわいいかどうかが私にとったらポイントで、おさきさんがかわいいなぁと思えるとこの噺が楽しめるし、うるせぇ女だなぁと思うとなんか聞いていてめんどくさくなってくる。

小のぶ師匠にしたら少し弾け足りなかった?気がしないでもないけれど、楽しかった。


市馬師匠「寝床」
大旦那が市馬師匠にぴったり。優しくておおらかで人間ができていて。
だけどせっかくの自分の義太夫の会を長屋の連中や店の者が聞きたがっていないと気付くと徐々に不機嫌になっていって怒り出す。
だけど番頭がうまい具合にくすぐるとまた機嫌を直して「みっちりやろう」と言いだす。

とても楽しい「寝床」だった。
唯一の傷は、どんなに下手そうにやっても、上手なんだ、旦那の義太夫(笑)。

柳家小のぶ独演会

8/8(火)、お江戸日本橋亭で行われた「柳家小のぶ独演会」に行ってきた。 


・市朗「たらちね」
・市楽「湯屋番」
・小のぶ「鮑のし」
~仲入り~
・小のぶ「へっつい幽霊」

市朗さん「たらちね」
「ってことは大家さん、あっしにかみさんを紹介してくれるんですか?」と始まったので、「そんなたらちねもあるんですね…」と驚いたのだが、後から出てきた市楽さんが「普段は15分なのを10分と言われて縮めなきゃっと思った努力は買ってやってください」と言っていた。ぶわははは。

市楽さん「湯屋番」
「幻の落語家」と呼ばれている小のぶ師匠ですけど、この間は「浅草演芸寄席」というテレビに出たんですよ!すごくないですか、幻の落語家をテレビで見られるなんて!
この間は池袋の昼席でトリをとられて…お休みもされてましたけど…(そこで笑いが起こると)、いいじゃないですか!人間国宝だって休むんです!

…ぶわははは。
しぶーーーい小のぶ師匠の前方にこのまったく屈託のない市楽さんって意外性があるけど、いいね。なんか。
そういえばこの会の前方はいつも市楽さんなんだな。市楽さんの小のぶ師匠に対するリスペクトと屈託なくなついてくるところが師匠にとっては心地いいのかもしれないな、と思ったり。

実は私今日は国立に出てから来たんですけど、お客様の中にも国立見てからこの会にいらした方がいらっしゃって、「市楽さん、同じ噺はしないでくださいね」って釘を刺されちゃいまして。
ほんとはここでやるつもりで国立で稽古してきたんですけど…。今日の国立のお客さんには合わない噺だったんですけど、ここでやりたいがためにやったんですけど…そう言われちゃったので違う噺にします。

そう言って「湯屋番」。
とにかくハイテンションでギャグ満載の楽しい「湯屋番」。
「逆光で時計が見えなくてあと何分あるのかわからない」とまくらの後に言ったら、お客さんが「あと12分だよ!」。
それを聞いてから噺にはいったんだけど、終わったのがほんとにピッタリ12分後だったのには驚いた。すごい。


小のぶ師匠「鮑のし」
もともと日本では生魚をお祝いごとに贈る風習があったのだが、仏教が入ってきてから生臭物はNGになった。
それで鮑を蒸して伸ばして祝いに贈るようになったのだが、これは味はよくて酒にも合うのだがかなり固くて食べづらい。
それから紙の間にその蒸して伸ばした鮑をほんのちょっぴり挟むようになり、やがてはそれもなくなって記号だけ残り、形どって「のし」になるようになった。

…なるほどーーー。そうだったのかー。
この噺を聴いていてなんとなく「鮑ってのしの始まりだったのか」とぼんやり理解していたけど、こうしてちゃんと聞いて今までのもやもや理解がクリアーになる。
小のぶ師匠のまくらってほんとにためになる。それもとってもわかりやすいし面白いんだよね。

そんなまくらから「鮑のし」。
甚べえさんが無邪気で不思議で面白い。
仕事を行くのをやめて鳳凰を捕まえようと思ってお寺で頑張ってたけど出てこなくてそれをお寺の人に言ったら「今日は(鳳凰は)もう来ないよ」と言われたというのがおかしい。
おかみさんもしっかりしているけどそんなに恐妻っていう感じじゃない。
魚屋に行って鮑を買ってくるところも、おかみさんから口上を教わるところも、ごくあっさり。

面白いなぁ。同じ噺でも他の噺家さんがするのと全然違う。
大家さんのところで「鮑は片貝だから婚礼の祝いには受け取れない」と断られた後、帰り道で会った友だちにそのことを言うと「鮑のし」の謂れを教わる。
こういうの、初めて見たな。
「こう言ってけつまくってやれ!5円寄越せと言え!」とはっぱをかけてくるのも確かに友だちなら納得。

大家さんのところに行ってもう一度友だちから教わった通りに薀蓄を語ると感心した大家さんが「のしの謂れ」を聞くところ。
友だちに教わってないことを聞かれた甚べえさんが「もうだめだよ。3円にまけておくから」と言うのがおかしい。

楽しかった~。


小のぶ師匠「へっつい幽霊」
まくらでへっつい、かまどについての説明。
へっついもなんとなくもやっと理解だったので、助かる~。
そして「寺を建てる」というのが博打を打つことを言う隠語という説明もあって、それがこの噺のサゲに通じるのだった。

そんなまくらから「へっつい幽霊」。
博打に勝った男がへっついを買おうと道具屋に行くところから。
道具屋の主人とのやりとりはごくあっさりで、家にへっついを置いてもらってうとうとしていると、青白い炎が出てきて身体がぞくぞくっとして幽霊が。
「ああ、これか」とあっさり受け入れた男。それに対して幽霊の方がものすごーくびくびくしているのがもうたまらなくおかしい。

なに、この幽霊。わははははは!
そして小のぶ師匠の細くてきれいな手で幽霊の形をひらひらやるのがもうそれだけでおかしくておかしくて。
なんてチャーミングなんだ!

「博打はやめた方がいいです。ろくなもんにはなりません。やめなさい」ってまじめに意見する幽霊がおかしいし、「お前、死なすには惜しいやつだな」と男が幽霊に言うのもおかしい。

百両全部とられた幽霊が次の日も出てくるというのは初めて聞いた。
そしてこのサゲも初めて。
確かにまくらで仕込まなきゃいけないから「足は出しません」の方がわかりやすいけど、こういう一味違った噺を見られるのってほんとに嬉しい。

来て良かった!

小んぶにだっこ

8/7(月)、落語協会で行われた「小んぶにだっこ」に行ってきた。
 
・小んぶ「(かっぱが思春期でひきこもる噺)」
・小んぶ「臆病源兵衛
~仲入り~
・小んぶ「船徳

小んぶさん「(かっぱが思春期でひきこもる噺)」
8/1にさん喬師匠のお誕生日のお祝いで一門がさん喬師匠のお宅に集まった時の話。
2週間ほどアメリカに行っていたさん喬師匠が、弟子のためにアメリカで流行っているアニメキャラクターのTシャツを大量に買ってきてくれて、弟子が香盤順に好きなものを取っていくというのがほほえましい。
あと喬太郎師匠のことを「あにさん」と呼ぶべきか「師匠」と呼ぶべきか…あまりにもビッグな兄弟子だとそんなことを悩んじゃうのか。でもそれを本人にぶつけてしまうっていうのがなんとも…。
 
それからこの会でいつも新作を作ってくる小んぶさん。
だいたい新作をやると微妙な空気になることが多く、そのあと仲入りをはさんで古典をやるんだけど、お客さんが新作と古典とのギャップについていけず、「理解してあげたいけど理解できない」という表情になっているのが見てとれるので、今回は新作を冒頭に申し上げてそれから古典をやろうと思います、と。
 
そして私は来られていないのだが、前回作ったかっぱの新作。
自分的にはできたときガッツポーズをするほどの手ごたえがあったんだけど、お客さんの反応は微妙。
そもそも自分はあんまり本を読んだりもしないし、どうやって新作って作ったらいいかもわかってない。
それで新作を作っているやなぎさんや天歌さんに聞いてみたのだが、やなぎさんからは「まずはプロットを考えて」と言われ「プロットってなんや…。もういい…。」となり、天歌さんからは「SFはやめたほうがいい。SFっていうのは実在しない生き物とかそういうの」と言われ、じゃかっぱはだめ?だめってこと?といきなり否定された気分。
でもですね、私にとってはかっぱっていうのは想像上の生き物というよりは人間…社会性とかそういうのがない人間っていう存在なので、SFじゃないですよ。ね?
 
…ぶわははは。
面白いなぁ、小んぶさん。ほんとにこのつかみどころのなさがたまらないわー。
そしてこの会を始めたばかりのころはまくらで自分のことを話すのもおっかなびっくりっぽかったけど、ずいぶん心を許してくれるようになったな感があって、うれしい。
 
そんな長いまくらから、思春期のかっぱの噺。
このかっぱ、お皿が小さいことを学校でからかわれいじめにあってひきこもってしまっているらしい。
どうやらこの子どものかっぱが一家の稼ぎ頭らしく、母かっぱがひきこもった子が部屋から出てくるように知恵を絞る…
 
ぷぷぷ。なんですかね、これ。
小んぶさんの新作って、ほんとに新作のセオリーとかそういうの一切なくて、確かにビミョーかもしれないけど、その分変な「新作臭」が全くなくて、私は好きだな。
作った新作はここ以外ではやりません、と言い切っていた小んぶさんだけど、ちょっとほかのところでもやってみたら?
 
小んぶさん「臆病源兵衛
おお、なんかこの間聞いたさん助師匠の「臆病源兵衛と出どころは同じような感じ。
からだの大きな小んぶさんが怖い怖いと身を縮めながら時折奇声を発するのがばかばかしい。
くまさんの策略で台所に酒を探しに行った源兵衛が手探りで酒を探して、とっくりと間違えてこけしをつかむ、っていうの…小んぶさんオリジナル?
なんかその図を想像するとばかばかしくて笑ってしまう。
楽しかった!この噺、あんまり寄席でもかからないけど、結構好きだな。

小んぶさん「船徳
ちょっと時間を気にしつつ?ばたばたしてた感じはあったんだけど、小んぶさんって意外となよっとした若旦那が似合ってる。相当わがままなことを言ってもかわいさがあるから見ていて楽しい。
あとお客が途中からまったく逆らわなくなるのが、小んぶさんらしくて楽しい。
これからもっともっと面白くなりそう。
 
 

 

 

 

国立演芸場8月上席

8/6(日)、国立演芸場8月上席に行ってきた。


・市坊「たらちね」
・市童「武助馬」
・さん助「お菊の皿
・東京ガールズ 三味線演芸
・玉の輔「宮戸川(上)」
・小のぶ「風呂敷」
~仲入り~
・カンジヤマ・マイム パントマイム
・菊太楼「子ほめ」
・ダーク広和
・市馬「船徳


市童さん「武助馬」
おお、「武助馬」とは渋いな、市童さん。
これって鯉昇師匠からだよね、きっと。
兄弟子の名前が「池袋」で、居眠りしている兄弟子を起こすと寝ぼけて「次は大塚~大塚~」には笑った…!
地味な噺だけどちゃんと笑いどころもあって楽しい。


さん助師匠「お菊の皿
おお、さん助師匠の「お菊の皿」は初めてでうれしい!
お菊さんが留守の時に鉄山がお菊の部屋を訪れて皿を一枚抜いて…と言いかけてから、「これには伏線がありまして」。
え?伏線?
家宝の皿をお菊に預けておいたのだが、お菊が留守をした時に「三平に会いに行ったのか!」と嫉妬に狂って鉄山が皿を一枚抜いたのだ、と。
お、もしや、預けておくという部分が抜けたから、あわてて足した?どきどき。

お菊さんが殺されて井戸に落とされて、そのあとすぐに鉄山がはばかりに行こうとするとすぐに「うらめしや~」と現れる、っていうのは初めて聞いた。
井戸じゃなくていろんなところに出てくるお菊さん?

そのあとで若い衆が皿屋敷を見に行くところは同じだけど、次の日から倍、また次の日は倍と増えて、出店が出たり甘味屋ができたりと通りもにぎやかになり、中には「お兄さん、よってらっしゃい」って怪しげな店ができるっていうのも初めて聞いた。

2回目に出てきたお菊さんが、「…ようこそいらっしゃいました」と色っぽくて丁寧なのはなんか好きだなぁ。
ちょっとばたばたしてたけど楽しかった。


小のぶ師匠「風呂敷」
兄貴分が途中で語る本物の薀蓄を丁寧に。これがあるから、噺の中で、兄貴分が偉そうに語る薀蓄が全部でたらめなのがはっきりして二倍おかしい。
そしてそんな偉そうな兄貴がおかみさんには全く尊敬されてなくて邪険に扱われているのがまたおかしい。
そうか。この噺の主役はこの兄貴なんだ。頼られて悪い気はしなくて張り切って出かけて行って…。

とにかく小のぶ師匠のこの兄貴がかわいい。
「おめぇはなにかっていうと俺を頼ってきて」「大変だなんていうのはほんとに大変な時にだけ言う言葉だ。生涯に一度や二度ぐらいだ」と迷惑そうに言いながら、彼女が帰ると「ほんとに弱っちゃうよなぁ。みんな俺を頼りにして」と言う姿がほんとに嬉しそうで誇らしそうで笑ってしまう。

アクションが大きくて表情が豊かで間が良くて。
小のぶ師匠の落語は楽しいなぁ。

ところでこのおかみさん…新さんとできてたのかな、ほんとのところ。
なんとなくまくらを聞いていてそんなことをちょっと思った。


カンジヤマ・マイム パントマイム
今日は一人だったのでこの間とはまたちょっと違っていて、それが嬉しい。
パントマイムは世界共通だからいいですねって言われるけど、実はしぐさって国によって違いがあるから、共通ってわけじゃない、っていうの面白かった。


菊太楼師匠「子ほめ」
聞き飽きたこの噺がこんなに面白いとは!
この師匠のわしゃわしゃしたところがこの噺にぴったりでご機嫌な楽しさ。よかった!


ダーク広和先生 マジック
端が増える紐のマジック、ほんとに間近で見ていたけど、ほんとに不思議。
ほんとにうまいよなぁ。見事としかいいようがない。

 

市馬師匠「船徳
市馬師匠の「船徳」は何回も見ているけど、今日のが一番ノリノリだったような。
なんか聞いたことがないようなギャグも入っていてそれも面白かったけど、まわりの人たちがみな若旦那を心配している様子がたまらなくおかしい。
ガタイのいい市馬師匠だけど、いかにもなよっとした形ばかり気にする若旦那っぽいのが不思議。
楽しかった。

夜の夢見の川 (12の奇妙な物語)

 

★★★★★

その異様な読後感から“奇妙な味”と呼ばれる、ジャンルを越境した不可思議な小説形式。本書には当代随一のアンソロジストが選んだ本邦初訳作5篇を含む12篇を収めた。死んだ母親からの晩餐の誘いに応じた兄妹の葛藤を描くファンタスティックな逸品「終わりの始まり」。美しい二頭の犬につきまとわれる孤独な主婦の不安と恐怖を綴った「銀の猟犬」など、多彩な味をご賞味あれ。

「12の奇妙な物語」と副題にあるように、日常の中に紛れ込む悪夢のような出来事や読み終わってなんかもやもやが残るよな作品を集めたアンソロジー。
スタージョンチェスタトン以外は知らない作家だったのでとっても得した気分。

「麻酔」
恐怖としかいいようがない歯医者体験。
あまりの事態に笑うしかないんだけど、笑いながらもいつの日かこんなことを体験することがあるかもしれない、とうっすら怖い。


「お待ち」
身動きできない恐怖がじわじわくる。
出て行けそうでいて気が付いた時にはもう絶対に身動きがとれなくなっている恐怖。
抵抗すればするほど無理だということに気づき、「もういいや…」と無力化していくのが怖い。

 

「銀の猟犬」
これもこわい。決して離れぬ犬も怖いけれど、家族と…夫とここまで分かり合えないのがこわい。

 

「夜の夢見の川」
これが一番好きだな。
どこまでが現実でどこからが幻想なのか。そもそもその境目に意味があるのか。
結局は自分が「見たもの」が全てなのだから。

 

第4回・夏丸谷中慕情

8/5(土)、Chi_zu2号店で行われた第4回・夏丸谷中慕情に行ってきた。

 

・夏丸「いが栗」
~仲入り~
・夏丸「太閤の猿」


夏丸さん「いが栗」
昔、田舎の家に行くと、天井の隙間や鴨居の上にいが栗を置いてあることがあった。これはいが栗を置くことでねずみが入れないようにするという生活の知恵。
そんなまくらから「いが栗」。

初めて聴く噺。
江戸から来た旅人が山道で迷ってしまった。わらじもほどけてきて途方にくれていると、荒れ果てた辻堂を見つける。ここで一息ついてわらじを結びなおそうと近づいて行くと、そこには異様な風体の坊主がいた。
ぼろぼろの着物をまとい、頭はいが栗頭、顔中髭だらけの坊主がなにやら一心不乱に呪文を唱えている。
道を尋ねるが答えてもらえず、その異様な姿に身の毛がよだち、そのまま辻堂を後にする。
しばらく歩いていると一軒のあばら家を見つけ、そこのばあさまに声をかけて「一晩泊めてくれ」と頼むのだが「助けてやりたいが家には病で寝ている娘がいる。この娘の姿を見て恐ろしいと言いふらされては困るから泊めることはできない」と言う。
そんなことは決して言いふらさないし、泊めてもらえたら私も娘の看病をするからと頼むと「困っているようだからそれなら泊まりなさい」と泊めてもらえることになる。
囲炉裏端に眠っている娘の姿を見るとそれはそれは美しい娘。

ひえの雑炊を食べて合羽を着こんで眠りにつくのだが、夜中娘がうなされている声で目が覚める。
何事かと障子の隙間からのぞいてみると、娘の枕元にあの不気味な坊主がいて耳元で何か唱えたりさすったりしている。
夜が明けると旅人は「娘さんは病気なわけじゃなく、とりつかれているようだ。もしかすると助けてあげられるかもしれない」と言い、辻堂にいる坊主のもとを訪ねていき…。


民話のような不思議な話なんだけど、田舎のばあさまがいいキャラクターで笑えるところもあるし、夏丸さんの淡々としていてでもなんともいえずひょうきんな語り口がこの噺にぴったりで、もう夢中になって聞き入っていた。

いやぁ、おもしろい~。こういう珍しい噺を持ってるってすごい強味だよなぁ。すばらしい。


夏丸さん「太閤の猿」
東雲節の歌を歌って、その謂れを説明したあとに、実はこの原点は秀吉公にある。
落語というのはほとんどがなーんの役にも立たない噺ばかりだけれど、その中にほんのわずかだけだけどためになる噺があって、これはその数少ない噺。メモをしながら聞くように、と言いながら「太閤の猿」。

これも初めて聞いた噺。
猿に似ていると揶揄されることが多かった秀吉は、自分によく似た猿を探させてそれをとてもかわいがっていた。
自分と同じ格好をさせて自分と同じものを食べさせて…。
秀吉を訪ねてくる客があると秀吉は猿に「行け!」と合図をし、すると猿はその客人の首筋のところを突く。
客は「なにをする!」と怒りたいところなのだが、秀吉がかわいがっている猿なので何も言うことができない。
この噂を聞きつけた独眼竜正宗は、自分にはそんな無礼を働かせてなるものかと、猿のもとを訪れて…。


これもまたまじめなような壮大なほら話のようなばかばかしい噺。これがまた夏丸さんにぴったりでおかしいおかしい。
途中で猿が関西弁で話しだしたので「なんじゃ?!」と思ったんだけど、これはもともと上方の噺なんだね。

 

お約束の歌&撮影タイムもあり。
この日は夏丸さんの誕生日をお祝いしよう!ということで打ち上げにも参加させていただき、とても楽しかった。

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池袋演芸場8月上席昼の部

8/5(土)、池袋演芸場8月上席昼の部に行ってきた。
8月上席の小三治師匠のトリの芝居はいつも大変な行列。今週は夏風邪を引いてちょっとダウンしていたので、あのしのぎを削る感じは辛いなぁと思いながらも、せっかく前売りも買っているし、この日を逃すともう行ける日はないし、と2時間並ぶ覚悟で出かける。
10時ちょっとすぎに着くとすでに20人ぐらい並んでいてくらっときたけれど、11時ちょっと前ぐらいに前売りを持ってる人は階段に移動させてもらえたので、ほっ。


・小ごと「道灌」
・小かじ「馬大家」
・三之助「替り目」
・小円歌 三味線漫談
・菊生「シンデレラ伝説」
・燕路「だくだく」
・ジキジキ 音曲漫才
・市馬「高砂や」
・伯楽「宮戸川(上)」
・紋之助 曲独楽
・左龍「お菊の皿
~仲入り~
木久蔵「後生鰻」
・小団治「ぜんざい公社」
・アサダ二世 マジック
小三治「馬の田楽」


小ごとさん「道灌」
一琴師匠のお弟子さん。コワモテで眉毛の間に一本線が入ってるんだけど、口元はとってもにこやかでかわいい。前座さんらしい素直な落語。


小かじさん「馬大家」
小三治師匠トリの芝居に出られる嬉しさがにじみ出てる。
そして前座時代のつまらなそうな感じとはうってかわって…確かに三三師匠のお弟子さんなんだなぁという感じがすごく出てる。なんだろう。はずさない感じ。


小円歌先生 三味線漫談
もう最初から最後まですかっと気持ち良くて明るくて楽しくて華やかで…大勢の立ち見のお客さんにも心を配って、あの場にいたお客さんがみんなほっとして笑顔になったのを感じた。すてき。


菊生師匠「シンデレラ伝説」
うわ、菊生師匠も「シンデレラ伝説」やるんだ?!びっくり!すごいな、白鳥師匠。
面白かった。


燕路師匠「だくだく」
この雰囲気の中で「だくだく」をやる燕路師匠が好きだなー。

市馬師匠「高砂や」
高砂や」珍しい!
市馬師匠のいい声で下手に歌われるのがまた面白い。楽しかった。


木久蔵師匠「後生鰻」
人間国宝トリの芝居でこんなに深い位置で使っていただいて、自分で言うのもなんですが今ではご立派」。
漫談だけじゃなくて「後生鰻」やってくれたのはうれしかったけど、でもこの噺の面白さがあまり伝わってこなかったかなー。


アサダ二世先生
ついにマジックをやらずに漫談だけで下がった。うひょー。(これは許せる落語ファン)


小三治師匠「馬の田楽」
9月の会が小三治師匠の入院で2つ中止になって心配したのだけれど、こうして寄席に出ているということは、急病ではなく何か手術とか検査とかなのかな。
相変わらずお茶を飲むときには手が曲がらないようだったからそっちの方なのか、それとも持病の方なのか。わからないけど、とりあえず元気な姿を見ることができて、ほっとした。
立ち見でぎゅうぎゅうの客席を見まわして「こんなに大勢いらしていただいて…早い時間から並んでいただいたんでしょう?ありがとうございます」と頭を下げる小三治師匠にじーん…。
ちょっとまくらが長くなりそうになりつつ、最初から噺を決めてきたようで「馬の田楽」。

峠を越えてきて疲れた馬と馬方がとっとと荷を渡してほっとしたいのに、呑気な主は呼んでも出てこない。
仕方なく中に入って座るとその木が疲れを吸い込んでいくようで天井が高くて涼しい風が流れてきて思わずちょっとうとうと…。
小三治師匠の「馬の田楽」を聞くと夏の暑い田舎の風景や、ここの家の様子が目に浮かんでくる。
そして口が悪い馬方の親方が馬を想う気持ちが伝わってくる。

私が好きなのは馬を探している時に出会う、言葉がうまく出てこない人。このおかしさは他の人には出せないよなぁ。
小三治師匠の落語の世界にどっぷり浸れて楽しかった。

国立演芸場8月上席夜の部

8/4(金)、国立演芸場8月上席夜の部に行ってきた。


・市江「出来心」
・さん助「夏の医者」
・東京ガールズ 三味線演芸
・玉の輔「お菊の皿
・扇生「酢豆腐
~仲入り~
・カンジヤマ・マイム パントマイム
・菊太楼「あくび指南」
・ダーク広和 マジック
・市馬「らくだ」


さん助師匠「夏の医者」
この芝居で小のぶ師匠という大ベテランが出てらっしゃるんですが、とさん助師匠。
私、二日目でしたか、楽屋で冷たい水を飲んでたんですね。そうしたら小のぶ師匠が「あなた…もしかして…お若いんですか?」
「え、ええ。私、二年前に真打になったばかりです」と答えると「あ…じゃあ入門がかなり遅かった?」
「いえ、大学卒業してすぐに入門しました」。

…ぶわははは!!
小のぶ師匠に、冷たい飲み物を飲まないほどの年寄だと思われていたさん助師匠、最高!

そんなまくらから「夏の医者」。
いいなぁ、この噺。最初から最後まで好きだわー。私、サゲにはそんなにこだわらないんだけど、この噺のサゲはすごく好き。
田舎の風景とさん助師匠って相性がいい気がする。前に見た「馬の田楽」もすっごくよかったもんなぁ。なんかさん助師匠の伸びやかな声と素朴さが生きてる。
よかった。


東京ガールズ 三味線演芸
好き好き。「ぎっちょんちょん」の替え歌とか、ずっと聞いていたい。
振りつけもかわいい。


扇生師匠「酢豆腐
若い衆が集まってぬか漬けを触るのを嫌がって押し付けあうところとか、そういうわいわいしたところも楽しかったんだけど、伊勢家の若旦那の「〇〇でげすね」がもうたまらなくおかしかった!
小のぶ師匠が代演でがっかりしていたんだけど、そんなことを忘れるくらい楽しかった。


カンジヤマ・マイム パントマイム
好き好き。前に末廣亭で一回見たけど、これを寄席で見られるのは幸せだ~。
もっと寄席の出番が増えるといいなぁ。何回見ても楽しいよ、これは。
カンジヤマ・マイム体操、よくできてる。


市馬師匠「らくだ」
市馬師匠の「らくだ」好き。
兄貴分は確かに怖いんだけど、屑屋さんが怖がりながらもそんなにこうおどおどしてないから、前半部分も見ていてそんなにつらい気持ちにならない。
お酒を味わって飲めと言われて3杯目を味わって飲み始めると、急に酒飲みの性が出てくるのが面白い。
立場の逆転も気持ち良く、最初から最後まで楽しく見られた。

さん助ドッポ

7/31(月)、お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」へ行ってきた。
 
・さん助 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第十回「お静の間夫」
~仲入り~
・さん助「三助の遊び」
・さん助「夏の医者」
 
さん助師匠 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第十回「お静の間夫」
いつものように立ち話から。
 
地元の水戸で寄席形式の会がありPRのための動画撮影があって同じく茨城県出身の講談の神田真紅さんと二人で行って来た。
簡単な台本を渡されて「この通りじゃなくてもいいので、何か思いついた面白いことをおっしゃってください」と。
 
台本があってもちゃんと話せないのに、何か面白いことをと言われても…不安な気持ちでいると、「じゃまず真紅さんから」と。
真紅さんはニツ目だからと、さん助師匠に気を使ってくれたらしい。
 
が、真紅さんがとてもうまい。
講談師だから口調もいいし、さらに短い時間にまとめるのがとてもうまくて、聞いてみたらなんでもラジオ番組をやっているらしく、慣れているのだった。
担当の人も「すばらしい!一発OKです」。
 
そしてさん助師匠の番になったのだが、案の定、噛むわ間違えるわもやもやするわ…何度もやり直しになり最後は「ま、いいでしょう、これで」。
「一発OK!と、ま、いいでしょう、には心が折れました」。
 
…ぶわはははは。
カミカミのさん助師匠が目に浮かぶわ。最高。
 
そんな立ち話から「西海屋騒動」第十回「お静の間夫」
左一郎を失ったお静は品川の遊郭・土蔵相模で遊女となるが、その美貌からたちまち評判になり、絵草紙に描かれるほどに。
お静を贔屓にする客が多い中、お静がいい仲になったのが、名前も素性も名乗らない男で、お静はその男に夢中になる。
その男が、西海屋の主である宗太郎がお静に夢中になっているという噂を聞きお静に確かめると「身代を倒すぐらいの勢いで通ってきている」と言う。
「あいつから金を巻き上げるだけ巻き上げてその金でこの仕事から足を洗って、お前と女中と猫の4人暮らしをすることが夢だ」と語るお静。

そうとは知らない宗太郎は、毎夜のようにお静のもとに通い、金を湯水のように使っている。
ある日海鮮問屋の寄合があり、それには主人が自ら来なければならないというお達しがあった。
清蔵は小僧を船宿に使いにやり、源次という船頭に土蔵相模へ宗太郎を呼びにやってほしい、と頼む。
源次が約束通り土蔵相模を訪れると、ご機嫌の宗太郎は「駆けつけ一杯だ」と源次に酒をすすめる。
源次が「こんなうまい酒は飲んだことがない」と言うと宗太郎は酒を畳にわざとこぼし「そんなにうまいなら畳を吸え」と嫌味なことを言う。
お静が源次に「ここで飲んでも気づまりだろうから、いつもの店に話をつけてあるからそちらで飲んで時間をつないで」と言うと、「そうさせてもらいます」と源次。

時間になって源次が土蔵相模へ行くとへべれけによぱらっている宗太郎。
船に敷いておいた蒲団に宗太郎を寝かせて漕ぎ出した源次だが、船を両国橋の近くの百本釘にとめると、用意していた刀で宗太郎を殺してしまう。
源次はある男と100両で宗太郎を殺す約束をしていたのである。
源次が待ち合わせした鉄砲洲の河岸へ行くと、そこには頭巾をかぶっている謎の男。
「約束の金を」と言う源次に男は「わかった。」と言って懐に手をやるのだが、源次のすきをねらって刀で斬りつける。
この男が誰なのかは次回明らかに…。

…ひぃー。
源次っていい感じに出てきたのに、あっという間に人殺しになって、そしてまたすぐに殺されちゃったよー。
もう出てくるの悪いやつばかり…。
唯一、船宿につかいに行く小僧がいい味出してたけど、あれは原作通りなのかあるいはさん助師匠の創作なのか。
船宿のおかみに上がるように言われると「私はそののち番頭になりますからそうした暁には店に上がります」と言ったりして、壮大な野望を語るのがおかしかった。
さん助師匠「三助の遊び」
この日、「夏の医者」をネタ出ししていたんだけど、まだ時間があるので、ということで「三助の遊び」をやります、とさん助師匠。
鈴本でさん助師匠が「三助の遊び」という噺をやったというのをtwitterで見て、すごい気になっていたのだ。うれしい~!


三助という職業、もうお分かりの方が少なくなってしまいました。
平成2年ぐらいまで日暮里に現役の三助がいらっしゃったみたいですが、その方もやめてしまって今はもういないですから仕方ないです。
お風呂屋さんで400円払うと三助が背中を流してくれたんですね。
でももともと三助っていうのは背中を流す人のことを言ってたわけではなくて、お湯屋の番頭さんのことを言ってたみたいです。
 
先代のさん助師匠は出てくると「さん助です」と名乗った後に「みなさんの背中を流そうっていうわけじゃありません」と言って、毎回爆笑だったんですけど…今やると…こうなりますね(しーん)。
先代のおかみさんには「あのセリフ使っていいわよ」って許可をいただいているんですが、そういうわけで使ってません…。
 
で、この「三助の遊び」っていう噺。
前に楽屋で雲助師匠に「あんちゃん、三助の遊びはやらないの?」って聞かれたんです。
やりたい気持ちはあったんですけど、志ん生師匠がやられているので古今亭の噺なのかなと思って、それでやるのをためらっていて。
そのことを雲助師匠に言うと「いいよ。何か言われたら俺がいいって言ったっていいな」そう言われまして。
だから勝手にやってるわけじゃないんです。
 
…くぅーー。雲さま、素敵。
 
三助が町を歩いていると幇間の次郎八が「こんな昼間にうろうろしてるなんて珍しいですね」と話しかけてくる。
実は釜が壊れてしまったのだ、と三助。
それで昼寝でもするべーと寝ていると客が入って来ては「今日は休みかい?」と聞いてくるので「いや、釜が壊れて早じまい」と答えるのだが、またうとうとすると客が入って来て…の繰り返し。
おちおち昼寝もできないとこうして出てきたのだ、と三助。
「だったら一緒に吉原に行きましょう」と次郎八が言うと「いやよそう。三助ってわかると花魁が相手にしてくれない」と三助。
「そこは私にお任せを」と次郎八。
大店の若旦那ということにして私がうまくやりますから、と。
 
それならいいだろうと二人で出かけていくのだが、いざ御しけになって女を待っていると、花魁の噂話が聞こえてくる。
花魁の符丁や言い回しが全て「お湯屋」を連想されることばかり耳に入ってくるのでそのたびに「三助ってばれてしまった!」と大騒ぎして次郎八を呼びつける三助。
ようやく花魁が部屋に入ってきたときには…。
 
…すごくばかばかしくて楽しい~。
名前にちなんだ噺だし、寄席でもどんどんやってほしいな。
最近さん助師匠が新しくやる噺がどれも私好みでうれしくなっちゃう。
 
さん助師匠「夏の医者」
前に金馬師匠と里光師匠で聴いたことがある。大好きな噺なのでうれしい!
 
田舎ののんびりした空気の流れが感じられてすごく心地よくて楽しい。
うわばみに飲まれてものんびりしている医者がいいなぁ。
山の頂上で一服する場面が大好き。
この先生、医者の仕事より畑仕事に精を出してるんだよね。かわいい。
 
そしてなにより笑ったのが、腹下しを飲まされて弱り切ったうわばみの様子。
いやもう最高。この間の狐といい、うわばみといい、さん助師匠の動物(化物?)、おかしすぎ!
楽しかった~。
 

 

 

 

 

 
 
 
 

さん助燕弥二人會

7/29(土)、お江戸日本橋亭で行われた「さん助燕弥二人會」に行ってきた。

 

・ひしもち「初天神
・さん助「七度狐(上)」
・燕弥「佃祭」
~仲入り~
・燕弥「夏泥」
・さん助「七度狐(下)」

さん助師匠「七度狐(上)」
今月の初めに九州に行ってきたというさん助師匠。
折しも宗像・沖ノ島と関連遺産群世界遺産に登録されたので、それはもうお祝いムード一色なのだろう、くす玉とか横断幕とか貼ってあるのだろうと思っていたのだが、どこへ行ってもまったくそんなそぶりがない。
こうなってくるとどうしてもくす玉を見なければ帰れない!という気持ちになり、宗像で一番栄えているという道の駅まで訪ねてみたのだが、ない。
どういうことなのか、ともやもやしていると、帰りに福岡を通ったらそこに大きな横断幕が。
なんだ、あそこまで行く必要なかったのか、と。
で、自分が一番感動したのは、そのくす玉探しの遺産めぐりをしていた時、あがた森魚のコンサートのポスターを見たこと。
まだやってるんだ!といたく感動したのだが、ガイドをしてくれた若い女の子たちは誰もわからない。
いや、でも名前は知らなくても歌は聞いたことがあるはずです!とさん助師匠が「赤色エレジー」を口ずさんでみたのだが、通じず。
それが車に戻って走り出したら一人の女の子が「あ!わかった!これじゃないですか!」と赤色エレジーをうたいだした。
だからさっきうたったじゃないか!と思ったのだけれど、さん助師匠の歌を聴いてもまったくピンとこずに自力で思い出したらしい。

そんなまくらから「七度狐(上)」。
この噺は長いのでこれから前半をお話して、仲入り後に後半を申し上げます。
ただ心配なのはそれまでにお客様が前半を覚えていてくださってるかどうか…。

「七度狐」は芸協でしか聞いたことがない。大好きな噺。
助六師匠を初めて見た時が「七度狐」で、ハートを射抜かれたのだった。
芸協で見るときはいつも鳴り物入りでそれもまた素敵なのだが、今回は鳴り物なし。

冒頭で、聞いたことがないような薀蓄。なんかちょっとわかりづらかったのだが、さん助師匠ってこういうちょっと難しい薀蓄とか謂れが好きだよなぁ。自分で本を読んで調べたりしているんだろうか。

疲れたーと言って江戸から来た旅人が「やなぎや」という料理屋に入るところからは今まで聞いたことがあるのと一緒。
食べ物が何もなく、でも目の前においしそうなイカの木の芽和えがあったので、それを出してくれと言うと、店の主人が「これはお客様にはお出しできない」と。
二人前とはいわない、一人前でも半人前でも一口でも…いくら頼んでもくれないので、お金は払ってその皿を持って店を駆け出す。
食べたあとのお皿は竹藪に投げ捨ててしまうのだが、それがここに住むたちの悪い狐にぶつかってしまう。
皿を当てられた狐が怒ってぬおおーーっと立ち上がるんだけど、その様子がもうほんとに妖怪っぽくておかしいおかしい。大爆笑。
立ち上がるだけでこんなにおかしいって反則でしょ。というところで前半はおしまい。


燕弥師匠「佃祭」
出てくるなり「ちなみに私もあがた森魚は知りません」と燕弥師匠。
一度だけさん助師匠とカラオケに行ったことがあるんだけど、もうこれが驚くほど下手!そりゃ太鼓も叩けないわけだわ、と思ったと。

…ぶわははは。
確かにさん助師匠って音痴そうに見える。でも前に落語の中で歌うシーンがあったら案外うまかったんだよな。声はいいから…。

そして今日は隅田川の花火で、浴衣を着たカップルをここに来るまでの間に何組も見ましたけど…。女の子はいいんですよ。なんかデパートで買ったばっかりなんだろうなっていう浴衣でかわいらしくて。男ですよ。男。もうみんな100%バカボン状態。帯がすごい高い位置。そのくせスマホ見ながら髪型を整えたりなんかして「おれって粋だろ」みたいな風。
なんですかね、あれを見るといらっときて「死ねばいいのに」と思っちゃいます。

…わかる!なんかいらっとくるんだ、男の浴衣。お前は洋服でいいよ!と言いたくなる。なんでだろう。

そんなまくらから「情けは人のためならず」の説明をして「佃祭」へ。
そんなに好きな噺じゃなくて、なんかいつも「長いなぁ」と思ってしまうことが多いんだけど、燕弥師匠の「佃祭」は刈り込んであったこともあって長く感じなかった。
旦那がすごくいい人で見ていてじーんとくるし、助けた女の亭主が男らしくて礼儀正しくてかっこいい。
燕弥師匠はいい男だからこういう噺が合うよなぁ。
お初徳兵衛」とか「名人長二」とかやったらいいのに。

 

さん助師匠「七度狐(下)」
狐の謎の小噺(笑)から「七度狐(下)」。
いやもうこれが楽しい楽しい。
いきなり現れた川を前にして「深さを調べてみよう」と石を投げ込むところ。弟分が小石を投げて「なんの音もしない」「無音」と言うのに大笑い。無音って…!
棒で深さを確かめるところ、鳴り物入りだとあそこで「ふかーいかあさいかー♪」と節が付いて楽しいんだけど、鳴り物はないのでそこは台詞のみ。でもなんか二人が裸でわちゃわちゃしているのが伝わってきて面白い。
二人が麦畑を裸になって通っているのを村の百姓が見つけて声をかけるところもおかしい。

そのあと、尼寺に泊めてもらって、べちょたれ雑炊をごちそうになったり、尼さんが出かけてしまって怖がる二人の元へ村人が金貸しのばあさんの棺桶を持ってきて置いて行ってしまうところ。
ばあさんの死骸が棺桶から出てくるところがまた妖怪っぽくて大笑い。もう最高。

ばかばかしくてにぎやかで楽しくてさん助師匠にぴったり。
楽しかった~。
南なん師匠にプレゼントを渡せなかった悲しみも笑ったおかげでずいぶん癒えた。感謝。

末廣亭7月下席昼の部

7/29(土)、末廣亭7月下席昼の部に行ってきた。
昼間、談幸師匠のお芝居を見に行く予定だったので、末廣亭には来られないと思っていたのだけれど、劇場と末廣亭が近かったのと終演が案外早かったので行けたのだった。
そして30日(日)千秋楽にお誕生日プレゼントを持って行って南なん師匠に渡そう!と思っていたのだけれど、30日が代バネだということがわかったので、急遽プレゼントも渡そうと…。
しかし終演後戸口で待っていたけど南なん師匠が出てこなくて、楽屋を訪ねるともう帰ってしまった後だった。出口が2か所あることを知らなかったのだ。しくしく…。
雨の中持って歩いていたためにプレゼントの袋もよれよれになって、悲しみがさらに倍増。しくしく…。

・小助・小時 太神楽
・南なん「阿武松

小助・小時さん 太神楽
しばらく見ない間に、小時さんのトークがうまくなっていてびっくり!
やはり若い人は成長が著しいなぁ…(←ばばあな感想)。

南なん師匠「阿武松
まくらなしで「阿武松」へ。

女中が噂をしているとたしなめるのだけれど、好奇心いっぱいで長吉のいる二階に上がって行くときの善兵衛の茶目っ気のある表情がかわいい。
そして長吉の話を聞いて、「相撲部屋はほかにもある。紹介しよう」と言う善兵衛の優しさにじーん…。
武隈と当たった時に「おまんまのかたき!」と睨み返す長吉がおかしい。

いっぱいのお客さんにわかりやすい噺でおひらき。よかった~。

末廣亭7月下席昼の部

7/28(金)、末廣亭7月下席昼の部に行ってきた。なせばなる…。


南なん師匠「ねずみ」
この日会社でいや~な気持ちになることがあって、昼休みに南なん師匠の「ねずみ」(ラジオ深夜便の録音)を聞いて心を静めていた。その「ねずみ」を何時間か後に生で聞ける幸せ…。
録音を何度も聴いていて覚えているのに、新鮮な気持ちで聞ける不思議。


甚五郎の優しさと、ひどい目にあってもどこか呑気なねずみ屋の主人に慰められる。
南なん師匠の落語には優しさがあるから毎日聞きたくなるのかもしれない。
サゲも大好き。かわいい。

私が好きな噺家さんはみなかわいい。
私が思う「かわいい」が大多数の思う「かわいい」じゃないかもしれないけど、でも私の場合「かわいい」と思わなかったら好きにはならない。
うまいなぁおもしろいなぁと思っても、でもかわいくないなと思うと、それはイコール好きじゃない、ってことだ。

かわいいに叶うものはない。私にとったら。

母の記憶に

 

母の記憶に (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

母の記憶に (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

 

 ★★★★

不治の病を宣告された母は、誰より愛するひとり娘を見守り続けるためにある選択をする。それはとてつもなく残酷で、愛に満ちた決断だった…母と娘のかけがえのない絆を描いた表題作、帝国陸軍の命で恐るべき巨大熊を捕らえるため機械馬を駆り、満州に赴いた探検隊が目にしたこの世ならざる悪夢を描いた「烏蘇里羆」、脳卒中に倒れ、入院した母を、遠隔存在装置を使用して異国から介護する息子の悲しみと諦念を描く「存在」など、今アメリカSF界でもっとも注目される作家が贈る、優しくも深い苦みをのこす物語16篇を収録した、待望の日本オリジナル第二短篇集。  

 前作「紙の動物園」よりもっと骨太な印象。

ジャンルはSFだが、描かれるのは家族のことだったり極限状態に追い込まれての選択だったり人間の良心だったり…。

読んでいて胸が苦しくなるような作品が多く、読むのに時間がかかった。

好きだったのは「草を結びて環を銜えん」「母の記憶に」「存在」「シミュラクラ」「ループのなかで」。

雷門小助六の会

7/27(木)、お江戸日本橋亭で行われた「雷門小助六の会」に行ってきた。
今週は末廣亭昼の部の南なん師匠のトリを毎日聞きに行き、夜も鈴本に行ったりお江戸日本橋亭に行ったり、いつも以上の激しさで落語を聞いた。
ほんとに私は何を目指しているんだろうか。(何も目指してない)

・べん橋「堀之内」
・小痴楽「花色木綿」
・小助六「猫の災難」
・楽輔「天狗裁き
~仲入り~
・鯉橋「たがや」
・うめ吉 粋曲
・小助六「七段目」


小痴楽さん「花色木綿」
しばらく見ない間に貫禄がでてきた!自信の表れなのかな。うれしいような少しさみしいような。
あのなんかこう意外にセンシティヴな感じがするところが好きなのよね。って勝手なこと言ってるけど。
いろんな方が言ってるけど、小痴楽さんはとにかく口調がいいからそこが強味だよなぁ。
そして泥棒の兄貴分と弟分、これがもうリアル。作ってる感がないからすごい。
最後がもやもやっとしたけど、そこも含めて楽しかった。


助六師匠「猫の災難」
今日は打ち上げが楽しみ、と小助六師匠。というのはメンバーを選ぶときに「打ち上げが楽しくなるひと」を中心に選んだらしい。
「私は酒の癖がいいんです」と言っていたけど、確かによさそう…。小助六師匠は潔癖症だし、私なんか一緒に飲んだら嫌われそう~。酒癖悪いしずぼらだし。

そんなまくらから「猫の災難」。
助六師匠がほんとに楽しそう。そしてお酒がうまそう~。
なんか生き生きしてた。飲みたくなった!


楽輔師匠「天狗裁き
この師匠の「〇〇なんだな」っていう言い方が大好き。軽くて落語家さんらしくていいなー。
天狗裁き」も軽くてテンポがよくて楽しかった~。
でも終わり方は女房のセリフですぱっと終わる方が私は好き。

 

鯉橋師匠「たがや」
うーん、かっこいい。落語がすごくきれいなんだけど、ご本人はこう欲がない感じできょとんとしているのがほんとに素敵。
一緒に行った友だちが「鯉橋師匠、すてき」とまんまとファンになっているのが微笑ましかった。


助六師匠「七段目」
きれいだなぁ。所作がとても自然で美しい。いかにもやってます感がなくて素敵。
そしてほんとにのびのび楽しそうだなぁ。
よかった~。

 

末廣亭7月下席昼の部

7/27(木)、末廣亭7月下席昼の部に行ってきた。


南なん師匠「夢の酒」
この日はよく笑う女性のお客さんが多かったからか「夢の酒」。
夢の話をのろける若旦那と焼きもちを焼くお花さん。それをバカにしたりしないで聞いてあげる大旦那。
何回見ても好きだなぁ。
大旦那が夢の中に入るシーンがおかしくて大好き。


この芝居、夏休みでお子さんも多いしお客さんも多くて、そのせいかわかりやすい噺を中心にかけてらっしゃる印象。
あと同じ噺でも少しコミカルにして重くなりすぎないようにしている感じ。
それはそれでもちろん楽しいんだけど、でも池袋演芸場の夜の部で少な目のお客さんの中で聞いた「徳ちゃん」最高だったなぁ。ああいう南なん師匠もまた見たいなぁと思ってしまう。
私ってほんとにどこまで欲深いんだろう。