マチネの終わりに
★★★
天才ギタリストの蒔野(38)と通信社記者の洋子(40)。
深く愛し合いながら一緒になることが許されない二人が、再び巡り逢う日はやってくるのか――。出会った瞬間から強く惹かれ合った蒔野と洋子。しかし、洋子には婚約者がいた。
スランプに陥りもがく蒔野。人知れず体の不調に苦しむ洋子。
やがて、蒔野と洋子の間にすれ違いが生じ、ついに二人の関係は途絶えてしまうが……。
芥川賞作家が贈る、至高の恋愛小説。
面白く読んだのだが、「素晴らしかった!」と素直に言いたい自分と、「気取りやがって、フン!」とアッカンベーしたい自分、両方がいる。
テロや紛争、そして震災がある中で、芸術家として生きること、ジャーナリストとして生きること。
また情報を持っている者は損をせず、情報を持っていない者がバカを見るという不平等な社会で「持っている側」として生きる者の道徳観念。
それが、天才ギタリスト蒔野とジャーナリスト洋子、二人の恋愛を軸に語られる。
例えば蒔野がギターを弾く場面などはその場の高揚が伝わってくるようで素晴らしい。また、洋子が早苗と対峙するシーンは崇高な美しさがにじみ出てるようで鳥肌が立つ。
しかし一方で2人がすれ違うシーンや早苗の描き方は、まるで安いドラマを見てるような安っぽさ。
登場人物に共感しなくても…またストーリー自体に引き込まれなくても、なんかすごいもんを読んだ!いいものを読んだ!と感動することがあるが、これに関しては「文学」という風呂敷で包まれているけれど、素直に受け止められない何か(いけ好かなさ?)があって入り込めなかった。
でも初めて読んだ平野啓一郎だったけど、意外にも読みやすかったので、他の作品も読んでみたい。