りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

忘れられたワルツ

忘れられたワルツ

忘れられたワルツ

★★★★★

地震計を見つめる旧友と過ごす、海辺の静かな一夜(「強震モニタ走馬燈」)、豪雪のハイウェイで出会った、オーロラを運ぶ女(「葬式とオーロラ」)、空に音符を投げる預言者が奏でる、未来のメロディー(「ニイタカヤマノボレ」)、母の間男を追って、ピアノ部屋から飛び出した姉の行方(「忘れられたワルツ」)、女装する老人と、彼を見下ろす神様の人知れぬ懊悩(「神と増田喜十郎」)他二篇。「今」を描き出す想像力の最先端七篇。

面白かった。大好きだ。
ええなにそれ?という驚きと、ああわかるその感じという安心感。違和感と親近感、絶望と希望、気持ち悪さと気持ちよさ、そのバランスが絶妙だ。
時々思わず笑い出したくなるようなフレーズがってたまらない。
恋愛に対するドライな姿勢、しかしかといって全くもって達観しているわけでもなく、落ちるチャンスがあればどぼんと身を投じるのもやぶさかではない、というところがまたいい。

助手席で両の掌を上向きにして寝る男の姿に「なんだかイヤな気もした」。
今まで好きになった男を順番に思い出して「ダメな男の走馬灯」。

どれも好きだが「恋愛雑用論」「ニイタカヤマノボレ」表題作がとりわけ好き。
何度も読み返したい。