りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ぼくを忘れないで

 

ぼくを忘れないで (海外文学セレクション)

ぼくを忘れないで (海外文学セレクション)

 

 ★★★★

ぼくには仲良しの兄・サイモンがいた。でも死んでしまった。ぼくはサイモンに会いたくてたまらない。19歳になったマシュー・ホームズは、統合失調症の治療の一環として、自分自身について書いている。大好きだった兄サイモン、ダウン症だった彼の死は、幼かったマシューの思いつきがもたらしたようなものだった。罪の意識に苛まれるマシュー。彼には「ぼくを忘れないで」というサイモンの声がいつも聞こえている。精神科病棟の看護師だった著者だからこそ書ける、病める青年の苦しみ、不安、喜び、そして家族のこと。サイモンとマシューの兄弟を、あなたは忘れることができないだろう。コスタ賞の新人賞と大賞を同時受賞した傑作小説! 

タイトルから伝わってくる切実さが小説全体にも漂っている。

主人公マシューは、兄サイモンの死は自分のせいだという罪悪感を抱えて生きている。そのため親とも決別し独りぼっちで生きている。

サイモンが抱く罪悪感はこの先も決してなくなることはないのだろうと思う。
サイモンのことを100%信じきることができない両親の会話が胸に突き刺さる。お前のせいじゃないと言ってやりたい気持ちと責める気持ち。
それだけに壁に書かれた読まれるつもりのない父からのメッセージにはジーンときた。

精神を患った主人公の言葉で語られているので支離滅裂だったり露悪的だったりもするのだが、時々垣間見られる彼の純粋さと孤独が辛い。
一進一退を繰り返しながらもいつの日か自分を許せたらいいと思う。