りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

背高泡立草

 

【第162回 芥川賞受賞作】背高泡立草

【第162回 芥川賞受賞作】背高泡立草

  • 作者:古川 真人
  • 発売日: 2020/01/24
  • メディア: 単行本
 

 ★★★★

草は刈らねばならない。そこに埋もれているもは、納屋だけではないから―。長崎の島に暮らし、時に海から来る者を受け入れてきた一族の、歴史と記憶の物語。第162回芥川賞受賞作。

母親の実家がある離島に草むしりにかり出された主人公。母、その姉、姉の娘、母の兄の5人で島へ向かいながら賑やかに続くとりとめのない会話中心に進む平和そのものの現代パートと、主人公が目を止めた「古か家」「土間」「鯨捕りの網」「カヌー」にまつわる過去のパート。そちらはドラマチックな物語が展開していくのだが最後までは語られずぷつっと終わる。

え?どういうつながりが?とちょっと煙に巻かれた感じなのだが、読み終わってみると古い家や土地には誰にも語られることがない物語があり人間が去った後に残るのは雑草なのだな、と感じる。
家は人が住まなくなると荒れ果てて隙間を埋めるように雑草が生える。
彼らはいろんなことを知っているのかもしれないが、何か教えてくれることはない。