りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家小のぶ独演会

8/8(火)、お江戸日本橋亭で行われた「柳家小のぶ独演会」に行ってきた。 


・市朗「たらちね」
・市楽「湯屋番」
・小のぶ「鮑のし」
~仲入り~
・小のぶ「へっつい幽霊」

市朗さん「たらちね」
「ってことは大家さん、あっしにかみさんを紹介してくれるんですか?」と始まったので、「そんなたらちねもあるんですね…」と驚いたのだが、後から出てきた市楽さんが「普段は15分なのを10分と言われて縮めなきゃっと思った努力は買ってやってください」と言っていた。ぶわははは。

市楽さん「湯屋番」
「幻の落語家」と呼ばれている小のぶ師匠ですけど、この間は「浅草演芸寄席」というテレビに出たんですよ!すごくないですか、幻の落語家をテレビで見られるなんて!
この間は池袋の昼席でトリをとられて…お休みもされてましたけど…(そこで笑いが起こると)、いいじゃないですか!人間国宝だって休むんです!

…ぶわははは。
しぶーーーい小のぶ師匠の前方にこのまったく屈託のない市楽さんって意外性があるけど、いいね。なんか。
そういえばこの会の前方はいつも市楽さんなんだな。市楽さんの小のぶ師匠に対するリスペクトと屈託なくなついてくるところが師匠にとっては心地いいのかもしれないな、と思ったり。

実は私今日は国立に出てから来たんですけど、お客様の中にも国立見てからこの会にいらした方がいらっしゃって、「市楽さん、同じ噺はしないでくださいね」って釘を刺されちゃいまして。
ほんとはここでやるつもりで国立で稽古してきたんですけど…。今日の国立のお客さんには合わない噺だったんですけど、ここでやりたいがためにやったんですけど…そう言われちゃったので違う噺にします。

そう言って「湯屋番」。
とにかくハイテンションでギャグ満載の楽しい「湯屋番」。
「逆光で時計が見えなくてあと何分あるのかわからない」とまくらの後に言ったら、お客さんが「あと12分だよ!」。
それを聞いてから噺にはいったんだけど、終わったのがほんとにピッタリ12分後だったのには驚いた。すごい。


小のぶ師匠「鮑のし」
もともと日本では生魚をお祝いごとに贈る風習があったのだが、仏教が入ってきてから生臭物はNGになった。
それで鮑を蒸して伸ばして祝いに贈るようになったのだが、これは味はよくて酒にも合うのだがかなり固くて食べづらい。
それから紙の間にその蒸して伸ばした鮑をほんのちょっぴり挟むようになり、やがてはそれもなくなって記号だけ残り、形どって「のし」になるようになった。

…なるほどーーー。そうだったのかー。
この噺を聴いていてなんとなく「鮑ってのしの始まりだったのか」とぼんやり理解していたけど、こうしてちゃんと聞いて今までのもやもや理解がクリアーになる。
小のぶ師匠のまくらってほんとにためになる。それもとってもわかりやすいし面白いんだよね。

そんなまくらから「鮑のし」。
甚べえさんが無邪気で不思議で面白い。
仕事を行くのをやめて鳳凰を捕まえようと思ってお寺で頑張ってたけど出てこなくてそれをお寺の人に言ったら「今日は(鳳凰は)もう来ないよ」と言われたというのがおかしい。
おかみさんもしっかりしているけどそんなに恐妻っていう感じじゃない。
魚屋に行って鮑を買ってくるところも、おかみさんから口上を教わるところも、ごくあっさり。

面白いなぁ。同じ噺でも他の噺家さんがするのと全然違う。
大家さんのところで「鮑は片貝だから婚礼の祝いには受け取れない」と断られた後、帰り道で会った友だちにそのことを言うと「鮑のし」の謂れを教わる。
こういうの、初めて見たな。
「こう言ってけつまくってやれ!5円寄越せと言え!」とはっぱをかけてくるのも確かに友だちなら納得。

大家さんのところに行ってもう一度友だちから教わった通りに薀蓄を語ると感心した大家さんが「のしの謂れ」を聞くところ。
友だちに教わってないことを聞かれた甚べえさんが「もうだめだよ。3円にまけておくから」と言うのがおかしい。

楽しかった~。


小のぶ師匠「へっつい幽霊」
まくらでへっつい、かまどについての説明。
へっついもなんとなくもやっと理解だったので、助かる~。
そして「寺を建てる」というのが博打を打つことを言う隠語という説明もあって、それがこの噺のサゲに通じるのだった。

そんなまくらから「へっつい幽霊」。
博打に勝った男がへっついを買おうと道具屋に行くところから。
道具屋の主人とのやりとりはごくあっさりで、家にへっついを置いてもらってうとうとしていると、青白い炎が出てきて身体がぞくぞくっとして幽霊が。
「ああ、これか」とあっさり受け入れた男。それに対して幽霊の方がものすごーくびくびくしているのがもうたまらなくおかしい。

なに、この幽霊。わははははは!
そして小のぶ師匠の細くてきれいな手で幽霊の形をひらひらやるのがもうそれだけでおかしくておかしくて。
なんてチャーミングなんだ!

「博打はやめた方がいいです。ろくなもんにはなりません。やめなさい」ってまじめに意見する幽霊がおかしいし、「お前、死なすには惜しいやつだな」と男が幽霊に言うのもおかしい。

百両全部とられた幽霊が次の日も出てくるというのは初めて聞いた。
そしてこのサゲも初めて。
確かにまくらで仕込まなきゃいけないから「足は出しません」の方がわかりやすいけど、こういう一味違った噺を見られるのってほんとに嬉しい。

来て良かった!