りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

さん助ドッポ

9/27(水)、お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」に行ってきた。

・さん助 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第十二回「お貞の覚悟」
~仲入り~
・さん助「十徳」
・さん助「応挙の幽霊」


さん助師匠 「西海屋騒動」第十二回「お貞の覚悟」
いつものように立ち話。
この立ち話の時間をお手伝いしてくださってるUnaさんが測ってくれているんだけど、前回は15分喋ってたらしい。15分あったらもう一席できるじゃないか!
なので今回は短めに…。

この間謝楽祭がありましたけど、私よくお客様から「さん助さんどこにいました?」「いなかったですよね」と言われるんですが、いました。最初から最後まで。
うちの師匠がブースを出してまして、一門のTシャツ、トートバック、それから師匠の本を販売してたんですが、うちの師匠が午後から来たんですけどそうするとお客様がサインをもらおうと行列を作るんですね。そして悲しいかな、サインをもらうお客さんはグッズを買わない…。

私その行列の最後尾にいて行列が他のブースの邪魔にならないようにお客様を誘導したり…あと撤収時間は厳守しないといけないので、「もうこれ以上は無理だな」と判断したら、「ここで打ち止めです」って言う係。
これ、ニツ目が「あにさんにぴったりの持ち場がありますよ。楽ですよ!」って言うんで毎年そこをやるんですけど…楽じゃないんですよ。並ぼうとするお客様に「もうこれで終わりです」って言わないといけなくて嫌われ役だし。そうか、楽だからじゃなくて、自分が嫌われ役をやりたくないからあたしにやらせてるんですね…。

で、一番長い時で2時間待ちになって、そうすると最後尾にいるお客様とずいぶん長い時間一緒にいるのでちょっと話しかけてくださったりして…多分私のことを知らないんでしょうね。でも知らないっていうのは失礼と思って、さぐりさぐり会話していて…でも「寄席で何回も見てます。ええ。…真打になるときには応援しますから!」と言われました。

あと、私の他の会…馬治兄さんとの会なんかにはいらしてくださってるお客様で、こちらの会には一度だけ来てそれ以来いらしてないお客様から「あら、(さん助ドッポに)伺わずにすみません。まだあの変な噺(西海屋騒動)を続けてらっしゃるの?」と。
今日もその…変な噺の続きをやります。

…ぶわははは!最高だな!
そしてなぜか座布団に座ってのまくらだと喋りづらそうなのに、立ち話だと面白いさん助師匠。なんでや?

前回、奉公人の嘉助がお貞に打ち明けたことで明らかになった清蔵の正体。
お貞は清蔵を追い出したい気持ちを、何か確かな証拠をつかんでからでないと誰も信じてくれないだろうと思いぐっとこらえる。
もともと内にこもる性格のお貞は気の病から左目のところにできものができたかと思うとそれがどんどん広がりそのうち目のところがぷくっと腫れてしまう。
そうなると清蔵はもうあからさまにお貞を疎んじるようになり「ヒキガエル」と呼ぶ。それを見た奉公人も真似をして「ヒキガエル」と呼びバカにするように。
具合が悪くなり寝付いてしまったお貞の面倒をみるのは、嘉助と鳶の親方の二人だけになってしまう。

あるとき酔って帰ってきた清蔵がお貞の部屋を訪れ「まだ死んでないのか。まだ息をしているのか」と毒づく。
お貞は「私は何を言われてもかまわないけれど、私が生きているうちに、どうかこの店は(息子の)松太郎に譲ると言ってください。その言葉が聞ければ私は安心して死ぬことができます」と言う。
清蔵は「お前ごときがなぜ私に指図をするのだ」と相手にしないのだが、引き下がらないお貞。
黙れ!と清蔵が足蹴にするとそれがもとでお貞は死んでしまう。

初七日を過ぎた時に清蔵は嘉助を部屋に呼び、「これで邪魔者は松太郎だけになった」と言う。
松太郎のことは毒殺しようと考えていたがそれはやめてもっといい方法を考えた、と清蔵。
お前が松太郎を預けている直十とお庄夫婦のもとを訪ねていき、松太郎を連れ出して谷へ落とせ、そうすれば犬や狼に食われて証拠も残らない。
それで5年ほど身を隠し、その後私を訪ねてきたら、その時に約束通り店を持たせてやる、と言う。

そう言われた清蔵は、やってもいいが5年後に来た時に「そんなことは約束してない」と言われるかもしれないから、用心のために証文を書いてくれ、また「偽物」と言い逃れられたら困るから血判を押せ、と言う。
「用心深いやつだな」と言いながら清蔵は血判を押した証文を渡す。

一方、同じ時に、松太郎を預かっている直十お庄の家にお貞が訪ねてくる。
よく来てくださったと喜ぶお庄はお貞を家にあげ、松太郎を挟んで3人で床をのべて昔話に花を咲かせる。
次の日に訪ねてきた嘉助にお庄が「お貞様も家にいらっしゃっている」と言うと、「何を言ってるだ?お貞様は亡くなった」と嘉助。
そんなわけはない。夕べは一晩中話をしていたのだから、とお庄。
ここにいるからと部屋を見てみると、すでにお貞の姿はなく、松太郎を心配するあまり幽霊になって訪ねてきたのだと悟る。

清蔵に頼まれたことをお庄に話す嘉助。
自分は身を隠すから、松太郎をどこか安全な場所に匿ってもらってくれ、と言う。
証文も手に入れたからこれをお奉行様の所に持って行けばいいかもしれないが、それではひどい目にあったお貞と宗太郎のうらみをはらすことができない。
松太郎に武芸を教え15歳になった時に清蔵のもとを訪ね、清蔵を殺してほしい。
そうすれば二人の仇をとることができる、と。
そう言われたお庄と直十は、だったらコショウ庵がよかろうと言う。
ここの和尚とは昔から懇意にしているのだが、とても親切な和尚で義松を西海屋へ世話をしたのもこの人だし、もとは相撲取りだったので武芸を仕込むにもぴったり。

ということで、さっそく和尚(花五郎)を訪ねる3人。
全ての話を聞いて「それなら私が松太郎に読み書きそろばんから武芸まで全て教えて一人前にしましょう」と約束する花五郎。
果たして松太郎は両親の仇をとることができるのかは、次回のお楽しみ。

…っておい!
義松はどうなったんじゃ?ダークヒーロー義松は?
もう義松の話は終わりで、清蔵を松太郎が倒すのが主軸になるのか?
そしてもうとにかく悪いじゃないの、清蔵。大悪人じゃないの!お貞がかわいそうすぎる!
お貞が気の病から目にできものができてそれがはれ上がって…というのは「豊志賀」にそっくりだなー。きっとこの時代の定石だったんだろうな。
何かこう視点が定まらないところがこの噺の弱いところよねぇ…。
とぶうぶう言いながら、毎回「次はどんなひどいことが?」ってわくわくしてるんだけど。


さん助師匠「十徳」
最近記憶力に不安を覚えるようになりまして、とさん助師匠。
おととい10秒前に履こうと思って用意していた靴下がなくなってしまった。あちこち探したけど見つからない。なぜ?いったいどこへ?と思っていたんだけど、数日たって気が付いた。
履こうと思っただけで引き出しから出していなかった!
引き出しを見たら、きちんとそこにしまったままだった。
これでよく落語を覚えていられるな、と。

…だ、大丈夫か、さん助師匠。
見た目はおじいちゃんだけどまだ若いのに!って失礼だな、おい。

そんなまくらから「十徳」。
いいなぁ、この八つぁんとご隠居、仲が良くて。
十徳という名前がなぜ付いたか、わからないよと言うご隠居に「そんなこと言わないで。あっしとは頭の出来がちがうんですから」と食らいつく八つぁん。「そんなつれないことを言わないで」っていうのもおかしいし「お天道様が許してもあっしが許しません」っていうのもわけわからなくておかしい。
教わったことをやってくる!と言う八にご隠居が「やめなさい。絶対うまくいかないから。請け合うから」と言うのも笑っちゃう。
楽しかった。

さん助師匠「応挙の幽霊」
考えてみたら「幽霊」で噺ついちゃってますけど。こちらは面白い幽霊なのでお許しを。と言いながら「応挙の幽霊」。
前にさん喬師匠で一度聞いたことがあって、タイトルから怖い噺なのかと思っていたら案外楽しい噺でびっくりしたんだけど。
でもさん喬師匠のとはまた全然印象が違ってた。

古道具屋の主人が、幽霊画が好きな客に「これなんですが」と見せに行く。
客は「これはいい幽霊だ。山吹と合わせているところがとてもいい」とたいそう気に入った様子。
「これは誰の作品だ」と問う客に「おそらく応挙の幽霊ではないかと思います」と道具屋。
「応挙の?まさか…。だとしたらよっぽど高いだろうね」と言う客に「いえ、それほど高くはありません」。

実は道具屋の主人は奥さんの七回忌で法事をやりたいと思っていて、この絵が売れたらそれをやることができる…と思っていて、客にちょっと高めに言うのだが、客は少し考えて「ちょっと高いがこれを他の客に持って行かれると思うとがまんできない。買うよ」と言う。
ただし今は手持ちがないので、これを手付に置いていくから、明日の朝届けてくれ、と。

首尾よく売れて大喜びの道具屋。
家で一人酒を飲み肴をつまみしているが、そうだ、こんな風にうまい酒が飲めるのはこの幽霊のおかげだ、と、「あなたもお酒をお飲みなさい」と幽霊画に酒と肴、線香を手向け、「あなたのお宗旨が何かわかりませんが」と言って手を合わせ「南無阿弥陀仏…何妙法連華経…アーメン…」。
唱えた後で酒をまた飲み「あーうまい。また酒の味が変わった」と喜んでいると、どこからか女の声がして「私がお酌をしましょうか」。
誰だ?と驚いていると、なんと絵の中の女の幽霊が話しかけてくる。

今まで絵を買ってくださった方は最初のうちは床の間に飾ってくれるけどそのうち子どもが怖いと言い出して箱に入れられ暗い倉に放り込まれてしまう。
お酒どころかお水さえ手向けてもらったことがないのに、あなたはこうして酒や肴、線香を手向けてくれて、さらにお経をあげてくれた。
お礼にお酌します、と言う幽霊に、「じゃお願いしようか」と道具屋。
いつも一人で飲んでいるから、こんなにきれいな人にお酌してもらうのはうれしいと言うと、幽霊は「私も飲みたい」と言う。
小さい入れものに注ごうとすると「それより茶碗に入れてください」。
おや、あなた、いける口ですか?と道具屋がお酒を注ぐとくいっと飲んで「ああ、おいしい」。
じゃ、もう一杯。またもう一杯。
そのうちご機嫌になった二人が都々逸を歌いあったり。
幽霊があんまりぐいぐい飲むのでもうそれぐらいにしておけば、と道具屋が言うと、「いいえ。私は大丈夫」と幽霊。
「大丈夫って言うのが一番危ない」と言っても「自分のことは自分が一番わかってるからもっと飲ませてくれ」と幽霊。
それじゃあ…と飲み交わすうちに、眠り込んでしまった道具屋。

いつまでたっても絵を持ってこないので業を煮やした客が来てみると、道具屋だけでなく、絵の中の幽霊も眠り込んでいる…。そこで…。

陽気な幽霊が素っ頓狂な都々逸をうなるのがもう楽しいったらない!とてもチャーミング。
酔っ払いが言う「大丈夫」が全然大丈夫じゃないところがすごくリアルでおかしい~。
さん喬師匠のはもう少ししんみり色っぽかったけど、そうじゃなく、ひたすら陽気でばかばかしくて楽しかった~。

 
さん助ドッポ1周年ということで、こんな素敵なプレゼントをいただいてしまった。
しかもこのフリクションよく見ると「SANSUKE DOPPO」って入ってて、ドッポくんのイラストも入ってる!
さん助師匠にそんな気が回るわけもないから(失礼!)、お手伝いされているUna様のよるもの。うれしい…。
この会がずっと続きますように。

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