りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

さん助ドッポ

8/28(月)、お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」に行ってきた。

 

・さん助 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第十一回「嘉助の独白」
~仲入り~
・さん助「景清」


さん助師匠 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第十一回「嘉助の独白」
まずはいつものように立ち話から。
国立演芸場に出ていたさん助師匠。仲入りに小のぶ師匠が出ていらした。
小のぶ師匠は自分の出番の1時間前には楽屋入りするので、結構お話をする機会があって。
あるときさん助師匠が高座の後に水を飲んでいたら、それをじーっと見ていた小のぶ師匠。
「あなた…もしかして…お若いんですか?」
「え、ええ。2年前に真打になりました」
「じゃ、いろいろ(仕事などの)経験をされてから…入門されて?」
「い、いえ。大学卒業してすぐに」
「え…」
小のぶ師匠、本当に驚いたらしくしばし絶句。非常に気まずい沈黙が(笑)。

そしてさん助師匠は前から小のぶ師匠に聞きたいと思っていたことが。
それは小のぶ師匠って声は小さいけれど所作がとても大きくて激しい。
特に「火焔太鼓」をやるときなんかもうびっくりするくらいオーバーアクション。それがとても気になっていた。
さすがにそのまま聞くことはできなかったけれど、ちょっと伺ってみたら、「私が若いころは先輩から高座に上がったら全力でやらなくちゃいけない。うけてもうけなくても全力を出せ。そう教えられたんです」と。
それを聞いて「素晴らしいな!」と思ったけれど、私の場合、体力がないものですから…そっとやろうかな、と。


…水の話は前にまくらで聞いたことがあったけど、大先輩にかなりの年寄りと思われていたっていうのもおかしいし、先輩に「全力でやれ」と言われたから今でもびっくりするくらい情熱的に高座をつとめている小のぶ師匠が素敵だし、その話をさん助師匠が直接聞いたっていうのも素敵。
くーーー。やっぱり寄席ってほんとにいいなぁ。

それからロマンスカーに乗った時の話。
ロマンスカーに乗ったら隣のサラリーマン…50代ぐらいのおじさんたちが飲んでいて壇蜜の胸がいいだの尻がいいだの唇がエロいだのとずーーっと女の話をしていて、「ほらあのドラマに出てた…ほらあの…なんだっけ、あの、人の名前のタイトルで…なんちゃら!っていうほら、決め台詞があるやつ…」みたいなことをやいやいいっていて「それは半沢直樹!!」と言いたくてうずうず…。
そのうち車内販売がきて、かわいい女の子だったので、この人たちセクハラみたいなことをするんじゃないだろうかとドキドキして見ていたら、「あ、ビールください」「ぼくはコーヒー」と今までと打って変わって声も小さくなってきちんとしてる。
あれ?と思っていると、彼女が去って行ってドアが閉まったとたんに「かわいい!!」「おれ、ドストライクだった!」と大騒ぎしてる。
見ていて、なんかかわいいなぁと思っちゃいました。

…ぶわははは。
なんかかわいいなぁ、そのおじさんたち。
そして、さん助師匠が「半沢直樹」を知っていることにびっくりだよ。
い、イメージが…(←やっぱりおじいさんと思ってる)

そんな立ち話から自分でカーテンを開けて高座へ。
こちらの会ではいつもさん助師匠が人物相関図や前回のあらすじを手書きで書いて配っているんだけど、どうしても書くのが前の日になってしまったりしてバタバタする。今回は2日前に人物相関図を書き上げたので、自分にしたら抜かりはないぜ!と思っていたら、今回の噺の主人公である嘉助を図に入れるのを忘れてた!
いったいなんのための相関図なのか。
今日の噺を聞けばどういう人物なのかはわかりますから、こちらの図に自分で書き足しておいてください。
そんなまくらから「嘉助の独白」へ。

源次と宗太郎の死体を乗せた舟は霊岸島へ着き、迎えに来た奉公人たちは舟の中の惨状を見て驚愕する。
事情を聞いた清蔵が確かめに行こうとすると宗太郎の妻・お貞も一緒に行くという。
清蔵が「奥様はここでお待ちください。」と言うとお貞は「西海屋主の妻として見届けるつもりです」と気丈にふるまう。
それならとお貞を連れて舟へ行き、中を覗き込むと、そこには二人の死体が。
使われた刀が宗太郎の物だったことから、源次が宗太郎の金を奪おうとして襲い掛かり、二人でもみ合ううちに死んだのだろう、ということになる。

西海屋は宗太郎とお貞の子である松太郎が継ぐべきと清蔵は言うのだが、松太郎はまだ幼いため、松太郎が成人するまでの約束で清蔵が主となる。
またそうなると妻をもらわないといけないということで、お貞が清蔵の妻となったのだった。

翌年、店の者がみな出払ったある日、飯炊きの嘉助がお貞に内緒の話がしたいと部屋を訪ねてくる。
奥様にお話ししなければならないと思っていたのだが、なかなか二人きりになれなくて…と言って嘉助が語ったのは…。

清蔵のお供で出かけた帰り、清蔵が「元は奉公人だった自分がこうして主になって、お前も不愉快に思っているのではないか」と言うので「そんなことはごぜぇません。あなたは西海屋のことを心から大切に思い切り盛りしてくれて、感謝しておりますだ」と答えると「そうか、ありがとう。お前にはいずれのれん分けをしたいと思っている。どうだ?ちょっと家に寄っていくか」と言うので、てっきり店に帰るのかと思っているとそうではなく、とある小さいけれど手入れの行き届いた家へ案内された。
そこには女中がいて、中にはとても美しい女がいた。
「なんでも食べたいものを」と言われ、昔一度だけ食べた鰻が忘れられないというと、取寄せてくれ、うまい酒も飲ませてもらった。

そしてこの女に見覚えはないか?と言うので、よくよく見てびっくりした。
それは宗太郎の破滅の原因になったお静だったのだ。

そして清蔵は、お静と自分は宗太郎がお静と知り合う前からの深い仲だった。
自分はいずれはお静を妻として西海屋に招き入れたい。
それにはお貞と松太郎が邪魔なので殺すつもりだから手伝ってくれるかと言う。
それを聞いて、もしや宗太郎を殺したのも…?と聞くと、それも自分がしたことだ、と。

なぜそんなことを…と問うと、自分は確かに西海屋の主人である平兵衛のおかげで死なずにすんだけれど、あのバカの宗太郎と一緒に育ち、ある時自分がたまたま上座に座っていたら、それを平兵衛に見とがめられ首根っこをつかまれて「そこはお前が座るところではない」とほっぽり出された。
その時に自分はいつかあの場所に座ってやる、西海屋の主になってやると決めたのだ、と言う。

嘉助は、こんなことを聞かされて、殺しに加担することを断ったら間違いなく自分も殺されると思ったので「やったら本当に自分に店を持たせてくれるか」と聞くと「もちろんだ」と清蔵。
「で、どうやって殺します?」と聞くと、毒を盛るつもりだと言う。

自分は松太郎の預け先にこの間の休みの時に行って、実家から送られてきたものは絶対に松太郎に食べさせないでくれと手を打っておいた。
奥様もくれぐれもお気をつけて。
私は奥様の味方です、と言う嘉助に、「店のためを思って清蔵と一緒になったのに、こんなこと…」と絶句するお貞。
こんな目にあうなんて死んでしまいたいと言いながら、松太郎だけは守らなければ…そしていつか敵を討ってやる、そう誓うお貞であった。


…ええええ?清蔵も悪いヤツだったのーー?
清蔵だけはと信じていたのにー。えーん。
前回出てきたお静のマブって絶対義松だと思ってたよ。だってなんかいい男風だったし…清蔵はなんとなく枯れたイメージがあったからそんなことをするとは夢にも思ってなかった。
今回の嘉助の独白も、義松が裏で糸を引いてるんじゃないかと最初のうちはそう思って聞いていたんだけど、そうではないみたいで。
清蔵がそんなに悪かったなんて。もう誰も信じられないっ!ひどい!
いったい誰目線で見ればいいのかわからない噺や…ほんと。


さん助師匠「景清」
定次郎が生まれつき盲目なのではなく大人になってから盲目になったというのは聞いたことがあったけど、酒と女遊びが過ぎてそうなった、というのは初めて聞いた。
犬の件や旦那との会話から、定次郎が素直じゃない性格なのが伝わってくる。
眼病にご利益のあるという観音様を拝みに行って、近くで同じように熱心に拝んでいる女と掛け合いのようになるシーンは楽しい。
意外にも女性がとても女性らしいんだよな、さん助師匠って。

旦那に説得されて清水様にお詣りに行くことに決めた定次郎。
清水様に100日通って満願の日に、目が開くと信じて行ったのに見えるようにならず、観音様に悪態をつく。
心配した旦那が様子を見に来て、定次郎をなだめるのだが、悪態がやまない。
そのうち雷が鳴って旦那は一人逃げてしまうのだが、この時に旦那が「ああ、あんなふうに悪態をつくから観音様がお怒りになって」とつぶやく。
おお!なんかこの部分がいつも腑に落ちなかったので、なんかすっきり!
なんであんなに親身になってくれていた旦那が定次郎を置いて帰ってしまったのか。
目の見えない定次郎を置いていくなんてひどくない?と思っていたのだが、信心深い旦那が観音様の怒りに触れたと思って度を失ってしまったのだとしたら納得。

そして私が今まで聞いた「景清」ではここで雷に打たれて気を失った定次郎が目が見えるようになって…おわりだったんだけど、ここから初めて聞く展開。
定次郎が「あーやっぱり見えねぇのか。あっしの眼は見えるようにはならないんですか」と相変わらず観音様へ悪態をついていると、どこからか声が聞こえてきて、なんと観音様があらわれる!
そして定次郎に向かって、お前のような信心のないやつの願いを聞くわけにはいかない、と言う。
定次郎が「なんだ、じゃあもう見えるようにはならないのか」とあきらめかけると「だが、お前の母親の願いの強さに免じて目を貸してやる」と。
そこで、奉納されている景清の眼を貸してやる、と言って定次郎の目を開けてくれる。


…おおおお、そうなのか。だからこのタイトルなのか!
初めて聞く展開に興奮!
そしてやっぱりさん助師匠ってみんながやる形じゃない、「もとの形」にこだわるんだなぁ…。ひねくれてるといおうか、文学的といおうか。
観音様が出てくるけど、さん助師匠がやると観音様が漫画っぽくて全然宗教じみないので、なんかばかばかしくておかしい。
定次郎がもう少しチャーミングになったらもっともっと魅力的になる気がするなー。

ネタ出しされたときは、さん助師匠が「景清」?ってちょっと違和感を感じていたんだけど、おもしろかった。