りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

第382回圓橘の会

6/27(土)、深川東京モダン館で行われた「第382回圓橘の会」に行ってきた。
久しぶりの圓橘師匠の会。入り口で消毒。席も以前より離れて配置。
それでも始まってみればこの3か月が逆に嘘みたいにいつも通り。

 

・萬丸「小言念仏」
・圓橘「包丁」
~仲入り~
・圓橘 圓朝作「業平文治漂流奇談」その一


萬丸さん「小言念仏」
二ツ目になったばかりでこれから自分の会をやっていこうと思った矢先のコロナ自粛。
最初のうちはどうしようかと思ったんですけど、人間慣れるもんですね、と萬丸さん。
今、徐々に会ができるようになってきて、ただやはりそれは以前と同じというわけにはいかず、席も離して設置したり入り口で消毒、検温。
接触で測れる体温計を主催者さんが用意してくれるんですけど、この間の会ではどうもその体温計の調子が悪い。5人ほどは検温できたんだけどその後の人に反応しなくなっちゃって「あの…熱あります?」って聞いたりして、意味ないですねぇー。

そんなまくらから「小言念仏」。
小三治師匠の「小言念仏」を何十回と聴いてる私の前で「小言念仏」かい?(←エラソー)と思ったけど、これはこれで若々しくてかわいらしい「小言念仏」で楽しかった。
ってやっぱりエラソー?すみません!

 

圓橘師匠「音曲風呂」「包丁」
今度、一門会で都都逸をやることになった、と圓橘師匠。
楽屋雀は「あれは圓橘が歌いたいだけだ」なんて悪口言ってますけど…まぁそうかもしれないですけど…。
この間新内の師匠さんに別件で電話をして「今はどうやってお稽古してるんですか」と聞いたら、向かい合わずに斜めになってやってるらしい。確かにあれは声を張るから唾も飛びますからね…。いろいろ新しい習慣というのができてくるものですね…。

江戸っ子はお稽古事が好きで職人さんも習いに行った。もちろん師匠は女性に限る。
そんなまくらから。
ある男が往来で友達に会い「お前今も常磐津のお稽古に行ってる?」と聞くと「ああ、行ってるよ」。
今何をやってると言われて答えると「まだそこから進んでないのか」。
「師匠にはどうもお前さんの声は歌に向かないって言うんだな…」。
それを聞いた友だちが「だったらお前、常磐津の湯に行きなよ」と勧める。なんでもその湯に3廻(21日間)り通うと声が良くなるとか。
そう言われた男は言われた通り3廻通い、「よし、これで声が良くなったはず」と喜んで、人通りの少ない路地に入り声ならし。
ここで圓橘師匠がびっくりするような大きな声!しかも「まずい歌声」を出したので、もうびっくりするやらおかしいやらで大笑い!!
そこに通りかかった住民が「なんだお前のその酷い声は」と言ってきたので、男が説明すると「声っていうのはこうやって出すんだ」と言って、大きな声で「火の用心」の声を…こちらが今度はすごくいい声!!
で、そこからサゲ。


…うわーーーー。初めて聴いた噺!面白い。(あとからtwitterで「音曲風呂」という噺と教えていただいた!)
そしてこの落語から「包丁」へ。(嬉しすぎる流れ!!)

一文無しで帰って来た男が昔の友だちとばったり出会う。
友だちの方は立派な身なりをして羽振りがよさそう。
聞いてみると常磐津の師匠と一緒になってその女が稼いでくれている、という。
「お前、顔がいいからなぁ。いい思いしてやがるなぁ」と男が言うと「実はもう一人若い女といい仲になったから別れたいんだけどそう簡単に別れてくれそうにない」。
「いいことを思いついた。お前今から俺の家に行ってくれ。その時に酒を手土産に持って行け。で、女房に”ちょっと待たせてもらいたい”と言って家に上がり込め。そこで自分で持って行った酒をしこたま飲んで酔ったところで女房にしがみつけ。そこに俺が帰ってきて女房をどやしてつけて金をふんだくって山分けしよう」。

男は言われた通り家を訪ね上がり込んで酒を飲み、聞いていた通り佃煮や漬物を出して食い、女房にちょっかいを出すのだが…。

…まぁひどい男たちなんだけど、言われるがままに家に行って飲み食いする男がけろっとしていて実に落語っぽくって憎めない。
そして女房の方がとにかく強い。圓橘師匠の「女性」はほんとに強くて気持ちがいい。
何が最高ってサゲが実にもう落語っぽくて、なんだろう、緊張と緩和?こういう噺に目くじらをたてちゃいけないよ!っていうお手本のような…とにかく絶品で「ああっ、落語っていいなぁ!!」という気持ちでいっぱいに。
素晴らしかったーーー。大好きだ。

 

圓橘師匠 圓朝作「業平文治漂流奇談」その一
男気に溢れていて怪力(「七人力」←中途半端な数字に思えるが、当時「七福神」が大変な人気で「七」という数に拘っての「七人力」らしい)、しかも「業平」と呼ばれるほどの美男子、業平文治が活躍する物語をこれからこの会で連続でやっていくらしい。楽しみ。

当時の江戸は「入込」といって混浴の風呂が結構あった。
「混浴」を「入込」とは粋な呼び方、と圓橘師匠。
そういえば自分が二ツ目の時に会津磐梯山へ司会の仕事で行った時、泊まった宿が混浴で…番頭さんが「朝や夕方に入っても女性は入って来ないから夜遅くに行くといいですよ」とアドバイスされて、打ち上げが終わってからウキウキと風呂に入り女性が入ってくるのを待っていたら…。
…この話がおかしくておかしくて大笑い。
渋い圓橘師匠がこういうめちゃくちゃ茶目っ気のある一面をのぞかせてくれるともうたまらないなぁ…。

噺の途中でそんな脱線が入りながら。
入込に毎晩やってくる小股の切れ上がったいい女。
この女に岡惚れしたある店の番頭が風呂の中でこの女に近づいて触ったところ、持っていた手拭を女に取り上げられてしまう。
風呂屋の番頭に「この手拭を持っていた男が私にいたずらをしたからここに連れてきてほしい」というのだが、番頭はこの女が亭主と一緒になって強請たかりを生業にしているお浪という女と知っていたので、いたずらをした男を逃がしてやろうとする。
しかしそれに気づいたお浪、逃げ出そうとした男を裸のまま痛めつけ、番頭もどうしていいか分からず大騒ぎに。
そこにやってきたのが業平文治。
最初は穏やかにお浪を説得しようとするがどうにもならないと分かると、二本の入れ墨が入っている方のお浪の腕を2発でへし折る。
お浪は家に帰り亭主にこの話をすると亭主は「いい強請のたねができた」と喜んで…。


圓朝物だから油断はできないけれど、今度の主人公は分かりやすく強そうで義侠心もありそうだから、楽しめるかも。