りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

末廣亭12月下席昼の部~夜の部

12/27(木)、末廣亭12月下席昼の部~夜の部に行ってきた。
昼の部途中から入ったのだがものすごい人!途中から二階も開いて、ええ?今日平日だよね?とびっくり。
最初は桟敷の後ろの方に座っていたのだが仲入りで帰った人もいたので前の方の席に移動できた。

昼の部
正雀「掛け取り」
・小団治「ぜんざい公社」
・アサダ二世 マジック
小満ん「出来心」
~仲入り~
・彦いち「ねっけつ!怪談部」
ロケット団 漫才
・しん平 ダイエット漫談
・清麿「東急駅長会議」
・のだゆき 音楽
・小ゑん「レプリカント

夜の部
・扇ぽう「たらちね」
・さん助「十徳」
・小駒「からぬけ」
とんぼ・まさみ 漫才
・菊之丞「長短」
・夢葉 マジック
・半蔵「反対俥」
・鉄平「ざるや」
・ペペ桜井 ギター漫談
・歌之介「お父さんのハンディ」
・南喬「鮑熨斗」
~仲入り~
・文雀「八問答」
・ホームラン 漫才
・ひな太郎「そば清」
・才賀「カラオケ刑務所」
仙三郎社中 太神楽
・今松「柳家格之進」


アサダ二世先生 マジック
「今日はちゃんとやりますよ」の言葉通りたっぷり。びっくり(笑)。


小満ん師匠「出来心」
鯉こくの小噺、大好き。
新米の泥棒がどこまでも能天気で楽しい。あとこの師匠の言い回しが大好き。聞いていてニヤニヤしちゃう。楽しかった~。


しん平師匠 ダイエット漫談
今の若者は女性に興味が薄くなってきて二次元に夢中になってる。
でもあんなもの(二次元の女の子)は実在しないからね。こんなに目が大きくてこんなに短いピッチピチのミニスカート履いてここから全部足!みたいなのはね。こわいよ。こんなのが町歩いてたら。
あんなスカートで歩く女の子がいたら…俺は歩道になりたい。歩道になって横たわるね!
俺なんか63になったけどいまだに女性に興味あるもんね。10代から20代、30代、40代。50代から先はいらねぇか!

…ぶわはははは。その前に「お客が男ばかりじゃだめ、男の客はあんまり笑わないし笑っても声が低くて陰気。かといって女の客ばかりでもダメ。女性は高い声で笑ってくれていいけど、引くんだよね。え?そんなに引いちゃう?っていうくらい引いちゃう。ちょっとセクハラっぽいこととか言うとね、一斉に引いちゃうんだよね」。
そう言ってたのに、まさにその女性が引きそうなことを堂々と。

そのあと、自分がじじいになった、という話。
昔は腹筋が25ぐらい割れててまさに細マッチョ。今は腹筋は一つも割れてなくてぼよんとした腹が1つ乗ってるだけ。
あらゆるダイエット(それも楽できるやつ)を試したけど、「三食普通に食べて痩せる」とうたってる薬は全然効かない。何一つ効かない。初回お試し500円とか送料無料に乗せられてあらゆるものを買って飲んだけどだめ。
あ、でも一つだけ効いたのがあったね。やず〇の酢。あれは効いた。すこぶる体調がよくなって、まぁ朝からごはんがもりもり食べられる。三食で足りなくて間でパンも食べる。
はっと気づいたら俺痩せるためにこれ買ってたのに食欲増進して3キロ太ってた。

それから金魚運動、乗馬など、健康器具の話。
これもおかしかった。
…私この続きで痩せる下着のくだりがもう大好きなんだけど、残念ながらここまで。
笑った笑った。しん平師匠の漫談、めっちゃ楽しい。


小ゑん師匠「レプリカント
クリスマスの2日後に「レプリカント」って素敵。
酔っ払ってカーネルサンダースを連れて帰って来ちゃった大学生。そこに先輩が訪ねてきて、「お前また夕べ酔っ払ってやったな」と。
家にはほかにも今まで酔っ払って持ってきたものが多数。その一つ一つが絶妙でおかしい!!
中でも「川柳川柳」の幟。それも個人のじゃなくて末廣亭の「昼の部主任」って書いてあるやつ。それを見て「どうせ持ってくるなら後からお宝になりそうな人間国宝のやつとか持って来いよ。川柳川柳って!」と言われると「でも一部の客には熱狂的な人気があるらしいよ」。
…ぶわははははは。最高。

あとこのカーネルサンダースにコート着せてタイガースの野球帽かぶせて連れて行くところ。もう絵を想像しただけでおかしくておかしくて。
タイガースファンの酔っ払いにからまれるのもおかしいし、どうしようもなくなってカーネルを電話ボックスに押し込めるのがたまらない。
めちゃくちゃ笑えるのになんか少し物寂しくて好きだなぁ。小ゑん師匠ってロマンティストだよなぁ。
楽しかった!


さん助師匠「十徳」
出番が入れ替えで私的には残念。
一時期やっていた「十徳」、またやるようになったんだね。
こじつけで十徳の意味を説明するとくまさんが妙に感心していい気分になるご隠居がおかしい。
「じゃもう一つ教えようかな」の得意顔。
あとそれを友だちのところでやろうとして先に言われてしまったくまさんが「…そうだよーー。なんだ知ってたの?」がおかしい。
短めだったけどその分もっさり感がなくてよかったかも。わははは。


小駒さん「からぬけ」
噺の終わり方とお辞儀の流れるような動作が師匠にそっくりで、ちょっとぞわっ。


とんぼ・まさみ先生 漫才
前半はよかったんだけど、後半のコンビニ強盗の漫才がいたたまれない。そしてそうなったときに異様に長くなるのがこのコンビの苦手なところ。あかん!と思ったらさっと切り上げてほしい。


南喬師匠「鮑熨斗」
甚兵衛さんが人が良くてご機嫌でとてもかわいい。
おかみさんがそんな甚兵衛さんに「全くお前さんはあきれたね」と淡々と諦めているのがおかしい。
お金を借りに行ったところでも魚屋さんでも全部ねたばらしをしちゃうのがかわいい。
「もらえるかもらえないかはやってみないとわからないんじゃねぇかな」と言われて「もらえるんですよ!!」と自信たっぷりに言うおかしさ。
口上の「うけうけ」が「うーうーうーーーー」になるところが、ひっくりかえるぐらいおかしかった!
そして「いずれ長屋からつなぎが来ますが」のところが「うなぎが来ますが」になったり「うさぎが来ますが」になるのもおかしい。
楽しかった~。


文雀師匠「八問答」
文雀師匠は珍しい噺をしてくれるから好きだなぁ。
八尽くしの噺なんだけど、時々現代的な言い回しもあって、なんか芸協噺っぽい。
おもしろかった。


今松師匠「柳家格之進」
嫌いなこの噺が驚くほど胸にこたえてしばし呆然となってしまった。
清廉潔白な武士である格之進と正直で優しい町人の万屋源兵衛。
正直すぎて融通がきなかいところを疎まれて浪人に身をやつしている格之進を少しでももてなしたいと思った源兵衛の気持ちに嘘はなかったのに…そして二人で碁を打つ時間は身分の違いを乗りこえた楽しいものだったのに…。番頭である六兵衛の主人への忠誠心と格之進に対する嫉妬も加わって悲劇が生まれる。
町人と武士の身分の違い、価値観の違いが無くなった五十両でくっきりあらわれる。
なんの証拠もなかったとしても五十両を盗んだという疑いをもたれたというだけで「恥」になるというのは、町人には理解できない感覚で、さすがに主である源兵衛は少しはわかるからこそ格之進に五十両のことを聞きに行くことも許さなかったのだろう。
しかし格之進に嫉妬していて「うさん臭いヤツ」とさえ思っていた六兵衛は主の言うことも聞かず勝手に訪ねて行き格之進から五十両を受け取って満足する。彼にとったら金を取り戻すことが一番大切なことだったから、格之進の誇りなどには無関心なのだ。
もしもその五十両が出てきたらどうする?と聞かれて「私の首を落としてください」と言う六兵衛にとって「首を落とす」という言葉は実感のこもらないものだし、聞いている私にとってもそうだ。だから、五十両が出てきたあとに格之進に出会ってしまった六兵衛を思わず笑ってしまう。そこには覚悟とかプライドとかそういうものがないからつい笑ってしまうのだ。
父の名誉のために自分の身を吉原に売ってお金を作ってくれた娘のことを語る格之進の無念さ。
町民と交流を持ってしまったためにこういう目にあってしまった自分を責める気持ちが伝わってきて、涙が出た。

素晴らしい格之進だった。
普段はどこまでも落語らしくさらっとやられる今松師匠が、激しい感情を見せるのが衝撃だった。
とても素敵でもしかして今松師匠は元武士?なんてどうしても茶化して考えてしまう私には武士の了見はどうしたって理解できないのだった。