りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

エリザベスの友達

 

エリザベスの友達

エリザベスの友達

 

 ★★★★★

満州国建国後、イングリッシュ・ネームをもち、華やかな天津租界で暮らした日々に、清朝最後の皇帝・溥儀と妻・婉容が交錯する、天野初音97歳。出征し帰らぬ人となった3人の兄、兄弟のように育った馬たちに再会する、土倉牛枝88歳。戦時中、郵便配達婦をして、六男二女を育て、出産の痛みに包まれた時間に回帰する、宇美乙女95歳。認知症の老女たちのなかに宝石のように眠る、輝かしい記憶たち。そのゆたかな世界を描く長篇小説。 

とても良かった。

認知症になり娘たちのこともわからなくなってしまった母の介護をする姉妹。母は90代で姉妹は70代。自分たちの行く末を心配しながらも認知症が進む母の心配もする。その虚しさや寂しさを描きながらも、絶望だけではない、安らかさも感じさせる。

認知症も悪いことばかりではないのかもしれない。施設の職員さんたちの穏やかな対応に救われる。

諦めの境地が優しくてユーモラスなところがとても良かった。