りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

さん助ドッポ

10/29(月)、お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」に行ってきた。

・さん助 ご挨拶
・さん助 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第二十三回「お庄の家にて」
~仲入り~
・さん助「長者番付」

さん助師匠 ご挨拶
この季節、お寺での落語会が結構多いというさん助師匠。
そういう会ではよく色紙にサインを書いてくれと言われることがある。来ていただいたお客さんに抽選でプレゼントしたりするらしいのだが、自分は気の利いた絵がかけるわけでもなければ字がうまいわけでもない…。それなのに20枚ぐらい書かなきゃいけなかったりするとなんか申し訳ない気持ちになる。
(さん助師匠の「ものすごい字」は毎度この会で配られるあらすじでみんな見ているので、お客さんがみんな「うんうん」とうなづく)

で、色紙といえば…近所にリサイクルショップがあってそこにとある噺家のサイン色紙が飾ってある。ちょっとした言葉とイラストとサインで、毎日そこを通る時に見ては励まされていた。
特に披露目の頃はいろいろ理不尽なことも多く気持ちがくさくさしていて、そういう時にそのサインを見ると「がんばろう」という気持ちになれた。
それがその店が来月で閉店することになり、そのサイン色紙も売り物として値札がつけられた。
毎日見て励まされていたあの色紙に「3000円」という値札が付けられて、なんだかたまらない気持ちに…。
これはもう自分が買うしかないだろう!そんな気持ちになって店の中に入って手に取って見たら、3000円じゃなく30000円だった!
そっと棚に戻しました…。さすがに3万円は出せません…。

…ぶわはははは!面白い!!
なんかでもあるあるだなー。私もそういうことあるなー。自分としては清水の舞台から飛び降りる気持ちで手に取ったら桁が違ってた、っていうやつ。
誰のサインだったのかな。気になる。

さん助師匠 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第二十三回「お庄の家にて」
なんか1か月前なのにえらい昔の気がすると思ったら、先月は西海屋お休みだったんだ。

三好町をあとにした義松とお糸は白子の在(今の和光市)に着く。
雨が降って来たので目についた家の縁側を借りようと家の中をのぞくと、中には40過ぎの婆(40過ぎで婆呼ばわり!なんだとぉ?!)と15歳ぐらいの若者。
若者が二十両を婆に渡すと「こんなものはもらえねぇ」と婆。
しばらく押し問答をしていたが、「預かっておく」ということでようやく収まるが、婆は「おめぇのことはみんなに自慢して歩きたい」と言った後、「仇を打つには…」と口走り、若者に止められる。
若者は出ていく時にちらりと義松の方を見ていなくなり、見送る婆は二人に気づく。
雨宿りをさせていただいていたと義松が言うと、家に入ってお茶でも飲んでくれと婆。

二人が上がると婆は、自分は西海屋に出入りをしていた直十の妻のお庄と名乗り、先ほど帰って行ったのは西海屋の跡取りになるはずだった松太郎だと言う。
訳あって松太郎は自分たちが預かって育てたようなものだが、松太郎はそんな自分たちに恩義を感じているのかなにくれとなく親切にしてくれて、直十が亡くなった今は自分の様子を見にこうして訪ねてきてくれるのだ、と。
またこの村にやってきたならず者が無銭飲食をしたり、役人が捕まえようとしたのを逆に襲い掛かったりするもので誰も手出しができず困っていたのだが、それを松太郎が相撲で倒し牢屋へ入れることができた、その褒美にともらった二十両を自分にくださったのだ、と言う。
松山の在に善導和尚(花五郎)という元相撲取りの和尚がいて、その人に指南を受けたので松太郎は腕っぷしも強いし頭もいいのだ。

それを聞いて義松は、自分とお糸が駆け落ちして盗賊に襲われて離れ離れになったとき助けてくれた善導和尚、それから自分を西海屋に口利きしてくれた直十、その妻がこの婆であることに気づくが、お庄が自分に気づいてないことを幸いと名乗り出ないことにする。

礼を言って家を出ようとするとまた雨が強くなったので、二人はお庄の家に泊めてもらうことにする。
二人はごちそうになり暖かい布団に横になって寝たのだが、明け方前に義松は起きだし、お糸を起こし「一仕事するぞ」と声をかける。
するとお糸は「これのことだろう」と二十両が入った財布を見せる。
すでにお糸は財布を盗んでいたのだった。
そして二人はお庄が起きだす前に家を出て再び旅へ。
歩き通してくたくたになった二人、庵から木魚の音と尼の声が聞こえてきたのでそこを訪ね休ませてほしいと言うと、尼は「今自分は朝げの準備をしていたところなので、麦飯でよければ…」と快くあげてくれる。
二人ががつがつと麦飯を食らっているのを見てその尼が「義松とお糸が二人揃っていてよかった」と言う。
その言葉に仰天した義松。「お前はいったい何者だ」と尼に言うのだが、この尼の正体は次回のお楽しみ…。


…懐かしい人たちがいきなりぞろぞろ出てきた!
直十、お庄、そして松太郎に花五郎。
松太郎は、清蔵が松太郎を殺して店を乗っ取ろうとしているのに気づいて、母親のお貞が直十に預けて死んだことにした子。
おおお、こういうとき、便利だ、ちゃんと書いてるじゃないか昨年のあたしエライ。
しかもこれに「義松はどうなったんだよ」って書いてて笑う。

それにしてもちょっと雨宿りって言って親切にされたらしっかりその家の金を盗むってほんとにクソみたいなやつらだな、この二人は。
助けなきゃよかったですね…花五郎…。
って義松がこうなったのはもとはといえば花五郎が伴蔵とお雪を殺したせいなのか。
だから「因縁」って言いたいね?ほんとに圓朝といい燕枝といい「因縁」っていえばそれで説明になると思ってるから嫌になるぜ。
松太郎はいいもんなんでしょうね。これで松太郎も不幸な生い立ちのせいでねじくれた人格だったらいったいどうしたらいいのさ。

そしてこの尼。様子がいいとか雰囲気があるとか言ってたけどだれよ。
まさかお静?でもそれに義松が気づかないなんてことある?女房だったんだよ?
でもまさか頭を丸めるなんてことは思いもしなかった…とかなんとかいって説明をつけるつもりか?
お貞かなと思ったけどお貞は死んでたわ、もう。ううむ…。

 

さん助師匠「長者番付」
「長者番付」の前半部分が寄席でよくかかる「二人旅」です、とさん助師匠。
そうだったのか。「長者番付」って小三治師匠の音源でし聞いたことない気がする。

昔、池袋の文芸坐で落語会があって、ニツ目時代に呼んでいただいた。その時主催者から「柳家らしい噺をしてほしいので長者番付をお願いします」と言われた。
笑いどころも少ないし長いし…と思ったんだけど、主催者から言われたので仕方なくやったら50分ぐらいかかっちゃった。
その時出演者の中に喜多八師匠がいて「おい、お前このあと空いてるか」と誘っていただいて高田馬場の店に連れて行っていただいた。
そこで師匠から言われたのが「お前がああいう噺をやりたいという気持ちはわかる。だけど落語家っていうのはまず商売を考えなきゃいけないんだ。商売として考えたらあの噺をあそこでかけるってことはないだろう」。
いやあれは主催者から言われたから…という言葉がのどまで出かかってたけど黙ってました…。
他の出演者も主催者から言われたみたいですけど、みんな断ってたみたいでした…。
そして夜中の3時ぐらいになってさすがにもう帰りたいと言ったら師匠から「俺とキスしたら帰してやる」と言われまして…喜多八師匠ってキス魔だったんですね…女だけじゃなく男とも…。
で、師匠とキスして帰りました。師匠の唇は意外と柔らかかった、という思い出…。

…ぶわははははは!!面白いっ!今日は珍しくまくらが面白い(←失礼)!
でもいいなぁ、喜多八師匠。素敵だなぁ…。
いやでもいくら言われたからって50分はないでしょう。ニツ目の「長者番付」50分は地獄やで。

そんなまくらから「長者番付」。
寄席で「二人旅」見るたびに思うけど、面白くない噺だよなぁ~。特に若手がやって面白いと思った試しがない。
でもベテランの師匠がやるとなんともいえず楽しい時があるのだよなぁ。なんかいつまででも聞いてられるっていう感じ。
きっと難しい噺なんだろうな。

さん助師匠、この噺が好きなんだろうなというのが伝わってくる。
なんか楽しげなんだなー。旅をしている二人が。
疲れたー昼食にしようーって言う男の顔がなんともいえずおかしい。さん助師匠の顎を出した顔、好き!それだけでばかばかしい。とっても落語向きな顔だと思うんだなぁ。
景色を楽しめと言われて、景色なんか面白くないとか、山は無駄だから削って海を埋めちゃおうとか…なんか楽しいなぁ、こういうどうでもいいような会話が。
二人で大喜利やるところ、繰り返しがもやっとするのでドキドキ。そういえばさん助師匠の「しの字嫌い」は意味不明だったな。ああいう精巧さが求められる噺は向かないね(←ひどい)。
「一膳めし」の看板もさん助師匠がもやっとするので、客の方が「そうじゃないでしょ」という雰囲気になるのがおかしい。

後半部分、めんどくさいわーこの田舎の造り酒屋の番頭。
適当言って言い逃れをしようとする男に、全く空気を読まないもう一人の男の対比が面白い。
でも確かに笑いどころが少ないから通しでやる人がいないのも納得だなー。
さん助師匠の落語協会のページの「持ちネタ」のところに「長者番付」って書いてあって、書いてあるけど見たことないよ~と思っていたので、見られてよかった!