りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

壜の中の手記

壜の中の手記   晶文社ミステリ

壜の中の手記 晶文社ミステリ

★★★

アンブローズ・ビアスの失踪という米文学史上最大の謎を題材に、不気味なファンタジーを創造し、MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞を受賞した名作「壜の中の手記」をはじめ、無人島で発見された白骨に秘められた哀しくも恐ろしい愛の物語「豚の島の女王」、贈られた者に災厄をもたらす呪いの指輪をめぐる逸話「破滅の種子」、18世紀英国の漁師の網にかかった極彩色の怪物の途方もない物語「ブライトンの怪物」、戦争を糧に強大な力を獲得していく死の商人サーレクの奇怪な生涯を描いた力作「死こそわが同志」他、思わず「そんなバカな!」と叫びたくなる、異色作家カーシュの奇想とねじれたユーモアにみちた傑作集。

うーん…。奇想?奇談?を集めた短編集なんだけど、こういう短編は今までに何冊も読んでいるから正直もう驚かないんだよなぁ。いや、別に驚かせてもらう必要はないんだけど、ただなんていうか前に読んだあれやらこれやらと区別がつかない。
もっと強烈であれとは言わないけれど、例えばこの間読んだ「ほとんど記憶のない女」や「空中スキップ」や「観光」に比べると、個性がないような感じがする。時代でいったらここに収められているのは1940年〜1960年ぐらいの作品が多いので、カーシュが誰かの真似をしたわけではなく、「奇想」とか「ゴシック」の短編を書いている作家がカーシュのスタイルを真似していたのかもしれない。いや別に誰も誰の真似もしていないのかもしれない。そこらへんはよくわからない。ただ、どれも前に読んだことがあるような作品に思えてしまったことは確かなのだ。

とはいっても、面白くなかったわけではない。
終身刑になった男がラトン族の男を助ける「ねじくれた骨」、アンブローズ・ビアスの失踪を題材にした表題作「壜の中の手記」、天才的な時計技師が王にまつわる打ち明け話をする「時計収集家の王」などは、とても面白かった。