りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

林家きく麿独演会

2/4(月)、ミュージックテイトで行われた「林家きく麿独演会」に行ってきた。

・きく麿「珍宝軒」
・きく麿「フライドポテト」
~仲入り~
・きく麿「優しい味」


きく麿師匠「珍宝軒」
昨年はいろいろありました、ときく麿師匠。
なんといっても12月の末廣亭の上席でトリをとったこと。トリが決まったことをとても喜んでくれた師匠がすっかりそのことを忘れて協会からの出演依頼に「出られません」。え、ええええ?
それでも何日か出てくださって打ち上げも来てくださったんだけど、そのときに師匠がしみじみと「驚いたなぁ…」。
褒められたのかと思って「ありがとうございます」と言ったら「高座で歌うなんて…」。
ええええ?師匠が歌えって言ったんじゃないですかーー。
いつもきく麿師匠の歌を褒めてくれていた師匠。「それをやったほがいいよ」「歌をやりなさいよ」言われていたんだけど、ある時浅草で持ち時間がちょっとしかなかったので小林旭の歌だけ歌って「それでは!」と下がったら、「よくやった!」と褒めてくれた師匠。
その言葉に後押ししてもらってトリの時も歌ったのに…とほほ。
ニツ目の頃はほとんど寄席に出させてもらえなくて、寄席なんか出なくてもいいんだい!と思っていたけど、こうして出させてもらえるようになって、寄席ってほんとに勉強になるんだなぁ、としみじみ思った。寄席ですごく鍛えられている人っていうのはどんな場所に入ってもしっかり自分の高座をやって笑いをとれる。それが底力があるっていうことなんだな、というのを目の当たりにした、と。
そして今まで自分一人で頑張って来たつもりだったけど、いろんな人に助けてもらっていたんだなぁというのをすごく感じた、と。

…うわーー、きく麿師匠がそういう話をまくらでするのはめったにないことで、ほんとにすごく感じるところがあったんだろうなぁと胸がいっぱいに…。
私がきく麿師匠を見始めた頃ってほんとにあんまり寄席に出てなかったもんなぁ。それが新作の師匠がトリの時とか、小袁治師匠のトリの時とかに顔付けされて、師匠方が「きく麿って面白いんだな!」って言うようになって…ほんとに自力で築いていったのがすごいなぁ。
白鳥師匠に「俺たち新作派は人の3倍ウケなくちゃいけないんだよ」と言われたという話も素敵だった。

そんなまくらから「珍宝軒」。
わーーい。大好きな噺。
これほんとに何度聞いても完成度が高いと思うんだよねぇ。最初の赤ん坊のくだりから始まって、お客さんが踊りながら入ってくるところ、言い立てからおかみさんの聞き間違い、そしてサゲまでが完ぺきな流れ。
金明竹」が大好きなのでもうおかしくておかしくて。
楽しかった!


きく麿師匠「フライドポテト」
9月に和助さんと旅の仕事に行ったとき、台風直撃でちゃんと飛行機が飛ぶか心配で和助さんに何度も連絡をとったんだけど何を言っても「大丈夫っすよ。おれ、運がいいんで」「飛びますよ」としか答えない和助さん。
いやいやいや、運がいいとかそういうことを聞いてるんじゃなくて、最悪の場合を考えて前乗りした方がいいかとかそういうことを主催者と調整してほしいんだって!
あと、和助さんがきく麿師匠の家に泊まりに来た時。かなり遅い時間なのに隣から和助さんが声をかけてくる。それが「クリーミーマミの歌知ってます?」
そんなの知らないわ!と答えると「歌詞が深いんすよ。 ♪女の子って好きと嫌いだけで 普通がないの♪…すごくないっすか?女の子には好きと嫌いしかないんっすよ!!」。
「和助って、神楽やってるときはすごいうまくてかっこいいけど、話してみるとすげーバカだから」に大笑い。わかるわかる!

そんなまくらから「フライドポテト」初めて聴く噺。
男二人が火にあたっている。どうやらこの二人スキーに来ていて遭難したらしい。
1人(吉田)がもう一人に向かって「おれってさ。今まで生きてきて苦労ってしたことないんだよね。だから今回も遭難したけどまぁなんとかなるだろうなって思ってたんだよね」。
そう言われたもう一人が「ええ?そうなの?あ、でもそうかもしれない。だいたいさ、雪山で遭難するとかかなりヤバイ状況じゃん。だけど歩いていたらこの山小屋が見えて、たまたま鍵が開いていて、入ってみたら薪とかもあって火をおこすことができて。これもお前の運の良さのおかげかもな」。
最初はそんな話だったんだけど、二人でお腹が空いたなぁというところから、今何が食べたい?という話になって二人の関係が悪化していく…。

吉田くんの苦労知らずさが確かになんか聞いていてイラっとくるんだけど、もう一人の「いや違うっしょ!」の根拠もそれはそれでヘンテコで、それをこの極限状況の中でやりあうばかばかしさ。
よくこういう噺を思いつくよなぁ。笑ったー。


きく麿師匠「優しい味」
お上品な女性(!)二人がレストランでスープを飲んでいる。一人が「ああ、優しい味!」と言うと、もう一人もじっくり味わって「ほんと。優しいとしか言いようがない味」。

なんかこのお上品さがやたらとおかしくて何が始まるかわからないうちから笑ってしまう。
この二人がシェフを呼んでスープをべた褒めしたあとに「作り方を教えて」と言うんだけど、その攻防があったあと、シェフが厨房でため息をついて、そこでの会話から意外な?事実が…。

これはわかりやすく大爆笑な噺だったなぁ。なにも考えずひたすらゲラゲラ笑える。面白かった!

 

第16回玉川太福”月例”木馬亭独演会

2/2(土)、木馬亭で行われた「第16回玉川太福”月例”木馬亭独演会」に行ってきた。
なんと今回のゲストがカーネーション。直枝さんが落語好きだということは知っていたけど、最近になって「太福さんが面白い」とツィート。おおお?と思っていたら今度は大田さんが以前から太福さんと知り合いで、木馬亭を手伝っていたこともあるという話も入ってきて、ぬおおおお?
そしてこの組み合わせで会が行われるという告知。
カーネーションファンの友だちに「りつこさん、ついにつながったね!」「りつこさん、すごいね!」と言われるも、私がつなげたわけではない(当たり前)。でもとてもうれしい!自分の好きと好きがつながる喜び!


・太福 みねこ「あぁお年玉」 
・太福&カーネーション 鼎談
カーネーション
 「Edo River」「愛のさざなみ」「玉川太福の唄」「夜の煙突」
・太福 みねこ カーネーション「地べたの二人 夜の煙突」
~仲入り~
・太福 みねこ「若き日の大浦兼武」


太福さん みねこ師匠「あぁお年玉」
大勢のお客さんと熱気に「ありがとうございます」と頭を下げる太福さん。
正式に芸協に入ったことを告げると場内割れんばかりの拍手。ご本人も嬉しいとは思っていたけど、twitterでつぶやいたら思っていた以上の反応をいただいて、さらには面識のない噺家さんにも祝福してもらって、ああ、すごいことなんだ、と改めて嬉しくなった、と。
そして芸協では昇太師匠の門下に入れて頂き、噺家さんのしきたりも少しずつ勉強しているところ。
そして私、早速しくじりをやってしまいました、と。
それを浪曲にしたという「あぁお年玉」。
こんな出来事がこんなふうに浪曲になるのね!またみねこ先生の三味線や合いの手が絶妙に盛り上げてくれるので、聞いていておかしいおかしい。
私のカネ友もみんなひっくりかえって笑っていて、それがまたとても嬉しい。
まさにつかみはOK。新作をやれるっていうのがものすごい武器になってる太福さん。最高だった。


太福さん&カーネーション 鼎談
大田さんが木馬亭のDVDの音声を担当していたとはほんとにびっくり。
太福さんとはその時からの付き合いで一緒に飲みに行ったり共通の知り合いがいたり…太福さんがカーネーションのライブを見に来たこともある、というのにも驚く。
そしてそのことを全然直枝さんに話していなかった大田さん。
とはいうものの、実は武春先生とカーネーションで会をやろう…という話も出ていたのだとか。
そういう意味では武春先生がつないでくれて今日の会ができたということも言える、と。
ずっと落語好きだったけど昔の名人を中心に聴いていた直枝さんがしぶらくの番組を見たりして最近は若い噺家さんや講談を勉強している、と言っていたのも印象的。
また打ち合わせなしでその場で合わせる浪曲をJAZZと評し、「おれたちもああいう風に打ち合わせなしでやろう」と言う直枝さんに「いやいやいや」と腰の引ける大田さん、というのもおかしかった。


カーネーション「Edo River」「愛のさざなみ」「玉川太福の唄」「夜の煙突」
木馬亭カーネーションを聴くって…なんてシュール(笑)。しかも結構なアウェイ感。
そして私は二人のカーネーションを見るのは実は初めてだったのだな。直枝さんの歌がバンド編成の時とは全く違っていて、しかも私がよく行ってたことのソロの歌い方とも違っていて、びっくり。
なんかこう…とてもエモーショナルになっている印象。
だから「Edo River」も「夜の煙突」も違う曲みたい。
「愛のさざなみ」は何回かバンドで聴いているけど、より女性的になったような感じ。

驚いたのは新曲で「玉川太福の唄」!
太福さんのネタの名前が入れ込んであって、それをめちゃくちゃメロウなメロディに乗せて歌っているのが、素敵なんだけどすごくおかしくて笑ってしまう。
この歌が終わった時、たまらず出てきた太福さんが「すばらしい!!」と喜んでいたのが、またとても素敵だった。

「夜の煙突」では、振り返ると木馬亭の明かりが見えたのもブラボー。
直枝さんが木馬亭浪曲にたいしてリスペクトをしているのが伝わってきて、こういうところがほんとに素敵なんだよなぁと思ったのだった。


太福さん みねこ師匠 カーネーション「地べたの二人 夜の煙突」
そして、この歌にこたえるように、太福さんが「地べたの二人 夜の煙突」。
カインズホームで買ったはしごに昇る金井くんに、自分の作業着の上に金井くんの作業着を重ね着した斉藤さんが声をかける。
ただそれだけの内容なんだけど(笑)、ちゃんと夜の煙突の風景が見えてくるのが素敵。
まるで対バンのセッションを見るようでほんとに楽しかったし嬉しかった。


太福さん みねこ師匠「若き日の大浦兼武」
仲入り後のトリネタは、先ほどセッションをしている時にこれをやろうと決めました、と太福さん。
こういう会ができたのも武春先生のおかげ。もし武春先生があんなに早く亡くならなければきっとカーネーションと会をやったのは武春先生で、自分はお手伝いをしていただろう。
こういうご縁をいただいたことに感謝して、武春先生から教えていただいた話を、ということで「若き日の大浦兼武」。

正直でまっすぐな大浦兼武が太福さんにぴったりな気持ちのいい人物。
岩倉具視が落書きした屏風を自分で買い取ることにして、警察官の安月給から毎月コツコツ月賦で返し、ようやく返し終わったころに、岩倉具視に呼び出される。
再会のシーンもユーモアたっぷり、だけどホロリとさせるところもあって、よかったー。

ほんとに特別な一夜で行けてよかった!いいもの見た!の気持ちでいっぱい。
みに行ったカネ友がみんな「面白かった!」と太福さんを大好きになっていたのも嬉しかったし、twitterで見たら太福さんファンの方々が「いいお客様だった!」とつぶやいていたのも嬉しかった。

第53回 伝承話芸を聴く会

2/2(土)、東京堂ホールで行われた「第53回 伝承話芸を聴く会」に行ってきた。

・藤兵衛「芋俵」
・琴柳「清水次郎長外伝 小政の生い立ち」
・藤兵衛「弥次郎(通し)」
~仲入り~
・琴柳「万両婿」


藤兵衛師匠「芋俵」
トリをつとめるはずだった小燕枝師匠がインフルエンザでお休み。もうだいぶ具合は良くなったようですのでご安心を、と。
でもほんとは今日は小燕枝師匠がトリで「三軒長屋」を通しでかける予定で、あれは1時間はある長講なので、しめしめ今日は楽ができるぞと思っていたんですが、世の中何があるかわからない。

そんなまくらから「芋俵」。
聞き慣れた噺なのに最初から最後まで隙間なく面白い。
テンポの良さとリズム、それに落ち着いた語りがベースにあって、それにくっきりした人物像。自称しっかり者の兄貴に間抜けな弟分、与太郎、かわいい定吉、お清どん。

お腹すいた、おいもをもらっちゃおうよと言う定吉に、それまでたしなめる役だったお清どんが「え?お芋?お芋と聞くと理性を失うわ」と言うのには笑った。
楽しかった。


琴柳先生「清水次郎長外伝 小政の生い立ち」
次郎長には親分らしいどっしりとした大物感があって、石松はおっちょこちょいな感じ、小政はかわいらしさと暗さの両方がある。
特に後半になって小政が母親のことを語るところにはじーん…。

「小政の生い立ち」は前に喬太郎師匠で聞いたことがあったけど、落語より講談の方が好きかも。


藤兵衛師匠「弥次郎(通し)」
急遽長めの噺をやらなくてはいけなくなって「弥次郎」の通し、というのが面白い。
一度ぐらい聴いたことがあるような気がすると思ってブログ検索したら小せん師匠で聞いていた!

通しといったって、所詮は嘘つきの話でダジャレの連発というのもくだらなくておかしい。

琴柳先生「万両婿」
聞き始めて、おおっ、これは「小間物屋政談」とわかる。
落語ではあんまりな展開にちょっと軽めにお笑いに持って行く部分があるけど講談ではどうなんだろう?

上方版で聴いた時には小四郎がおかみさんのことを溺愛していて自分が留守の間に何か間違いがあったら…と心配して大家さんに相談に行くようなところもあったけど、そういう描写は全くない。
ただ商売のために上方へ行こうという流れ。そこで追いはぎにあった若狭屋の主人を助け、着物と財布と住所氏名を書いて渡したために、悲劇が起きてしまう。

小四郎が死んだという連絡を受けて大家さんと世話人の二人が箱根に行くのだが、顔を改めるのを気持ち悪がってあまり近づこうとしない。
世話人の方が「なんかおかしくねぇか?背丈が小さい」とか「荷物が財布だけというのもおかしい」と怪しむと大家さんが「じゃもっと近くに行ってよく見ておいでよ」。それに対して「いや、いいよ。死んで縮んだんだな。間違いない」。

小四郎が戻ってきてから幽霊と勘違いするところ、また、小四郎と新しい亭主どちらを選ぶと聞かれたおときが「小四郎さんって本当にいい人なんですよ。働き者だし。でも…今の亭主の方が優しくて」、というところにはおかしさがあって、やっぱり落語と同じように、あんまりなところは笑いで軽く持って行くというのは講談も同じだった!

あと奉行所で初めて若狭屋の女房に会されて、それがおときと比べものにならないぐらいのいい女!というところもユーモアたっぷり。
初めて聴いた時はひどい噺や…と思ったけど、これはこれでちゃっかりしていていいかも、と思った。

坂本頼光定期独演会 活弁への招待 第三回

2/1(金)、日暮里サニーホールで行われた「坂本頼光定期独演会 活弁への招待 第三回」に行ってきた。
すっかり活弁のトリコになって先月に引き続きまた来てしまった。また新たな扉が開いた感じでワクワク!


無声映画ジャックと豆の木」説明=坂本頼光、伴奏=古川もとあき
無声映画「いかさまナポレオン皇帝」説明=坂本頼光、伴奏=古川もとあき
無声映画「サザザさん第三話」説明=坂本頼光
~仲入り~
トーク 坂本頼光&古川もとあき
無声映画ロイドの要心無用」説明=坂本頼光、伴奏=古川もとあき

無声映画「いかさまナポレオン皇帝」説明=坂本頼光さん、伴奏=古川もとあきさん
始まる前に頼光さんからこの作品は起承転結の起承しかないような作品で…というお話。「ジャックと豆の木」を1902年に作ったエジソン社が2年後に作った作品。
精神病院に入れられている自称ナポレオン皇帝が病院を逃げ出し、それを病院の人たちが追いかける、というストーリー。
おかしいのはこのナポレオンが逃げながらも何かと皇帝っぽいポーズをとるところ。それを坂本さんが「ここでまた皇帝のポーズ!」と絶妙のタイミングで説明するのがたまらなくおかしい。
確かにヘンテコだったけど、起承転結がないということはなく、ちゃんとオチがついていて面白かった。


無声映画「サザザさん第三話」説明=坂本頼光さん
これを作った時、ヒッチコックに心酔していたという頼光さん。
「知りすぎたマツオさん」ということで、崖にそびえたつアナゴさん宅、会わせてくれない奥さんなど、ミステリータッチ(笑)。
何が好きってタマが…見た目という語りいい…たまらん。それに対してマツオさんが「畜生のくせに!」と強気なのもおかしい。

無声映画ロイドの要心無用」説明=坂本頼光さん、伴奏=古川もとあきさん
これが一時間の長講!
坂本さんも大変だけど、ギター弾きっぱなしの古川さんも大変だー。途中ピックを落としたのがちょうどピンチのシーンで(とはいってもこの映画ピンチがずっと続くんだけど)それを活弁でいじる坂本さんもおかしかった。

後半のビルの壁をのぼっていくシーンはスリル満点で何度も「うぉっ」と声が出た。
映像に合わせた音楽が臨場感を増してくれるんだけどそれが全然邪魔にならないところがさすが長年ゲーム音楽を作ってきた古川さん!かっこよかった。

 
こんなものを発見。やばい(笑)。


桃太郎

さん助ドッポ

1/30(水)、お江戸両国亭で行われたさん助ドッポに行ってきた。

・さん助 ご挨拶
・さん助 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第二十六回「敷島河原の騙し討ち」
~仲入り~
・さん助「品川心中(上)」


さん助師匠 ご挨拶
先日地方の仕事に行く時に、隣に座った女性4人組の話に釘付けになってしまったというさん助師匠。
一人の女性が自分の母親のことをクソであると言い出し、それはなぜかというと2年ほど前に理由は聞かずに数十万貸してくれと電話をしてきた。仕方なく貸してそのお金は最近になってようやく少しずつ返済してくれたのだが、また15万ほど貸してくれと言われた。今度も理由は聞かないでくれと言うのだが、さすがに理由を教えてくれ、そうじゃなければ貸せないと言ったら、今度は弟に電話をしたらしい。
二人で話し合ってどうしても理由を聞かせてと迫ったところ、どうも母親はパチンコ依存症になっていて、前の数十万もパチンコに使ったらしい。しかもその母親が今度は駆け落ちをしてしまった、と。
そこまで話して「あー着いた!」「さー行こう!」と元気に降りて行った4人。
寝ることもできず話に聞き入っていたさん助師匠は女性の変わり身の早さにしばし呆然となった、と。

…なんか面白い話になりそうだったのにそうでもなかった。わははは。(←ひどい)
聞こえちゃうから聞いちゃったと言ってたけど、結構噺家さんってそうやってまわりの話に聞き耳を立てる傾向があるような気がする。気を付けよう…(そんな結論)。


さん助師匠 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第二十六回「敷島河原の騙し討ち」
そうだ、私は前回来られなかったので1回抜けているのだ。配られたあらすじを見ると、どうやら前回は善導和尚(花五郎)と松太郎が出てきたらしい。いい者?がようやく登場?そんで最後は義松と対決?

お山もお糸も殺した義松が雨に降られて木の洞で休んでいると通りかかった二人の男。
1人は鴻巣大親分の治郎兵衛でもう一人は水戸の浪士・鬼一郎。
治郎兵衛は自分の子分二人を前橋の大親分である平三の子分に殺されたことを遺恨に思い、平三を殺そうと企んでいる。
その話を聞いた鬼一郎は、平三は自分一人で始末すると約束する。
二人の話を聞いた義松は「いい話を聞いた」とほくそ笑む。
その日、二人と同じ宿に泊まり顔を確認した義松は、一人で平三の屋敷を訪ねる。
昨日聞いた話を平三に伝えて、自分がなんとかするからまかせてくれ、そのかわり自分を子分として仲間に入れてほしいと言う。
最初は断った平三だったがそんな話をしている最中に鬼一郎が訪ねてきて、行きがかり上義松に任せることになる。

義松と鬼一郎は仲良くなり、鬼一郎はすっかり義松に心を許すようになる。
二人で飲んでいる時に義松は鬼一郎が平三を殺そうとしていることを知っている、自分も実は平三をしとめにやってきたのだ、と話す。
自分の叔父が平三の賭博で身ぐるみはがされたせいで死んだのを恨みに思い、いつか殺してやるつもりで入ったが平三にスキがない。しかし自分にいい考えがある、とある計画を話す。
平三を敷島河原の渡しにある小さな小屋に呼び出し、二人で殺そうという。
約束の日時になって鬼一郎が小屋に行くと義松は2人で平三を殺す時の形を決めようと言う。
先生(鬼一郎)は右をやってくれ、自分は左をやるから。何度もそう言っていると、小屋に隠れていた義松の子分・忠太が後ろから鬼一郎を槍で突きさす。義松も加勢し、そこでだまされたことに気づく鬼一郎。
さらに鬼一郎を殺したあと、忠太のことも槍で殺す義松だった。


…はぁ。もう誰も彼も殺すんでしょ、そんで平三のことも殺して大親分の座を奪って、でもなんかわけのわからない理由でしくじって逃げ出して、途中でまた出会った人を殺すんだね。はいはい…。
西海屋騒動って任侠物としてもどうなんだろう。あまりにも出てくる人たちが義松を信用しすぎじゃない?ちょろすぎない?
そのわりに聴いていて義松に全く人間的魅力がこれっぽっちも感じられないから、なんでそんなに信用されるのか、結局何をしたいのか、それが全く伝わってこなくて白目…。


さん助師匠「品川心中(上)」
遊郭の噺があまりかからなくなりました、とさん助師匠。そしてこの噺も以前は寄席でよくかかっていたけど、あまりかからなくなった、と。
…そうかなー。結構よく聞くけどなぁー。
あと鈴本のトリの時に聞いたまくら。
自分がニツ目の時に大阪の先代の松喬師匠の会に伺った時のこと。松喬師匠というのはとても気さくな方でニツ目の自分のことも「さん弥さん」と呼んでくださって、打ち上げの時も話しかけてくれたり…その時に大阪に遊郭の名残を残している遊び場があるので後学のために連れて行ってあげましょう、と言ってくれた。
その時、さん喬師匠も一緒だったんだけど、行ってみるとそこは確かに遊郭の雰囲気。
下着姿のきれいな女性が見えるところにいて、やり手ばばぁが「お兄さん、遊んでって」と声をかけてくる。
そのきれいな女性はいわゆる「看板」で中に入るときれいではない女性が相手をしてくれたりもするらしいのだが、松喬師匠は「こんなん一人で来たらとても危なくて入れない。今日はわしがおるから行ってきなさい。待っててあげるから」とおっしゃる。
しかしこういう場所が大嫌いなさん喬師匠はもう帰りたくて仕方ない。「いや、やめましょう」「いや、うちは弟子にそういう教育はしてないんで」と言っていたんだけど最後は「芸が汚らわしくなるから!」。
それを聞いて「明烏の若旦那かよ!」と思った、と。
…ぶわははは。前に聞いた時も大爆笑だったけど、おかしい~。ちょっと入ってみたかったさん助師匠と本気で嫌がるさん喬師匠の姿が目に浮かぶ。いいなぁ。
そんなまくらから「品川心中(上)」。

お染があんまりいい女っぽくない(笑)。
心中の相手を見つくろうのに、「さん助?あー売れない噺家ね。なんか今変な噺をやってるみたいだからそれが終わるまではいいか」には笑った。
金ちゃんがお染から手紙が来て嬉しくてにやけたり、店に行くとほったらかしで拗ねるのも、おかしい。
お金のことなら俺に言ってくれ!と最初は強気に出ながら15両も無理、10両も無理…と腰が引けるのも楽しい。
お染に海に連れて行かれてびくびくしてキャーキャー言う金ちゃんがさん助師匠にぴったりで笑ってしまう。
またびしょぬれのよれよれの姿で犬に追われながら親方の家にたどり着いた金ちゃんの姿が目に浮かんで大笑い。
役人かと思って慌てる親分の家のドタバタもばかばかしくておかしい。

すごーく面白かったんだけど、ちょっともっさりしたところがあって残念だったのと、せっかくだから通しでやってほしかったな。

 

鐘は歌う

 

鐘は歌う

鐘は歌う

 

 ★★★

ロンドン塔からレイヴンが消え、橋という橋は落ち、ロンドンは瓦礫の街と化した。文字による記録は失われ、新たな支配者“オーダー”は鐘の音で人々を支配している。両親を亡くした少年サイモンは、母が遺したひとつの名前とひとつのメロディを胸に、住み慣れた農場を離れ、混沌のロンドンに向かった。そこで彼は、河の底から呼びかける不思議な銀色の音を聞き、奇妙な白い眼を持つ少年リューシャンに出会う…。世界幻想文学大賞受賞、ブッカー賞候補にも挙がった幻想文学の名作登場! 

記憶をとどめておけない世界で孤児の少年が白い眼を持つ少年と出会い自分の隠された能力に気づき、二人はある使命を抱いて旅に出る。
これはもしやアイアマンガー三部作のような冒険が繰り広げられるのでは?と期待したのだが、そういうエンタメ的なワクワクは皆無で、どちらかというとディストピア感の方が勝る。

夢から覚めた人たちが覚める前より幸せを感じられるかどうかもわからないというのも結構リアルで苦い後味。

母の前で

 

母の前で

母の前で

 

 ★★★★

老いることで自分の母親は、遠くへと去ってしまう―。最後まで尊厳を保とうとする母親と向き合いながら、その人をその人たらしめているものとは何であるのか、人間の意識の境界を問いつづけた思索の日々を綴る。 

老いて自分のこともわからなくなってしまった母を前にして、あの聡明でユーモアに溢れていた母はどこへ行ってしまったのだろう、母を母たらしめていたものはなくなってしまったのか、それはいつから何がきっかけでどういう経緯で…。考えてもどうしようもないことのようにも思えるけれど、パシェは考え続ける。

考えれば考えるほど辛くなるのではないかと思いながら読んでいると、それが決してそうではないということが後半になってわかる。

感情を排した文章で書かれているのに、胸を打たれた。

夏丸・伸三 だしぬけ二人衆スペシャル

1/25(金)、すみだトリフォニーホルで行われた「夏丸・伸三 だしぬけ二人衆スペシャル」に行ってきた。


・茶光「手水廻し」
・夏丸「増位山物語」
・伸三「竹の水仙
~仲入り~
・伸三「七段目」
・夏丸「もう半分」

 

茶光さん「手水廻し」
上方版の「手水廻し」を初めて見た。長い頭の表現がたまらなくおかしい。笑った笑った。


夏丸師匠「増位山物語」
今回の会が夏丸師匠の真打昇進と伸三さんのさがみはら若手落語家選手権優勝のお祝いの会だったので、真打昇進とニツ目の落語コンクールについてあれこれ。ちょっと毒を吐いては「関係者いないでしょうね?」と腰を浮かすのがおかしい。
長めのまくらから「増位山物語」へ。相撲と歌が得意な夏丸師匠にぴったり。途中にはもちろん歌も入って、楽しかった。


伸三さん「竹の水仙
夏丸師匠がとある温泉寄席で優勝者に選ばれた半年後に出禁になった、というエピソード。「おかしいでしょう。自分たちで優勝者に選んでおいて、”歌いすぎる”で出禁にするっていうのは」に笑った。

そんなまくらから「竹の水仙」。
これがもうびっくりするくらい面白くて。伸三さんってこんなに表情豊かだったんだ?!
養子になって8年目の宿屋の主人。おかみさんには全く頭が上がらない。かたやおかみさんは子供の頃から宿屋で育ったからあたしの目に狂いはない。あの二階のお客、文無しだよ、ときっぱり。おかみさんの目力がすごくて笑ってしまう。
甚五郎は鷹揚で悠然としている。何を言われても何があっても態度が変わらない大物感。
こんなにおもしろい「竹の水仙」は初めて!伸三さん、素敵。あとで調べたらさがみはらで優勝した時の演目だった。なるほど!


伸三さん「七段目」
時間が押し気味だったのでわりと刈り込んだ「七段目」だったけど、若旦那の歌舞伎の真似事がさまになっていてかっこいい。
定吉もかわいくて楽しかった~。
落語の後にはかっぽれ。やっぱり踊りが上手だと落語の時の所作もきれいでいいなぁ。


夏丸師匠「もう半分」
居酒屋に来た老人の異様さがなんともいえない。酒を飲んだり芋を食べる時の様子にちょっと卑屈な感じが漂っている。芋を食べているところ、ちゃんと乱杭歯に見えるのがすごい。

おかみさんの突き抜けた悪人ぶりに比べて、主人の方が明らかに挙動不審になる面白さ。全体はシリアスなのにこういうところで笑えるのがまた独特で面白い。

最後のシーンは赤ん坊と老人が重なって見えて不気味。ほんとに夏丸師匠の「もう半分」は絶品だなー。

最後はもちろん歌謡ショー。
かり出された伸三さんが所在なさそうだったのがなんともチャーミングだった。

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歌う夏丸師匠

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踊る二人。

 

少年と少女のポルカ

 

少年と少女のポルカ(キノブックス文庫)

少年と少女のポルカ(キノブックス文庫)

 

 ★★★★★

ゲイのトシヒコと、女になりたい同級生のヤマダ、電車に乗れなくなった幼なじみのミカコ。
三人それぞれの葛藤と日常、そして青春を軽妙に瑞々しく綴った表題作と、その後日談二篇。
そして、自分を六十四歳だと思い込むことにした十八歳浪人生ハルコのひと夏の恋を描いた海燕新人文学賞受賞作「午後の時間割」。
芥川賞受賞・藤野千夜、幻のデビュータイトル。 

 「幻のデビュータイトル」という紹介に惹かれて読んでみたのだが、ビックリするくらい良かったので茫然としている。

「少年と少女のポルカ」はゲイであることを自覚したトシヒコを中心に、女になりたいヤマダ、電車に乗れなくなったミカコの日常を描く。
ヒリヒリ痛い物語なのに独特の乾いたユーモアがあって楽しい。書き下ろしの後日談が二話入っているのも嬉しい。彼らが自分らしく生きることと世間と戦いすぎないこととの間の折り合いをつけてどうにか生き延びていてくれて良かったと思う。

「午後の時間割」は64歳になることに決めた浪人生のひと夏の恋を描いているが、この64歳設定が絶妙に効いていて何度も声をあげて笑った。

作品全体を通して、過酷な目にあっても悠然と受け止めるヤマダのように辛い出来事を笑い飛ばす凄みを感じた。
素晴らしかった。

ブラック・スクリーム

 

ブラック・スクリーム

ブラック・スクリーム

 

 ★★★★

ニューヨークで起こった誘拐事件の犯人、自称“作曲家”が国外に逃亡、名探偵ライムと刑事アメリア、介護士のトムの3人はあとを追ってナポリに渡り、現地の警察と共同で捜査を開始する―ほぼ全編がイタリアで展開する最新作は、シリーズのファンが「こうでなくちゃ」と快哉をさけぶ場面が満載。名探偵ライムが証拠とロジックで快刀乱麻の名推理を導き出せば、アメリアは凶行を阻止するために車を疾走させ、死地へと飛び込む。もちろん大規模ドンデン返しも待ち受けています。 

シリーズも回を重ねていくとマンネリになってしまうのは致し方ないところではあるけれど、マンネリをマンネリのまま終わらせないところがさすがディーヴァー。サービス精神の塊。

首吊り縄のミニチュア、被害者の苦痛のうめき声をサンプリングした動画。うーん、なんか前にもなかったっけ?と思ったらいきなり舞台はイタリアへ。

イタリア警察の面々もバラエティ豊かで面白いし、なんといっても森林警備隊エルコレ!なんていいキャラクター。

事件だけじゃなく人間模様にもどんでん返しがあったのもよかった。楽しかった!

カササギ殺人事件

 

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)

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カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

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 ★★★★★

 ミステリ界のトップランナーが贈る、すべてのミステリファンへの最高のプレゼント!
1955年7月、パイ屋敷の家政婦の葬儀がしめやかにおこなわれた。鍵のかかった屋敷の階段の下で倒れていた彼女は、掃除機のコードに足を引っかけたのか、あるいは……。その死は小さな村の人々へ徐々に波紋を広げていく。消えた毒薬、謎の訪問者、そして第二の死。病を抱えた名探偵アティカス・ピュントの推理は――。現代ミステリのトップ・ランナーによる、巨匠アガサ・クリスティへの愛に満ちた完璧なるオマージュ作品!

 噂にたがわぬ面白さ!

下巻読み始めの時は「え、えええ?カササギ殺人事件はどうなった?!お預けなの?」と焦ったけど、こういうふうに帰結していくとは。お見事。

古典ミステリへのオマージュもふんだんにあり、またミステリ読者へのくすぐりもたっぷりで、ぐふぐふ笑いながら読んだ。

真にクリスティを愛している読者はもしかするとムっとするところもあるのかも。私はそこまでの深い思い入れはないので逆にクリスティやエラリークィーンを再読したい気持ちがフツフツと。

文句なしに面白かった。

朝の九時落語

1/20(日)、UNA galleryで行われた「朝の九時落語」に行ってきた。

・さん助「一目上り」
・さん助「近日息子」


さん助師匠「一目上り」
言い間違いを結構してしまうというさん助師匠(うん、知ってる←失礼)。
シルヴィバルタンの「あなたのとりこ」が大好きなんだけど、これがいつもわからなくなっちゃって、「シドニィシェルダン」になってしまう。
あと同じシルヴィバルタンの「恋は水色」も好きなんだけどこれも「水色の恋」とごっちゃになってしまう。(あとで考えたらこれってもしかして「水色の雨」と間違えた?)
何度も言ってるうちにシルヴィバルタンとシドニィシェルダンがごちゃまぜにもなってましたよ…(笑)。

そんなまくらから「一目上り」。あれ。さん助師匠の「一目上り」を聞くのは初めてだったかも。
「こんちはー」「誰かと思ったらはっつぁんかい」
この挨拶だけでなんとなく今日は楽しい予感。私も小三治師匠みたいになってきたか?(なってない)
この二人の会話、いいなぁ。なんかご隠居もちょっと変人なのがさん助風味?

ご隠居自慢の掛け軸を「小汚い」と言うはっつぁんに「これは小汚いけどそこに渋みがあるんだよ」とご隠居。
…隠居も「小汚い」って言うんだ?(笑)
そして渋みと聞いて「ええええ?やめた方がいいよー。そりゃやめた方がいいよ」と過剰反応なはっつぁん。「いくら好きでも舐めない方がいい」って…。はっつぁんの「おれは甘味の方が好き」ってそういう意味だったとは。

ハイテンションで楽しい「一目上り」だったな。

後からさん助師匠が「前にやった時、間違って大家さんの家で”一休の語”って言っちゃって、一目上りじゃなくてニ目上りになっちゃった」には笑った。


さん助師匠「近日息子」
なんかめちゃくちゃ面白かった。今日の「近日息子」。
何がおかしいって父親が与太郎と言いあっていて途中であきらめるところ。
「うん。いいよ。お前はそのままで」。
…ぶわははははは!

お前と話していて頭が痛くなったと言うと、与太郎が医者や早桶を買ってきちゃうんだけど、それにも途中であきらめてしまう父。
棺桶のくだりも与太郎が「早桶と棺桶どっちがいい?今なら取り替えてくれるって。親父は古いから早桶派かなと思って早桶を買ってきたけど。」と言うと、父親が「早桶かな」。
「二人の間はそれで済んだのですが」って、ぶわはははは。おかしすぎる。

最初の挨拶で「二日酔い」と言っていて、確かに声も枯れ気味で目も腫れぼったかったけど、今日のさん助師匠はピカーッと明るくてとっても楽しかった。

朝早く行った甲斐があったよ。楽しかった~。

小助六・音助 スケスケ兄弟会

1/19(土)、日暮里サニーホールで行われた「小助六・音助 スケスケ兄弟会」に行ってきた。


・晴太「黄金の大黒」
・小助六「紋三郎稲荷」
・音助「小言幸兵衛」
~仲入り~
トーク(音助、小助六
・音助「のめる」
・小助六木乃伊取り」


晴太さん「黄金の大黒」
素直な落語で、独自なギャグをたくさん入れてきているわけじゃないんだけど、若い連中のわいわいがやがやがとても楽しい。
大好きな前座さん。


助六師匠「紋三郎稲荷」
花座に行ってきた時の話。
お酒は好きだけど記憶をなくしたりしたこともなくて酒の癖が悪くないことが自慢。
それが花座に行った時に飲んで翌朝。ベッドの上にコンビニの袋があって中にはヘパリーゼとR-1が。自分で買った覚えがないので誰かが忘れて行ったのかと思って楽屋に持って行きみんなに聞いたけどみんな「知らない」と言う。
えええ?じゃ自分で買ったの?まさかーー。
そう思っていたらお囃子のお姉さんが一言。「サンタさんかもよ」。
確かにその日は12月25日。R-1は赤と白のサンタクロースカラー
サンタさんだったのか…。どちらにしても今自分に一番必要なのはこれ(ヘパリーゼとR-1)だった。

…ぶわはははは。
あと、寄合の後に浅草で昼間から飲んだ話もおかしかったー。
仲良しの噺家さんたちで3時間ぐらい居座っていたら店員に感じ悪くされて最後は「もう帰ってくれ。浅草のルールを知らないのか」と言われ、怒った里光師匠が「なに言うとんじゃ!あんちゃん20代やろ?俺は20年前から浅草で仕事しとるんじゃ!浅草のルールはこっちの方がしっとるわ!」と、明らか関西弁で啖呵を切ったというのが、かっこいいやらおかしいやら。
好きだー。里光師匠。

そんなまくらから「紋三郎稲荷」。
中に入っているのは狐じゃないかと怯える駕籠屋の二人と、それを聞いて面白がって狐っぽく振る舞う侍。
狐を信仰している宿屋に泊って下にも置かぬ扱いを受けて賽銭までもらってしまうばかばかしさ。
楽しい~。大好き、この噺。小助六師匠と小せん師匠でしか聴いたことないな。


トーク(音助さん、小助六師匠)
登場の時に鳴っていた音楽が二人が席についても鳴りやまない。
あれ?なんで?いつまで流すの?と小助六師匠。話し始めても音楽が鳴っていて、んん?となっていると音が大きくなって歌詞が♪HAPPY BIRTHDAY♪
今日は小助六師匠の誕生日!ということで、晴太さんがバースディケーキを持って登場!うわーーーい。
「え?知ってたの?」と小助六師匠がきくと「もちろん」と音助さん。「だからお前は信用できない」に笑う。

今まではお客さんに質問を書いてもらって二人がそれに答えていたんだけどそうするとトークの時間が長くなってしまうので今回はそれはなし、ということで。
晴太さんに「なんか聞きたいことある?」と小助六師匠。「え?いきなりっすか?」と晴太さん。「急に聞かれても思いつかない…」と言いながらも「潔癖症で困ることありますか」(ナイス質問!!)。

それに対して小助六師匠が、前座さんに扇子を渡されるのが嫌、と。
扇子は口に入れたりするから人に触られたくない。だからわざわざ手拭いとは別にして見つからないようにカバンに仕舞っているのにわざわざ探して出してくる人がいてそれがいや、と。
楽屋で出されるお茶も飲まないという小助六師匠。何が入ってるかわからないから、と。うおおお。
「それは自分が前座時代に悪いことしてたからじゃないんですか」という音助さんに、自分はとてもちゃんとお茶を入れていた、と小助六師匠。
そんな話をしていたら音助さんが「私も結構気にしない方だけど、晴太さんはもっとすごい。さすがの私も”そこは靴履いた方がいいんじゃない?”とか言うことがあるくらい」。
「気にしないよな?」と聞かれた晴太さんが「はい。全然気にしません」。
ぶわはははは。
それ以外にも晴太さんの太いところが垣間見られたのも面白かった!
落語を聴いていてただものじゃないと思っていたけど、やっぱりただものじゃなかったな。

あと今年挑戦したい噺は…というのに音助さんが「七段目」。小助六師匠が新作を教わってやってみたいというのが意外で面白いなぁと思った。聞いてみたいな。小助六師匠の新作。


音助さん「のめる」
音助さんってきれいだし芸も端正だけど、なんかちょっととぼけたところがあって、そこがすごく面白い。
「のめる」もおっちょこちょいのちょこまかしているところがなんともいえずおかしくて大笑い。
楽しかった~。
こういう噺をもっとやればいいと思う!(勝手な意見)


助六師匠「木乃伊取り」
最初から最後までとっても面白い。合ってるんだな、小助六師匠にこの噺。
堅い大旦那と息子に甘いおかみさん。この二人の会話が自然で夫婦の姿が目に浮かぶよう。
清蔵が吉原に迎えに行って若旦那と対した時。若旦那が清蔵にキレて「暇をやる」と言いだす場面が私がどうにも苦手でイライラしちゃうんだけど、小助六師匠のはそこがさらっとしていて好きだな。なんだろう。主人面してそう言ったというよりは、吉原で粋に遊んでいるのにそこに入ってきて雰囲気を台無しにしたからキレたんだなというのが見ていて伝わってきたのは、程がいいから?なのか。あるいは小助六師匠が若旦那キャラだからか?

帰るよと若旦那が言ってくれて清蔵がほっとして付き合いで酒を飲んで三杯目で「うまい酒だな」とようやく気づいて味わいだして周りを見る余裕ができるのも面白い。
芸者に甘い言葉を言われてちょっとその気になったら訛りが消えて「いざという時のために練習してる。今がその時だ」というのがめちゃくちゃおかしい。

楽しい「「木乃伊取り」だった!
助六師匠の落語はしなやかで華やかでいいなぁ。

前座さん含めて三者三様、とてもいい会。また来年も行きたい。

瀧川鯉昇・鯉八 親子会

1/18(金)、文京シビックホールで行われた「瀧川鯉昇・鯉八 親子会」に行ってきた。


・どっと鯉「真田小僧
トーク(鯉昇、鯉八)
・鯉八「長崎」
・鯉昇「粗忽の釘
~仲入り~
・鯉八「おちよさん」
・鯉昇「ねずみ」


どっと鯉さん「真田小僧
聞き飽きた噺だけど面白かった。なんだろう。淡々とした芸風ではないんだけど、押しの加減がちょうどいい?のか、分かっていても思わずぷぷっと吹き出してしまった。


トーク(鯉昇師匠、鯉八さん)
鯉八さんが入門した時の話(だいたい弟子を取る時は体調が悪いときが多い、と鯉昇師匠)や幽霊を見ようと鯉昇師匠と蝠丸師匠と愛山先生とで寺に入ろうとして捕まった話など。
鯉昇師匠の話ってほんとに面白い!それを上手に引き出す鯉八さん、ナイス!
「沈黙トークコーナー」と言われていたけどそんなことはなくて話題が尽きることなく楽しかった。
師匠が「こういう場(親子会)に呼ばれると(師匠側は)堂々としているように見せてるけど実際はドキドキで絶対弟子よりはウケたい!と思っている」とおっしゃったのが面白かった。

すごいな、鯉八さん。まだニツ目なのに親子会ができるなんて。りっぱになって…と目じりを押さえる親戚のおばちゃん状態の私。


鯉八さん「長崎」
師匠に連れて行ってもらったスーパー銭湯での落語会。自分が先に上がって25分。その後師匠が上がって35分。
着物を着換えてモニターで見て勉強させていただこうと思っていて、師匠が「へっつい幽霊」に入った!と思ってハッと気づくと師匠が「もう終わったよ」と肩のあたりをゆすってる。
ん??と思ったら、なんと自分はそこで眠ってしまってたらしい。
自分の師匠が落語をやっている時に部屋で寝入ってしまってるなんて、他の一門だったらクビになってもおかしくない。
でも師匠は小言を言うこともなく優しく起こしてくれてその後もそのことには一度も触れなかった。
「もう終わったよ」がもしかすると「お前の落語家人生終わったよ」だった可能性もなかったわけじゃないのに。
師匠ほんとはあの時どう思ってたんだろう。怖くて今も聞けない。

そんなまくらから「長崎」。
名作だよなぁ…これ。
しーんとなって聴き入っているとぶわっと笑わされてでもまた思わず聴き入る。
この独特な世界観は他の人にはまねできない。

ちゃんと長崎案内にもなっていて、ちゃんぽん、トルコライスなどが食べたくなるし、長崎の夜景も目に浮かんでくる。
笑えるけどしんみりとした気持ちにもさせられて、まさに鯉八ワールド。
楽しかった!


鯉昇師匠「粗忽の釘
鯉八さんが言っていたスーパー銭湯の時の話は、彼が真打になったときの披露目の時に話します、と鯉昇師匠。
師匠が鯉八さんのことを「あの子」と言うのがなんかとても新鮮で微笑ましい。

そんなまくらから「粗忽の釘」。
おおっ。テッパンで来た!トークで言ってた言葉通りガチ勝負?!

粗忽者のまくらで自分の父親を忘れる小噺をやったんだけど、目と目があって笑いながら手を振る様子がもう面白くて面白くて大爆笑。
表情もそうだけど身体の使い方がとってもうまくて、いつも「芸の省エネ」を力説されている師匠だけど、いやいやいや…決して省エネじゃないんだな、師匠の芸って。

鯉昇師匠の「粗忽の釘」は本当に何度も見ているけど、前に聴いた時とまた変わっていて、どんどんシャープになっていってる感じ。
最初から最後までぎっちり面白かった。


鯉八さん「おちよさん」
タイトルだけ聞いていて噺を聴くのは初めてだった。
この女の喋り方が腹が立つけど、あるあるすぎて。そしてこの男もまたありそうでなさそうで…。
ありえないシチュエーションだけどどこかでしていそうな会話。いや絶対に実際にこういう会話をすることはないだろうけど、でもどこかで見たことがあるような。

笑うのとあっけにとられるのとまた笑うのと。
鯉八さんの新作は好き嫌いが分かれるだろうけど、文京シビックホールが満員になるんだから、鯉八フリークがそれだけたくさんいるということなんだろうな。
面白かった!


鯉昇師匠「ねずみ」
新作はどこがサゲなのかわからないから、あの子の高座を聴いていて「え?終わり?ここで?」と慌てて舐めかけていた飴を置いてきた、と鯉昇師匠。
確かに「おちよさん」は終わりがわかりづらいもんね。わははは。

二席目は改変のないとてもちゃんとした(笑)「ねずみ」。
甚五郎がとても穏やかで優しい。ねずみ屋の主人が愚痴を聞いてもらいたくなるのも分かるなぁ。
最後は正統派できっちりと締めた感じ。

いい会だった~。満足。

大古今亭まつり 渋好み金原亭の会

1/17(木)、日本橋劇場で行われた「大古今亭まつり 渋好み金原亭の会」に行ってきた。

・ひしもち「寿限無
・馬石「安兵衛狐」
・伯楽「猫の茶碗」
・さん喬「時そば
~仲入り~
・今松「二丁蝋燭」
・雲助「お直し」


ひしもちさん「寿限無
名前を教えてもらってるくまさんの反応がいちいち面白い。
「え?擦り切れちゃってるんですか?」「え?それ名前ですか?」「え?日本人ですよ?」「普通に戻りましたね?」。
書いてもらって読むときに「寿限無寿限無…ここなんで二回になったんですか?あ、調子?」には思わず吹き出しちゃった。


馬石師匠「安兵衛狐」
古今亭まつりということで、古今亭っていうのは志ん生師匠がいてその下に馬生、志ん朝、圓菊といて…馬生一門っていうのは「えー?なんでもいいんだよー。ああ?めんどくせぇなー」という緩い一門、志ん朝師匠のところはしゅっとしていてかっこよくて「そういうのはいけねぇよ!」みたいな一門、圓菊師匠はきゅっと気合が入ってて「やるよ!!」って力が入ってる一門。
私なんかその弟子のまた弟子ですから枝葉のあたり、さっき出たひしもちなんかさらにその弟子ですから、このあたり…と体をひょいっとひねって先の方を指すから大笑い。
噺はおなじみのところだったけど、女の幽霊も狐もかわいい!幽霊が訪ねてきて「こまごましたことをやります」と言うのにも笑ったー。そういえば恩返しに来た狸もそう言ってたなー。


さん喬師匠「時そば
全員古今亭の中に自分だけ柳家で居心地が悪い。たまにそういうことあるんですよ。われわれ全員柳家の中に馬石さんがゲストで来る、なんていうことが。そういうとき、いじめるんですよ、みんなでよってたかってね。だから今日は逆でいやですねー。

なんて言いながら「時そば」。
雰囲気を壊さないように、でも柳家らしく?そして笑いどころもたっぷりと。
うーん。こういうことができないとこういう会のゲストには呼ばれないわけよね。なるほどねー。かっこいいわ、さん喬師匠ってやっぱり。


今松師匠「二丁蝋燭」
うちの一門はみんな名前もバラバラで芸もバラバラ。でもいいでしょう?落語らしくて、と今松師匠。
むかし家今松という名前は師匠から言われた名前で最初は「そんな名前はよしましょうよ」と断ったけど、殊の外師匠がこの名前を推してきたので、これ以上断るとしくじっちゃうと思って受けた。
名前なんてものは他と区別できればなんでもいいんだから、今では慣れちゃった、と。

あんまり一門のことや師匠のことを語ったりしない師匠だから、こういう話を聞けるのは嬉しいなぁ。
みんなバラバラでそこがいいんだって誇らしげにおっしゃっていたも聞いていて嬉しかったな。

「二丁蝋燭」は「味噌蔵」の帰って来てからがないバージョンのような噺。ケチ兵衛さんのケチなだけの噺で救いがないと言えば救いがない。
おかみさんが妊娠してからもおまんまをたくさん食べるようになったと嫌がったり、食い扶持が増えるからおかみさんを里に帰そうとしたり…赤ん坊が生まれたら情が沸いたように演じる噺家さんもいるけど、今松師匠はそういうことはせず、徹頭徹尾ケチのまま。ひどいわっ!と思うけど、落語らしいといえば落語らしくて、笑っちゃう。
お嫁さんの実家で出るごちそうを持って帰ろうと言うケチ兵衛さんが「最近うちの奉公人の顔色が悪くなってきたから」というのには笑ってしまった。


雲助師匠「お直し」
この会が「渋好み」ということに首をかしげる雲助師匠。「金原亭だと渋いになるんですかね?確かによく言われましたよ。金原亭だっていうと、”渋いねぇ~”って。でもうちの師匠の芸は決して渋いっていうのじゃなかったですけどね。どちらかというと、くさい。フェイスランゲージ。うちの師匠の速記があるんですけど、いい男のところに、”かっといい男”って書いてあってね。弟子はわかるんです。これで、師匠のいい男。かっ!!!っていうのがね。でも文字にするとこうなるのかと思って。渋好みっていうことだからそういう噺を」
と言って「お直し」。
きっとこの噺だと思ってた。以前師匠がこの噺は古今亭の噺だから柳家噺家さんに「教えてくれ」と
言われて断ったとおっしゃっていたから。思い入れの強い噺なのだろう。

売れっ子だった花魁が寄る年波でお茶をひくようになって辛い思いをしている時に店の若い衆に優しい声をかけられてそれが本当に嬉しくて慰められて、そのうち二人はいい仲に。
店の主人が気が付いて二人を夫婦にしてくれてそのまま店に置いてくれる。
借金も返して家財道具も揃えられるようになったころ、男の方は遊びや博打に夢中になって仕事をさぼるようになり、二人はクビになってしまう。
借金だらけで仕事も失いどうしようもなくなり、男は女に「ケコロをやってくれ」と泣きつく。
最初は嫌がる女だったが、二人の暮らしを立て直すためと覚悟を決めてやることになる。

畳一畳ぐらいしかないような小屋に男を引き入れて、口八丁手八丁で「お直し」をさせて小銭を巻き上げる。
いざ始めてみると女の方が度胸が据わっていて客の見定めにもぬかりない。
捕まえた客がべろんべろんに酔っ払っているけど気のいい職人で、やたらと女のことを気に入って「女房にする」と言い、女も「うれしい」とおだてるのに嫉妬した亭主が「直してもらいなよ」と言うんだけど、女に夢中になってる客は「おお、そうか」とどんどん金を出す。
亭主の不機嫌な「直してもらいなよ」と、「お、そうか」「なんか直すの早くねぇか?」と言いながらもお金を出す客の対比がちょっと面白い。

客が帰ってから「もうこんなことはやめだやめだ!」と言うと、女が「あたしはやりたくないのにお前がやれと言ったんじゃないか」と言ってから、辛かった時にうどんをとってくれて二人で食べたのがどんなに嬉しかったか、その情があるからいまだにこうやって離れられずにいるのに…と言うところには、思わず涙…。
底辺にいてそこから抜け出せない、離れられない男女の情や哀しさが伝わってきて、なんともいえない気持ちになった。
でも最後ちょっと笑えて、そこがまた落語らしくて好き。

とてもいい会だった。楽しかった。