りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

横浜にぎわい寄席

9/2(土)、横浜にぎわい寄席に行ってきた。


・竹わ「初天神
・鯉ん「四人癖」
笑組 漫才
・龍玉「もぐら泥」
~仲入り~
・ときん「家見舞」
・正二郎 太神楽
・南なん「中村仲蔵


竹わさん「初天神
学校寄席のまくらから「初天神」。
テンポがよくて口調がよくて噺がしっかりしているから、時折どきっとするようなギャグが入るとそれがすごく引き立って面白い。
竹わさんといい、竹千代さんといい…師匠は苦手だけど弟子は好きだな…。

鯉んさん「四人癖」
長いまくらからの「四人癖」。
確かに自分で言ってたように、やたらと襟を直すくせのある鯉んさん。
鼻の下をこすったり、目をこすったり、手をばたばたさせたり…。目まぐるしいけど鯉んさんにとてもよく合ってた。


龍玉師匠「もぐら泥」
寄席だとなかなか本気を見せない(失礼!)龍玉師匠だけど、「もぐら泥」すごくよかった!
鯉泥のまくらからの流れ。もしかしてさん助師匠と出所は一緒なのかな。あるいはさん助師匠、龍玉師匠に教わったのかな。
同じ展開なのにまったく印象が違う。

龍玉師匠の「もぐら泥」、出てくる人たちがみんな腹に一物ありそう。泥棒に入られる長屋の男もそのおかみさんも展開によっては殺したり殺されたりしそう(笑)。
さん助師匠の泥棒はどんなにすごんでも明らかにまぬけそうだったけど、龍玉師匠の泥棒はほんとに火をつけそう。目が怖い~。

圓朝風味の「もぐら泥」、すごくいいものを見た気分。よかった!


ときん師匠「家見舞」
ときん師匠の落語はのびのびしているから好きだなー。
50銭って見せるときに手がかじかんでいたり、瓶の水を使った料理にびくびくしたり…。わかっているけど笑ってしまう。
楽しかった。


南なん師匠「中村仲蔵
わーい、南なん師匠。1ヵ月ぶり~。会いたかったよう。
まくらなしで「中村仲蔵」。きゃ~。

でも前半はちょっとなんか話しづらそうな印象が。体調がよくなかったのか、呼吸があわなかったのか。
最前列で見ていたのでちょっとどきどき。
でも後半に入ったらいつもの南なん師匠にもどって、私自身も噺に入り込んで、舞台の上の仲蔵がくっきり浮かんで、仲蔵の気持ちに寄り添って一喜一憂して、最後は涙…。


ああ、でも、そうなのだ。あまりに好きで見に行きすぎているとその日の調子とか細かいところもよーくわかるようになってしまい、純粋に落語を楽しむ「いいお客」じゃなくなってしまう。
小三治師匠でも私は好きすぎて見に行きすぎて、そういう風に見てしまうんだよなぁ。これって明らかに追っかけの弊害だよな…。反省するけど欲が深すぎてつい見に行ってしまうんだけど。

末廣亭9月上席夜の部

9/1(金)、末廣亭9月上席夜の部に行ってきた。


ぴろき ウクレレ漫談
・夢花「魚根問」
・松鯉「たまごの強請」
~仲入り~
・夢丸「旅行日記」
青年団 コント
・枝太郎「源平盛衰記
・米福「夏泥」
・正二郎 太神楽
遊雀三枚起請


ぴろき先生 ウクレレ漫談
地方の仕事で旅館に泊まり混浴に入ったらおばあさんが入ってきてずっと二人きりで、割り切れない思いで近くのヌード劇場に行ったら出てきたのがそのおばあさんでって…笑った…。


夢花師匠「魚根問」
大好きな夢花師匠の「魚根問」。この日のお客さんには合わなかったようで…えええ?こんなに面白いのにこの反応?!と逆に笑ってしまった。ぶわははは。


松鯉先生「たまごの強請」
まくらで脱線したら「あれ?その前に何を話してましたっけ?(自分で)余計なこと言って忘れちゃった。いや、ほんとに忘れちゃったんですよ。ま、いいか。話に入ります」。

…ぶわははは。松鯉先生がそんな入り方をされることもあるんですね!
「たまごの強請」は何回か聴いたことがあったけど、面白い。いいなぁ、松鯉先生。もっと見たい。


夢丸師匠旅行日記」
笑顔で出てきただけで幸せオーラに包まれる。寄席の太陽。
5年前に来たときは鶏三昧、二年前に来たときは豚三昧、それで値段が安くておみやげまで持たせてくれて…この宿は俺の行きつけだからと友だちを連れて来た男。
宿帳をつけさせてくれと部屋をたずねてきた主人から聞く驚愕の事実(笑)。
主人が「きんぴらでもすんべぇと庭さ出たら、鶏がおっちんでてて。ごぼうはまだ土の中だんべ?鶏はそこに倒れてるだんべ?じゃ、鶏にすべ、ってことになって」
と素朴に…でもちょっと悪い顔で語るのがおかしい~。楽しいなぁ、夢丸師匠の落語は。


遊雀師匠「三枚起請
「この後、深夜寄席でさっき出た鯉八とか…面白い若手が出る会がありますから、お時間のある方はそちらもぜひ」と言った後で、「いやでも深夜寄席ってお客さんがすごいたくさん入るんだよね。今の二ツ目すごい人気があって勢いあるし。人の心配してる場合じゃねぇな、おれも。ま、コツコツとつぶしていきますから」と爪でつぶすしぐさ。
…わははは。でもそう言いながら自分の会に呼んだニツ目さんのことを手放しで褒めたりして…優しいんだよなぁ、遊雀師匠って。

そんなまくらから「三枚起請」。
若旦那がもらった起請が、自分に起請をくれたのと同じ女からのものだとわかってからの展開がめちゃくちゃ楽しい。
遊雀師匠の掌の上でころがされる楽しさ。

追い詰められた花魁が開き直る姿がいっそ清々しい。
だから全然後味が悪くないんだよなぁ。

楽しかった~!

 

御徒町ダイヤモンドライン vol23

8/30(水)、上野広小路亭で行われた「御徒町ダイヤモンドラインvol23」に行ってきた。
 
・馬ん次「真田小僧
・柏枝「大安売り」
・小助六「お岩誕生」
~仲入り~
・園馬「手水廻し」
・小夢「夢の欠片」
 
馬ん次さん「真田小僧
すごく緊張してて危なっかしい感じはありつつ、なんか面白い。
噺の展開が面白くて、誰に習ったんだろう?と気になる。
最初はフラットな感じで聞いていたんだけど、途中から結構笑っちゃった。
楽しみな前座さんだな。
 
柏枝師匠「大安売り」
面白いなぁ。なんだろう、この師匠の面白さって。うまく説明できない面白さ。
結構ゆっくりしたテンポと間なんだけど、すごくおかしくて、あほのように笑ってしまう。
ネタ卸しだったのか、ちょっと危ない感じがしたところもあったけど、それさえも笑いに変えてしまう。
この噺でこんなに笑ったの初めてだった。
 
助六師匠「お岩誕生」
助六師匠、怪談もやるんだ?
あんまり怖くならないようにわりと軽めに…そして淡々とやっているんだけど、怖い…。
絵が浮かんでくるんだよなぁ…。
料理をしていると天井から血がぽたりぽたり落ちてくるところとか、金貸しの女房が殺されて訪ねてくるところとか、押し入れから風呂敷包みを出すと生首がごろんごろん…ひぃー。こわかった~。
 
園馬師匠「手水廻し」
身体を鍛えるために山登りを始めた園馬師匠。
新しく入ったお囃子のお姉さんが本格的な山ガールなので、彼女に指導してもらおうと山登り部を発足したらしい。
メンバーは四名で、その中で特に張り切っているのが陽子先生。
まずは高尾山に登ることになったのだが、当日の朝、陽子先生が来ない。あんなに張り切っていたのに…。
どうしたのかと思ったら乗り換えを間違えて八王子に行ってしまったらしい。
遅れて登場した陽子先生。2000メートル級の山にも登りそうなぐらいの本格的な装備。
こんな装備で電車に乗ってたなら、他の乗客が教えてやるがいいじゃないか。「山に行くならこの電車じゃないですよ」。
 
…ぶわははは。
張り切る陽子先生が浮かんできておかしいし、園馬師匠の語り口が飄々としているからそれが余計におかしい。
 
大阪では顔を洗うことを「手水を廻す」と言うのだが、同じ関西でも田舎の方ではこの言葉がわからないことがある、そんなまくらから「手水廻し」。
今まで一度くらいは聞いたことがあったっけ。上方の噺なのかな。
大阪から旅行に来た男二人が旅館の女中に「手水を廻したいから用意してくれるか」と声をかける。
「手水を廻す」の意味がわからない女中は主人に聞きに行き、主人もわからないからと調理場に聞きに行き、それでもわからないので和尚に聞きに行き、和尚が「ちょうずとは、長い頭のこと。すなわち、ちょうずをまわすというのは、長い頭を回すことだ」と教える。
それを聞いて隣村のひときわ頭の長い男を連れてきて…。
 
最初から最後までひたすらばかばかしいんだけど、園馬師匠の弾けっぷりが素敵すぎてもうおかしくておかしくて笑いっぱなし。
女中と主が「ちょ、ちょうずぅ?」「ちょ…ちょうず」と掛け合うだけでもう死ぬほどおかしい。
園馬師匠もどんどんノリノリになってきて、「ちょうずの歌」まで飛び出して、もう最高。
頭の長い男が入ってきたときのしぐさとか、旅館の主人と番頭?が「手水とはどういうものか実際に体験してみよう」と大阪の宿に行って聞くときのすました様子とか、細かいところがきちっとしているから、余計におかしい。
 
いつもはどちらかというと端正な園馬師匠が、大サービスで弾けてくれて、笑った笑った。
楽しかった~!
 
小夢師匠「夢の欠片」
先代の夢丸師匠が「江戸噺」というのをやっていて、小夢師匠がそれにこの作品で応募してそれがきっかけで噺家になったという話は、真打のお披露目の時に聞いたことがあったのだが、今回はその噺でトリをとる小夢師匠。
 
とある絵師がお得意様の旦那の所に頼まれた錦絵を描いて持って行くのだが、旦那に「お前は女を知らないだろう」と言われてしまう
確かに着物は非常によく描けているけれど、女に生命力が感じられない。
最初は旦那の言葉に反発していた絵師だったのだが、「絵描きを職業としている以上、この絵は描けないというのは言いたくない」という気持ちから、旦那に言われて深川に「夜鷹」や「船饅頭」に会いに出かけていく。
恐る恐る歩いているとさっそく夜鷹に声をかけられたのだが、これが近くで見たら相当なおばあさん。
俺は化け物を描きたいわけじゃない!と逃げ出してふらふら歩いていると、透き通るような美しい女とすれ違う。
思わず声をかけると女は「私が見えるのですか」。
女は船饅頭だったので船に乗り夢のような一晩を過ごす…。
それから一か月後、得意先の旦那のもとを訪ねてきた絵師は…。
 
まじめでかたくなな絵師と小夢師匠が重なって見える。
小夢師匠の独特な線の細い語りと噺がとてもよく合っていて、ちょっとびっくり。
もっと新作作ってやればいいのに!
なーんて、こんな作品はポンポン作れないか。
 
ゲラゲラ笑って、ぞーーっとして、またひっくり返って笑って、最後はちょっとしんみり。
面白い構成だったし、いいメンツだったし、楽しかった~。
 

白酒・甚語楼の会

8/29(火)、お江戸日本橋亭で行われた「白酒・甚語楼の会」に行ってきた。
以前から行ってみたかったこの会、日曜日に行われることが多くてなかなか行けず。
今回は平日だったのでようやく行くことができた。
さすがの人気者の会でお江戸日本橋亭は満員ぎゅうぎゅう。
 
・市若「寿限無
・甚語楼「夏泥」
・白酒「妾馬」
~仲入り~
・白酒「風呂敷」
・甚語楼「小言幸兵衛」
 
甚語楼師匠「夏泥」
我々の世界では「芸盗み」という言葉があって、人の作ったクスグリやギャグを本人に無断でやるのは非常によくないこととされている。
その一方で「芸は盗め」と言われたりする。
矛盾しているようだけどこれには大きな違いがあって、それがわかるようになると少しこの世界のことがわかったということになる。
でも我々はそういうことを結構気にしたりするんです。

ニツ目なりたてのころだったか先代の小さん師匠のお宅にお中元を持って行ったことがあって、その時師匠が玄関を開けてくれたんだけど、私が「師匠、お中元をお持ちしました」とあいさつをすると、師匠から「そこにハンコがあるから押してって」と言われた。
どうやら私、小さん師匠に宅配業者と間違えられたらしい。
この話を楽屋で話したりまくらで話したりしてけっこうウケてたんだけど、そのうち協会の先輩方がまくらでやりだして、しばらくすると芸協の落語家までもやりだした。
これは実話で私が体験したことなのに…でも先輩に文句を言うわけにもいかないし…ともやもや。
でもしばらくしてわかったんです。
小さん師匠の家にお中元を持って行って宅配業者に間違えられたのが私だけじゃなかったっていうことが。小さん師匠、何人もの若手を宅配業者に間違えてたんです!
 
それからある時弟弟子の燕弥の高座を袖で聞いていたときのこと。
どうもこのやってる噺(「妾馬」)が俺のと似てる…いやこれは…俺のじゃないか…。
戻ってきた燕弥にそう言うと「あにさん、この噺は私があにさんに教えたんですよ!」。
 
…わはははは!
面白いなぁ。最高だなぁ。もうほんとに好き。甚語楼師匠。
そんなまくらから「夏泥」。
正直「夏泥」はほんとによく聞くし、最初に聞いたころは好きだったけど、今はそうでもなくなっていて、噺自体で笑うことはあんまりなくなっていたんだけど、甚語楼師匠のこの日の「夏泥」がひっくり返るほど面白くって、びっくり!
なにがって、入ってくる泥棒がまずとってもチャーミング。長屋の入り口で木を燃やしているのを見て「火事になったらどうするんだ!」って慌てて消して「俺が入ってきたからいいようなものの…」
また、畳が外してあるところで、盛大にひっくり返って(笑っちゃうほど大きなアクション!)、「な、なんだよ!この家は!」。
 
それを布団の中でじーっと見ている男のふてぶてしさがまたとっても面白い。
「いいだろ、黙って見てたって。おれのうちなんだから」
「お前な、人のうちに入ってくる時はそんなふうにどかどか上がってくるんじゃねぇんだ。何があるからわからねぇんだから。」
ふてぶてしいけど、なんか突き抜けた明るさがあって、全然嫌な感じがしない。
 
最初に泥棒が金をしたときに、男が本当にびっくりしているのがすごくよくて…。
また最初はしっかりしてるように見えた泥棒がどんどん気弱なところが明らかになっていくのが面白くて。
あとどっちだったか忘れたけど、「…え?!」って驚いた、その声のトーンとか間とか表情がもう最高におかしくて、この間見た権太楼師匠の「花見の仇討ち」の「…だれ?」を思い出した。やっぱりお弟子さんなんだなぁ、としみじみ。
こういう細かい積み重ねが噺をめちゃくちゃ面白くするんだ!
最初から最後まで本当に楽しい「夏泥」だった。
 
白酒師匠「妾馬」
今、テレビではほんとに政治のこととか批判的なことを言ったりすると全部カットされちゃう。
生放送とうたっていても実はそうじゃなくて1分ほど遅らせて放送しているからその1分でなんとでもできちゃう。
だからこういうライブでないとそういうことも聞けなくなるから、みなさんこうやって出かけてくるんでしょう。
そういって、北朝鮮のミサイルや小池都知事など、次々とパーパー毒を吐きまくる白酒師匠。
 
で、私たちはこういうことを言いますけど別に何か主張があったりするわけじゃないですから、ただ思ったことを言ってるだけですから、と。
 
そうだよなー。それを変な風に拾われて右だとか左だとか言われるの、いやだよねぇ。
 
そして今の落語協会の会長、久しぶりに人望のある人が会長になったから、謝楽祭も参加して盛り上げようという気持ちになる、と言いながら、「妾馬」へ。
明るくて軽くてギャグ満載でひたすら楽しい「妾馬」だった。
でもどうしても白酒師匠には「もっと」を期待してしまうので、普通の展開だとなんか物足りなく感じてしまうんだよなぁ。
 
白酒師匠「風呂敷」
根拠もなく自信満々に説を述べる人がいる、というまくらから「風呂敷」。
白酒師匠の「風呂敷」は前にも聞いたことがあるけど、相手を強制するための「し」って…どこからそういう発想が出てくるんだろう。おかしいなぁ。

兄貴がでたらめの蘊蓄を語るところが最高におかしい。
やっぱり白酒師匠にはこれぐらいのこうギャグを求めてしまうよね
 
甚語楼師匠「小言幸兵衛」
自分たちは不特定多数の人に会の案内状を送ったりするから、住所も電話も当たり前に公開している。
そのため、時々とんでもない電話がかかってきたりする。
この間は私の落語をよく見てくれているという方から電話があったんだけど…ちゃんと名前も名乗って決して感じの悪い人ではなかったんだけど、「こんなことを言ったら失礼かもしれないですけど…でもあの…師匠の落語はまじめすぎるというか、だからまだ一歩足りてないんだと思います。あきらめないでください!」と。
 
相手に悪気はないことはわかるから「そ、そうですか。ありがとうございます」と電話を切ったけど、でも…おれ…あきらめてないし…悪気がなくほんとにこれは言ってあげなきゃ!と相手が思ってるだけになんか落ち込んじゃって。しかもそれが鈴本のトリの初日の朝。
人はだれしもこれを言ったら失礼だとか相手を傷つけるとか思って、言わないようにしている部分が多いと思うんですけど…その人はどうしても言いたかったんでしょうね…。
 
…ひぃーー。そんなこと電話で言われたらほんとにへこむよなぁ。悪気がないっていっても…おい!
 
そんなまくらから「小言幸兵衛」。
これがまたすごく面白かったのだ。そんなに好きな噺じゃないのに。これも。
 
最初に訪ねてくる豆腐屋さんも威勢がよくて口は悪いけど少し気が弱い感じで。
あれこれ小言を言われて「え?じゃどう言えば?」と若干困ってる感じがなんともいえずおかしい。
それだけに子どもがないことを言われて本気で怒り出すところが楽しい。
 
また二人目の丁寧な仕立て屋さんに、幸兵衛が気をよくしてそこからどんどん妄想が広がって、仕立て屋さんが全く付いていけなくなるところ。
幸兵衛の広がる妄想とそれに対する仕立て屋の反応がいちいちおかしくて大笑い。
 
芝居調子になるところも、全く無理がないのにかっこよくてばかばかしい。
芝居調子にやって「ばかばかしいおはなしで」と終わることが多いけど、最後にからかうつもりでやたらと逆らうやつが訪ねてきて…という終わり方は初めて見たけど、こっちのほうがいいなぁ。
楽しかった~。
 

さん助ドッポ

8/28(月)、お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」に行ってきた。

 

・さん助 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第十一回「嘉助の独白」
~仲入り~
・さん助「景清」


さん助師匠 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第十一回「嘉助の独白」
まずはいつものように立ち話から。
国立演芸場に出ていたさん助師匠。仲入りに小のぶ師匠が出ていらした。
小のぶ師匠は自分の出番の1時間前には楽屋入りするので、結構お話をする機会があって。
あるときさん助師匠が高座の後に水を飲んでいたら、それをじーっと見ていた小のぶ師匠。
「あなた…もしかして…お若いんですか?」
「え、ええ。2年前に真打になりました」
「じゃ、いろいろ(仕事などの)経験をされてから…入門されて?」
「い、いえ。大学卒業してすぐに」
「え…」
小のぶ師匠、本当に驚いたらしくしばし絶句。非常に気まずい沈黙が(笑)。

そしてさん助師匠は前から小のぶ師匠に聞きたいと思っていたことが。
それは小のぶ師匠って声は小さいけれど所作がとても大きくて激しい。
特に「火焔太鼓」をやるときなんかもうびっくりするくらいオーバーアクション。それがとても気になっていた。
さすがにそのまま聞くことはできなかったけれど、ちょっと伺ってみたら、「私が若いころは先輩から高座に上がったら全力でやらなくちゃいけない。うけてもうけなくても全力を出せ。そう教えられたんです」と。
それを聞いて「素晴らしいな!」と思ったけれど、私の場合、体力がないものですから…そっとやろうかな、と。


…水の話は前にまくらで聞いたことがあったけど、大先輩にかなりの年寄りと思われていたっていうのもおかしいし、先輩に「全力でやれ」と言われたから今でもびっくりするくらい情熱的に高座をつとめている小のぶ師匠が素敵だし、その話をさん助師匠が直接聞いたっていうのも素敵。
くーーー。やっぱり寄席ってほんとにいいなぁ。

それからロマンスカーに乗った時の話。
ロマンスカーに乗ったら隣のサラリーマン…50代ぐらいのおじさんたちが飲んでいて壇蜜の胸がいいだの尻がいいだの唇がエロいだのとずーーっと女の話をしていて、「ほらあのドラマに出てた…ほらあの…なんだっけ、あの、人の名前のタイトルで…なんちゃら!っていうほら、決め台詞があるやつ…」みたいなことをやいやいいっていて「それは半沢直樹!!」と言いたくてうずうず…。
そのうち車内販売がきて、かわいい女の子だったので、この人たちセクハラみたいなことをするんじゃないだろうかとドキドキして見ていたら、「あ、ビールください」「ぼくはコーヒー」と今までと打って変わって声も小さくなってきちんとしてる。
あれ?と思っていると、彼女が去って行ってドアが閉まったとたんに「かわいい!!」「おれ、ドストライクだった!」と大騒ぎしてる。
見ていて、なんかかわいいなぁと思っちゃいました。

…ぶわははは。
なんかかわいいなぁ、そのおじさんたち。
そして、さん助師匠が「半沢直樹」を知っていることにびっくりだよ。
い、イメージが…(←やっぱりおじいさんと思ってる)

そんな立ち話から自分でカーテンを開けて高座へ。
こちらの会ではいつもさん助師匠が人物相関図や前回のあらすじを手書きで書いて配っているんだけど、どうしても書くのが前の日になってしまったりしてバタバタする。今回は2日前に人物相関図を書き上げたので、自分にしたら抜かりはないぜ!と思っていたら、今回の噺の主人公である嘉助を図に入れるのを忘れてた!
いったいなんのための相関図なのか。
今日の噺を聞けばどういう人物なのかはわかりますから、こちらの図に自分で書き足しておいてください。
そんなまくらから「嘉助の独白」へ。

源次と宗太郎の死体を乗せた舟は霊岸島へ着き、迎えに来た奉公人たちは舟の中の惨状を見て驚愕する。
事情を聞いた清蔵が確かめに行こうとすると宗太郎の妻・お貞も一緒に行くという。
清蔵が「奥様はここでお待ちください。」と言うとお貞は「西海屋主の妻として見届けるつもりです」と気丈にふるまう。
それならとお貞を連れて舟へ行き、中を覗き込むと、そこには二人の死体が。
使われた刀が宗太郎の物だったことから、源次が宗太郎の金を奪おうとして襲い掛かり、二人でもみ合ううちに死んだのだろう、ということになる。

西海屋は宗太郎とお貞の子である松太郎が継ぐべきと清蔵は言うのだが、松太郎はまだ幼いため、松太郎が成人するまでの約束で清蔵が主となる。
またそうなると妻をもらわないといけないということで、お貞が清蔵の妻となったのだった。

翌年、店の者がみな出払ったある日、飯炊きの嘉助がお貞に内緒の話がしたいと部屋を訪ねてくる。
奥様にお話ししなければならないと思っていたのだが、なかなか二人きりになれなくて…と言って嘉助が語ったのは…。

清蔵のお供で出かけた帰り、清蔵が「元は奉公人だった自分がこうして主になって、お前も不愉快に思っているのではないか」と言うので「そんなことはごぜぇません。あなたは西海屋のことを心から大切に思い切り盛りしてくれて、感謝しておりますだ」と答えると「そうか、ありがとう。お前にはいずれのれん分けをしたいと思っている。どうだ?ちょっと家に寄っていくか」と言うので、てっきり店に帰るのかと思っているとそうではなく、とある小さいけれど手入れの行き届いた家へ案内された。
そこには女中がいて、中にはとても美しい女がいた。
「なんでも食べたいものを」と言われ、昔一度だけ食べた鰻が忘れられないというと、取寄せてくれ、うまい酒も飲ませてもらった。

そしてこの女に見覚えはないか?と言うので、よくよく見てびっくりした。
それは宗太郎の破滅の原因になったお静だったのだ。

そして清蔵は、お静と自分は宗太郎がお静と知り合う前からの深い仲だった。
自分はいずれはお静を妻として西海屋に招き入れたい。
それにはお貞と松太郎が邪魔なので殺すつもりだから手伝ってくれるかと言う。
それを聞いて、もしや宗太郎を殺したのも…?と聞くと、それも自分がしたことだ、と。

なぜそんなことを…と問うと、自分は確かに西海屋の主人である平兵衛のおかげで死なずにすんだけれど、あのバカの宗太郎と一緒に育ち、ある時自分がたまたま上座に座っていたら、それを平兵衛に見とがめられ首根っこをつかまれて「そこはお前が座るところではない」とほっぽり出された。
その時に自分はいつかあの場所に座ってやる、西海屋の主になってやると決めたのだ、と言う。

嘉助は、こんなことを聞かされて、殺しに加担することを断ったら間違いなく自分も殺されると思ったので「やったら本当に自分に店を持たせてくれるか」と聞くと「もちろんだ」と清蔵。
「で、どうやって殺します?」と聞くと、毒を盛るつもりだと言う。

自分は松太郎の預け先にこの間の休みの時に行って、実家から送られてきたものは絶対に松太郎に食べさせないでくれと手を打っておいた。
奥様もくれぐれもお気をつけて。
私は奥様の味方です、と言う嘉助に、「店のためを思って清蔵と一緒になったのに、こんなこと…」と絶句するお貞。
こんな目にあうなんて死んでしまいたいと言いながら、松太郎だけは守らなければ…そしていつか敵を討ってやる、そう誓うお貞であった。


…ええええ?清蔵も悪いヤツだったのーー?
清蔵だけはと信じていたのにー。えーん。
前回出てきたお静のマブって絶対義松だと思ってたよ。だってなんかいい男風だったし…清蔵はなんとなく枯れたイメージがあったからそんなことをするとは夢にも思ってなかった。
今回の嘉助の独白も、義松が裏で糸を引いてるんじゃないかと最初のうちはそう思って聞いていたんだけど、そうではないみたいで。
清蔵がそんなに悪かったなんて。もう誰も信じられないっ!ひどい!
いったい誰目線で見ればいいのかわからない噺や…ほんと。


さん助師匠「景清」
定次郎が生まれつき盲目なのではなく大人になってから盲目になったというのは聞いたことがあったけど、酒と女遊びが過ぎてそうなった、というのは初めて聞いた。
犬の件や旦那との会話から、定次郎が素直じゃない性格なのが伝わってくる。
眼病にご利益のあるという観音様を拝みに行って、近くで同じように熱心に拝んでいる女と掛け合いのようになるシーンは楽しい。
意外にも女性がとても女性らしいんだよな、さん助師匠って。

旦那に説得されて清水様にお詣りに行くことに決めた定次郎。
清水様に100日通って満願の日に、目が開くと信じて行ったのに見えるようにならず、観音様に悪態をつく。
心配した旦那が様子を見に来て、定次郎をなだめるのだが、悪態がやまない。
そのうち雷が鳴って旦那は一人逃げてしまうのだが、この時に旦那が「ああ、あんなふうに悪態をつくから観音様がお怒りになって」とつぶやく。
おお!なんかこの部分がいつも腑に落ちなかったので、なんかすっきり!
なんであんなに親身になってくれていた旦那が定次郎を置いて帰ってしまったのか。
目の見えない定次郎を置いていくなんてひどくない?と思っていたのだが、信心深い旦那が観音様の怒りに触れたと思って度を失ってしまったのだとしたら納得。

そして私が今まで聞いた「景清」ではここで雷に打たれて気を失った定次郎が目が見えるようになって…おわりだったんだけど、ここから初めて聞く展開。
定次郎が「あーやっぱり見えねぇのか。あっしの眼は見えるようにはならないんですか」と相変わらず観音様へ悪態をついていると、どこからか声が聞こえてきて、なんと観音様があらわれる!
そして定次郎に向かって、お前のような信心のないやつの願いを聞くわけにはいかない、と言う。
定次郎が「なんだ、じゃあもう見えるようにはならないのか」とあきらめかけると「だが、お前の母親の願いの強さに免じて目を貸してやる」と。
そこで、奉納されている景清の眼を貸してやる、と言って定次郎の目を開けてくれる。


…おおおお、そうなのか。だからこのタイトルなのか!
初めて聞く展開に興奮!
そしてやっぱりさん助師匠ってみんながやる形じゃない、「もとの形」にこだわるんだなぁ…。ひねくれてるといおうか、文学的といおうか。
観音様が出てくるけど、さん助師匠がやると観音様が漫画っぽくて全然宗教じみないので、なんかばかばかしくておかしい。
定次郎がもう少しチャーミングになったらもっともっと魅力的になる気がするなー。

ネタ出しされたときは、さん助師匠が「景清」?ってちょっと違和感を感じていたんだけど、おもしろかった。

枕元の本棚

 

枕元の本棚

枕元の本棚

 

 ★★★★

 絵本、図鑑、経済書から、スポーツ選手の評伝、女優の写真集まで――人気芥川賞作家・津村記久子が、幼少期の愛読書、学生時代に熟読した本、創作の源となっている本など、58冊を精選。あなたの想像力のツボをじわりと刺激する、“目からウロコ"の読書エッセイ!

【本書で紹介される本】
デブの国ノッポの国/ことわざ絵本/セイシュンの食卓/紅茶で遊ぶ観る考える/
この方法で生きのびろ! /妖精Who's Who/チェスタトンの現代用語事典/
ゴキブリだって愛されたい/キリンと暮らす クジラと眠る/秘密結社の手帖/
世にも奇妙な職業案内/江豆町/広重ベスト百景/100+1 ERIKAS/
働くオンナの処世術/「つながり」の精神病理/貧乏人の経済学/
フィンランド語は猫の言葉/禁煙セラピー/ぼくのプレミア・ライフ/
マルコ・パンターニ 海賊の生と死 ……etc

 教室の隅でいつも本を読んでる彼女、きっと気が合うにちがいないとずっと思っていて、ある日そっと近づいて覗いてみると、昆虫図鑑をニヤニヤしながら読んでいてびっくり!みたいな感じ。

大好きな津村さんはこういう本を読んでいたのかー。
小説家って小説ばかりを読んでいるわけじゃないんだなー。
確かに津村さんの作品ってなにかこう文系ワールドっぽくないというか、え?!と驚くようなモノが物語の主軸あったりするけど、こういうことだったのか。

どちらかというと私が素通りしてきた本ばかりだったけど、そういう楽しみ方があったのかと目から鱗でもあったし、自分がこんなに興味がないものについてこんなに熱く語られると「じゃ今度ちょっと手に取ってみようかな」とも思う。

おもしろかった。

第三十四回 萬窓百景

8/25(金)、池袋演芸場で行われた「第三十四回 萬窓百景」に行ってきた。
萬窓師匠も寄席で見て「もっと見てみたい!」と思った師匠。これ以上好きな噺家さんを増やしてどうする?!と思いつつ、かわら版を見ると池袋演芸場での独演会があったので、小三治師匠を見に演芸場に行った時に前売り券を購入。
見たいと思ってすぐに見られるのが落語のいいところ。こうやってずぶずぶ深みにはまっていくのだ。ほほほ。

・小ごと「道灌」
・萬窓「木乃伊とり」
~仲入り~
・ひびきわたる ものまね漫談
・萬窓「乳房榎」

小ごとさん「道灌」
プログラムに「有望前座」と書いてあったのを見たらしく、座布団に座るなり「有望前座です」とにっこり。
身体が大きくて強面だけど笑顔がいいんだなぁ。
上下をあんまり振らないのでご隠居と八つぁんの区別がまだちゃんとついてないような気がするけど、声もいいし愛嬌もあるし楽しみな前座さん。

萬窓師匠「木乃伊とり」
今息子が中3でして、と萬窓師匠。 
息子と一緒に学校見学に行ったら、受付のところに在校生の女の子たち。どう考えても学校で一番かわいい子を揃えて置いている。
愛想もよくて笑顔で迎えてくれて実に感じがいい。
これは…吉原でいう「看板」。一番かわいい子を表に出しておくというやり方。吉原の法がこんなところにも…。
一通りの説明が終わると、在校生が校舎を案内してくれるという。グループに分かれてその受付にいたかわい子ちゃんが案内してくれるのだが、萬窓師匠が行ったときは参加者が多かったとみえて、案内役が足りない。先生が案内役の子に「じゃ、案内が終わった子が順番に残ってるグループを案内して」。
…それは廻し!ここにも吉原の法が生きている…!

そんなまくらから、子を想う親の気持ちは昔も今も変わらないと「木乃伊とり」。
ぶわははは。たまらないな、このまくら。子を想う親の気持ちといいながら、学校見学に見た吉原の法っていうのが最高。
そういえば私がこの師匠にハートを射抜かれたのも「蜘蛛駕籠」をやる前のタクシーのまくらだった。ぐふふ。

何日も帰ってこない息子が吉原の角海老に居続けをしていると知った大旦那。
勘当だと怒る旦那に番頭が「私が迎えに行ってまいります」。
そうしてくれるとありがたいが堅いお前が吉原なんて行けるのかい?と旦那が言うと「え、ええ」と番頭。
この番頭…確信犯(笑)。

迎えに行った番頭が3日帰らず怒り狂う大旦那に「あの番頭はどうも不思議なところがあって信用ならなかった」とおかみさん。
「頭に迎えに行ってもらいましょう」と言うと「あんな遊び人に任せられるか」と大旦那。
「遊び人だからこそ任せられるんじゃないですか」。

「あっしがなにがなんでも連れて帰ります」と意気込む頭、吉原に向かう道で幇間の一八に会う。
そのやりとりから、頭は最初はほんとに連れて帰る気だったことがうかがえる。

この頭が7日帰らないのでいよいよ勘当だ!と言っているところに、飯炊きの清蔵が「あっしが迎えにいってきやす」と登場。 
気乗りしない大旦那を説得するおかみさんと清蔵。
吉原に乗り込もうとする清蔵におかみさんが20両の入ったきんちゃくを渡し、涙ぐむ清蔵。

その清蔵、店の若い衆を「ばかにすんでねぇ」と蹴散らかし、番頭と頭のこともどやしつけ、若旦那にも説教。
私は清蔵に向かって「奉公人の分際で!お前には暇を出す!」と言う若旦那が嫌で、どうもこの噺はそんなに好きじゃないのだが、そんな若旦那に「およしなさい。清蔵の目が本気です。」と番頭がたしなめるところで、なんとなくこの人たちの力関係が分かる気がして、面白いと思った。

頑なだった清蔵が若旦那が「お前と一緒に帰るよ」と言って心底ほっとして、おいしいお酒を飲んで徐々にたががはずれてきて、花魁にお世辞を言われてその気になって、もっとここでゆっくりしたいと思う、その心境の変化が見ていてとても楽しかった。

うーん。素敵だ。萬窓師匠。

萬窓師匠「乳房榎」
初めて聴く噺。
この噺は長いので今日は前半だけお話申し上げます。後半部分…あとすじは本日お渡ししたプログラムに書いておきました、と萬窓師匠。
…親切!

絵師として活躍していた菱川重信の妻・お絹は大変な美貌の持ち主。
ある日重信、お絹、息子の真与太郎の3人が出かけると、お絹を一目見て夢中になってしまった浪人の浪江。
重信のもとへ絵を習いたいと訪ね懇意になるのだが、重信が寺から頼まれた龍の絵を描くために留守の時に訪ね、お絹を脅して関係を持つようになる。
最初は真与太郎を守るために嫌々応じていたお絹だったが、遊び人で女の扱いがうまい浪江に夢中になる。
重信がいないときしか会うことができないことにいら立つ二人。
浪江はある時、龍の絵を描いている重信の元を訪ね、重信に付いて世話をやいている正助を誘い出す。

正助に酒を飲ませ金をつかませ「伯父になってくれ」と言う浪江。
正助がその気になると、「物は相談だが」と言って、重信を殺す手伝いをしろと言いだす。
そんなことはできない!と正助が断ると、だったらお前のことも殺す、と浪江。
命は惜しいからと浪江に従う正助。
蛍を見に行こうと主人を誘い出し、浪江は重信を切り殺す。

寺に戻った正助が「ご主人様が何者かに斬られて死んだ」と寺の和尚に告げると「そんなはずはない。重信様は今も絵を描いてらっしゃる」と。
まさかと思い正助がのぞいてみると、確かにそこには絵を描く主人の姿。
開けてみると重信の姿はなく、描いたばかりの龍の絵と生々しい落款が…。

…ひぃー。
萬窓師匠、こういう噺もやられるのね。
基本的に救いのない噺だけど、でも正助がいかにも落語っぽい人物で笑いどころを作ってあって、そこに少しだけ救われたかな。

楽しかった~。萬窓師匠、やっぱり思ってた通り、とても好みだった!

鈴本演芸場8月中席夜の部

8/23(水)、鈴本演芸場8月中席夜の部に行ってきた。


笑組 漫才
・燕弥「夏泥」
・百栄「桃太郎後日譚 」
~仲入り~
・のだゆき 音楽パフォーマンス
・雲助「町内の若い衆」
・二楽 紙切り
・甚語楼「死神」


雲助師匠「町内の若い衆」
雲助師匠の「町内の若い衆」は初めてかも!
なんか普段聞く「町内の若い衆」とちょこちょこ違っていてすごく新鮮。
兄貴の家を訪ねておかみさんに「(あなた方)町内の若い衆のおかげ」と持ち上げられて、袖をぱたぱたやりながら家に帰って行く男が軽くていい加減そうで…でも明るくて楽しい。
待ってるおかみさんも口が悪くて男らしいけど亭主とのやりとりを楽しんでいる感じがあって、いいな。
湯銭を払ってやるから家に行ってうちのかみさんに向かって俺のことをなんか褒めてくれと言われた友だちが家をのぞいて「それにしてもあいつもあのかみさんと一緒に長く暮らしていて死ななかったね」とつぶやくのにも笑ってしまった。

雲助師匠って寄席でもいろんな噺をしてくれて、本人もすごーく楽しそうなのがほんとに素敵。


甚語楼師匠「死神」
わーい。トリの甚語楼師匠が見たかったんだー。
神無月にも「留守神様」といって留守を守る神様がいる。そんなまくらから「死神」。
借金を断られてびくびくしながら家に帰ると案の定おかみさんから激しく罵られる男。
「豆腐の角に頭をぶつけて死んじまえ」はよく聞くけど「うどんで首くくれ」「自分の目ん玉を噛め」っていうのは初めて聞いたな。わはは。
こんな言われるならあてつけにしんでやろうかと言いながら、「泳げないから川に身を投げるのは無理」とか「木に登ってそこから飛び降りてやるか。でも木が高いから登れない」とか、なんか呑気なのがおかしい。

医者の看板をかかげてすぐに患者が現れた時に「医者はあたし」と言って相手がびっくりがっかりすると「医者に見えないでしょ?なにせさっきなったばっかりだから」と正直に言うのもなんかおかしい。

呪文は「あじゃらかもくれんきゅうらいす、松居一代はどうなった、てけれっつのぱー」。
言ったあとに「今しか使えねぇじゃねぇか!」にも笑った。ぶわははは。

呪文で患者が生き返り「何を食べさせたらいいか」に「鰻なんかいいんじゃないですか」。
薬を所望され仕方なく大根の葉っぱを刻んで渡し「煎じたほうがいいですか」に「うでてかつおぶしかけるとオツです」。
すぐに評判になり次から次へと患者が押し寄せ金持ちになり、それと同時に鰻屋もどんどん繁盛、っていうのもおかしい。

ところどころに甚語楼師匠らしいギャグが入ってそれがすごくおかしいんだけど、今回前の方の席で見ていて発見したことが。
それは甚語楼師匠ってすごく落語らしい落語をされていてこれっぽっちも演技っぽいところがなくてそこがかっこいい!って思っていたんだけど、実はすごく動作もわかりやすいし表情も豊かなんだなー。
なんだろう、語り口がとても落語らしいというか、淡々としているから今まで気が付かなかった。

甚語楼師匠の落語ってかっこいい。見るたびにそう思う。好き好き。

酔って言いたい夜もある

 

酔って言いたい夜もある

酔って言いたい夜もある

 

 ★★★★

魚喃キリコ栗田有起石田千長島有里枝と飲んで語った初の対談集。角田光代のランチ写真日記、女同士で行きたい居酒屋情報も収録。  

読書不調の時は角田さんのエッセイに限ると手に取ったのだがこれは対談集だった。
それも普段は人見知り、でも飲んだら無敵の角田さんが飲みながら食べながらの対談。これが面白くないわけがない。

角田さんって意外と破天荒なところもあるけど全体的にはまじめで内向的でそのアンバランスが魅力だなぁ。

対談相手の作品へのリスペクトと相手への興味がしっかりとあるので、読んでいると対談相手の作品を読み(見)たくなる。
名言がいっぱいで何度も吹き出した。 

角田:「なんとなく好意を見せられて、それならこっちもと腰を上げたとたんすっと引かれると交際期間がないぶん『もう死んじゃえ』ってくらい嫌いになったりする。

 …ぶわははは!「それならこっちもと腰を上げたとたん」ってすごいよくわかる!
それですっと引かれて「もう死んじゃえ」って!角田さんってば!

栗田:「(略)角田さん、男は途切れたことがないんですよね。なんかいやらしい言い方ですけど(笑)。」

角田:「私は本当に困ったっていうときは誰でもいいからつきあうんでうしょ。誰でもいいから(笑)。」

栗田:「誰でもいいからっていうのは、妥協して誰でもいいってことなんですか?」:

角田:「はい。」

栗田:「『はい』って(笑)。」

角田:「1から100までの許容量があるとして、ひとにもよると思うんですけど、普通相手にするのが、30から90とか、20から80とかの間なんですよね。で、えっと20まで落とせる。」

栗田:「あはは(爆笑)。」

 「誰でもいいから」って角田さんっ!

多分に「酔った勢い」もあるだろうし、結構前の本だから「若気の至り」もあるだろうけど、それにしてもど正直で面白いわー、角田さんって。ラブ。

末廣亭8月中席昼の部

8/19(土)、末廣亭8月中席昼の部に行ってきた。


・幸七「道灌」
・双葉「たがや」&かっぽれ
・よし乃 太神楽
・希光「犬の目」
・夢花「あくび指南」
チャーリーカンパニー コント
・昇之進「幽霊タクシー」
・遊吉「安兵衛狐」
・真理 漫談
・圓輔「船徳
・伸治「初天神
・今丸 紙切り
・笑遊「祇園祭
~仲入り~
・鯉栄「赤穂義士銘々伝 赤垣源蔵徳利の別れ」
・伸 マジック
・歌春「鮑熨斗」
・遊三「親子酒」
青年団 コント
・圓馬「お化け長屋」


幸七さん「道灌」
「私、立川談幸の弟子で立川幸七と申します。今日が初高座です」の言葉にきゃーー!!
談幸師匠のところに新しくお弟子さんが数名入ったことは知っていたけれど、そのお弟子さんの初高座に遭遇できるとは。感動!
すごく口調がよくてとても初高座とは思えない。テンポがよくてパキっとしていて上手だわ~と思って聞いていたら、途中でちょっとあれ?口ごもって思い出すしぐさ。思わず「がんばれー」と声援。
これからうまくなりそうだなー。楽しみ。


双葉さん「たがや」&かっぽれ
前にあがったコウシさんのことを「すごくうまいし落ち着いててとても初高座とは思えない。口ごもってくれてよかった。そうじゃなかったらうますぎてにくたらしくなっちゃう」。

まくらでお客さんの心をぐっとつかみそうになるんだけどなんとなく強引で中途半端。
噺もこの位置で「たがや」。ええ?ここでやっちゃったらもうあとの師匠できなくなるじゃん…。しかも覚えたてなのかはっきりしないし、そもそも時間的に中途半端。そしてさすがにこれだけじゃ終われないと思ったのか、かっぽれ。これも微妙。うーん…。
うるさいことは言いたくないけど、出る位置とかそこで求められている仕事っていうのがあるのではないかしらん。


希光さん「犬の目」
面白いなぁ、希光さん。「犬の目」も前に見た「うどんや」ほどこなれてない感じはあったけど、この日のお客さんにぴったり合っててすごい盛り上がった。

夢花師匠「あくび指南」
ドビーのまくらに来ていたお子さんたちが大喜び。
落語に入ってからも子どもの笑い声が聞こえてきて、夢花師匠も「すごく小さいお子さんだけが笑ってくれてる…よしあの子のためだけにやろう」とつぶやくほど(笑)。
そのあと「…吉原につーっと行くってぇとなじみの女が」でまた子どもの笑い声。
「おかしいなぁ。吉原がわかるわけないのになぁ…」とつぶやいて「吉原…ディズニーランドに行って」と中途半端に言い換えたのがまたすごくおかしくて。

楽しいなぁ。夢花師匠。最高だ。


遊吉師匠「安兵衛狐」
大好きな師匠。いつものまくらでお辞儀をするしぐさがたまらなくおかしい。
しかも噺に入ってからもこのしぐさを何回もするからおかしくておかしくて。
幽霊の女房も狐の女房も両方ともとってもかわいかった。


圓輔師匠「船徳
不愉快な漫談に毛羽立った心を園輔師匠に静められる。どうどう…。
お詣りに来た二人が船宿を訪れるところから。
この位置でやるから結構あちこち刈り込んであるコンパクト版だったんだけど、楽しかった~。
いろいろ面白いところはたくさんあったんだけど、なにがってもうほんとに船に乗っているようにしか見えない揺れ具合がすごかったな…。素敵な師匠。


伸治師匠「初天神
まくらで自分の家を表現するのに、くねっと女座りするのが色っぽくてたまらなくおかしい。
客席にお子さんが多かったから「初天神」だったのかな。かわいい笑い声があちこちから聞こえて微笑ましかった~。


笑遊師匠「祇園祭
アグレッシブな「祇園祭」。この師匠が出てくるといろんな意味でどきどきしちゃうな。
楽しかった。京都の人のにくたらしいこと(笑)。


鯉栄先生「赤穂義士銘々伝 赤垣源蔵徳利の別れ」
短い時間でざわざわした客席をぐっとひきつけて物語の世界へ引っ張り込んで風のように去って行く。
かっこいい…。鯉栄先生、もっと見たい。

歌春師匠「鮑熨斗」
最近、いつもの漫談だけじゃなくて、落語を聞かせてくれるからうれしい。
ふわふわした歌春師匠のキャラクターと甚兵衛さんが合っていて楽しかった。


圓馬師匠「お化け長屋」
待ってました!の圓馬師匠。
最初の怪談が本当に怖くて、それだけに次に来た江戸っ子にその怪談がまったく通じないのがすごくおかしい。

そして何を言っても「なんだおめぇ、はっきりしねぇやろうだな」「後家だから一人暮らしに決まってるだろう!」と文句ばっかり言ってた男が、泥棒が後家さんの胸元に手を入れたというところで急に食いついてきて「なに?え?胸元に手をって、おっぱい?おっぱいにか?」とにかにかするのがたまらなくおかしい。

楽しかったなぁ、圓馬師匠のトリの芝居。

大江戸悪人物語2017-18 episode 3

8/17(木)、日本橋社会教育会館で行われた「大江戸悪人物語2017-18 episode 3」に行ってきた。

 

・ひしもち「二人旅」
・松之丞「慶安太平記−丸橋忠弥登場〜忠弥正雪と立ち会い神田」
~仲入り~
・龍玉「真景累ヶ淵−豊志賀」

ひしもちさん「二人旅」
アナウンスの声で「あ、ひしもちさんだ」と分かる友だちに大笑い。確かにそう言われて聞いてみるとひしもちさんなんだけど、声だけで分かるって相当すごい。
出てきたらやっぱりひしもちさんで笑った。
「二人旅」ってほんとに難しい噺だよね。ベテランの真打の師匠がやってもくすりとも笑いが起こられないことが多い。でも前に市馬師匠が末廣亭で「二人旅」をやったとき、ずっとくすくす笑ってた小学生の男の子がいて、この噺のなんかこう…くすくす笑っちゃう面白さが、こんな小さい子にもわかるんだって驚いた。

ひしもちさんの「二人旅」も、田舎ののんびりした風景が浮かんできて、よかった。もちろん見る人が見たら全然まだまだ、なんだろうけど。
やなぎ屋のおばあさんの孫を呼ぶこえがばかにおかしかったなぁ。
最初に出てきた頃は滑舌も悪いし大丈夫か?と思っていたけど、言葉もとても聞きやすくなったしじんわりとした面白さがでてきてるし楽しみだな、ひしもちさん。


松之丞さん「慶安太平記−丸橋忠弥登場〜忠弥正雪と立ち会い神田」
前座のひしもちさんを龍玉師匠がずっと袖から見ていた、と松之丞さん。
ほら、龍玉師匠って…絶対他人に興味ないじゃないですか。
それなのにひしもちさんは一門だからやっぱり気になるんだなって…きっと高座を見てもアドバイスとかしないんだろうけど、でも最初から最後までじっと見ている龍玉師匠の姿を見ていて、なんかじーんときちゃいました。

で、私がこんな話を長々しているのはなぜかというと…これからするお話がそんなに山場がないというか…正直面白くないんですね。その分龍玉師匠のされる「豊志賀」が文句なく面白いですから。まぁそうやってバランスとってるんですね。

…そんなまくらから「慶安太平記−丸橋忠弥登場〜忠弥正雪と立ち会い神田」。
丸橋忠弥という槍の名人が、自分の道場のそばに道場を作り自らを「名人」と名乗る正雪が気に入らない!と自分の義兄弟を訪ねて「一緒に倒そう」と持ちかけるところから。
義兄弟に「あんなのは山師に決まってるから相手にすることはない」「万が一こちらが負けるようなことがあれば損をするばかり」と相手にされなかった丸橋。
血の気の多い人なので「兄弟の縁なんかきってやる!」と言って家を飛び出すのだが、少し弱気なところもあるのでそのまま一人で正雪の道場を訪ねることはしなかった。
自らが正雪の道場に道場破りを仕掛けると、その門弟とも勝負しなければならないし損だと考え、正雪が足繁く通う絵師のもとを訪ねそこで正雪に勝負を挑むことを企む。

企み通り正雪一人のところに勝負を仕掛けることに成功した丸橋だったのだが、正雪に勝負は自分の道場でしようと言われ、しぶしぶ従うことに。
いざ道場へ行くと、さんざん待たされたあげく、門弟とも戦わなければならなくなってしまう。
しかし丸橋の槍の腕前は素晴らしく、門弟ではまったく相手にならず、正雪も槍では叶わないのだが、最後追い詰められた時に槍を投げ捨て白扇一本を手に気迫だけで丸橋を「参った」と言わせる。
このことで丸橋は正雪がただの山師でないことを悟り、また正雪も丸橋の槍の腕前を認め、自分の道場に1日おきに槍を教えに来てもらうように乞う。

こうして丸橋を抱きかかえることに成功した正雪は、この後丸橋の義兄弟も自分の味方に引き入れ、幕府転覆にむけて着々と準備を進めることに…。

今回の話はぱっとしないというわりにやっぱり面白くて夢中になって聞いていた。
松之丞さん、「引き」が以前よりもっとうまくなっていて、緩急が自在なので聞いていて気持ちいい。
決して好きな「芸風」ではないのだけれど、やっぱりさすが面白い。


龍玉師匠「真景累ヶ淵−豊志賀」
まくらなしで。
「豊志賀」はこの間馬治師匠で初めて聞いたのだけれど、面白いなぁ…この噺。
決して好きなタイプの噺じゃないけど、なんかこの…豊志賀の気持ちもすごくよくわかるし、新吉の気持ちもよくわかる。
堅いと言われていた豊志賀が、自分より18歳も下の新吉とふとしたことから深い仲になり夢中になってしまう。
そんな豊志賀のもとから弟子はどんどん去って行き、残ったのがお久という若い娘。それほどの器量よしではないけれど男好きのする愛嬌のある娘で、これに嫉妬した豊志賀が病になり目のところに出来物が出来て容色が落ち、それを気に病んでますます病が酷くなり、嫉妬の炎を抑えることができず奇行に走るように…。

豊志賀がどんどん不気味になっていき、それに新吉が気持ち悪がり…でもそれを隠し看病をし…でも…というこの二人の葛藤がとても真に迫っていて怖い。

笑っちゃったのは豊志賀がこんな風になってしまったことを「でも仕方ないんです。この時豊志賀は39歳。39歳と言えばもうおばあさん…。はっ!今の時代じゃないですよ!今は39歳といえばまだまだ女盛り。60歳といってもまだまだ…!でもこの時代は寿命が50歳という時代ですから。その時代の39歳ですから。今の39歳を言ってるわけじゃないんです」。
こんなに冷酷に噺を進めていた龍玉師匠が急に素に戻っていつまでもくどくど言い訳するのがおかしくておかしくて。

怖くて陰惨だけど面白い!次回がまた楽しみ。

鈴本演芸場8月中席 納涼名選会 鈴本夏まつり 吉例夏夜噺 さん喬・権太楼 特選集

8/14(月)鈴本演芸場8月中席 納涼名選会 鈴本夏まつり 吉例夏夜噺 さん喬・権太楼 特選集に行って来た。
開演17時20分だったので前座さんが上がってさん助師匠は17時30分ぐらいかな、なんて思っていたんだけど、当日鈴本のサイトを見て前座さんが上がらないことに気付く。あぶねー。

・さん助「十徳」
・仙三郎社中 太神楽
・三三「元犬」
・一之輔「代書屋」
・市馬「花筏
・夢葉 マジック
喬太郎「義眼」
・新治「兵庫船」
~仲入り~
・ぺぺ桜井 ギター漫談
・権太楼「花見の仇討」
・正楽 紙切り
・さん喬「中村仲蔵
 
さん助師匠「十徳」
会場に入った時に女性とすれ違い、さん助師匠の顔を見て「はっ」としたので、「あら、面が割れた?」と思ったら、その女性ぱっと目をそらして行ってしまったらしい。
できれば気が付いた時は目をそらしたりしないで「こんにちは」と言ってください…。
 
…ぶわははは!
そういえばこの間も国立演芸場でも同じようなことを言っていたことを思い出した。
 
駅から国立演芸場に向かう途中にあるコンビニに入ったら、すれ違った女性がさん助師匠を見て「はっ」としたので、あれ?気づかれた?帽子をかぶると自分の身体的特徴が80%ぐらいなくなってしまうから気付かれることなんてないのに?と思っていたら、開演してみるとその女性が客席の最前列に座っていた。
もしかして私を目当てに?よーし!がんばっちゃおうかなと思って出て行ったら、その女性、さん助師匠が話し始めたとたんに爆睡。
起こさないようにそっとやりました…。
ぷぷぷっ。
 
そんなまくらから、八つぁんがご隠居の所へ訪ねてきたところ。
浅い出番だから「雑俳」かな?なんて思っていたら、八つぁんが「さっきご隠居が変な服着て歩いてたでしょ?それを若い連中で集まっていて見たんですよ。あれ?なに着てるんだろう?あれは帷子のねんねこかな、とあたしが言ったらみんなにえらい笑われちゃいまして」。
お?なんか聞いたがあるようなないような…なんだっけ、これ?
 
そう言われて隠居が「そりゃ悪いことをしたな。あたしのせいで恥をかかせちゃったね」って言うの、なんかいいな。
仲いいんだね、隠居と八つぁん。
 
「これは十徳と言ってね」
「どういう字ですか?」
「数字の10に徳と書いて十徳」
「どういうわけで?」
「いや別にわけはないんだよ。」
「いやでも何か意味があってそういう名前になったんでしょう。どういうわけで?」
「いやないよ」
「でも何も意味がないなんてことはないでしょう」
「ないよ」
「意味がねぇなんてことないでしょ。そんなこと天が許してもあたしが許さない!」
 
…ぶわはははは。なんだ、この会話。おかしい!
 
それで仕方なくご隠居が「この帷子はこうして立っていると着物のごとく。こうして座ると羽織のごとく。ごとくとごとくで十徳だ」
それからご隠居が両国橋と一石橋の名前の謂れも教えてくれて、「よーし!じゃやってきます。その橋の名前の話をまずはまくらに」と八つぁんが出て行こうとすると「ほかでやるのかい?やめておきな。うまくいかないから。あたしがうけあうから」と隠居。
 
それから若い連中が集まってるところに八つぁんが勇んでいってやってみるんだけど、ご隠居が心配したとおり、ごちゃごちゃになってうまくいかない。
ごくバカバカしい噺だけど楽しかった~。
こういうマニアなお客さんが多いときにこういう珍しい噺をするのはいいよね!
 
一之輔師匠「代書屋」
ひざ隠しが出てきたのでびっくりしたら、なんでも膝を痛めて正座ができないらしい。
病院に行ってみてもらったら、一之輔師匠は膝のお皿が小さくて痛めやすいらしいのだが、おじいさんのお医者さんが言い間違えて「あなたは器が小さいから」。ぷぷぷっ。
金馬師匠の真似してるわけじゃありませんと言いながら「代書屋」。机を前にすると「代書屋」やりやすいのかな。
 
一之輔師匠らしい工夫がいっぱい。
代書屋に来た男の名前が「中村吉右衛門」だったり、「履歴書」も「れーきしょ」とか、座るとふんどしからはみ出しているのが「右」なんだけど直したら両方からはみ出しちゃったり、下駄の「減り止め」売ったら2時間で40個売れたと聞いて代書屋が「才能があるからもっとがんばって!」と言ったり。
 
それでもやっぱり噺自体があんまり面白くないからこの程度かー。なんていったら失礼か。
 
市馬師匠「花筏
まくらで相撲の呼び出しをやったんだけど本当にうまくて声が惚れ惚れするくらい良くてうっとり。
拍手が起きると「最近ね、こっち(呼び出し)の方が拍手が大きくて…ちょっと気にしてるんです」。
わははは。
この位置で「花筏」をさらっとやっちゃう市馬師匠が好き。
トリでたっぷり聞くとそんなに面白くもない噺だなと思ったりするけど、こんなふうにあっさりとされると面白い。
濃い目の落語が続いたのでちょっと一息つけた感じ。
 
新治師匠「兵庫船」
この芝居は、仲入りの新治師匠が楽しみ!
伸びやかで明るくてきれいですごく素敵。きれいだけどきれいすぎないところも好き。
私この師匠が東京にいたら絶対追っかけてるなー。
 
「兵庫船」は初めて聞く噺。
金毘羅詣りを終えた喜六と清八が船に乗り込む。
船に乗り込んだ人たちがどこから来たのか尋ねられて答えたり、謎かけをしたり…。
この謎かけがすごく面白い。
特に早合点してすぐに「やるやる!」と手を挙げて答える喜六のポンコツな答えが面白くて笑ってしまう
 
そのうち船が動いてないことに誰かが気付くと、船頭が「気づいたか。実は鮫が船の下にいてかじりついてるから動かない。だれかにいけにえになってもらわないといけない」と言う。
川に自分の持ち物を落としてそれが流れていけばよし、沈んでいったらその人が生贄になるしかない、ということに。
 
ここまで聞いて、おお?これは「鮫講釈」か?!と思ったのだが、講釈師は出てこない。
大仰な噺じゃなくて軽くてバカバカしい噺だったのも楽しかったなー。
よかった!

権太楼師匠「花見の仇討」
権太楼師匠はクスグリで「森友学園」をよく使っていて、一部すごく喜ぶお客さんがいるけど私は何が面白いのか全然わからない。おっさんは政治ネタが面白いのかなぁ…。
と冷ややかに聞き始めていたんだけど、やっぱり面白い、本気出したときの権太楼師匠。
芝居の稽古の場面もおかしかったし、耳の通いおじさんに六部の恰好をしていた六さんが掴まって一生懸命言い訳するのに何も聞こえなくて「ああ、だめだ。おじさんつんぼだから」と言うと「誰がつんぼだって?」とそこだけ聞こえるのがすごくおかしい。
でも私が一番笑ったのが、巡礼兄弟役が浪人役に仇討をする場面。
物見高い江戸っ子たちが集まっているところにさっき会った侍が「助太刀をいたす」と現れた時に、浪人役の熊さんが「…誰?」って言ったのがもう死ぬほどおかしかった。間といい声の大きさといい表情といい…完璧だったなぁ。
今でもあの「誰?」を思い出すと笑ってしまう。最高だった。

さん喬師匠「中村仲蔵
私は人情噺より滑稽噺の方が好きなんだけど、この噺は大好き。
さん喬師匠の「中村仲蔵」は前にも聞いたことがあったんだけど、その時とまた違っていた。
細かいところは覚えてないんだけど、後半部分が芝居がかりになって三味線が入ってたりしたの…前に見た時はなかったような記憶が(もやもや)。
とても丁寧な「中村仲蔵」。
改名する前の仲蔵が台詞を忘れて團十郎のもとへ駆け寄り小声で「台詞を忘れました」と言ったのを逆に團十郎に褒められたエピソードは初めて聞いた。
そして定九郎に役が決まってがっかりした仲蔵だったが、毎日稽古をしながらお稲荷様をお参りする場面も…前を歩く村人が稽古と思わず本当に盗賊が出てきたのかと思って腰を抜かしたりして楽しい。
一心に役作りのことを考えていた仲蔵が、蕎麦屋で会った浪人の姿に「これだ!」とひらめいて浪人に食らいつくようにして細かいところを確認しようとするところ、舞台では見事に演じきっているのに客の反応が薄いことを気にして「ああ、しくじった…」と気にするところ、せめて楽屋仲間からは何か言ってもらえるかと思ったのに何も声をかけてもらえずがっかりして家に帰るところ。芸人としての強さと人間的なところ、両方が垣間見れていい。
二人の師匠に呼ばれて「お前を弟子にして本当によかった」と褒められるところは、見ている側も思わず涙。

とても満足度の高い会。前売り買わないといけないけど、来年も忘れずに買えますように。

柳家小はぜ勉強会 其の三

8/12、和光大学ポプリホール鶴川で行われた「柳家小はぜ勉強会 其の三」に行ってきた。


・小はぜ「道灌」
・小はぜ「宿屋の富」
~仲入り~
・小はぜ「百川」


小はぜさん「道灌」
この日は朝太郎さんが勉強に来ていて始まる前の挨拶と諸注意をしたんだけど、実は当日になるまで全く知らなかった、という小はぜさん。
たまたま後ろから会場をのぞいたら朝太郎さんが挨拶をしているところで…自分以外の人間が緊張しているのを見るのはいいものですね。なんかこう…励まされます。
でも勉強させてくれと言われても彼とは1年しか違わなくて、私も二ツ目になってやっと半年なので、なにもないんですけどね。
そしてこういうところを見られるのは恥ずかしいなという気持ちがあります。でもそれと同時に、こんな会場でこんなに大勢のお客様がいらしてくれてるんだよ!と、そこは見てもらって嬉しい気持ちもあります。

今日はお盆のさなかにこんなに大勢来ていただいてありがとうございます。他にしなくちゃいけないこともあるでしょうに…。
こういう時にせっかく来ていただいたので、なにかこう「場所」を感じられる噺を続けて申し上げようと思います。

…小はぜさんの人柄がにじみ出るようなまくらが大好き。
ご本人はきっとまくらは苦手なんだろうけど、聞いていてほんとに微笑ましくて応援したくなっちゃうんだな。

そんなまくらから「道灌」。
小はぜさんで一番聞いているのがこの「道灌」だけど、二ツ目になってから聞くと印象が少し変わってる。
前座の頃はとにかく素直に…何も入れずに淡々とやっていたけど、今も余計なものは何一つ入ってはいないんだけど、でもなんだろう、茶目っ気があるっていうか…それが小はぜさんの味なのかな、そういうものがにじみ出ている気がする。
小はぜさんの目指す落語がほんの少し垣間見れる気がして、好きだな。小はぜさんの「道灌」。


小はぜさん「宿屋の富」
馬喰町を舞台にした噺とは知らなかった。
宿屋の主人に奥さんが「二階の客が怪しい」「もう二十日いるのにほとんどでかけないしお金も一銭も入れない」と言うところから。
奥さんに言われて主人が仕方なく客のもとを訪れて前金をもらおうとすると、客が自分はこんななりをしているけどとんでもなく金持ちなのだ、と話しだす。

次々繰り出すありえない金持ちエピソードを全て信じて感心する宿屋の主人がなんともいえずチャーミング。
感心しきりの主人が、自分は悪い癖があって(おそらく博打?)前はちゃんとした宿屋をやっていたのだがだめにしてしまって今はこんな汚い貧乏宿屋をやっている。それだけじゃ生活できないので富くじを売ってる。というような打ち明け話をして、「そんなにお金があるんだったら売れ残ってるくじを買ってくれないか」と頼む。
「そんなのがあたって金がますます増えたら困る」と客が言うと、「当たらないんです!」と主人。それでもそういう無欲な人ほど当てたりするから、もし当たってしまったら私に半分くれませんか?

主人がいなくなってから「こんなもんは当たらないだよ」「おら知ってるだ」と言いながら、でもまぁ見に行ってみるか、と出かけていき、結果を見て真っ青になって帰ってくる。
そのすぐあとに主人も真っ青になって帰ってくる。

ほんとに客の言うことを100%信じ切ってる主人が、客が当たった半分を分けてもらえる!と心底喜んでいて、その姿をみて「良かったね…」と思えたのも初めてだったなー。
面白いな、同じ噺でも、こんなふうに印象が違うのって。


小はぜさん「百川」
さきほどの「宿屋の富」はネタ卸しでした、と小はぜさん。
田舎者が出てくる噺というのが落語にはありますけど、この噺は田舎者が出ずっぱりなのでやってみるとそこがとても大変で。
そもそも自分にないもので、稽古をしていても、なんか違う…これはちょっと無理がある…と悶々と。
自分は今実家暮らしをしているので、そうやってちょっと煮詰まってイライラしている時に母親が部屋に入ってきてなんだかんだと言われると、「あんだと?!」と思わず口答えしていたりして、母親も「あんたどうしたの?ついにおかしくなった?」と。

あ、あと思い出したんですけど…、私、家で汚い作務衣を着てまして。作務衣っていうのはあの…お寺の人が落ち葉を掃くときに着ているような服で…って別に落ち葉掃くときだけじゃないですけど、着るのは…。
かなり年季の入った作務衣なんですけど、この間家で一人でいたらピンポンが鳴りまして、開けてみるとこれが…きれいな女性が日がそんなにさしているわけでもないのに日傘をさして…いわゆるこの…宗教の勧誘の方たちだったんです。
それが私が出て行ったら、坊主頭で作務衣を着ているものですから、「あ、間違ったところに来ちゃった」とすぐに察していただけたようで…。

…ぶわははは!!そのエピソード、最高!

そんなまくらから「百川」。
これは日本橋が舞台。
「宿屋の富」と少しテイストが似ているのでは?と思ったのだが、この「百川」がとてもよかった。

なにがいいって、小はぜさんの江戸っ子がとても威勢がよくて、そしてなんかこう持って回った言い方をするのが、百兵衛さんのなまりと同じぐらい何言ってるかわからない感があって、だからただ田舎者を笑うっていうんじゃなく、お互いに何言ってるかわからないんだな、っていう楽しさ。
この噺ってただ田舎者を笑うっていうふうになる人もいてそうするとなんかあんまり好きじゃないな、この噺、って思うんだけど、この両者の対比がとても楽しくてよかった~。

ちゃんと目指すものを持っていてひたむきに頑張る小はぜさん。
こちらの会はそんな小はぜさんを温かく見守るお客さんが大勢で、とてもいい雰囲気だった。

末廣亭8月中席昼の部・夜の部

8/11(金)、末廣亭8月中席昼の部・夜の部に行ってきた。
お目当ては昼の部のトリ圓馬師匠。
夜の部の昇太師匠はずいぶん久しぶりだけど、楽しいに決まってるので朝から入って最後まで居続けようと伊勢丹でお昼用のお弁当と夜用のおにぎりを買いこんで。


昼の部
・馬ん長「つる」
・柳若「猫の皿」
・よし乃 太神楽
・希光「時うどん」
・夢花「魚根問」
チャーリーカンパニー コント
・昇乃進「善光寺由来」
・遊吉「粗忽の釘
東京ボーイズ
・圓輔「短命」
・笑遊「蝦蟇の油」
・今丸 紙切り
小遊三金明竹
~仲入り~
・鯉栄「宮本武蔵伝 退治」
北見伸 マジック
・歌春「たらちね」
・遊三「ぱぴぷ」
青年団 コント
・圓馬「井戸の茶碗

夜の部
・昇咲「寿限無
・昇吾「牛ほめ」
・マグナム小林 バイオリン漫談
・可龍「狂言マック」
・柳太郎「万引き息子」
・南玉 曲独楽
・米福「大安売り」
柳橋「替り目」
・D51 コント
・文治「鈴ヶ森」
・桃太郎「裕次郎物語
~仲入り~
・昇也「短命」
・Wモアモア 漫才
遊雀「熊の皮」
・柳好「たがや」
ボンボンブラザーズ 曲芸
・昇太「壺算」

 

希光さん「時うどん」
二ツ目昇進の初日に遭遇することができてラッキー。
いやそれにしても堂々としてる。文句なく面白いし、すごいな、この人。


夢花師匠「魚根問」
これほんとにサイコーに面白い。ただただバカバカしくてこの日のお客さんにばっちり合ってて、どかんどかんウケてものすごい一体感。
芸協祭りの松鯉先生の見世物小屋でひたすらバカバカしい見世物を披露する夢花師匠とこの噺と見事にマッチしてるなー。大好きだ。


遊吉師匠「粗忽の釘
この師匠も大好き。まくらはいつも同じだけど(笑)でもいつも笑っちゃう。学生の考えた(あるいはぱくった?)小噺。
粗忽の釘」もこの師匠にぴったり。軽くてばかばかしい。


圓輔師匠「短命」
好きだー。圓輔師匠。
「短命」も楽しかった~。帰ってからおかみさん相手にご飯をよそってもらおうとしたときの、おかみさんの抵抗がすごく激しくて大笑い。


笑遊師匠「蝦蟇の油」
アグレッシブな「蝦蟇の油」。客席に喧嘩を売りつつ(ドキドキ…)オーバーアクションで楽しい。


小遊三師匠「金明竹
「透き通ったバカだな」のフレーズが大好き。
小遊三師匠の落語もいつも楽しくて好き。


鯉栄先生「宮本武蔵伝 退治」
メリハリがあってかっこいい~。みんな松之丞さんばかり褒めてないで鯉栄先生だってすっごくいいんだから~!
客席を巻き込むのもうまい。この日は初めてのお客様が多かったけど、客席がぐいっと惹きつけられるのを感じた。すばらしい。


圓馬師匠「井戸の茶碗
しゅっとしていて素敵なんだけど時々え?!と驚くようなギャグが混じるところがたまらない。
千代田氏、高木氏、そして清兵衛さん、3人のキャラクターがそれぞれ違うのでメリハリがあって楽しい。
よかった~。


可龍師匠「狂言マック」
この日のお客さんにはぴったりマッチしていてすごいウケてた。
狂言の部分がすごくきれいだから余計にばかばかしくておかしい。


文治師匠「鈴ヶ森」
見るほどに苦手になっていく~。
人は決して嫌いじゃないんだけど、落語がとても苦手。コテコテすぎて。
「あたしだってまんざらバカじゃないんですから」にかぶせるように「ばかだよ!」。これがちーっとも面白く感じられないからほとんどまったく笑えないんだな。


桃太郎師匠「裕次郎物語
この師匠も大の苦手で普段はできるだけ当たらないように気を付けているんだけど、この日はもう満員のお客さんだったし端っこじゃなく真ん中の席だったので席を外すわけにもいかずひさしぶりに…。
久しぶりに聞いて、なにもそんなに嫌がらなくてもええやんけ俺…と思ったりもしながらも、やっぱり苦手。好みばかりはしかたない。


昇也さん「短命」
まくらでどっかん!とウケてたんだけど「短命」に入ったのでびっくり。
昼の部で圓輔師匠が「短命」かけてたから!
昼夜通しのお客さんが多かったし、初めての人が多いだろうと何人かの噺家さんが「我々はネタ帳というのを見て、同じ噺がかからないようにしている」と話していたので、「え?同じ?」と驚く人もいて、ちょっと微妙な空気に。
前座さんが止めにくるかなと思っていたけど、それもなかった。こういうこともあるのかー。


柳好師匠「たがや」
まくらは声が小さくて自信なさげなのに噺に入ると堂々として口調も良くなるのが面白いな、この師匠。
啖呵を言い終わった後に「二日酔いで啖呵を二か所間違えた」と言うので大笑い。
楽しかった!


昇太師匠「壺算」
まくらではNHKの大河に出た話や紅白歌合戦の審査員をしたときの話。
もうとにかく楽しい。これだけ売れてて、それでも全然嫌味がなくて、いつ見ても明るくて楽しそうでサービス精神旺盛で。すばらしいな。
まくらたっぷりで「壺算」やって、終わった後そのまま終わりじゃなくて「なにやろうか考えて自分の得意な噺にしちゃえ!って逃げちゃいました」に大笑い。
この噺、二ツ目の時に南なん師匠に教わった、と。きゃーーー!!「不思議な顔をした師匠です」にまた大笑い。
なんかうまくやれなくてずーっとやってなかったんだけど、ある時、弟分が「買ってくれーー」って激しく言って相手の首筋を舐めるっていうのを思いついてやるようになったら自分の中でしっくりきて、それ以来やってる、っていうのも面白かった。

末廣亭8月上席夜の部


8/10(木)、末廣亭8月上席夜の部に行ってきた。
この日は有休をとっていて昼は国立演芸場に行き、夜は末廣亭に行くか池袋に行くか悩んだんだけど、菊之丞師匠のトリも久しぶりに見てみたいと思って、末廣亭へ。
昼の国立とだぶってる方(東京ガールズ、カンジヤママイム、玉の輔師匠)もいて、なんか追っかけみたいになっちゃった。


・市花「やかん」
・八ゑ馬「?」(新作)
・玉の輔「紙入れ」
・東京ガールズ
・歌奴「新聞記事」
笑組 漫才
・さん福「壺算」
・馬の助「味噌豆」
・カンジヤマ・マイム パントマイム
・一朝「たがや」
小満ん「夢の酒」
~仲入り~
・菊志ん「粗忽長屋
・勝丸 太神楽
・歌之介 漫談
・圓太郎「つる」
・正楽 紙切り
・菊之丞「大山詣り

 

市花さん「やかん」
二ツ目前らしくなってきたなぁ。かわいいしうまいし嫌味がないし、落語好きのじじばばからも愛されてる印象(私も含む)。
途中で「なんでそんな大きな声を出すんだ?」「これぐらいやらないと前座の熱意が伝わらない」というのが入って大笑い。


一朝師匠「たがや」
この位置で「たがや」をけろっとかけてしまう一朝師匠のかっこよさよ…。
威勢がよくて明るくて軽いからただただバカバカしくて楽しい。
ほんとに花火を見たような清々しさ。ってほんとに上がるのは花火じゃないけど。わははは。


小満ん師匠「夢の酒」
マイベスト「夢の酒」は南なん師匠なんだけど、それとはまた全然違う味の「夢の酒」。これはまたこれでかっこいい~。
南なん師匠の「夢の酒」は大旦那の優しさがじんわりと伝わってくるんだけど、小満ん師匠の「夢の酒」は洒脱というかおしゃれというかかっこいいというか。
大旦那が夢の中でご新造の家を訪ねた時に、その家の様子とか出てきたじゅんさいなんかに目をやって「ここで酒を飲んだら楽しかろう」とキラッと思うのがなんともいえず洒落ていて楽しい。
仲入りで小満ん師匠を見られる幸せ。


菊之丞師匠「大山詣り
楽しい~。
菊之丞師匠は女の人がとっても色っぽくて女らしいから、くまさんがおかみさん連中を集めて嘘話をした時のおかみさんの反応がめちゃくちゃ楽しい。
やりようによっては少し後味の悪いこの噺、坊主になったおかみさんたちのきゃーきゃーいう声が聞こえてくるようで楽しかった。