りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

第19回 百栄の赤いシリーズ「赤いネコじゃらし」

9/21(金)、らくごカフェで行われた第19回 百栄の赤いシリーズ「赤いネコじゃらし」に行ってきた。


・百栄「天狗裁き
・貞寿「夫婦餅」
~仲入り~
・百栄、貞寿 トーク
・百栄「猫男」


百栄師匠「天狗裁き
今、国立演芸場の寄席に出ているという百栄師匠。
もともと国立の寄席は回数も多くないし、出るのは1年に一芝居ぐらい。
でも自分が前座の頃は国立に呼ばれることがとても多かった。資料館で確認したら一年のうち5芝居ぐらい出ていて、そのころは「国立に好かれてるのかな」と思っていたけど、今思えば落語協会の先輩前座から嫌われていたのだろう。
自分は真面目な人間だからさぼったりする方じゃなかったけど、年はとってるし気は利かないし先輩前座からすれば使いづらい前座。だから疎んじられて国立に追いやられていたのだな、ということにずいぶん経ってから気が付いた。

それから国立では資料館を無料で使えるという話。
前は芸人風に入って行けば顔パスで入れたんだけど、今は「あなたダレデスカ」から始まって書類を書かせられたり、荷物は全部ロッカーに預けさせられて、筆記用具しか持って入れなかったり…めんどくさいことになっちゃってた。

そんなまくらから「天狗裁き」。
おお、百栄師匠が「天狗裁き」ってなんか意外!
百栄師匠のおかみさんがほんとにおかみさんっぽくて好きだなー。
それから隣の男、大家さん、お奉行様、と次々出てくるキャラクターがくっきり違っていて、でもみんな夢の話を聞きたがる面白さ。

そしてやっぱりサゲはすっきり最初に戻る形。これですよ。
面白かった。


貞寿先生「夫婦餅」
百栄師匠とは共通点がいっぱい。猫好き、相撲好き、それに加えて私も国立の資料館にはよく行くんです!と貞寿先生。
それから資料館の使い方講座。事前予約…めめめんどくさい…。きっと行くことはないな…(遠い目)。
それから稀勢の里への愛を熱く語る。みなさんもぜひ応援して!と言いながら、期待されるとダメなタイプの子だから正面切って応援しちゃダメ。テレビをつけても前に座って応援するとかじゃなく、台所でねぎを切りながらちらり…そういう応援の仕方で、って。わははははは。わかる!わかるけどなんなのその応援の要請は(笑)。

それから貞心先生が白鵬のパーティの司会を仰せつかった時の話。そういう仕事を受けたと聞いてすかさず「カバン重いですよね?お持ちします!!!」と貞寿先生。付いて行ったんだけど、相撲の世界はすごい!最初から金一封…それも祝儀袋が立つぐらいの厚み。その後にもご祝儀を本人に渡すコーナーというのがあって、みんながそれに嬉々として並ぶ。お金を渡すために行列を作る世界があるとは!!

そんなまくらから「夫婦餅」。
私は初めて聴いたんだけど、貞寿先生によれば相撲愛を熱く語った後はこの話らしい。

相撲のタニマチになると昔は1年で千両使う、と言われていた。さすがにそれは大げさかもしれないけれど、その十分の一ぐらいは少なくとも使っていただろう。

菓子屋の主人で大の相撲好きの男が贔屓の横綱に金をつぎ込みすぎて店をつぶしてしまう。女房は元芸者なのだが、そこの店の主人が彼らを心配して家を訪れて五十両の金を利子なしで貸してくれる。この金をもとに店を立て直せ、というのである。
とにかくこの金を相撲に使ったらいけないよと言われ主人もそのつもりでいるのだが、帰り道で贔屓の横綱に会い、ご飯だけならと付き合うと、そこの部屋の若い力士が出世するという話を聞く。それはめでたい嬉しいとついその金を渡してしまう主人。

あとからそれを聞いて女房は怒り、貸してくれた主人もあきれる。
いくらかだけでも横綱に返してもらおうと訪ねるのだが、「いったんいただいたものはお返しできません」と横綱
仕方なく菓子屋の主人が奮起して夫婦餅というのをこしらえて広小路に店を構えると、そこを訪れたのが力士連中で…。


正直話自体は、まぁまぁまぁ…ふーん…という内容だったけど、貞寿先生の相撲愛は伝わってきた、かな。わはは。


百栄師匠、貞寿先生 トーク
猫の話をし始めたんだけど、貞寿先生のところの愛猫が3月9日に亡くなっていまだにロスが続いていると聞いて、絶句…の百栄師匠。
こればっかりはね…どうしようもないんだよね…と。勧めるわけじゃないけど、自分はそういうのもあって1匹だけじゃなく複数飼うことにしている、と。
貞寿先生も実はそうしようと思っている矢先だったとか。
夏はまだよかったんだけどこうやって少し涼しくなってくるとあのぬくもりが懐かしくて…という貞寿先生に慈愛の目を向ける百栄師匠。

師匠はいつぐらいから猫を飼い始めたんですか?という話から、引っ越す以前は千早に住んでいた…え?じゃうちの師匠の家の近くですね、というローカルトーク。それから貞心先生が犬の散歩をするのに、芸人名鑑を見て芸人の家を探し当てるストーカー?散歩をする、などという話も飛び出したり…。
熱く語る貞寿先生に、ちょっと引き気味にふわふわ受け止める百栄師匠。
仲入りの時も相撲の話を熱く語る貞寿先生の声が聞こえてきておかしかったー。


百栄師匠「猫男」
一席目に「天狗裁き」をやったのは、この間伊集院光さんのラジオでこの噺のことを言っていたから。
伊集院さん、散歩の時にネックスピーカーで「天狗裁き」を聞いていた。歩き疲れたので公園のベンチに座って水を飲んだりして休んでいると、となりにサラリーマン風の男性が座ってランチを食べ始めた。ネックスピーカーで音が漏れるので、その人もどうやら落語に聞き入っていて時折くすっと笑ったり。
身体も休まったので伊集院さんがまた歩き出そうと噺の途中だったけど立ち上がって歩き始めてふと振り向くと、その男性が「ちょっと待って…」と言わんばかりに身を乗り出して手を伸ばしていた…。
どこで歩き出したかというと、天狗が現れた場面だった。

…ぶわははは。確かにそこでいなくなるのはあまりにむごい!あと5分もあれば終わるんだからいてあげて~。

ラジオでその話を聞いて、ああ、考えてみたら「天狗裁き」ってイカした噺だよなぁと思って、久しぶりにやってみた、と。

それから猫は掃除機を怖がる、という話。
何匹も飼ってきたけど、掃除機をかけると、本当に怖がって押し入れに隠れるような猫が多い。中には気にしない猫もいるけどそれでも好みはしない。
今家で飼ってる猫も掃除機が大嫌い。
弟子のだいなもが家に来る朝は、あんまり散らかってるのは嫌だから自分で片付けて掃除機をかけるんだけど、だいなもは身体が大きくて威圧感があるらしくて猫に嫌われている。もう1年以上通ってきてるのにいまだにだいなもが来ると「シャーーー」とやる。
しかもだいなもが来る朝に決まって自分が掃除機をかけるものだから、掃除機→だいなも→シャーー!という悪循環。
なので最近は掃除機をやめて拭き掃除をするようになった。それでもまだだいなもには慣れてくれてない。

そんなまくらから「猫男」。
社内で誰かと誰かをくっつけることに命をかけているおばさん社員。そこへ女性社員が訪ねてきて、前に紹介してくれた男性なんだけど付き合ってみたらなんか変な人だったのでお断りしたい、と。
あら、紹介したばかりの頃は、イケメンだし素敵な人だしお付き合いしてみますって言ってたじゃない、とおばさん。
いえそれはそうだったんですけど、実は…。

この二人の会話だけですすむ噺なんだけど、もうこの男の様子と女性社員の気持ち悪がり方とかめちゃくちゃおかしくて、しかもそれを聞いて「あら、でもあの子は高貴な出だから」「あらいいじゃない?」とかばうおばさん社員の受け答えが絶妙で、ツボにはまって最初から最後まで笑い通し。
すごい落語らしい世界で楽しかった。また聞きたい!