りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柏枝ジャパン

7/22(月)、お江戸日本橋亭で行われた「柏枝ジャパン」に行ってきた。

・伸び太「ぜんざい公社」
・風子「鷺とり」
・柏枝「道具屋」
・米福「愛宕山
~仲入り~
・芝楽「のっぺらぼう」
ボンボンブラザーズ 曲芸
・柏枝「ラーメン屋」

伸び太さん「ぜんざい公社」
伸治師匠の5番目のお弟子さんとのこと。
多いなぁ、伸治師匠のお弟子さん。でもわかるなぁ。私も入門するなら伸治師匠がいいなぁ。って入門はしない(できない)けど。
「ぜんざい公社」は私の中でかなり嫌いな噺なんだけど、面白かった!なんだこりゃ。
誰に教わったのかわからないけどいつも聞く形とは少し違ったギャグが入っているというのもあるんだけど、なにより伸び太さんの独特の間というかフラというか、それがすごくおかしくて思わず「ぶわはは!」と笑ってしまう。
なんだなんだこの子、おもしろい。注目の前座さんだな。

柏枝師匠「道具屋」
師匠の柳橋師匠がこのたび副会長になりました、と言うと会場から大きな拍手。
「いや私は別に関係ないんですけどね…でも突然でした。楽屋の噂とかも全くなく」。
で、自分の最初の師匠は先代の柳橋。こちらもある時に理事になり、その後やはり楽屋の噂もなかったのに副会長になりました。
ということで…私が何を言いたいかと申しますと…女性のお客様もいらっしゃるので大変言いにくいのですが…私はかなりの…上げチンです。

…ぶわははははは!!!言うと思った(笑)!!
柏枝師匠ってハンサムだし喋り方や佇まいもきれいなんだけど、なんかおかしいんだよなぁ…。

そして出演者の紹介をしたあとの一席目は「道具屋」。道具屋がなんでこんなに面白いんだ?!謎なんだけど。えらい面白い。
与太郎が独自なんだな。わざとらしいバカじゃなく、ふるまいや喋り方なんかは極真っ当なんだけど、思考が独特。バカじゃないけど変。
噺を大きく変えてるわけじゃないんだけど、この与太郎の独特の雰囲気がすごくおかしくて、笑った笑った。楽しかった~。


米福師匠「愛宕山
きっと噺家さんは最近みんなまくらで話題にしてるんだろうね「闇営業」。
最近聞かれることが多いです。「行ってみたら反社会勢力の仕事だった、ってことありますか?」。
ああいうのは…まぁ本業の落語とか漫才とかをやるんじゃなくて、パーティの大喜利とかそういう内容で…呼ばれるのは売れてる人に限りますから、私なんかは呼ばれる心配は全くないです。
それでもまぁいろんな仕事がありますから…行って見てびっくりするなんてことはいくらでもあります。
と言って、神社の賽銭箱の前で落語をした時の話。最初から最後までめちゃくちゃ面白かった!ちゃんとサゲもあって。(詳しく書いていたけど、こういうの営業妨害と思われてしまいそうだから削除…)

ここでどっかん!とウケたら「ここがおそらく今日の高座のピークです」にまた大笑い。
そんなまくらから「愛宕山」。
一八が調子が良くてほんとにご機嫌~。
しぐさも大きくてにぎやかで楽しい~。
楽しかった。


柏枝師匠「ラーメン屋」
とてもとてもよかった。
ラーメン屋のおやじさんとおかみさんが最高。
これって人情噺だけど、柏枝師匠のおやじさんはどこかちょっと不思議っていうか読めないところがあって、そこが暗くなりすぎず思わず笑ってしまう感じで落語っぽくてとっても楽しい。

最初から最後までほんとに楽しかった、柏枝ジャパン。
行ってよかった。

 

ぼくを忘れないで

 

ぼくを忘れないで (海外文学セレクション)

ぼくを忘れないで (海外文学セレクション)

 

 ★★★★

ぼくには仲良しの兄・サイモンがいた。でも死んでしまった。ぼくはサイモンに会いたくてたまらない。19歳になったマシュー・ホームズは、統合失調症の治療の一環として、自分自身について書いている。大好きだった兄サイモン、ダウン症だった彼の死は、幼かったマシューの思いつきがもたらしたようなものだった。罪の意識に苛まれるマシュー。彼には「ぼくを忘れないで」というサイモンの声がいつも聞こえている。精神科病棟の看護師だった著者だからこそ書ける、病める青年の苦しみ、不安、喜び、そして家族のこと。サイモンとマシューの兄弟を、あなたは忘れることができないだろう。コスタ賞の新人賞と大賞を同時受賞した傑作小説! 

タイトルから伝わってくる切実さが小説全体にも漂っている。

主人公マシューは、兄サイモンの死は自分のせいだという罪悪感を抱えて生きている。そのため親とも決別し独りぼっちで生きている。

サイモンが抱く罪悪感はこの先も決してなくなることはないのだろうと思う。
サイモンのことを100%信じきることができない両親の会話が胸に突き刺さる。お前のせいじゃないと言ってやりたい気持ちと責める気持ち。
それだけに壁に書かれた読まれるつもりのない父からのメッセージにはジーンときた。

精神を患った主人公の言葉で語られているので支離滅裂だったり露悪的だったりもするのだが、時々垣間見られる彼の純粋さと孤独が辛い。
一進一退を繰り返しながらもいつの日か自分を許せたらいいと思う。 

郝景芳短篇集 (エクス・リブリス)

 

郝景芳短篇集 (エクス・リブリス)

郝景芳短篇集 (エクス・リブリス)

 

 ★★★★★

SFと詩的な視覚表現の融合。中国社会と現代都市の奇想天外な投影。ヒューゴー賞受賞「北京―折りたたみの都市」ほか、社会格差や高齢化、エネルギー資源、医療問題、都市生活者のストレスなど、中国社会を映しだす全7篇。 

面白かった。「北京―折りたたみの都市」はケン・リュウ編アンソロジーのタイトルにもなっていたので気になっていたのだが、抒情的なSF(あくまでも私の印象)でとても好みだった。格差社会をこのような形で見せられるとは。読み終わってしばし茫然。

一番好きだったのが「弦の調べ」と「繁華を慕って」。特に「弦の調べ」のクライマックスシーンの美しさ。都市が折りたたまれていく様子や宇宙に向かって弦の調べがどんどん大きくなっていくところ…ストーリーは忘れてもそのイメージは頭に残る気がする。「繁華を慕って」で意外な真相が明らかになる仕掛けもよかった。

 

昼八ツ落語会

7/20(土)、UNA Galleryで行われた「昼八ツ落語会」に行ってきた。

一部
・さん助 ご挨拶
・さん助「蝦蟇の油」
・さん助「手水廻し」
~仲入り~
二部
・さん助「だくだく」
・さん助「夏の医者」


さん助師匠 ご挨拶
鈴本演芸場8月下席夜の部のトリをとることが決まったさん助師匠(バンザイ!!)。
昨日顔付けが決まったとお知らせをいただいたのでそれをどうしてもみなさんにお伝えしたくて、とUNAさんにお願いして作っていただいたチラシを珍しく宣伝。
「私以前は自分のトリの芝居の宣伝をするなんてカッコ悪いと思っていたんですね。でも初めて鈴本のトリをとったとき、袖からお客様がどれぐらい来ていただいているか覗くのが本当に怖くて怖くて…。だからもうなりふり構っていられないです。とにかく来てほしい。本人が無理なら誰かをよこしてほしい。落語に興味なくてもなんでもいいんです、その場に座ってくれてさえいたら」。

…ぶわはははは。
ほんとにそうだよなぁ。今は昼の部は結構安定してお客さんが入るけど、夜の部は少ない時はほんとに少ないから。私は通うつもりだけど、(数少ない)友達にもできるだけ声をかけて行くようにしよう。


さん助師匠「蝦蟇の油」
おお、さん助師匠の「蝦蟇の油」は初めて。
こういう口上を覚えられるなんて落語家さんってすごいなぁ…(←おバカな感想)。
酔っぱらってからのごちゃごちゃ加減がなんかおかしい。
「何枚切ったっけ?」「なんかもう…めんどくさくなっちゃった」は蝦蟇の油売りじゃなくさん助師匠の本音か?(笑)

二ツ目の時に覚えて2回ほどやったんだけど、一度絶句してしまってそれ以来やっていなかったとのこと。

さん助師匠「手水廻し」
反則ギリギリだけどめちゃくちゃ面白い、さん助師匠の「手水廻し」。
大阪から来たお客さんに「手水」と言われて「ちょぅずぅ?」。顔でおかしいってずるいわー。
顔の長い男が顔を抑えながら入ってくるのもおかしいし、一生懸命回すのもおかしい。
笑った笑った。

さん助師匠「だくだく」
この空間で90分聞くのはお客様もきついだろうと思って二部制にしたんですけど、一部で入ったお客様…どなたもお帰りになりませんでした、とさん助師匠。
ありがたいけど手を抜けなくなっちゃった、と。
二部制といえば、船の仕事に行った時は二部制だったんですが、まくらも落語も全く同じにしてください、と言われました。
お客様同士が話をして「あら、あなたの行ったほうが面白かったのね」ということになると良くないから、ということらしいです。
結構これはしんどいです。なんかロボットかなんかになった気持ちになっちゃって。
私、まくらを微妙に変えたら、すぐに注意されました。
でも忘れちゃうんですよ、私、何を話したのかを。そのうち向こうの方もあきらめたみたいで言われなくなりました。
一部で全然面白くなかったのに二部でも同じことして両方が全然面白くなくてもいいのかな、とか…。


…話ながらなんか「素」になって「両方が面白くなかったら」と言って笑ったのが見ていて妙におかしかった。

そんなまくらから「だくだく」。
好きだな、さん助師匠の「だくだく」。
やたらとタンスを書いて欲しがったり、金庫にどことなく気品が漂ってほしかったり、土蔵を書いて欲しがったり、槍だけじゃなくて火縄銃とか手裏剣とか…。ばかばかしくて好き。
「盗ったつもり」の泥棒を見て「…粋だねぇ」にも笑う。
楽しかった。大好きな噺。


さん助師匠「夏の医者」
この噺も好きなんだー。
隣村のお医者の先生を訪ねていくと先生が家にいなくてどこにいるかと探してみると裏の畑で草むしり。
声をかけられると「あと少しでむしり終わるから待ってろ」というのんびりさ。
お前はどこの誰だ?と聞かれて答えると「ああー知っとる知っとる。若いころは一緒につるんどった」「なんとかっていう若いおなごがおって…これがおっぱいの大きなおなごで…二人でここの家に夜這いに行くべぇってことになって…扉が大きく空いていたら行ってもいいっていう合図っていうことで行ってみると半分開いてて、こりゃしめた!って入って行ったらばこーん!!!!って吹き飛ばされて、暑いから開けてただけだって…」。
「そんな話は聞きたくなかった…」。

…ぶわははは!最高だ。

そして山のてっぺんでタバコをふかしながら先生が畑の具合を尋ねるところ。
涼しい風がふわーっと吹いてくるようでのんびりしていてとっても楽しい。こういう表現って落語にしかできない気がして好きなんだー。
先生の関心が畑に向いてることがよくわかってそれも微笑ましい。
うわばみに飲まれてからの先生の落ち着いてること。これもいいな。
楽しかった~。


「だくだく」終わったときに「こういう中ぐらいの噺を4席って疲れる…」と言ってたけど、確かにそうかも。
でも好きな噺ばかり聞けてすごく楽しかった。
次回は8月10日(土)13時開演、とのこと。今度は二部制じゃないらしい?

伝統芸能鑑賞会 文月

7/18(木)、国立演芸場で行われた「伝統芸能鑑賞会 文月」に行ってきた。

・かしめ「鈴ヶ森」
・こしら「片棒(高速)」
・吉笑「ぞおん」
・こしら「前澤友作物語・序」
~仲入り~
・吉笑「前澤友作物語・上」
・こしら「前澤友作物語・下」


かしめさんの「鈴ヶ森」からトリのこしら師匠の高座までが実は一つの大きなストーリーになっているという壮大な仕掛け。
最後に出てきたこしら師匠が「吉笑め!!打合せになかったものをあれこれぶち込んできやがって!!高座降りてきたとき、やりきった!あとは任せた!みたいな顔してやんの。冗談じゃねぇ!!」に大笑い。
壮大なSFチックな展開なのに結局のところまったくもってばかばかしいというのが良かったなぁ。
序で出てきた主人公の「エイトくん」(はっつぁん)が前澤社長を訪ねて行った時に案内してくれた「サンダル部の田中さん」(田中さんだる…さんだるぅ…田中三太夫…)とそこまで仕込みだったとは。

正直途中ちょっと気を失ったりもしたけれど、面白かった。

三人の逞しい女

 

三人の逞しい女

三人の逞しい女

 

 ★★★★

フランス文学最高峰ゴンクール賞受賞作。父に捨てられた弁護士のノラ、移住先で教師の職を捨てなければならなかったファンタ、夫を失ったカディ・デンバ。悩み、悲嘆に暮れ、疑念に駆られ、騙され、無力な怒りに苛まれ、ときに辱められていく三人の女たちの絡み合う生を描く、フランス最重要作家の傑作小説。 

3つの物語が収められている。フランス人の母とアフリカ系の父を持つ弁護士のノラ。アフリカ系の妻を連れてフランスに帰って来てキッチン設備の会社に勤める元教師。夫と死別して義理の親の家を追い出されフランスに渡る女。
どの物語にも共通するのは移民、難民の問題。アフリカ系の人とフランス人で結婚して子どもも生まれるのだが、生活がうまくいかなくなると二人の間がぎすぎすしてきて疑念や迷いや反感が生じてくる。

「逞しい」という言葉で括ることに疑問を感じるほど、ここに描かれる女性たちは傷つき損なわれ無力感に襲われているように見える。しんどいのは何も女だけではないのだけれど、自分の側に選択のチャンスがないこと…いや選択はしたけれど後戻りができないこと、そこに生きづらさを感じる。

しんどい物語だった。

道楽亭出張寄席 柳家はん治・春風亭百栄二人会

7/16(火)、社会教育会館で行われた「道楽亭出張寄席 柳家はん治・春風亭百栄二人会」に行ってきた。
体調が悪くてマッサージを受けてから遅れて入場。

・百栄「寿司屋水滸伝
・はん治「君よ、モーツァルトを聴け」
~仲入り~
・百栄「落語家の夢」
・はん治「妻の旅行」


はん治師匠「君よ、モーツァルトを聴け」
私はこう見えましても小三治の弟子で、本来であれば王道…動物園だったらライオンとか虎とか象とか…そこらへんにいなきゃいけなかったんですが、でも私どういうわけか…ご縁があって新作をやらせていただいたりしておりまして…どちらかというと珍獣の部類…動物園でもこの先に動物いるのかな?というような…奥まったところにある小屋に…バクですとかアリクイですとかカピパラですとか…そこらへんにいるイメージなんでしょうか。だからこういう二人会…珍獣二人というような…。
個人的には大好きです。百栄さん。噺は面白いしね。

…ぶわははは。はん治師匠!大丈夫!もっと自信をもって!(笑)
そんなまくらから「君よ、モーツァルトを聴け」。
この間赤坂の会で久しぶりに聞いたけど、やっぱり面白い。文句なく面白い。
八百屋さんの語る北島三郎のくだり、何度聞いてもおかしい。「うちのかみさんは嫌いなんですよ。鼻の穴が大きいなんて言ってね。でも鼻の穴で歌うわけじゃありませんから」。
…ぶわははは。
あと「なんとかっていうおっぱいの大きいおねえちゃんがやってましたね…。♪おーふろーでスキンケアー♪」。
おずおずと歌いだすのがたまらない。
楽しかったー。

百栄師匠「落語家の夢」
なんといってもこの二人会、百栄師匠がはん治師匠の目の前でこれをやるというのが眼目だったわけで、体調悪かったけどどうしてもこれは見たかったのだ。
ブラックな噺だけど、百栄師匠のあのふにゃふにゃした口調で語られると和んじゃうから不思議だ。
「この子、落語家が大好きで。東京かわら版で年に一度落語家名鑑が出ますでしょ。なんで出すのか意味がわからないやつ。あれを毎晩見て落語家ちゃん落語家ちゃんって…。こちら(鈴本演芸場)で、芸協の落語家ちゃんも買えますか?」
「ああ、うちは…落語協会専門です。」
立川流の落語家ちゃんはどこへ行ったら買えます?」
立川流はですね…志の輔以降の落語家は独立心が旺盛ですからあまり飼うのは向かないですね。個人的にはお勧めしません。」

一度聞いてるけどもうおかしくておかしくて大爆笑。
笑った笑った。

はん治師匠「妻の旅行」
高座返しに出て来た小はださんの表情が絶妙におかしくて(「ひでぇじゃねぇか」と「おかしい!」が混ざった表情)客席から笑いが。はん治師匠のお弟子さんは二人とも師匠愛が強いからなー。
それから出て来たはん治師匠もなんともいえない表情。
「楽屋で前から言われてたんですよ。百栄さんが私がでてくる新作をやってるよ、面白いよって。だから聞いてみたいとずっと思っていて袖で最初から最後まで聞いてたんですが…。4万7千円ですか…。ふっ。…ほんとは古典をやろうと思って用意してきたんですけどなんか…そういう感じじゃないですよね…あの後に…妻の旅行やります」

…おう…はん治師匠ちょっと心折れちゃった?
決してバカにされてるわけじゃないから…ここで用意した古典をばし!っとやってほしかったけど、ここで心折れるのもはん治師匠らしい。心優しいはん治師匠。
テッパンなので大うけで面白かった。ほんとは何をやろうと思ってたのかな。それだけが気になった~。

 

小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集

 

小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集

小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集

 

 ★★★★★

少女小説からミステリ、古典から現代のベストセラーまで、本に溺れる愉しさ。約15年分の書評を通して、桜庭一樹の人となりが見えてくる。人気作家との対談や、書き下ろし書評も収録。 

 桜庭さんの読書日記が大好きなんだけど、これも楽しかった!ほんとに本を読むのが好きな作家さんなんだなぁと思う。そして読むことが書くことに繋がっていて、読むだけの私からするとちょっと羨ましい。

翻訳本も日本の本も新しいものも古いものもジャンルも拘らず読んでいるところもとても好ましくて、あー桜庭さんと本の話をしたいなぁ!と思う。

これを読んで読みたい本がまた大量に増えてしまって、嬉しい悲鳴。
読書メーターに読みたい本と読んだ本を登録しているけど、読みたい本が加速度をつけて増えていくのでほんと大変。(にやにや)

ブックショップ

 

ブックショップ (ハーパーコリンズ・フィクション)

ブックショップ (ハーパーコリンズ・フィクション)

 

 ★★

1959年英国。フローレンスには夢があった。それはこの海辺の町に本屋を開くこと。しかし時代はまだ事業を始めようとする女性に優しくなく、住人や町の権力者からは反対の声が。それでも本への情熱を胸に、フローレンスはついに“オールド・ハウス書店”を開店させる―。人と本との、心揺さぶる物語。 

えええ?こんな結末?なんか読み始めてから想像していたのとはまるで違う展開に驚く。
これが著者の言う世の中は絶滅させる者と絶滅させられる者とに分けられるという世界観を体現した物語ということになるのだろうか。なんとシニカルな…。なんて救いのない…。ちょっと唖然。

いきなり前書きで作者への賞賛の文章が載せられていたり、ライトノベルのような軽いノリでこういう展開になったり…ちょっと私には合わない作品だった。

林家きく麿生誕祭 きく麿のハニーハント

7/14(日)、なかの芸能小劇場で行われた「林家きく麿生誕祭 きく麿のハニーハント」に行ってきた。

・きく麿 ご挨拶
・木はち「子ほめ」
・きく麿「守護霊」
・きく麿「パッション☆ネーブル
~仲入り~
・遠峰あこ アコーディオン漫談
・きく麿「二つ上の先輩」


きく麿師匠 ご挨拶
オープニングだけ撮影可。プーさんの恰好をして登場したきく麿師匠。
この間の独演会の時出てきて小林旭の歌を歌っていたけど、今回はネタもやりますと言って、ぼそっぼそっというんだけど、それがすごいシュールでおかしい。
例えば…片手に持ってる壺に手を入れて「…ぬか床だよ」。
…ぶわはははは。もう最高だなぁ、このセンス。
すごい出オチなんだけどテンションが結構低いのがなんかとってもおかしい。

きく麿師匠「守護霊」
一門の話や師匠の話や…時々毒を吐いたり…長めのまくらから「守護霊」。

しゅわしゅわしゅわしゅわ…言いながらまじめな顔をしてお祈りしてはあたりを見渡す少年。
何をやってるのか気になってベッドの上から「なにやってんの?」と声をかける弟。
もうこの兄弟のやりとりがめちゃくちゃおかしい。
弟の一言に反応して沸騰して最後は「はい!死亡!」というお兄ちゃんのばかばかしいくらいの子供らしさと憎たらしさといったら。
でも憎たらしいけどかわいい。それが不思議。なんだろう、きく麿師匠って。永遠の小学生男子?(笑)
あまりのうるささにやってくる父親が「おかあさんが怒ってる」とここには登場しないおかあさんを気遣う不思議。それが後の方のセリフで「それでか!」となるのがもうたまらなくおかしい。
久しぶりの「守護霊」、以前見た時よりパワーアップしてた。すごい。


きく麿師匠「パッション☆ネーブル
アイドルが好きだったというきく麿師匠なんだけど、好きだったというアイドルが結構ディープでちっともわからない(笑)。それがまたおかしい。
「パッション☆ネーブル」前に一度見たことがあったんだけど、やっぱりこちらもパワーアップしてる!
もう解散してしまったアイドルグループを今も愛し続ける二人の男。毎日スーパーの駐車場で応援の練習に励む。この応援のB級感がもう…。こういうセンスがすごいんだなー。なんだろう。音感?(笑)
仲入り前に燃え尽きるほど笑ってしまった。


きく麿師匠「二つ上の先輩」
これは初めて聴く噺。
めんどくさい先輩に呼び出されてる二人の男。嫌々家に行くんだけど…確かにこの先輩めんどくさい。
というか、そもそも先輩って?この人たちいったいなに?
この3人の関係が後から明らかになり、次の日に先輩から「背筋がぞっとするような怖い話をしろ」と言われた二人が、訳あって(!)怖いと思わせて全然怖くない話をするところ…これがもうめちゃくちゃおかしい!!
予測がつかない展開で面白かった~。

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あれも凌鶴、これも凌鶴 第5回

7/13(土)、道楽亭で行われた「あれも凌鶴、これも凌鶴 第5回」に行ってきた。

・凌鶴「蒲生三勇士~村上大助誕生」
・凌天「一休禅師鍵屋の棟札」
・凌鶴「前田長吉」
~仲入り~
・凌天「安宅郷右衛門」
・凌鶴「お掃除ホームレス」


凌鶴先生「蒲生三勇士~村上大助誕生」
初めて聴く話。
小田原城下に、松井祐太夫という男が剣術を教えて暮らしている。
松井が下男の伴助に「自分は家宝になるような刀を手に入れたいと思っている」と相談すると伴助は「それならばこの小田原に安井四郎清兼という刀鍛冶の名人がいるからその人に作ってもらったりいいのではないか」と答える。
「しかし安井は大変な偏屈で変人。それにもってきて先生(松井)も偏屈で変人。変人対変人の対決になるとまとまる話もまとまりません。ですから先生、安井の所へ行ったらくれぐれもいつものように短気を起こすことはありませんぬよう」と言う伴助に「わかっとるわかっとる!」と松井。

二人で安井宅を訪ねると、今家には自分一人しかいないから勝手にあがってこい、と安井。
安井を前にして、松井が丁寧に「刀を作っていただきたい」と頭を下げると、「(自分は)商売で刀を作っているのだから頭を下げる必要はない」と早速偏屈らしい反応。
刀を作ってもらいたい松井は平身低頭でどうにか機嫌を損ねないように刀を作ってもらう承諾を得る。
しかしその刀、いつできるのかもいくらになるかも分からないと言う。自分の気が乗れば数日でできるし気が乗らなければ何か月もかかる。費用もできた刀次第であるからわからない。
それでも結構ですと言って帰って来た松井だが、20日ほどすると刀はどれぐらいできているのか気になって仕方ない。
それで伴助に探りに行かせると、安井は「あと20日ほどかかる」と言う。
それでまた20日経ってから二人で行ってみると、刀は完成したと言う。
300両用意した松井が値段を尋ねると「30両でよい」と言う。大喜びの松井が「その刀は斬れるのでしょうな」と問うと、安井は顔色を変えて丸太をスパッと斬り落とし、「斬れない刀を作るわけがないではないか」と言い、刀を取り上げて30両を返し、二人を追い返してしまう。
ああ、しまった、しくじったと後悔しても後の祭り。
どうしてもあの刀を諦めきれない松井は、安井家に出入りしている酒屋の六兵衛を呼びつけて、安井が個人的に欲しがっているものはないのか、と尋ねる。
すると六兵衛は「安井は女房を欲しがっています」と言う。
器量なんかはどうでもいい、とにかく力持ちで、重い槌を持ち上げられるような女がいい、と。
それを聞いた松井は、自分には妹がいるが、これが器量は良くないが大変な力持ちなのだ、と言う。
呼ばれて出てきた妹が…。

 

松井家に仕える伴助が明るく軽くてとても楽しい。
松井とのやりとりも主人を恐れるようなところがまったくなく「先生も変人」とか「変人対決はあちらの方が上でしたな」とか軽口を叩くのがおかしい。
様子を見に行けと言われて酒を催促するのも、またそれを安井に見透かされるのもおかしい。
妹がどしーんどしーんと音を立てて登場するのもおかしいのだが、これゆえ今ではあまりされなくなったのだろう、とのこと。
凌鶴先生は古典もいいんだよなぁ。そういえば私が初めて凌鶴先生を見た時も古典だったな。
楽しかった~。

 

凌鶴先生「前田長吉」
伝説の騎手、前田長吉の半生を描いた新作講談。
もともと農家の倅で馬の扱いに長けていた長吉が上京して厩舎に入り見習い騎手となる。
デビュー戦でいきなり優勝し、その後も自分の厩舎以外の馬も乗りこなし、見習い騎手1年目にして見事な成績をおさめる。
その後、自厩舎のクリフジという牝馬に乗るようになり、デビュー戦から快勝、東京優駿では優勝を果たし最年少優勝記録を残す。
見習いから正規の騎手になれたのもつかの間、長吉は徴兵されて戦争へ。その後シベリヤに抑留される…。

…目覚ましい活躍をした騎手が徴兵によって馬に乗ることができなくなってしまうなんて本当に悲しい。生きていたらその後どれだけの功績を残したかわからないのに。
クリフジが優勝した後、ウォッカが優勝するまでの間の馬の名前の言い立ては…うーん、すごい記憶力。私のせいで気を散らせてはいけないと目のやり場に困ってしまった(笑)。

凌鶴先生「お掃除ホームレス」
タイトルを聞いて以来ずっと聞きたいと思っていた話。
南武線谷保駅の周辺で暮らすホームレスのサトウさん。ある日、タクシーの運転手に「ここらへんの掃除してみたら?」と声をかけられ、ちょっとやってみる。次の日もやってその次の日もやって…最初のうちはそれほど気もない感じだったのが、毎日箒と塵取りで熱心に掃除を続けるうちに、そこを通る人の中でサトウさんに話しかけたり、寒い日は缶コーヒーを、暑い日には冷たい飲み物を差し入れたりする人が出てくる。
その中には役所に行って生活保護をもらう手続きを勧める人もいたけれど、サトウさんは役所に対する不信感が強く応じない。
また学校の先生でサトウさんにいろいろな話を聞く中で、サトウさんには新潟に弟がいることを聞き出し、また記憶障害があることにも気づき…。

…凌鶴先生の新作講談には見ず知らずの人に手を差し伸べる人が出てくる話がいくつかあるけど、こういう話を聞くと本当にそういう優しさはなくしちゃいけないなぁ…と思う。
もともとは仕事をしていたのに体を壊して仕事を続けられなくなったり、支援施設の中で喧嘩をしてそこにいられなくなったり…そういうことで家を失ってしまうことは決して他人ごとではない。

声高に訴えるのではなく、ユーモアもある優しい講談で語ることで、より柔らかい気持ちで受け止めることができるように思う。
素晴らしかった!



死にがいを求めて生きているの

 

死にがいを求めて生きているの

死にがいを求めて生きているの

 

 ★★★★★

植物状態のまま病院で眠る智也と、献身的に見守る雄介。二人の間に横たわる“歪な真実”とは?毎日の繰り返しに倦んだ看護師、クラスで浮かないよう立ち回る転校生、注目を浴びようともがく大学生、時代に取り残された中年ディレクター。交わるはずのない点と点が、智也と雄介をなぞる線になるとき、目隠しをされた“平成”という時代の闇が露わになる―“平成”を生きる若者たちが背負う自滅と祈りの物語。 

 承認要求は誰にでもあるものだけど、それが自分の存在理由になったり「何者か」にならなければいけないと思い続けて生きていくのはしんどいなぁ。

紅白分かれて相手を「敵」と見なして戦うことと、わかりやすい「敵」を見つけて叩くことは繋がっているのだろうか。いろいろモヤモヤ…。

久しぶりに読む朝井リョウ。イタイ若者を描くのが相変わらずうまい。と書いて、ここに描かれている若者を「イタイ」と一言で済ませてしまう自分の雑さに気づいてぞっとしたりもする。

最初は美しい友情に思えた植物状態の友人を献身的に見守る雄介の真意が見えた時には正直ぞっとしたが、しかしそれも話してみなければ分からない。
少しだけ希望を抱きつつ本を閉じたが、はたして。

「螺旋プロジェクト」の対象作品とのこと。ほかの作品も読んでみたい。

ののはな通信

 

ののはな通信

ののはな通信

 

 ★★★★★

最高に甘美で残酷な女子大河小説の最高峰。三浦しをん、小説最新作。

横浜で、ミッション系のお嬢様学校に通う、野々原茜(のの)と牧田はな。
庶民的な家庭で育ち、頭脳明晰、クールで毒舌なののと、
外交官の家に生まれ、天真爛漫で甘え上手のはな。
二人はなぜか気が合い、かけがえのない親友同士となる。
しかし、ののには秘密があった。いつしかはなに抱いた、友情以上の気持ち。
それを強烈に自覚し、ののは玉砕覚悟ではなに告白する。
不器用にはじまった、密やかな恋。
けれどある裏切りによって、少女たちの楽園は、音を立てて崩れはじめ……。

運命の恋を経て、少女たちは大人になる。
女子の生き方を描いた傑作小説。

女子高で出会い親友から恋人になった「のの」と「はな」。毎日交わされる手紙はどんどん濃密なものになっていくが、恋人時代は長く続くことなく終わっていく。
大学生になって再会してまた離れ、40代になって今度はメールのやり取りが始まる。

宝物のような恋愛の記憶はその後の人生で道しるべとなる。

送り先が不明になってもお互いの存在は常に身近にあって気配すら感じられる。
それがその人の全てではなかったとしても、心の一番深いところで通じ合える相手がいることは幸せなことだ。

しをんさんは作品ごとに全くテイストが違う。とても面白かった。

立川流寄席

7/9(火)、日暮里サニーホールで行われた立川流寄席に行ってきた。

・笑二「元犬」
・らく人「粗忽の釘
・談修「宮戸川(上)」
・里う馬「笠碁」
~仲入り~
・志の彦「かぼちゃ屋
・志ら玉「大安売り」&踊り
・龍志「船徳

笑二さん「元犬」
笑二さんの途中から。
かずさ屋さんがシロが元犬と聞いて「ああ、そうだったのかい」と言いながら実は信じていなくて、危ないヤツだと思ってるところから始まって、かなり斜め上を行く「元犬」だった。
普通のところと変化球のところ、両方を淡々とやるからすごくおかしい。楽しかった。


らく人さん「粗忽の釘
ペナルティで前座に戻っていたらく人さん。このたびめでたくニツ目復帰。
師匠のツィートがネットで取り上げられ炎上した結果、芝居のチケットは完売。これぞまさしく炎上商法。
そんなまくらから「粗忽の釘」。初めて見た噺家さんだと思って見ていたけど、ブログを検索したら2回見ていた。
ゆったりした口調に少し癖があるけど、聞きやすくて面白かった。


談修師匠「宮戸川(上)」
うーん、きれいな芸。好きだな、談修師匠。
この噺、ほんとに聞き飽きていて好きじゃないんだけど、お花ちゃんが図々しくなくてかわいらしくてよかった。
「グッジョブ」なんてセリフが入っても思わず笑ってしまう。
サゲは喬之助師匠と同じ。


里う馬師匠「笠碁」
おじいさん二人が生き生きしていて目に浮かぶよう。
ムッとしたり、いらいらしたり、わくわくしたり。
二人で碁を打つのを何より楽しみにしていることが伺える。
「番頭さん、来た来た!」「あそこにいた!!」、いちいち番頭さんに報告する旦那がかわいらしい。
楽しかった。


志の彦さん「かぼちゃ屋
初めて見た噺家さんと思ったけど、ブログを検索したら一度見ていた。おれの記憶って…。
とても面白かった。ギャグも邪魔にならずとっても楽しい。好きなタイプの噺家さんかも。他の噺も聞いてみたい。


志ら玉師匠「大安売り」&踊り
「大安売り」って全然面白くない噺だと思うんだけど、ちょっと面白かった。
繰り返しがしつこいところにもイライラしがちなんだけど、それもなく。
踊りもよかった。立川流って色物が出ないからこういう踊りがあると一息つける感じ。


龍志師匠「船徳
志ら玉師匠の踊りを「結構ですな」と龍志師匠。
「私も習ってたこともあるんですよ、踊り。私の踊りを見た談志…”かっ!”と一言だけ言いましたね。かっ!!ですよ。あー自分には向かねぇなと思ってやめました」。
そんなまくらから「船徳」。

最初から最後までめちゃくちゃ楽しい!
徳さんの若旦那ぶりがとってもチャーミング。
「お店なんかやりたくないよ。そろばんをパチパチやるなんて面白くもなんともない。それより船頭だよ船頭」。
親方に反対されると「じゃいいよ。他の船宿に行ってなるから」。
しょうがないなぁと親方が渋々認めると「ありがとう!じゃみんなを呼んで。披露目をやろう!」

四万六千日に出かけた二人が船宿を訪れた時に徳さんがお茶を出す、というのは初めて見た。
舟をつないだまま出そうとしたり、出すなり竿を流したり、櫓に変えた途端にかっこつけて漕ぎ始めたり、とにかく若旦那がとてもかわいくて調子が良くておかしい。
石垣に寄って行ってからは、「太ってる旦那、そんな帆先に立たない!」「コウモリで突いてください。もうそれしかないんだから。見てたでしょ、竿を流したの」キレるキレる。
文句言ってもなにしてもかわいい。

ほんとにご機嫌な「船徳」で、楽しかったー。いいなぁ、龍志師匠。かっこいい。

三つ編み

 

三つ編み

三つ編み

 

 ★★★★★

3つの大陸、3人の女性、3通りの人生。唯一重なるのは、自分の意志を貫く勇気。インド。不可触民のスミタは、娘を学校に通わせ、悲惨な生活から抜け出せるよう力を尽くしたが、その願いは断ち切られる。イタリア。家族経営の毛髪加工会社で働くジュリアは父の事故を機に、倒産寸前の会社をまかされる。お金持ちとの望まぬ結婚が解決策だと母は言うが…。カナダ。シングルマザーの弁護士サラは女性初のトップの座を目前にして、癌の告知を受ける。それを知った同僚たちの態度は様変わりし…。3人が運命と闘うことを選んだとき、美しい髪をたどってつながるはずのない物語が交差する。文学賞8冠達成!全国図書館協会賞、グローブ・ドゥ・クリスタル賞(文学部門)、「ルレイ」旅する読者賞、女性経済人の文学賞ユリシーズ賞(デビュー小説部門)、フランス・ゾンタクラブ賞、全国医療施設内図書館連盟賞、ドミティス文学賞。 

インドで不可触民として生まれ、夫と娘とともに生きているスミタ、イタリアの毛髪加工工場で働くジュリア、カナダのエリート弁護士サラ。この3人の物語が本当に三つ編みを編むように繋がって行く。

それぞれ過酷な状況に追い込まれて打ちのめされるが、彼女たちはそこで終わらない。どん底から立ち上がる彼女たちがそれぞれしなやかな強さを持っているところも好きだが、彼女たちの周りにいる男性が画一的に描かれてないところがとてもいい。
希望を捨てないこと。大切な人と大切な場所を守ること。私にもこんな生き方ができるだろうか。

素晴らしい作品だった。