りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

小満ん夜会

10/16(火)、日本橋社会教育会館で行われた「小満ん夜会」に行ってきた。
この日のチケットを予約してメールも来たのにチケットがまだ届いてない(あるいはほかの郵便物に紛れてなくなってしまったのかも)ことに気づき主催者様にメールして再送していただいたのだが、私が最初に送ったメールで引用していたのがほかの会のメールだったため、すでに持っているチケットが来てしまう。
ぬぉーーーしまったーーーどうしようーーーと慌ててメールすると「どうぞお気軽にいらしてください」という優しい返信。
送っていただいたチケットを直接お返ししてお侘びとお礼を言わなくちゃ!と張り切って出かけて行ったのだが、会場に着くと、あれ?今日はやたらと元気なおばちゃんたちが受付?なんか雰囲気違う?と思ったら、政治団体の決起集会!日本橋公会堂じゃなくて社会教育会館だったか…またやってもうた。
そして両方の会場に何回も行ってるくせに出口を出たらどちらへ向かえばいいかわからない!
慌てて検索してナビに従って歩き出したのだが、えええ?こっちの方角?ほんとにー?見たことない景色だけどーーー。
と思ったら、社会教育会館じゃなくて永代橋が目的地になっていた!なんでや…。
結局遅刻して到着。とほほほほ…。
ねえ、これはボケ?ボケなの?

・一猿「雑俳」
小満ん「首ったけ」
・扇遊「木乃伊取り」
~仲入り~
小満ん「死神」

一猿さん「雑俳」
なんか最初出てきたころはほんとにお猿さんぽかったのに、見るたびに佇まいが落語家らしくなってきてる一猿さん。
めったに見られない後半部分までやって、すごくよかった!
扉の向こうから「初雪やー」と言うはっつぁんがおかしくておかしくて。
やだ一猿さん、いい!(いやなのかいいのかどっち。いいんじゃ!)


小満ん師匠「首ったけ」
男が吉原に通い詰める、そこには「自惚れ」があったから、というのが面白い。
「廻し」なんという今考えたら「えええ?ありえなーい」な制度が成立したのも、この男たちの自惚れによるもの。
いろんな男のところに行ってるけど俺のところに一番長くいた、だからほかの男はみなただの客で俺は間夫だ、というこの自惚れがあるが故に受け入れられたのだ、と。
これ、おもしろいなぁ。
あと「首ったけ」っていう言葉、いいなぁ。今はめったに使わないけどなんかぐっとくるもの。
JAZZのタイトルに「首ったけ」って邦題が付けられてた、という話も素敵だった。

そんなまくらから「首ったけ」。
今までこの噺を聞いて「花魁、酷いよ…」と思っていたんだけど、そうか…これはこの男のただの自惚れだったのかと思うと、花魁の態度にも合点がいく。
自分が間夫だと信じてるからこそ、夜中に花魁を呼びつけて「俺はもう帰るぞ」って言ったんだね。きっと花魁がショックを受けると思って。
花魁にしてみればこの男はワンオブゼムだったからもうお前めんどくせぇ!ってなったのか。

でもこの男、隣の店にあがってまたうまいこと言われて初回のサービスを受けてまた自惚れちゃうんだろうな。
だます方が悪いのかだまされる方が悪いのか。
なんかちょっと切ないねという気持ちでこの噺を聞いたのは初めてだったな。
男にとったらかわいさ余って憎さ百倍の花魁だけど、どぶ川に沈んでいくのを助けない…わけはないよね?最後は助けるんだよね?と希望的観測。


扇遊師匠「木乃伊取り」
小満ん師匠は我々若手…若くないと思われるかもしれませんが楽屋ではまだ若手なんです…からしたら本当に憧れの先輩で、前座の頃からとてもお世話になっていて、その会にゲストとして呼んでいただけるなんてこんなに嬉しいことはありません。
それで張り切りすぎたせいでしょうか。おとといから急に腰をやられまして…。もうとにかく立つのも大変で歩くのもよろよろ…でもこうして高座まで歩いてこられたらもう勝ったも同然です。
そんなまくらから「木乃伊取り」。

角海老に行ったっきり帰って来ない若旦那を心配する大旦那とおかみさん。
最初に「私が参りましょう」と手を挙げた番頭は確信犯っぽいけど、頭は行く時は連れて帰る気でいたんだな、と見ていて思った。
でももともと遊びが好きで粋であることを大事にしてる人だから、馴染みの幇間に見つかってしまったのが運の月、だったのだろう。
もう勘当するよりほかないと話しているとやってくる飯炊きの清蔵。
お前は飯が焦げないことだけ心配してればいいと言われるが、説得して連れ戻しに行くことに。

粋とか遊びとかわからない清蔵が親の情を説いてもまるで聞かない若旦那。
巾着だけ置いて帰れと言って清蔵が怒り出すと「だったらクビだ」と言う。
そう言われた清蔵が「だったらクビにしてもらおう。そうしたらもう主人でも奉公人でもない」と言って殴りかかろうとすると、番頭が「目が本気」と言って若旦那を止める。
この清蔵と若旦那の言い争いの場面で、普段は若旦那が憎くてイラっとくるんだけど今回はなんか見ていて清蔵の気持ちに感情移入してしまって、涙が出てしまった。
飯炊きというのは奉公人の中でも地位が下なんだろう。だから大旦那も若旦那も「お前がか?」という態度なんだと思う。
そのはっきりした上下関係を乗り越えて清蔵があそこまで言ったのは、おふくろさんへの想いがあったからこそ。その気持ちがわからないようなこの若旦那はダメだな。この若旦那の代になったら店はきっとだめになるわ。

清蔵が酒を飲んで2杯目にうまいことに気づいてほしがるようになったり、芸者に甘い言葉をささやかれて前のめりになるところ…面白かったけど、ちょっと切なかった。
多分もうここに二度と来ることはできないんだろうな、と思って。


小満ん師匠「死神」
死神が軽くてなんかとっても独自で小満ん師匠らしい。シャレのわかる遊び心のある死神って感じ。
「医者」が儲かって女房こどもを追い出すところで「顔に横皺の寄ったうるさい女房」という表現に思わず苦笑い。

さっき枕元にいたのは俺だよと死神が言って蝋燭のところに連れて行った時「これが人の命だよ。こいつをお前さんに見せてやろうと思ってな」というセリフになにかこう…この死神の余裕というか遊びを感じて、なんかいいなぁと思った。
最後のところでも蝋燭を割りばしで摘まんで火を移しに行かなきゃいけねぇと言われた男が「直接持ってっちゃだめなのかい?」と聞くと「それじゃ面白くねぇ」。
サゲも違ってて、言い終わった後に小満ん師匠がにっこり笑ったのが印象的だった。
す、て、き!