りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

講談協会定席 「日本橋亭 講談夜席」

7/19(木)、講談協会定席「日本橋亭 講談夜席」に行ってきた。
貞寿先生の真打披露興行に通って大好きになった貞心先生。また聞きたいと思っていたところトリ!そして他の出演者も全員お披露目の時に見て好きな先生ばかり!ということで行ってみた。
・貞寿「応挙の幽霊画」
・凌鶴「鬼作左と下郎の忠節」
~仲入り~
・春陽「清水次郎長伝 心中奈良屋」
・貞心「市川小團次


貞寿先生「応挙の幽霊画」
この暑さの中ありがとうございます、と貞寿先生。
今日は私の師匠がトリですからそれまでみなさまには体力を温存しておいていただきたい。それが何より一番大切なことですので、私はこの季節おなじみの怪談をごく軽く…と「応挙の幽霊画」。
前に一度陽子先生で聴いていたことがある。

旅をしていた応挙がある宿屋に泊りどんちゃん騒ぎ。夜中はばかりに起きて部屋に帰ろうとすると、どこからか苦しそうなうめき声。どうやら布団部屋らしいと開けてみると、病に冒されてげっそり痩せ衰えた遊女が布団の上で苦しんでいる。応挙は女に優しい言葉をかけ身の上話を聞いてやり、これで薬を買って栄養のあるものを食べなさいと金をやる。そしてその姿を描かせてくれと絵を描く。
その遊女は幼い頃さらわれて自分のほんとうの名前も出身もわからないのだと言い、これだけが自分の身よりの手掛かりと布の切れ端を差し出す。応挙は自分はあちこち旅をしているので、行く先々でこれを手がかりにお前の親を探してあげるからと約束する。
何日か後に別の宿屋に泊まっていた応挙は真夜中、美しい女の幽霊を見る。
なんとなく気になってその前に泊まった宿屋を尋ねると、あの時会った遊女が自分が幽霊を見たその時間に亡くなったことを知る。

江戸に帰ってきてなじみの居酒屋に行くといつもは元気な夫婦がもう店をたたもうかと思っていると打ち明ける。
あちこち借金の証人になっていたため数々の借金を背負うことになり立ちいかなくなってしまったのだと言う。
それを聞いた応挙が、もうしばらく辛抱して店を続けてくれ、自分が客が大勢集まるように絵を描くから、と説得する。

何か縁起のいいものを…と思いながら、応挙が描いたのがあの時の遊女の下絵をもとにした幽霊画。
持って行くと主人は「幽霊画?」と驚くのだが、応挙はこういうものが逆に客を引き寄せるのだ、と言う。
その言葉通り、幽霊画が評判になって店は大繁盛。借金も全て返すことができた。
久しぶりに訪ねてきた応挙に、主人がお礼にと言って家宝の陣羽織をさしだして…。

軽い語り口だけど、死にかけた遊女が呻く様子は恐ろしく、またそんな女に声をかけて話を聞いてやる応挙のざっかけない優しさにじーん…。
居酒屋の夫婦に対しても同じように優しく、恐ろしい幽霊画を贈るがそれも逆に評判になって店が繁盛する、というのも面白い。
とてもよかった。応挙の優しさに涙が出た。


凌鶴先生「鬼作左と下郎の忠節」
凌鶴先生も貞寿先生の披露目で見て面白いなぁ好きだなぁと思っていたのだ。なんかまた全然カラーが違う。私は講談には詳しくないのでうまく言えないんだけど、堅い講談の反対。柔らかい?ユーモラス?軽め?どれもちょっと違う…なんか知的で柔軟という感じ。こういう講談もあるんだ?と初めて見た時ちょっと衝撃だった。

家康の家臣・孫四郎はある時城に女を入れたという罪で斬首の刑になる。孫四郎の家来がどうにかして主を助けたい一心で本多作左衛門の元を訪れる。
話を聞いた作左衛門は主人を想うお前の気持ちに打たれた、私に任せろ、と言う。
作左衛門は「一筆啓上、火の用心、おせん泣かすな、馬肥やせ」の一文で有名だが、家康からたいそう信頼されていた。
家康のもとを訪れた作左衛門は孫四郎の斬首は私が行いますと言って孫四郎を自分の城へ連れ帰る。
そこへ家来も呼び寄せ、自分がいっぺんに二人を斬首してやるから安心しろと言う。
家臣は「任せておけ」というのはそういう意味だったのかとがっくりくるのだが、作左衛門は用意した酒や料理を二人に振る舞い、「今宵は月が隠れている。これはお前たちにツキがあるということ。しばらく浪々の身となって沈んでいていずれツキが出たら浮かぶこともできるだろうからそれまでは隠れていろ」と言う。
そう言われて二人は屋敷を出てしばらく身を隠す。
家来が八百屋稼業で稼いだお金で菜っ葉を買っては二人で喰らう日々。
そんな日々を暮らしていたが、ついに秀吉と家康の決戦が始まり、「月が出た」と喜ぶ二人。
孫四郎は家来が用意した鎧兜を身に付けて戦に参加し、相手方の首を落としては家来が「この首、孫四郎が取ったり」という札をつけて回る。

この札のことが家康の耳に入り、作左衛門を呼び出すのだが、ここでもまた作左衛門がうまく立ち回り…。

武士の話なので基本的には堅い話なのだが、ユーモアたっぷりで笑いどころもたくさんあってすごく楽しい。
うわーー好きだーーこの先生の講談。前に聞いた時もそう思ったけど、すっごい好き。どうやら新作をたくさんやられているらしい。もっと聞いてみたい。


春陽先生「清水次郎長伝 心中奈良屋」
春陽先生も貞寿先生のお披露目の時に見て面白い!と思っていたんだけど、これがまたとても楽しかった。

次郎長がまだ堅気だった時に店の前を通りかかった僧を呼び入れてお布施を渡すと、次郎長の顔をまじまじと見た僧が「お気の毒に…」と言う。
何が気の毒なのだ?と詰問すると、死相が出ているから早くて1年、遅くとも3年したら死ぬだろう、と不吉な言葉。
それを聞いてやけになった次郎長。また賭場に行くようになり堅気でなくなる。
ある時、心中しようとした男女を助け二人から事情を聞き、間に入って口をきいてやり二人を助ける。
それから次郎長が「親分」として名をはせるようになってきた時に、この僧侶がまた通りかかり、次郎長の顔を見て言ったことは…。

凌鶴先生とはまた違った感じで…すぱーっとしたはきはきとした語り口なんだけど、ユーモアたっぷりでとても楽しい。
勝手なイメージだけど落語家でいうと私の好きな甚語楼師匠っぽい。わー好き好きー。もっと聴いてみたいー。


貞心先生「市川小團次
前に松鯉先生で聞いたことがあった
引き上げられたのに一度のしくじりで破門になってしまった小團次。自暴自棄になりかけたところを三津五郎になだめられぐっと堪えて江戸へ。江戸で修業を重ね「市川小團次」として名前を挙げ、かつて自分を破門にした師匠を迎え撃つ…。
破門にした師匠が全てを知って自分の未熟さを認めるところがとてもよかった。

よかったー。
聞いた四人が全員良くてもっと聞いてみたくなって最高だった。
これからもう少し講談の会も行ってみよう。