りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

小助六&夢丸 リレー落語会 三味線づくし篇

1/28(日)、日暮里サニーホールで行われた「小助六&夢丸 リレー落語会 三味線づくし篇」に行ってきた。

 

・音助「転宅」
・小助六「掛け取り」
・夢丸「稽古屋」
~仲入り~
・優子 櫓太鼓
・夢丸「豊竹屋」
・小助六「親子茶屋」


音助さん「転宅」
音助さんの「転宅」はニツ目になりたての頃に見たことがあるけれど、その時よりぐっと楽しくなっていた。
テンポがいいのと、泥棒のおっちょこちょいとお菊さんのこなれ具合の対比が楽しく、くすくす笑ってしまう。
音助さんって前座の頃から上手できれいな落語をする人だなぁ…という印象だったけど、最近音助さんのカラーが出てきたような気がする。
「できる人」の印象が強いけど案外とぼけていて天然っぽい一面もちらり。おもしろい!


助六師匠「掛け取り」
大雪の日に末廣亭で〇楽師匠も出番があって、13人のお客さんの前で高座をつとめられていて、そういうことがあるとなんとなく仲間意識のようなものが生まれる。
楽屋仲間が小助六師匠の自宅が遠いことをからかうので冗談で「女のところに泊まるから」と言ったら、〇楽師匠が同じセリフを言って場が凍り付いた、というのに笑う。ぶわははは。

そんなまくらから「掛け取り」。
これって歌とか歌舞伎とか物まねとかがうまい人がこれもんでやる噺というイメージが強いけど、小助六師匠は確かに歌舞伎のしぐさとかとてもきれいでしなやかだったけど、「これもん」なところが全然なくてさらりとしていてよかった~。
助六師匠の軽やかなところが好きだなぁ。私の嫌いなタイプの落語の対極だなといつも思う。


夢丸師匠「稽古屋」
三味線が入る噺とくればやはり「稽古屋」なのかなー。
この噺もなんか踊りに自信がある人がこれもんでやるイメージ。私の場合はこみちさんのイメージが大きいかな。ってこみちさんがこれもんでやってるっていうわけじゃないけど。
夢丸師匠は案外声が低いので、お師匠さんが歌うのもちょっとこう…女のお師匠さんぽくないんだなー。
もてたいハチのどたばたは面白かったけど、そこが少し残念だったかな。でもこういう噺も苦手にしないできちんと向き合う夢丸師匠が素敵。ってエラソーですびばせん。


優子先生 櫓太鼓
優子先生を高座の上で見るのはこれで三回目。
回を重ねるごとにトークが面白くなってる(笑)。
三味線への愛を熱く語られたんだけど、いやぁ…やってみたくなった…。
なによりも、三味線を教える時に楽器だけでなく何か人生の指針になるようなことはないかと考えた時に、三味線の一音を出す時には毎回神様と対峙していて一番いい音を出すという意識をもって出している、っていうところ。
普段の生活ではいろいろ心配したりくよくよしたりすることの方が多いけれど、三味線の音を出すときは常に「今までで一番いい音!」という気持ちでやる、っていうの。
すごく素敵だなぁと思った。

そして小林一茶が好きだという話やお相撲の話のあとに「櫓太鼓」。
いやぁこれがもう…超絶テクニック、でもテクニックだけじゃなくて、三味線への愛とか音楽の理解とか…とにかく素晴らしくて感動~。
こういうのを見てしまうと、あの人やこの人の三味線が物まねしてるようにしか見えなくなってしまうんだよなぁ。レベルが違いすぎる。

後から、優子先生がお囃子をやめて音曲師としてやっていくことにしたことを知って、納得…。
確かにあれは表に出てやるべき芸。


夢丸師匠「豊竹屋」
燃え尽きた優子先生を気遣って(笑)三味線の入る噺だけど優子先生を煩わせないように「口三味線」の噺。
いやぁこれがおかしかったー。
義太夫の語りがおかしいし、見得を切ったりするときの形と表情がもうぴったりはまって楽しい。笑った笑った。


助六師匠「親子茶屋」
三味線縛りがあってもこういうちょっと珍しい噺をしてくれる小助六師匠が好きだ~。
遊び過ぎの若旦那を叱りながらも実は隠れ遊びが好きな大旦那が、きちんとしている小助六師匠に重なって見える(笑)。
楽しかった!

前回同様、大満足の会。
日曜日はあんまり出かけないようにしているんだけど、この会はできるだけ来たいなー。

 

 

末廣亭1月下席昼の部

1/26(土)、末廣亭1月下席昼の部に行ってきた。


・晴太 与太郎小噺
・遊子「孝行糖」 
チャーリーカンパニー コント
・文月「堀之内」
・遊吉「紀州
ぴろき ウクレレ漫談
・鯉朝「置き泥」
・遊之介「蝦蟇の油」
・ポロン マジック
・歌春 いつもの
・談之助 漫談&懐かしのヒーロー
・ナイツ 漫才
・松鯉「谷風の情け相撲」
~仲入り~
・愛橋「桃太郎」
・マグナム小林 バイオリン漫談
遊雀「堪忍袋」
雷蔵「金婚旅行」
・小助小時 太神楽
・遊三「長屋の花見

 

遊子さん「孝行糖」
面白かった。結構たっぷり。もしやこのために晴太さんは小噺だけで下がったのか?


遊吉師匠「紀州
いつものまくらからの続きでふわ~と「紀州」に入り、そのふわふわとぴしっとの加減が絶妙でしびれる…。か、かっこいい…。遊吉師匠、好きだ~。


ぴろき先生 ウクレレ漫談
最初から最後までほんとに面白くて笑い通しだった。最高。


鯉朝師匠「置き泥」
本来だったらここに圓馬師匠が出てたのに…と思うと残念でならない。
「置き泥」も南なん師匠のを数えきれないほど見ているだけに、それとは雲泥の差がある「置き泥」で、言葉を増やせば増やすほど落語の魅力がなくなっていく、というのを目の当たりに…。ないわぁ…。


遊之介師匠「蝦蟇の油」
この師匠のなげやりな感じとこの噺がぴったり合っていてたまらなく面白かった。
冷えてしまった客席をまた温めたのはさすがだった。


談之助師匠 漫談&懐かしのヒーロー
初めて見た!
いつもこんななのか、あるいは立ち見も出るほど盛況で素直ないいお客さんだったからサービス精神が爆発したのかわからないけど、楽しかった。

 

松鯉先生「谷風の情け相撲」
素敵としか言いようがない。かっこよかった~。


愛橋師匠「桃太郎」
いつものいたたまれない新作じゃなくてほっとしたけど、滑舌が悪すぎて何を言ってるかわからない。

 

遊雀師匠「堪忍袋」
べらぼうに面白かった。ドスのきいたおかみさんと屁理屈を並べる旦那がたまらなくおかしくて最高。
師匠もほんとうに楽しそうで、客席がぐわーーーっと盛り上がった。


圓馬師匠が代演だったのでどうしようかと思ったんだけど、遊吉師匠も出てるし…と思って行った末廣亭昼の部。
二階席も満員、立ち見も出るほどの大入りだったんだけど、誰かを目当てに来たというんじゃない…なんかこうとても素朴で素直なお客様でほんとにいい雰囲気。
すれっからしの私も素直な気持ちで見られて楽しかった~。

わたしの本当の子どもたち

 

わたしの本当の子どもたち (創元SF文庫)

わたしの本当の子どもたち (創元SF文庫)

 

 ★★★★

 もしあのとき、別の選択をしていたら?パトリシアの人生は、若き日の決断を境にふたつに分岐した。並行して語られる世界で、彼女はまったく異なる道を歩んでゆく。はたして、どちらの世界が“真実”なのだろうか?ヒューゴー賞ネビュラ賞同時受賞の『図書室の魔法』と“ファージング”三部作の著者が贈る、感動の幻想小説。全米図書館協会RUSA賞、ティプトリー賞受賞作。

この人と結婚するか否か、この選択が自分の運命の分かれ道。というのは間違いのないことだが、実はこの選択が世界の分かれ道でもあったとは。
でもそういう小さな選択が積み重なって世界を作っているのかもしれない?そりゃ頭も混乱するよね。全然別の世界で別の人生を生きていたんだから。

でもどういう選択をしたとしてもそれが自分の人生。全く別の道を歩んだように見えるけど根っこの部分は変わらないことに感動。

この間読んだ川上弘美作品と同じようなテーマだったのでちょっと驚いた。

コスモポリタンズ

 

コスモポリタンズ (ちくま文庫―モーム・コレクション)

コスモポリタンズ (ちくま文庫―モーム・コレクション)

 

 ★★★★

ごくごく短い短編だけど、モームらしい皮肉やユーモアがたっぷりで楽しい。
モーム自身が出てくる作品も多く?エッセイのような味わいもあり。
人を見る目が厳しい~。特に女性に対して辛辣で「ひぃー」と腰が引けつつも、面白かった。

集中して読むより、気が向いた時にぱらぱら読むのに向いているかな。

末廣亭1月下席夜の部

1/25(木)末廣亭1月下席夜の部に行ってきた。

・談幸「片棒」
・ハッポウくん 
・米福「持参金」
・円楽「代書屋」
~仲入り~
・和光「秘伝書」
・ポロン マジック
・小助六「両泥」
・伸治「粗忽の釘
Wモアモア 漫才
・小文治「七段目」


談幸師匠「片棒」
わーい、談幸師匠。
浅い出番で「片棒」を3兄弟分フルでやっちゃうってすごい。
いつもの1.3倍ぐらい早口だけど早口でもとても聞きやすい。やっぱり落語って「技術」も大事なんだなぁ。
3兄弟ともふわふわふざけていて明るくてばかばかしくてとっても楽しい。
次男の時のお囃子の調子がとっても楽しかったので、今度はもっとたっぷり聞きたいな。


ハッポウくん
初めて見た。
おしどりのケンちゃん同様、トークは裏声。地の声だと明るい感じが出ないのかな。
紙切りに比べると、切ってるところが全然見えないので、確かに足のステップは必要かも。
でも思ってるより仕上がるのが早いし出来上がった作品も見事だった。
「ほしい人」と言われて、おじいさんがとっても元気に「はーい!!」と手をあげたのがかわいかった~!

助六師匠「両泥」
兄貴兄貴となついてくる新米の泥棒とそう呼ばれてまんざらでもない中堅?泥棒のやりとりがなんともばかばかしくて楽しい。
二人で入った飲み屋で「空き巣」という単語を連発する新米に、ひそひそ声の兄貴分。
その後の展開のばかばかしさといい、好きだ~。


伸治師匠「粗忽の釘
あのふにゃっとした笑顔と高座の上でふわふわっと動く姿を見ると、もうそれだけで幸せな気持ちになるなぁ。
落語の中の人物も師匠もわらっちゃってるのが見ていて楽しい~。
下ネタも伸治師匠だと全然いやじゃない。


小文治師匠「七段目」
歌舞伎のしぐさがとてもさまになっていて鳴り物ともぴったり合って、かっこいい。
ぴったりすぎて、そうじゃない噺も聞いてみたくなるなぁ。例えば仲村仲蔵とか淀五郎とか見てみたいなぁ。

 

S.モームが薦めた米国短篇

 

S.モームが薦めた米国短篇

S.モームが薦めた米国短篇

 

 ★★★★★

 名作の案内人としても名高いサマセット・モームが、アメリカの大都市以外に住む、手軽に文学書が手に入らない読者のために選んだ20世紀初頭の英米短篇46篇から、米国作家の6篇を厳選して新訳!

 モームが選んだアメリカ人作家の書いた短編って、モーム好き、そしてアンソロジー好きにはたまらない。

既読は「エミリーに一輪のバラを」だけ。これを初めて読んだのはおそらく大学生のころだったと思うが、あの時の衝撃は大きかった。
フォクナー以外もフィッツジェラルドスタインベックヘミングウェイ、ウォートンと有名どころが名前を連ねているが、どの作品も面白い~。全然色あせてないのがすごいなぁ。
ヘミングウェイには苦手意識があったのだが、これを読んでちょっと他の作品も読んでみようかなという気持ちに。

末廣亭1月下席夜の部

1/23(火)末廣亭1月下席夜の部に行ってきた。

桃之助「熊の皮」
・ポロン マジック
・小助六「やかんなめ」
・柳太郎「おかえり」
・正二郎 太神楽
・小文治「田能久」


助六師匠「やかんなめ」
前の日の大雪についてのまくら(末廣亭をつとめた後、松戸まで。遅い時間だったせいか案外電車も混んでいなくてほとんど遅れもなし。松戸からのバスもたいして遅れず、また雪にまみれることもなく。しかし家に着くと雪かきがしてなかったため、玄関に入るまでの間で靴がえらい汚れてしまった。どこに落とし穴があるかわからない)から「やかんなめ」。
短い時間でまくら長めでも「やかんなめ」までできちゃうのがすごい。

助六師匠は語りも体の動きもしなやかだから見ていてほんとに気持ちいい。
といって「うまいだろ」という嫌味な感じが全くなくて、あくまでも軽くてふわふわと楽しい。
いいなぁー。また寄席で見る小助六師匠がいいんだなぁ。ふわふわっと軽くて明るくて。

声をかけられたお武家様の男らしい「あいわかった!」に笑い、「やかん頭をなめさせてくれ」と言われてぷるぷる怒る姿に笑い、振り返ってべくないに文句を言う姿に笑う。
楽しかった!

柳太郎師匠「おかえり」
前にも聞いたことがある新作。
お金を持ってないからって船頭に断られた男。はっと目覚めると箱の中。
漂うお線香の香りに母親の涙声。
しかし案外みんな冷たいっていうのがばかばかしくて笑っちゃう。
シュールな噺だなぁ(笑)。
この師匠、他にもいろいろ新作作ってるんだろうか。見てみたいな。


小文治師匠「田能久」
前にも聞いたことがある小文治師匠の「田能久」。
鳴り物入りなのも嬉しいし、花魁のしぐさや芝居のしぐさもきれいで、見ていてウキウキ楽しくなる。
こういう噺、好きだなぁ。
すごく楽しくてきいている間とても幸せだった。よかった。

鈴本演芸場正月二之席夜の部

1/19(金)、鈴本演芸場正月二之席夜の部に行ってきた。
前の日に少しげっそりしちゃったので気が進まかったのだが、会社の人と一緒に行く約束をしていたので、だったら気合を入れて開場前から並ぶか!と早退。
16時半前ぐらいに着くとすでに行列ができていて、ひぇー。
でも早退したおかげで前の方の席に二人で並んで座れたのでよかった。

 

・朝七「桃太郎」
・駒次「ガールトーク
・ダーク広和 マジック
・菊之丞「たらちね」
・白鳥「ナースコール」
・ホームラン 漫才
・さん助「もぐら泥」
・白酒「粗忽長屋
~仲入り~
・ペペ桜井 ギター漫談
・雲助「新版三十石」
・ストレート松浦 ジャグリング
喬太郎「ハンバーグができるまで」

 
朝七さん「桃太郎」
お友だちから「すごい前座さんだよ」とうわさには聞いていたけど、びっくりしたー。
菊之丞師匠のような外見に、とても前座とは思えないこなれた落語。
なんだろこの…おまいさん、あたしもいろいろ苦労してきたんだよ、聞いておくれでないかい?あたしのおしゃくじゃうまくないだろうけど…っていうたたずまいは…。
前の会社にいたとき、入ってきた新人で「おやじ」というあだ名のついた子がいたんだけど、電話をかけてる時の腰の低さとかたたずまいに貫禄がありすぎて「やっぱり社会の荒波をくぐってきた人は違うわねぇ」とつい言ってしまうほど。客先に連れていったら、お客さんに偉い人と間違えられて深々と頭を下げられたことがあったけど、それを思い出した。
「桃太郎」、普段聞いて面白いと思ったことがないんだけど、ちゃんと面白かった。すごし!


駒次さん「ガールトーク
師匠が亡くなったばかりだからなのだろう。羽織姿。
師匠の思い出を語ったりするのかなと思っていたけれど、いつものまくら(電車で携帯覗き見、師匠に連れられて中野のおいしいハンバーガー屋、学校寄席の感想)だった。
ガールトーク」、遭遇率が高い…。面白いけど他の噺も聴きたい。


白鳥師匠「ナースコール」
看護師不足なので「優秀」じゃないけど採用されちゃったミドリちゃん。
おバカなミドリちゃんの信じられないけど本人的は大真面目な言動が爆発的に面白い。
最初から最後まで笑いっぱなしだった。


さん助師匠「もぐら泥」
まくらなしで「もぐら泥」。
これがめちゃくちゃ面白かった。
泥棒が強気に出て脅したり、突っ込まれて「はい、その通りです」と引っ込めたり。
泥棒も店の主人もおかみさんも通りかかった男も、キャラが立っていて面白い。
この日のお客さんがすごくノリがよくてウケるから、相乗効果で面白くなっていく感じ。
たのしかった~。


白酒師匠「粗忽長屋
前日もしていた池袋演芸場にいた自由すぎるおばちゃん(寄席を自宅と思ってしまっていて、思ったことを全て口に出してしまう)のことを語ったあと、「こういう人のまわりからはまともな人は離れて行ってしまい、気が付くとこういう人のまわりにはさん助さんみたいのばっかりが集まるようになってしまう」。
…ぶわははは。
なにせさん助師匠の高座の後、「あれはいったいなんだったんだ?」という空気が若干流れるから、こうやっていじってくれると「あ、ああいうキャラなんだ。笑っていいんだ」とお客さんがほっとするのが伝わってきて、おかしい。

そんなまくらから「粗忽長屋」。
まめでそそっかしい男のスピード感のある粗忽ぶりがめちゃくちゃ面白い。
「行き倒れは隣に住んでるくまだ」という確信がすごくて笑ってしまう。
「死んでるよ」と言われたくまも「あにぃがそこまで言うんじゃまちがいないな」と静かに納得してしまうおかしさ。
二人が戻ってくると「戻ってきた!」と喜ぶ観衆がおかしすぎる。
最初から最後までおかしかった~。


雲助師匠「新版三十石」
二枚目のイメージが強い雲助師匠が、ものすごいなまったり入れ歯が外れたりふんがふんが言ったりするのがたまらない。
一緒に行った人も雲助師匠は人情噺というイメージがあったらしく、びっくりしていた。(爆笑する隣で「よっしゃ」と自分の手柄のようにガッツポーズ)


喬太郎師匠「ハンバーグができるまで」
ちょっと演劇っぽく見えてしまって実は少し苦手な噺。
喬太郎師匠の会に通っていた頃は、この噺に当たる確率が高く、当たるとちょっとがっかりしていた。
今も好きなタイプの噺ではないんだけど、でもほんとにさすがだなぁと思った。
普段自分の気持ちを表すことが苦手なマモルが別れた奥さんが自分の大好物のハンバーグを作ってくれて食べてみたら相変わらずおいしくて心がほぐれていくところ。
その後の展開をわかっているだけに見ていてたまらなく…自分一人気持ちが盛り上がっても相手に伝えなければ…そして相手も同じように思ってくれなかったら、なんにもならないんだよなぁ…と思う。
商店街の3人のちょっとずれた優しさに救われながらも、甘くて苦い人参の味で終わる。
うーん、すごい。

鈴本演芸場正月二之席夜の部

1/18(木)、鈴本演芸場正月二之席夜の部に行ってきた。

・彦いち「遥かなるたぬきうどん(前半)」
・ホームラン 漫才
・さん助「馬のす」
・白酒「松曳き」
~仲入り~
・ペペ桜井 ギター漫談
・雲助「豆屋」
・ストレート松浦 ジャグリング
喬太郎「白日の約束」

さん助師匠「馬のす」
噺家は高座で嘘ばかりついてる。前に出た彦いち師匠(まくらでヒマラヤに登ったのに楽屋連中が無関心。「ヒマラヤ行く」と言ったらわさびさんは「今から?」、歌之介師匠は「チョモランマでしょ?…蜘蛛?(それはタランチュラ)」など)が言ってたのもみんな嘘ですから。
寄席では高座に積もった嘘を年末掘り起こして川に捨てに行く…。

…って、柄にもなく毒を吐いて客席が微妙な空気に…。おいおい。
そんなまくらから「馬のす」。

枝豆じゃなくてそら豆だったり、馬の尻尾を抜いた男が下戸だったり、普段聞くのと違う形。
もったいぶって話をする男の方じゃなく、馬の尻尾を抜いた方の男のイライラに焦点が当たっていたのが、私的には残念だったな。
馬のしっぽを肴に上がり込んだ友だちが、出された酒を悠々と飲んでつまみ食べながら毒にも薬にもならない話をするところが好きなんだよ。
なんとなくさん助師匠もやっていて楽しくなさそうだったような。うーん。

白酒師匠「松曳き」
落語なんていうのは意味のないどうでもいいような噺がほとんど。
先ほどのさん助さんがした噺も「だからなんだよ!」と言いたくなりますけど、しょうがないんです、そういう噺ばかりなんですから。

…白酒師匠、いじりながらも少しフォローしてくれてるようでもあり、ちょっとじーんとした。
ちょっとむずかしめのお客さん(ツボにはまるとすごく笑うけど、そのツボが少し難しい印象)を徐々に自分のペースにもっていって、素っ頓狂なお殿様と三太夫で客席全体をぐわっと爆笑の渦に巻き込んだのはさすがだったなー。かっこよかった。


雲助師匠「豆屋」
あまりにも豆屋さんがかわいそうなので嫌いな噺なんだけど、すごく面白かった。
豆屋を呼び込む男がバカみたいに大声で脅しもなんか遊びっぽいからなのかもしれない。
なにより雲助師匠がすごく楽しそうにされていて、それが見ていて伝わって来て楽しくなったのかもしれないなぁ。

平日の夜の寄席って空いてるイメージがあったけど、寄席、落語ブームとトリの喬太郎師匠の効果で満員の客席。
18時15分ぐらいに着いたら空いてる席を探すのが大変なくらいだった。
あんまりがらがらなのも気づまりだけど、こんなにも混んでてこんなにもお客さんの目当てがはっきりしていると、なんか気軽に聴きに行けなくなっちゃうなぁ…。
なーんて勝手な言い分なんだけど、ちょっとテンション下がっちゃった。

鈴本演芸場正月二之席夜の部

1/17(水)、鈴本演芸場正月二之席夜の部に行ってきた。

・彦いち「ねっけつ! 怪談部」
・ホームラン 漫才
・さん助「やかんなめ」
・白酒「長屋の算術」
~仲入り~
・ペペ桜井 ギター漫談
・雲助「商売根問」
・楽一 紙切り
喬太郎「任侠流山動物園」


彦いち師匠「ねっけつ! 怪談部」
熱血先生の言葉を発するタイミングが絶妙なのですごくおかしい。
怪談部の部員が先生に怖い話をしろと言われて「ほんとにあったことを話してもいいですか?」。
「…いいねぇ!素晴らしい始め方だ!」
「成人式の晴れ着を着ようと思ったら店がなくなってたんですよ」
「そういう怖いじゃない!」
…ぶわははは。

のっぺらぼうを見て「はい!表情が消えてます!やりなおし!」。
笑った笑った。


さん助師匠「やかんなめ」
BS11寄席の楽屋で頭にパウダーを塗られた時の話。
「(パウダー)はげてない?」「はげてませんよ」「え?お前まだはげてないと思ってるの?」のやりとり、何度聞いてもおかしい。
そしてそんなハゲハゲしいまくらから「やかんなめ」。このつながり、いい!

さん助師匠の「やかんなめ」すごく久しぶり。
やかん頭の侍がほんとに気持ちのいい人物像で好きだなー。
奥様のために手打ちも覚悟でお願いに上がる女中がわちゃわちゃしていてそれもおかしい。
そしてなめおわった奥様の獣じみた姿がたまらない。
楽しかったー。


白酒師匠「長屋の算術」
お客さんの中に真剣に落語を聞く人がいる。
落語というのはたいていがどうでもいいような噺ばかりで、起承転結の結がなくて、「だからなに?」というものばかり。
それをまじめに聞いて「あのあとどうなったんでしょうか」とわざわざ楽屋を訪ねてくる人もいる。
無駄ですから!
そしてこちら側にいるのはまともじゃない人間ばかり。さきほどのさん助なんかもうギリギリですから。というかアウトですから。外に出た瞬間「不審者」ってお縄になるような…。

そんなまくらから「長屋の算術」。
長屋の連中がバカぞろいで世間から「バカ長屋」と呼ばれているのが嫌だという大家さん。
お前たちも算術ぐらいできなきゃいけないというのだけれど、「算術」と言われて「忍術の上?」と言ったり、「仮に店に行ってお金を払うとすると」と問題を出すと「お金を払うのは嫌だ!」と激しく抵抗してきたり。
ああいえばこう言う、こういえばああ言う、というそれだけの噺なんだけど、いちいち円陣を組んで話し合う長屋の連中がバカバカしくて大笑い。
楽しかった~!


雲助師匠「商売根問」
はっつぁんとご隠居の会話が隅々まで楽しい。
おばかな商売を考えてやってみるはっつぁんと、それを呆れながらも楽しそうに聞くご隠居。
どうってことない噺なのに楽しいなぁ。


喬太郎師匠「任侠流山動物園」
パンダの親分の笹を食べる様子の極悪なのに笑ってしまう。
後半になって「もうすぐ終わるけど心が折れかかってる」って言ってたけど、嘘でしょう?やってる師匠がすごく楽しそうに見えた。
前に見た時よりぐっとこなれていて楽しかった。 

 

大家さんと僕

 

大家さんと僕

大家さんと僕

 

★★★★★

1階に大家のおばあさん、2階にトホホな芸人の僕(カラテカ矢部太郎)。
一緒に旅行するほど仲良くなった不思議な「2人暮らし」の日々は、
もはや「家族」! ?

大切な人をもっと大切にしたくなる、
泣き笑い、奇跡の実話漫画!

大家さんと僕との絶妙な距離感がたまらなくいい。
「僕」は基本的には受け身だけれど、いろんなことを感じていろんなことを考えていろんなことを想ってる。
その想いは言葉にしなくてもそれはちゃんと大家さんに伝わっていると思う。

人との関わりに希望のようなものを感じるなぁ。とても素敵だ。いろんな人に勧めたい。
うちの母に読ませたら声を出して笑って、少し涙ぐんでいた。

年をとること、孤独と付き合うことも悪くない、と思わせてくれる。
だけどきれいすぎない。このバランス感が絶妙。でもそれが計算高くない。そこが魅力。

誰にでも書けそうだけど誰にも書けない。矢部さん、すごい。

池袋演芸場正月二之席昼の部

1/13(土)、池袋演芸場正月二之席昼の部に行ってきた。
最近の寄席ブームと小三治師匠トリの土曜日なので混むだろうとは予測していたけど、10時45分頃に行ってすでに70人ぐらい?並んでいたのには驚いた。
1時間強並んでいたけど、最初はそうでもなかったのにどんどん冷えてきて、入場券を買ってようやく入れる!と思ったらまだ開場じゃなくその後15分ほど待たされたのがつらかった…。
それでもどうにか座れてよかったけど、最初から最後まで立ち見だった人はほんとにきつかっただろうなぁ。私だったら最初から立ち見とわかったら入らないなぁ。

・門朗「雑排」
・歌る多・美るく 寿松づくし
・小かじ「馬大家」
喬太郎 漫談(「北」)
・ひびきわたる 漫談
・さん助「徳ちゃん」
・さん八「替り目」
・一琴「勘定板」
・アサダ二世 マジック
・一之輔「浮世床(本)」
・市馬「厄払い」
文楽「権兵衛狸」
笑組 漫才
花緑時そば
~仲入り~
・左龍「宮戸川(上)」
・小里ん「碁泥」
・小袁治「初天神
・橘之助 浮世節
小三治粗忽長屋


小かじさん「馬大家」
満員の客席を見て「ドンキホーテみたいですね…。圧縮陳列」と言ったのがツボでしばらく笑いが止まらなかった。
「馬大家」、珍しい噺だしおめでたいからウケるしいいよね。さすが三三師匠のお弟子さんだけあってツボを心得てる。
好き嫌いは別にして「できる」印象。前座の頃はあんなにつまらなそうだったのに。わからないものだなぁ。


喬太郎 漫談
満員の客席に「もはやここまでくると…あんたたちの問題だからね!こっちのせいじゃないからね!と言いたくなりますね」。
昨年の一文字「北」から始まって、「北」の先代が特撮好きだったことや、今の「大将」を止めるには太鼓持ちしかない、など…ぽんぽん飛び出すギャグに客席は大盛り上がり。
さんざん盛り上げた後に「圓朝という名人がおりまして圓朝が言うには…」と言うので、え?これからなにを?と思ったら「お時間です」で下がって行った。わははは。


さん助師匠「徳ちゃん」
浅草の初席で奇跡のような出来事がありました、とさん助師匠。
小菊姉さんという三味線と歌の師匠がいらっしゃってとても色っぽくてきれいな方なんですが、その小菊姉さんが楽屋で私のことをじっと見つめながら…いえ、正確に言うと私の頭を見つめながら「今夜はスーパームーンかしら…」と一言。
私思わず「そうです!」と答えてました。胸キュンでした。

…ぶわははは!なんだそのエピソード。おかしいぞ!

「これからするお話は我々の楽屋の先輩方が経験した実話をもとにしております。いわゆるドキュメンタリーノベルです」。
そんな前置きから「徳ちゃん」。

道行く人に片っ端から声をかける若い衆。いかにも軽薄で安い店っぽい感じ。
声をかけられた噺家二人。安さにつられて「じゃ入ってみるか」。
お見立ての時に「そこの色白のきれいな…」と言うと、それは女じゃなく置物?です。女はその横にうずくまってる黒いやつ。「え?それ人間なの?」

通された部屋は汚くて落書きだらけ。
廊下は穴だらけで、「離れ」というのは隣の家との間に板を渡しただけ。
そこに通されて大喜びした客が落ちて血だらけになったとか…。

そして部屋にやってきた花魁が、無言で芋をもしゃもしゃ食べてる様子がさん助師匠にぴったり。すごく異様で笑ってしまう。

面白かった~。
もう少しテンポよく進んだらもっと笑いが起きる気がするなー。


さん八師匠「替り目」
この何十年もかけてようやくわかりましたが、私は酒が苦手です。
あれこれ試して、これなら飲めるか、こっちはどうだとやってきましたけど、残念なことに清酒がからだに合わないようです。実に残念。
8合も飲むと具合が悪くなるから間違いありません。

…ぶわははは!この師匠下戸なんだ?と本気で思って聞いてたからまんまとだまされた。

そんなまくらから「替り目」。
これがもうべらぼうに面白かった。
酔っぱらい方がとってもリアルだし、おかみさんに対して強気に出たりびっくりしてちょっと引こめたりの加減が絶妙で、大笑い。
えええ?この師匠、こんなに面白かったんだ。(←失礼)

一之輔師匠「浮世床(本)」
両脇にぎゅうぎゅうに立つお客さんに向かって「これもいい思い出になる!物事は前向きに考えよう。立ち見と聞いてそれでも入ってきたんでしょ?しょうがない。でもこれで座ってる人と同じ料金…!立ち見は覚悟してたけど、こんなだとは思わなかったでしょ?」。
そんな客いじりから「浮世床(本)」。
テッパンですね。もう客席がどっかんどっかんウケてすごい。さすがだよなぁ。


市馬師匠「厄払い」
もしかして小はぜさんの「厄払い」は市馬師匠から教わったのかな。違うかな。
こういう席で必ずおめでたい噺をしてくれる市馬師匠、好きだなぁ。


小里ん師匠「碁泥」
大真面目に池で碁を打ちましょうと意見するご隠居に笑ってしまう。
サゲが大好き。


橘之助師匠 浮世節
ああ、きれい。そして前のように三味線漫談じゃなく「浮世節」なんだね。
正直、三味線がそんなに上手とは思わないんだけど(すびばせん!)、でも心意気が素敵だし、華があって明るくて楽しくて最高。
踊りが本当に素敵だった。


小三治師匠「粗忽長屋
客席を見て「こんなに大勢いらしてくださってありがとうございます」と頭を下げる小三治師匠。
「立ち見…大変でしょう。前の方に座ってる方はずいぶん早くから並んでくださったんでしょう。本当にこんなに寒い中…ありがとうございます。なにもそこまでしてみるようなものじゃ…。俺が客だったら嫌だよ」。
「今日初めて寄席に来たという方も、初めて小三治の落語を見に来たという方もいらっしゃると思います。言っておきますけど、今日落語を聞けると思ったら大間違いですよ」。

…ぶわははは!
小三治師匠のこういう軽口を聞けるの、ほんとに嬉しい。
身体の調子は決してよくはないんだろうけど、元気なんだな、と思えるから。

この二之席の初日、車の免許を返納してきました、と小三治師匠。
私は腕自慢だった。免許も教習所に通わずに試験を受けてもらった。一発合格でそれが自慢。でもぜったい一発で受かりたかったから、いろんな教習所に行って車庫入れを練習したりして腕を磨いた。
その免許を返すっていうのはね…。

私は40から50歳までバイクに乗っていて、それはもう毎日乗ってたし、生きがいだったけど、それもリュウマチになってやめた。
免許を返した時は切なかった。もうこれで二度と乗れないのかと思って。

車もね…。でもほんとにあぶねぇから。
この間もありましたね。85歳の人が運転していて人をひいて…。話を聞くとみんな「覚えてない」って言うんですね。
もちろんショックで頭がかーっとなって覚えてないっていうのもあるだろうけど。年をとると、そういうことあるんですよ。
私も落語をやっていて自分でなにをやってるか分からなくなる時がある。
なんとなく体で覚えていてふわっとやっちゃうと、ふと「あれ?仕込みちゃんと言ったっけ?」って。
落語だからいいですけどね。これが運転となったら…。

免許を返したら自分の足がふっと軽くなった感じがした。
ああ、気楽になったな、って。
免許を更新すると係の人が「安全運転でお願いします」と新しい免許を渡してくれるけど、今回は違いました。
「どうぞ事故に遭わないようにお気をつけて」。
上手いこと言うよね。思わず笑っちゃった。そうかこれからは自分がひいちゃう心配はなくなったけど、自分がひかれる心配をしないといけないんだ、って。

そんなまくらから「粗忽長屋」。
大勢の小三治師匠目当てのお客さんの熱にこたえるように、テンション少し高めの「粗忽長屋」。
声は決して大きくないのにとても聞きやすいのは、まくらで言っていたように子音をきちんと発音してるからなんだな。
やっぱりすごいんだ、小三治師匠って。

大変だったけど頑張った甲斐があった。よかった。

柳家はん治一門会

1/12(金)、小川町・多目的サロンレタスで行われた「柳家はん治一門会」に行ってきた。
はん治一門会って嬉しすぎる!
お友だちから「定員が少な目だから早めに予約しておいた方がいいよ」と言われ、年末に慌てて予約。
初めての会場だったので迷わないか不安だったけど、駅からとっても近くて、すごく素敵な空間。
始まる前にビールも飲めるし(!)高座も高くてとても見やすかった~。

・小はだ「転失気」
・はん治「子ほめ」
~仲入り~
・小はぜ「厄払い」
・はん治「猫の災難」


小はださん「転失気」
前座さんらしい余計なものをいれない素直な落語。
でもご本人の天然なキャラがちらっと見えるところがとても魅力的。
ちんねんさんが、お医者さまから「転失気」の意味を聞いた時に「へ?」と驚いたのが、間といい表情といい絶妙で大笑い。
とぼけたおかしさがあっていいなぁ。
二ツ目になるのが楽しみだなぁ。

はん治師匠「子ほめ」
毎年噺家がこの時期になると言うことは決まっていて「もう正月かよ」。
ほんとに年々1年が過ぎるのが早く感じるようになってきて、この間楽屋で雲助兄さんと喋った時もやっぱり同じことを言っていた。
うちの師匠は今年78歳だけど、師匠によれば「70過ぎたら笑っちゃうぐらい早く感じる」。

そんなまくらから「子ほめ」。
聞き飽きた噺もなんともいえずおかしい。
間、なのかな。それだけじゃないな。
物を知らないはっつぁんがほんとに知らないように見える。楽しい。

小はぜさん「厄払い」
初めての一門会をこうして開いていただけて本当にうれしい、と小はぜさん。
この一門会のことを知った時、ああ、小はぜさん嬉しいだろうなぁと思ったんだけど、やっぱり、ね。
でもこうして来てみると、楽屋で師匠をしくじることもありうるし、落語を間違えたりすると弟弟子の小はだに小言を言っても「でも兄さん落語間違えてたじゃないですか」と思われる可能性もあるわけで、喜んでる場合じゃなかった、というのが小はぜさんらしくて笑ってしまう。

この日、高座にははん治師匠の後ろ幕が張られていたんだけど、これは師匠が真打に昇進した時に地元のお客様たちが作ってくださったもの。
師匠の後ろ幕を背にして落語をできる機会なんて普通はないから嬉しい。
いいですよね、色合いといい…あんまりこういう色使わないですよね。八王子!って感じがします。さすが八王子だな、って。横浜だったらこういう色にはしないでしょう。

…ぶわははは。普通に聞いたら失礼にも思える発言だけど、小はぜさんだからそんなつもりは全くなくて素直にそう思ってるんだろうなぁ。
確かにとても素敵な後ろ幕だった。

そんなまくらから「厄払い」。
これで三連続「厄払い」。でも聞くたびにどんどんよくなっていってるから、「またか」と思わないんだよな。おもしろいもので。
そう考えると二ツ目なりたての噺家さんと何十年もやってる真打では、成長とか変化が全然違うってことなのかもしれない。
小はぜさんはほんとに今ぐんぐん成長していて、それを見るのを楽しんでいるのかもしれない、私も。


はん治師匠「猫の災難」
私事ですが昨年白内障の手術をしました、とはん治師匠。
群馬に腕のいい先生がいて噺家は結構大勢その先生のお世話になっている。
手術前は何日かお酒を控えていて手術してもらったあとに先生が「ところであなた今夜何か予定は?」。
一泊する予定なので特にないですと答えると、「じゃ飲みましょう」。
二人でしこたま飲んで次の日東京に帰ってきたんだけど、電車の中で少しなんか不穏な感じに。
その日は鈴本で代バネがあったんだけど、心臓が苦しくなってきてなんかおかしいぞ、と。
でもとりあえず楽屋に行けば人も大勢いるしどうにかなるだろうと鈴本へ。
支配人の方に話すと「それほどじゃないと思っても病院に行った方がいい」と言われ、病院へ。
調べてもらうと、脱水症状を起こしていたらしい。
点滴をしてもらってじきに具合はよくなった。

このことを師匠には内緒にしていたんだけど、じきに師匠の耳に入ってしまい、「お前もいい年なんだから酒を辞めろ」と言われてしまった。
あと自分は全然健康診断を受けてなかったんだけど、師匠に「ちゃんと一度検査を受けろ」と言われ病院まで紹介していただいてしまった。
その結果が出るのが明日。なので、今私はなんか…心配でもやもやしてるんです。

…ああ、楽しい。はん治師匠の話。
普段寄席では決まったまくらしか話さないはん治師匠。多分苦手意識があるんだと思うけど、こういう会で話してくれるともうなんともいえず楽しくて、もっとこういう話を寄席でもすればいいのになぁ、と思う。

そんなまくらから「猫の災難」。
はん治師匠の「猫の災難」、すごく聞きたかったから嬉しい!

「あー酒が飲みたい」ともだえるくまさんが本当に真に迫っていてたまらなくおかしい。
お隣から猫のおあまりの鯛をもらって、兄貴分が訪ねてきて酒を買ってきてくれることになって。
この兄貴分とくまさんとの関係が、すごく親しい友だちなんだなというのが伝わってきて、ちょっとびっくり。
今までそんなこと感じたことなかったのだ。

お酒を置いて兄貴が今度は鯛を買いに行ってしまったあと、飲みたくてたまらないくまさんが一人で飲み始めるんだけど、一杯目を飲み終わってからちらっと酒を見るその様子がもうたまらなくいじましくて…酒飲みの卑しさが出ていて、でもそれでいてかわいらしさがあって、すごくチャーミング。
こぼした酒を必死に吸い込むところもその酒を頭に塗りたくるところも、すごくおかしくて楽しくて。

こうなったらこれっぱかり残していても仕方ないと全部飲みほしてから、言い訳の稽古。
することがなくなると「早く帰ってくるがいいじゃないか」と勝手なことを言うんだけど、それも心からの言葉で笑ってしまう。

最初から最後までほんとに楽しい「猫の災難」。今まで見た「猫の災難」の中で一番好きだったなぁ。よかった。

星の子

 

星の子

星の子

 

 ★★★★

 主人公・林ちひろは中学3年生。
出生直後から病弱だったちひろを救いたい一心で、
両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき、
その信仰は少しずつ家族を崩壊させていく。
前作『あひる』が芥川賞候補となった著者の新たなる代表作。

またなんとも感想の書きづらい作品。

怪しげな宗教団体に入ってしまった両親に育てられたちひろ。
もとはといえばちひろの病気を治したい一心だったこと、生まれた時からそういう状態だったこともあって、ちひろは宗教も親もすんなり受け入れている。

傍から見たら明らかに異常な両親の行動も、当事者にしてみたら当たり前のことでそこには愛しかないわけで…。
同じ空を見ていてもお互いに見えるものが違うように、人間の行動や心の中も断罪することはできないものだよなぁ…。
異質を認めることの難しさを思い知らされるなぁ…。

ラストシーンはちひろが両親と決別していくことを暗示するようで胸が痛む。

浅草演芸ホール初席 第四部

1/8(月)浅草演芸ホール初席第四部に行ってきた。

・菊之丞「鍋草履」
・伯楽 「味噌豆」など
・にゃん子・金魚 漫才
・馬之助 百面相
・京二 漫談
・さん八 漫談(年金)
・正楽 紙切り
・駒三 小噺
・紋之助 曲独楽
・南喬 漫談(法事で野ざらし
・扇里「開帳の雪隠」
・雲助「子ほめ」
・ニックス 漫才
・吉窓 まくら&踊り
・白酒 小噺(交通事故で猿の証言)
・権太楼「代書屋」
・ダーク広和 マジック
・さん助 まくら
・左龍「英会話」
花緑「謎のビットコイン
・小菊 粋曲
・さん喬「ちりとてちん


お目当てがまくらのみの悲しみ…。
しかも「いつものまくら」でおもしろくもなんとも…(すびばせん)。
せめて自分の会でやってる立ち話みたいの、やってほしかったなー。持ち時間がすごく短いのはわかるけどさー。ちぇーっ。

こういうときに白酒師匠みたいにテッパンの小噺持ってるといいよねぇー。
他の人もやってるありきたりのやつだけど、何回見ても絶対笑えるもんなー。
あの交通事故で猿が証言するやつ。

権太楼師匠はほんとにいつでも必ず「代書屋」で、こんな短い時間でもそうでがっかり。
聞きすぎていてもう全然笑えないんだよなー。
同じ歌を歌いすぎて崩しすぎて発酵しちゃってなんの良さも伝わらなくなってるヒット曲が一曲しかない歌手みたいだよなぁ。
たくさん噺を持ってるのにどうして寄席では「代書屋」ばっかりなんだろう。
どういうこだわりなんだろう。
インタビューで「寄席が大好き」っておっしゃってるけど、なんかそういうのが伝わってこないんだよなぁ、同じ噺ばかりされると。ぶうぶう。
ってとんでもなく失礼な物言いだけど。

短い時間で短く落語やった菊之丞師匠、扇里師匠、雲助師匠、かっこよかった。
左龍師匠の「英会話」もすごくばかばかしくて楽しかった。
あと踊りとか百面相とか、ワンパターンと言えばワンパターンだけど、いいよね。お正月らしくて。
ってえらそうだな、おい。

さん喬師匠は「ちりとてちん」。
わりとくさくやられていて、お客さんに合わせたのか、それとも最近「くさくやる」ようになってきたのか。ちょっとどきどき。面白かったけど。


この日は雨で連休最後の日で体調もあんまりよくなくてあんまり出かけたくない気持ちで、でも行かないと後悔しそうな気がして行ったんだけど、正直ちょっとがっかりしちゃった。
でもこういうコンディションじゃなかったら楽しめたかもしれないから、あくまでもこちら側の問題なのかも。
ま、こんな日もあるさ。