りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ろびぃ寄席

2/6(火)、シアターXで行われた「ろびぃ寄席」に行って来た。
こちらのろびぃ寄席、以前一度だけ来たことがあり、その時は南なん師匠と味千代さんが出演して、南なん師匠が落語を二席と味千代さんの太神楽という構成だったんだけど、今回は「寄席」とはいうものの南なん師匠が落語をやったあとに阿部壽美子さんが山月記』を語るという構成で、どちらかというと語りの方がメインという感じ。
南なん師匠の落語たっぷり!を期待して有休を取って行った身としてはちょっぴり残念…でも『山月記』の語りが素晴らしかったのでそれはそれで満足、という会だった。
 
・南なん「猫の災難」
・阿部壽美子 語り『山月記』(作・中島敦)
・アフターミーティング(阿部壽美子)
 
南なん師匠「猫の災難」
ニコニコ登場した南なん師匠。
この会、普段は劇場のロビーで行われているらしいのだが今回は申し込み人数が多かったので急きょロビーではなく劇場での開催に。
といっても実は前回来た時も劇場だったので、私はまだロビーで落語を見たことはないのだった。
話を始めて、あれ?なんか鼻声で声も少しかすれていて…風邪?
 
南なん師匠のくまさん…かわいい…。
猫のおあまりの鯛に兄貴分が大喜びして酒を買いに行くと「あんなに喜ばれたら言えなくなっちゃうよなぁ…」。
うん、そうだねそうだね、と思わずうなづいてしまう。
 
そしてひとりで飲むお酒のおいしそうなこと。
だんだんご機嫌になってだんだん気が大きくなっていくのが自然なので、あれ?この人いつこんなに酔っぱらっちゃった?っていうのがすごくおかしい。
お酒をこぼすところも、明らかに酒の瓶から目を離してニコニコしていて、おいおいあぶないよ!!と声をかけたくなる。
「あれ?こんなに減っちゃった。どうしようどうしよう」って瓶を振って「あ、増えた!…なんだ、泡だ」。
うんうん、振るよね。とりあえず。でもだめだよね、むしろ。
 
南なん師匠の具合が悪そうで徐々に声が小さくなっていったのが少し心配だったけど、チャーミングな「猫の災難」だった。
やっぱりいいな、南なん師匠の落語は。
 
阿部壽美子さん 語り『山月記』(作・中島敦)
山月記」、私は読んだことがなかったのだが、詩人になることを夢見ていた男(かなり優秀でプライドも高い)が気が狂い最後には虎になってしまうという変身譚。
朗読ではなく「語り」ということだったが、確かに「読む」ではなく、限りなく一人芝居に近い。
淡々と語る部分と非常にエモーショナルになる部分があり、その緩急にどんどん引き込まれていく。
語りだけでこんなふうに世界を作り上げ見ている人たちを自分の世界に引き込むって凄いなぁ…。

またこの物語が身につまされる…。
自分のプライドや羞恥心、自尊心を自分の中で育てすぎてしまったために虎になってしまったと語る主人公の悲しみは、決して他人事ではなく自分自身もすでになにかに変身しかけているかもしれない…と足元がぞわぞわする感覚。
 アフタートークで阿部さんが若い時に読んだのと今とでは全く印象が違う、とおっしゃっていたけど、確かに年とともに解釈がかわりそうな作品。これが文学の力、なんだろうな。

とにもかくにもすごかったー。迫力があったー。
こういうのに比べられちゃうと落語は弱い芸なのかなぁ。って比べること自体がおかしいのだが。
でも演劇が迫力なら落語は脱力。何度も聞くなら私はやっぱり落語だな。
 
アフタートークの時に手を挙げたお客さんがみな自分語りなのにもびっくり。
え?えええ?それより阿部さんに質問して話を聞きたくない?
と思うも、こういうのも演劇に特有なものなのかもしれないな。