りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

林家きく麿独演会

2/4(月)、ミュージックテイトで行われた「林家きく麿独演会」に行ってきた。

・きく麿「珍宝軒」
・きく麿「フライドポテト」
~仲入り~
・きく麿「優しい味」


きく麿師匠「珍宝軒」
昨年はいろいろありました、ときく麿師匠。
なんといっても12月の末廣亭の上席でトリをとったこと。トリが決まったことをとても喜んでくれた師匠がすっかりそのことを忘れて協会からの出演依頼に「出られません」。え、ええええ?
それでも何日か出てくださって打ち上げも来てくださったんだけど、そのときに師匠がしみじみと「驚いたなぁ…」。
褒められたのかと思って「ありがとうございます」と言ったら「高座で歌うなんて…」。
ええええ?師匠が歌えって言ったんじゃないですかーー。
いつもきく麿師匠の歌を褒めてくれていた師匠。「それをやったほがいいよ」「歌をやりなさいよ」言われていたんだけど、ある時浅草で持ち時間がちょっとしかなかったので小林旭の歌だけ歌って「それでは!」と下がったら、「よくやった!」と褒めてくれた師匠。
その言葉に後押ししてもらってトリの時も歌ったのに…とほほ。
ニツ目の頃はほとんど寄席に出させてもらえなくて、寄席なんか出なくてもいいんだい!と思っていたけど、こうして出させてもらえるようになって、寄席ってほんとに勉強になるんだなぁ、としみじみ思った。寄席ですごく鍛えられている人っていうのはどんな場所に入ってもしっかり自分の高座をやって笑いをとれる。それが底力があるっていうことなんだな、というのを目の当たりにした、と。
そして今まで自分一人で頑張って来たつもりだったけど、いろんな人に助けてもらっていたんだなぁというのをすごく感じた、と。

…うわーー、きく麿師匠がそういう話をまくらでするのはめったにないことで、ほんとにすごく感じるところがあったんだろうなぁと胸がいっぱいに…。
私がきく麿師匠を見始めた頃ってほんとにあんまり寄席に出てなかったもんなぁ。それが新作の師匠がトリの時とか、小袁治師匠のトリの時とかに顔付けされて、師匠方が「きく麿って面白いんだな!」って言うようになって…ほんとに自力で築いていったのがすごいなぁ。
白鳥師匠に「俺たち新作派は人の3倍ウケなくちゃいけないんだよ」と言われたという話も素敵だった。

そんなまくらから「珍宝軒」。
わーーい。大好きな噺。
これほんとに何度聞いても完成度が高いと思うんだよねぇ。最初の赤ん坊のくだりから始まって、お客さんが踊りながら入ってくるところ、言い立てからおかみさんの聞き間違い、そしてサゲまでが完ぺきな流れ。
金明竹」が大好きなのでもうおかしくておかしくて。
楽しかった!


きく麿師匠「フライドポテト」
9月に和助さんと旅の仕事に行ったとき、台風直撃でちゃんと飛行機が飛ぶか心配で和助さんに何度も連絡をとったんだけど何を言っても「大丈夫っすよ。おれ、運がいいんで」「飛びますよ」としか答えない和助さん。
いやいやいや、運がいいとかそういうことを聞いてるんじゃなくて、最悪の場合を考えて前乗りした方がいいかとかそういうことを主催者と調整してほしいんだって!
あと、和助さんがきく麿師匠の家に泊まりに来た時。かなり遅い時間なのに隣から和助さんが声をかけてくる。それが「クリーミーマミの歌知ってます?」
そんなの知らないわ!と答えると「歌詞が深いんすよ。 ♪女の子って好きと嫌いだけで 普通がないの♪…すごくないっすか?女の子には好きと嫌いしかないんっすよ!!」。
「和助って、神楽やってるときはすごいうまくてかっこいいけど、話してみるとすげーバカだから」に大笑い。わかるわかる!

そんなまくらから「フライドポテト」初めて聴く噺。
男二人が火にあたっている。どうやらこの二人スキーに来ていて遭難したらしい。
1人(吉田)がもう一人に向かって「おれってさ。今まで生きてきて苦労ってしたことないんだよね。だから今回も遭難したけどまぁなんとかなるだろうなって思ってたんだよね」。
そう言われたもう一人が「ええ?そうなの?あ、でもそうかもしれない。だいたいさ、雪山で遭難するとかかなりヤバイ状況じゃん。だけど歩いていたらこの山小屋が見えて、たまたま鍵が開いていて、入ってみたら薪とかもあって火をおこすことができて。これもお前の運の良さのおかげかもな」。
最初はそんな話だったんだけど、二人でお腹が空いたなぁというところから、今何が食べたい?という話になって二人の関係が悪化していく…。

吉田くんの苦労知らずさが確かになんか聞いていてイラっとくるんだけど、もう一人の「いや違うっしょ!」の根拠もそれはそれでヘンテコで、それをこの極限状況の中でやりあうばかばかしさ。
よくこういう噺を思いつくよなぁ。笑ったー。


きく麿師匠「優しい味」
お上品な女性(!)二人がレストランでスープを飲んでいる。一人が「ああ、優しい味!」と言うと、もう一人もじっくり味わって「ほんと。優しいとしか言いようがない味」。

なんかこのお上品さがやたらとおかしくて何が始まるかわからないうちから笑ってしまう。
この二人がシェフを呼んでスープをべた褒めしたあとに「作り方を教えて」と言うんだけど、その攻防があったあと、シェフが厨房でため息をついて、そこでの会話から意外な?事実が…。

これはわかりやすく大爆笑な噺だったなぁ。なにも考えずひたすらゲラゲラ笑える。面白かった!