りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

鈴本演芸場11月下席夜の部(4)

11/24(木)、鈴本演芸場11月下席夜の部に行ってきた。

・歌之介「かあちゃんのあんか」
・扇遊「一目上がり」
~仲入り~
・ホームラン 漫才
・さん助「時そば
・楽一 紙切り
・扇辰「雪とん」

歌之介師匠「かあちゃんのあんか」
きっとすごくいい人なんだろうなぁと思うけど、この師匠の甘ったるい喋りが苦手。でも隣の席のおじいちゃんは涙をぬぐっていた。
 
扇遊師匠「一目上がり」
うちの師匠、扇橋は酒が一滴も飲めませんでした。
だからうちの一門の忘年会は句会だった。
弟子は句を作るのに必死で酒どころじゃない。この日だけはみんな真剣に句を作っていた。だからうちの一門の句は冬の句ばかり。
師匠が宗匠を務めていた東京やなぎ句会。永六輔さんや小沢昭一どそうそうたるメンバーがそろっていたけどもうほとんどのメンバーが天国に行ってしまって、今では小三治師匠ともう一人だけ。
句会っていうのは名前を伏せて自分の句を出し合って順位を決めていくけど、二人じゃ誰の句かすぐにわかっちゃう。だからゲストを呼んだりして人数をそろえてやっているらしいけど、大変だって小三治師匠が言ってました。
 
最近の言葉が私にはもうわからない。

何年か前にありましたね。KYっていう言葉が。「空気を読めない」っていう意味で「KY」。そんなのもうわかりっこない。無理です。「KY」って言ったら「柳家小三治」に決まってます。
って小三治師匠のことを「KY」なんて言ったら怒られちゃいますけど。


扇遊師匠がまくらをふるなんてなんか珍しくてうれしい~。しかも扇遊師匠の口から小三治師匠の名前が出るうれしさよ、よよよ…。
そういえば前に喬太郎師匠の番組に扇遊師匠が出た時に、扇橋師匠が亡くなって弟子たちのことを心配してくれた小三治師匠が声をかけてくれて一緒にご飯を食べに行った、と話していたことがあってあれもうれしかったなぁ…。

そんなまくらから「一目上がり」。
扇遊師匠の「一目上がり」は何回も見ているけど、いいなぁ…。ご隠居さんと八つぁんの仲の良さが伝わってきて、口が悪いけど気のいい八つぁんがチャーミング。
うきうきと弾むような高座で見ているこっちも笑顔になってくる。
ああーいいなぁ、扇遊師匠!「ねぼけ」も見に行かなくっちゃ!


ホームラン先生 漫才
最近「いつのも」じゃなくて、たにし先生を自由にいじる、みたいな漫才になっていて楽しい。
若手の頃に地方に行ったときにたにし先生がユニットバスの入り方を知らなくてトイレの方までびちょびちょになってた話とか、ああだこうだ言われてたにし先生が「俺見栄坊だから。おやじも。それで町内会長やったから」って話も面白かった~。


さん助師匠「時そば
おお。さん助師匠の「時そば」初めて。
売り声がいいなぁ。
そして最初の男のそばの食べ方が…最初は「お、そばの食べ方、案外うまい」と思わせておいて、だんだんなんかおかしくなっていくのは、なんだろ?…照れ?
二番目の男がつゆを飲んで心底まずそうでうえってなっていておかしい。
もう少しゆったりやった方が笑いが起きる気がする。って何様目線


扇辰師匠「雪とん」
この日は朝から雪で午後になって止んだもののお客さんが来ないんじゃないかと思っていた、と扇辰師匠。そんな中よくおいでくださいました、と客席をぐるり。

自分は今日は新潟に行って来た、と。
学校寄席の仕事で朝早くに出かけたんだけど雪は覚悟していたのでヒートテックを二枚重ねして背中にカイロを貼り付けてダウンジャケットを着こんで長靴を履いて。
東北新幹線に乗って前橋のあたりを過ぎた時は猛吹雪。
ひゃー。こりゃ新潟はすごかろうと覚悟して行ったら、新潟がピーカン。
今まで何回も行ってるけど、東京が雪で新潟が晴れてたなんていうのは初めて。
長靴なんか履いてるの自分だけだし暑いのなんの。汗だくになっちゃった。
だから今日の私は抜け殻、わかるでしょ?げっそりしてるでしょ。
今日学校でやってきた噺なら稽古できてるからいいよ。「寿限無だけど。
「そうはいかないか」と噺に。

船宿に泊まっている若旦那。といってもこちらはいい男の若旦那じゃなくて田舎の「お大臣」のところの若旦那。
これが具合を悪くしているので心配した船宿のおかみさんが若旦那のもとへ。
「おまんまがのどを通らない」と言いながらしっかりまんじゅうまで食べている若旦那なのだが、通りかかった糸屋の娘に恋煩いをしてしまい苦しくてしょうがないのだという。
「あの娘さんは近所でも評判の器量よしであなたにはとても…」とおかみさんが言うと、それはわかってる、だからどうにかなりたいなんて言ってない。一晩だけゆっくり話をして優しい言葉をかけてもらえればそれで満足して国に帰る。それができなければ首をくくって死ぬ、と若旦那。
おかみさんはお糸にいつも付いている女中をうまく言いくるめて話を付ける、と約束。

この田舎の若旦那がちょっとこう…これでもかというぐらい変な顔をして田舎っぽい喋り方で、私の苦手な感じなのだが、それに反して船宿のおかみさんがすごくいいのだ。頼りがいがあって話がわかってちょっと皮肉なところもあるけど上品ないい女って感じで。
 
そしてこの後に出てくる、人違いされてお糸の部屋に案内されていい男だったもんだからお糸に一目ぼれされてちゃっかりいい目にあう男、佐七がもうかっこいいんだなー。
ことさら「いい男」をやらなくても普通にしてればいい男だからそこはさらっと。
この悪くていい男が「なんか面白いことになってきたぞ」とそのままお糸の屋敷に入り込んでもてなしを受けてお糸が悪からず思っていることを瞬時にかぎつけて袖をつかむところ…。
ぞくぞくっとするぐらいかっこいいんだけど、そこで扇辰師匠が「ここ、親指と人差し指で袖をつかんだだけですよ。それでお糸は”あーれー”って言って崩れ落ちるわけですから…。結局は相手次第、なんですね。これが嫌な相手だったら女性は羽交い絞めにされようがなんだろうが、ぎゃーーーーおっかさーーーん!!!って大声あげて逃げますから」。
いい男だけどいい男側からは発言しないのねー。ふふ。
 
いやぁ楽しかった。
ああ、なんか私、扇辰師匠に慣れてきた…なんていうととても失礼だけど、ようやくこの師匠の見方というか味わい方がわかった気がする。
芸が細やかで端正だからそれを味わえばいいのですね…。
私の場合どっちかというと芸の細部を見て味わうというよりは、ばーんとその世界に身をゆだねて面白がるっていう身を任せる系の楽しみ方なので、一度苦手だなあと思うと楽しめなくなってしまう。
苦手だと思って今まで避けていたけどこうやって通っているうちに良さがわかって楽しみ方が分かったのは大きな発見だったなぁ。
ってそんなこたぁ最初からわかってるよ!ばかじゃないの!とファンの方に怒られそうだな。すすすびばせん。