りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

萬橘を満喫できる会 第15回

9/20(木)、ミュージックテイトで行われた「萬橘を満喫できる会 第15回」に行ってきた。

・まん坊「狸札」
・萬橘「洒落番頭」
・萬橘「粗忽長屋
~仲入り~
・萬橘「船徳


萬橘師匠「洒落番頭」
噺家という職業は世のため人のためにはならないと言われるし確かにそうだと思うけど、洒落がきいてるのがいいですね、と萬橘師匠。
この間、大阪の仕事に行った。一緒に行ったのが笑遊師匠で、楽屋には上方落語協会の福團治師匠がいらした。
福團治師匠が笑遊師匠に向かって「今日はお泊りですか?」と聞くと、笑遊師匠が「いえ、日帰りで帰ります」と言った後にシャレだったんでしょうが「女房がうるさいもんで」と言ったんですね。
そうしたら福團治師匠が「うるさい女房でもいるのはよろしいな」とぽつり。福團治師匠の奥様、今年亡くなってしまったらしい。
うわっそれはっとなって、笑遊師匠が「それは気が付かなくて…申し訳ない」と謝ると「いやいや、そんなことないですよ」と福團治師匠。でもなんか場がしーん…となってしまった。
そうしたら福團治師匠が「うちの女房は今年の春に亡くなりましてん」。
言ったとたんにマネージャーの人が「春じゃなくて冬!」
そんなことを間違えるわけはないから、多分そういうツッコミが入ることがわかっていて場を和ませようと思ってわざと「春」って言ったんだろうな、と思ったら、あーーーいいなぁこの世界はシャレがきいてて!と嬉しくなった。そうじゃなかったらよっぽどの×××か…ですね!
この世界に入ってよかったなと思う瞬間でしたね。

…ああ、いいなぁ、萬橘師匠のこういうところがすごく好きよ。
ポッドキャストとか仲のいい人との二人会とかだとなんとなく何を考えてるかわからないような…めんどくさい人だなぁという印象を受けるんだけど、こういう一人の会で見るととても真面目でいろんなことをきちんと受け止める人なんだな、と感じる。

あと、子どもを連れて縁日に行って金魚すくいをやったんだけど、結構お客が大勢集まってきてる中に、店のおばちゃんに向かって「カード使える?」って聞いた人がいて、こんなところでカード使えるわけないだろう!!と思ってそれだけでも笑ったのに、店のおばちゃんも「あー、今機械が壊れちゃってるの」と返していて、こういうシャレが楽しいなぁと思った。

そんなまくらから「洒落番頭」。
番頭さんと小僧の会話から。最初これが旦那と小僧の会話と勘違いして、え?旦那もシャレがわかるの?と驚いちゃった。
番頭さんの質問にシャレで返す定吉。それを「いいぞいいぞ」と褒める番頭。「洒落は生きる喜び」とまで(笑)。
そんな番頭の噂を聞きつけて「私の前でシャレをやっておくれ」と旦那。
この番頭さんはすごくちゃんとシャレの説明をするんだけど、それが全然わからない旦那がおかしい。
杖でシャレとくれと言われて「旦那がこれを使うと、みんながステッキと言って付い(杖)てくるでしょう」と言うと「ステッキじゃないでしょ、すてきでしょ。それにみんなじゃないですよ」と旦那。そこじゃない!という細かいところに反応する面白さ。
楽しかった!


萬橘師匠「粗忽長屋
基本的には変えているところはないんだけど、人物がくっきりしていてわかりやすい。
あと、くまが死んだと思って、本当に悲しんでる。それはもう胸を打つほどに。本人と話しながらも「因縁と思ってあきらめねぇ」と言いながら「だから俺は言ってただろ、お前ってやつはほんとに…」と半泣きしてる。それにちょっとじーん…。そういえばこの噺やる時、みんなそこまで悲しんる風にやらないよなぁ、なんてことに初めて気づいた。
おかしかったのは、くまのことを「足みてぇな顔のやつ」と言ったのを聞いていた人がいて、面倒をみてるおじさんが「この調子じゃほんとに行き倒れの本人を連れてくるかもしれない」と言うとその人が「足みたいな顔ってどんな顔ですかね?」。
こういう外し方がたまらない。
でもなんとなくもっと爆発してもよかったような気がしてしまうのは、期待値が大きいせいなんだろうな。白酒師匠を見るときに通じるものがあるな。


萬橘師匠「船徳
世の中にはやらないほうがいいことっていうのがあるんですよね。
私の師匠がある時新作をやると言い出したことがありました、と萬橘師匠。
それでやってみるから忌憚のない意見を聞かせてもらいたいと弟子が集められた。
師匠が真剣に新作に取り組んでいるのだからと忌憚のない意見を言ったら、それが全て自分への小言として返って来た…。という苦い思い出があります。

…ぶわはははは。なんかわかるような気がする。
というか、萬橘師匠の口から圓橘師匠の話を聞くのめちゃくちゃ嬉しいな!ほんとーーに素敵だからなぁ、圓橘師匠って。人柄もすごく真面目で清廉潔白なんだろうな。
萬橘師匠の言葉からも師匠へのリスペクトがうかがえて素敵だった~。
そんなまくらから「船徳」。

船頭になると宣言する徳さんの上から目線がおかしい。
「それほど難しい仕事じゃない」「たいした仕事じゃない」果ては「弟子になってやるよ」。
そういわれた親方が「弟子になってやるっていうことはないからね!そういうことは現実的にありえないの!」と答えるおかしさ。
若い衆を急いで呼んできてくれと言われた女中のお竹さんが「はーい」ってかわいいのがとっても新鮮。小三治師匠のもさん喬師匠のもお竹さんはいかにもやる気がない感じだから。
そして若い衆の懺悔の中に、親方のへそくりの隠し場所…というのがあるのにも笑った。

船に乗り込む二人連れ。
1人がさんざん「あたしゃ玄人」「行きつけの船宿がある」と言っているのに、船宿に行くとあきらかにおかみさんが覚えてない。しかも思い出したと思ったら「一回だけいらしたお客様」。ぶわははは!
出て行く船におかみさんが手を合わせて祈りを捧げているのもおかしいし、そういわれて「ちがうよ、あれはヨガのポーズ」っていうのもおかしい。
船を漕ぎだしてからは本当に力一杯の熱演で、汗だくの徳さんと萬橘師匠が重なる。
「ああ、きょうはいい着物なのに」というつぶやきも徳さんなのか萬橘師匠なのかわからなくてめちゃくちゃおかしい。
船が同じところをぐるぐる回るのも石垣にくっついて行っちゃうのも途中から流されちゃうのも全て「河童のしわざ」。
「そんなに?そんなにか?河童?」という叫びもおかしい。
竹屋のおじさん、船を漕いでいるのが徳さん一人とわかった瞬間「やめろーーーー」と全力の叫び(笑)。
そして徳さん、いっぱいいっぱいになってくると「でぶの旦那!」。「…さっきまで太った旦那だったのに!!」。

三席とも楽しくてたっぷり笑って満足~。