りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

鈴本演芸場5月下席昼の部

5/27(土)、鈴本演芸場5月下席昼の部に行ってきた。


・市坊「子ほめ」
・小んぶ「浮世床・本」
仙三郎社中 太神楽
・辰乃助「狸札」
・玉の輔「お菊の皿
・ニックス 漫才
・小燕枝「あくび指南」
・正朝「宗論」
・のだゆき 音楽
・さん助「しゃっくり政談」
~仲入り~
・正楽 紙切り
・小ゑん「ぐつぐつ」
・喬之助「締め込み」
・紋之助 曲独楽
・さん喬「船徳

 

市坊さん「子ほめ」
ギャグを入れてきたりしてるわけじゃないのになんか面白い。テンポがいいし声もいいし抑揚が気持ちいい。すごいな、この子。

 

小んぶ「浮世床・本」
「まつこうー」って読むと、松公が「あいよっ!」と威勢よく返事をするのがおかしい。
あと「立て板に水なんてもんじゃねぇよ。俺のは、立て板に鉄砲だよ。もはや立て板の意味がないよ」って…ばかばかしい。なんだそりゃ。
笑った。


仙三郎社中 太神楽
太神楽で歓声が起きると、ああ、今日は初めてのお客さんが多いんだな、って思う。
この日はほんとに陽気なお客さんで、太神楽も落語も一生懸命見ていて楽しんでいるっていう雰囲気があってよかった。居心地がいい~。
五階茶碗で歓声が起きたりすると、ああ…私はずいぶんすれちゃったなぁ(何度も見すぎているので何も感じない…)と寂しくなるけれど、仙成くんが傘の芸を!という驚き&喜びがあるので、それはそれで楽しい。


小燕枝師匠「あくび指南」
師匠のあくびがあまりにも素敵で風流で思わずお客さんが拍手したのがおかしい~。
なにかこうゆったりした空気が流れていてすごく素敵だった。初めて見に来たお客さんがこの噺がどういう方向に転がって行くのかわからなくて固唾をのんで見守っている、その雰囲気もよかった。


さん助師匠「しゃっくり政談」
奇声の上げ方が前と変わっていて、より大きくて長い奇声になっていて、より気持ち悪くなってる(笑)!
へんてこりんなんだけど、地の部分が結構ちゃんとしているから、その緩急が面白いなぁと思う。

もしかして怖い話なんだろうか、とお客さんが見守る中、結局あのへんてこな叫びで終わるっていうのが、ほんとにさん助師匠にぴったり合ってるなぁ。


小ゑん師匠「ぐつぐつ」
やはりこのお客さんにはこの噺、だよね。遭遇率が高いからちょっと残念にも感じてしまうんだけど、でもこの終わり方…何回聞いても素晴らしいなって思う。絵が浮かんでくる。名作。


喬之助師匠「締め込み」
楽しかった!
泥棒がまったく悪びれずぱーぱーしているのがおかしい。
時間調整があったのか、結構たっぷりだった。

 

さん喬師匠「船徳
最高に面白かった。
船宿の主人に呼ばれた女中のやる気のない気だるい感じ。若旦那のいかにも若旦那っぽい言動。船に乗ろうと誘う男と蝙蝠傘をさした男。
人物がくっきりしているから、やたらと声を張り上げたり大げさなことをしなくても、十分楽しい。

漕ぎ出す時に顔から決める若旦那がおかしいおかしい。
川に出てからも橋の上に女の姿を見つけると気取った横顔を見せたり、きつくなってくるとどんどん表情がうつろになってきて客に当たりだすのもおかしくて、大笑い。

特に後半になってからのおかしさは抜群で笑った笑った。

あとから、さん喬師匠が独演会で4席やってからすっ飛んできてトリをつとめたことを知って驚愕。
すごすぎる…。

三遊亭天どん落語会『どこまで続くか!? 100勝負 第42番勝負』

5/26(金)、道楽亭で行われた「三遊亭天どん落語会『どこまで続くか!? 100勝負 第42番勝負』」に行ってきた。


・天どん「授業参観」
・さん助「黄金餅
~仲入り~
・天どん「小間物屋政談」

 

天どん師匠「授業参観」
寄席に入ってないと暇、という天どん師匠。
最近結構暇で気が付くと家でテレビを見てる。別に見るとはなしに見ているんだけど、昼間やってる「昼顔」っていうドラマを毎日見ていて、何かしながら見てるからストーリーとかは全然わからないんだけど、とにかく上戸彩がかわいい。そんで相手役の男、妙齢の女性なら多分みんな好きなんだろ?みたいなやつ、〇〇って言いましたっけ(←絶対間違ってる名前)。男の方はどうでもいいんだけど上戸彩がかわいい。

で、この間、学校公開に呼ばれて落語をやってきた。
昔は授業参観だったけど今は学校公開?なんかよくわからないけど、授業参観の時は先生がいろいろ準備して授業してたけど、学校公開っていうのはとりあえずこの日はいつ学校に来てもいいですよーってことになっていて、その時に1時間落語をしゃべってくれって言う。

考えてみたらそれって先生が楽してるんじゃない?
しかも学校寄席なら子どもに向けてわかりやすい落語やればいいけど、親が出入りしてるから100%子ども向けってわけにもいかないし、でも本腰入れて聴いてくれるわけでもないから…すごいやりづらい。

実際やってみたら、一番前に足広げて座ってえらそーーにしてるおやじとか、落語やってる間中スマホをばーんと持ってなんかずっと入力しているおかあさんとか…そのおかあさんだってもちろん上戸彩みたいにかわいくなんかない。
なんかすごいイライラした。

…それはしんどそうな状況だけど怒りポイントが「上戸彩じゃねぇし」っていうのがなんか笑えるわー。

あとゲストのさん助師匠のこと。
自分がたて前座の頃にさん助は前座で入ってきたけど、とにかくありえないようなしくじりの数々。
浅草に出てた時、そこのやかんがすごい大きいっていうのがあったんだけど、さん助が「兄さん、ちょっと困ったことが…」というので何かと見たら、やかんに着物の袖が当たって溶けちゃってる。
前座ってアクリルの安い着物を着てるから焦げるんじゃなくて溶けるんだけど、さん助の着てたのはアクリルじゃなくてちゃんとした着物。でもそれを溶かすんだからいったいどんな当て方をしたんだか。
そのせいで天どん師匠が怒られていまだに根に持ってるっていうのも笑ってしまう。

そんなまくらから「授業参観」。
定時制高校で授業参観があって張り切る先生。
でも実は見に来てるのは先生のお母さんで、生徒も先生のお父さんに弟…。めちゃくちゃアットホームなへんてこな授業参観。

なんかシュールでばかばかしくて面白かった。


さん助師匠「黄金餅
自分の前座時代、すごく怖い師匠がいて楽屋はいつもぴりぴりしていた。だから寄席が終わるとほんとにぐったり。たて前座の兄さんが飲みにつれて行ってくれるのだけが楽しみだった。
そんな時、飲みに行かずにとっとと帰りたがるたて前座がいて、それを引き止める方法っていうのがあった。
できるだけ哀れっぽく「あれ?あにさん、行かないんですか?なんで?ぼくらを置いて帰るんですか?」そういって迫るとたいていの兄さんは「しょうがねぇな」と連れて行ってくれた。
天どんあにさんは、そういう帰りたがる兄さんでした。

そんなまくらから「黄金餅」。
小さい会場で緊張したのか、最初名前があべこべになっていて、それに気が付いて「違うよ。金兵衛は自分だ」と言いなおしたり…。
なかなかちょっとアウェイだったけど、私は好きよ、さん助師匠の「黄金餅」。気持ち悪くてエモーショナルで。でもおかし悲しくて。
すごくさん助師匠らしいな、と思ったのだった。


天どん師匠「小間物屋政談」
さん助師匠の高座を「なんでああいうねちっこい喋り方なのか」「ああいう噺ってなんなんでしょう。何が言いたいのか。落語らしいと言えば落語らしいけど。」「どういう気持ちであれをやるのか。たいていはおれはうまいだろっていう自信があったり一言あるやつがやる」とぶつぶつ。
「でも…うーん…こういうの聞けるから、いろんな人と会やると面白い。勉強になる」とぽつり。
結構酷いこと言ってるけど、あんまりひどい感じがしなかったのは、天どん師匠がさん助師匠の落語を「なんか気持ち悪いけど面白いな」って思ってる風だったからかな。

そんなまくらから「小間物屋政談」。
これもねぇ…な噺だよねぇ。やっぱり昔は女の地位が低かったんだなぁというのを感じざるを得ない。男の道具でしかないのか、みたいな。


そしてほんとにこうして聞いてみると、さん助師匠と天どん師匠の落語って対極にあるなぁという感じ。天どん師匠にはエモーショナルなところが全然なくて、すごく引いたところから冷めた視線で見ている感じで、だから私にはちょっとこう…シニカルに思えるっていうか、ただ筋を話してるように思えてしまって、あんまり入りこめないんだな。でも確かに引いた面白さっていうのもあってそこを楽しめるかどうかなのかなんだと思う。
だから天どんファンから見たらさん助師匠の落語って嫌だろうなって…相いれないんだろうなと思ったんだけど、それはまあ逆に言えばお互い様だからしょうがないのかな、と。

でも相いれない二人の会、面白かった。
打ち上げでもお互いが興味深そうに喋っていて私たちお客はほったらかしだったけど(笑)、二人の会話を聞いてるだけで楽しかった。

末廣亭5月下席夜の部

5/26(金)、末廣亭5月下席夜の部に行ってきた。
 
・圓輔「三枚起請
~仲入り~
・米多朗「生徒の作文」
・ニュースペーパー コント
・陽子「椿姫」
・南なん「のめる」
・正二郎 太神楽
・遊之介「三方一両損
 
圓輔師匠「三枚起請
圓輔師匠に間に合うように!と会社を出たのに入ったらもう落語の最中だった。痛恨!
 
南なん師匠「のめる」
ようやく念願の南なん師匠。会いたかったよう。1か月ぶりくらい?
なんか南なん師匠の落語はこう定期的に摂取したくなるっていうか、できれば2週間に1回は見たい…(←欲望は果てしない)。
 
いつものまくら、一字一句覚えているのに毎回笑って毎回うれしい気持ちになる。
いいなぁ。あんまり癒しという言葉は使いたくないけど、これを癒しと言わずに何を癒しと言うのか。
 
南なん師匠の「のめる」は初めてで嬉しい~!!
初めて聞く噺に当たるともうめっちゃうれしいなぁ。
 
「つまらねぇ」と「のめる」で賭けをしようと言いあってお互いに言いそうになって「とにかくいったん離れよう」というのがおかしい。
そしてこの「のめる」って言っちゃう男がかわいいんだ。
ご隠居の所に行って教えを乞うて、自信満々で出かけて行って逆にお金をとられちゃって。
またご隠居のところに飛び込んでいくんだけど、今度は「…大丈夫かなぁ…なんかまた言わされちゃいそうだなぁ」って自信がないところが、すごくおかしい。
 
これってでもなんか意外と難しい噺なんだね。
なんとなくリズムが変則的っていうか、それだけにぴたっときまるとすごく気持ちいいんだな。発見。
 
遊之介師匠「三方一両損
トリの遊之介師匠は初めて。
遊之介師匠の独特な投げやりっぽい口調とこの噺があっていて楽しかった。
どいつもこいつも喧嘩早くてからっとしていて、「なにを~?」の波状攻撃がおかしい。
あんまり好きな噺じゃないけど楽しかった。

ある婦人の肖像

 

ある婦人の肖像 (上) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (上) (岩波文庫)

 
ある婦人の肖像 (中) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (中) (岩波文庫)

 
ある婦人の肖像 (下) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (下) (岩波文庫)

 

 ★★★★★

舞台は19世紀。アメリカ生まれの美しい娘イザベルは両親を亡くし、イギリスの親戚で裕福なタチェット家に身を寄せていた。利発なイザベルは周囲の人々に愛され、貴族の求婚者も現れた。アメリカ時代の恋人である青年実業家キャスパーも、海を越えてイザベルを追って来た。だが、夫に従属するだけの古風な結婚を嫌うイザベルは、一生独身でも構わないと言い放つ。

面白かった!

主人公のイザベルを最初のうちはあまり好きになれなかった。
出てくる登場人物たちも一癖もふた癖もあるような人物ばかりで、ストーリー自体にも特に魅力を感じることもなく、上巻は少し退屈に感じるくらいだった。
でも中巻から俄然面白くなってきて、もう夢中になって読んだ。

最初は好きになれなかった主人公のイザベルも、彼女の成長とともにその生真面目さや頑なさも含めて愛しく思えてきたし、最初はただの皮肉屋にしか思えなかった従弟のラルフも、ハンサムな貴族だけれどなにかこう決め手に欠けるウォーバトン卿も、頭でっかちでおせっかいなだけに思えた親友のヘンリエッタも読んでいるうちに大好きになっていた。
そして…前途有望な彼女を変えてしまったオズモンドと胡散臭い!と思っていたマール夫人さえも(この二人の食えないことといったら…!)、もうほんとに自分の古くからの知り合いのように生き生きと身近に感じられた。

これが1881年の作品だというのだから驚いてしまう。
時代背景や倫理観など明らかに異質に感じる部分もあるが、それでもなんというかとても生々しく人間が描かれていて躍動していてそこにたまらない魅力を感じる。

これが文学の力なのだなぁ。普遍的なものが描かれているから決して古びない。
読めてよかった。満足。

大江戸悪人物語2017-18 episode 2

5/24(水)、日本橋公会堂で行われた「大江戸悪人物語2017-18 episode 2」に行ってきた。

・みのり「熱湯風呂」
・松之丞「慶安太平記ー楠木不伝闇討ち」

〜仲入り〜
・龍玉「真景累ヶ淵ー深見新五郎」
 
みのりさん「熱湯風呂」
久しぶりに見たけどうまくなってるし、とっても面白い!
前は何か「大丈夫か、この子」と思ったけど、ちゃんと緩急もつけられるようになってるし、間がよくなってるから安心して聞いていられるし笑える。
鯉栄先生に似てきた?
 
松之丞さん「慶安太平記ー楠木不伝闇討ち」
みのりさんのことを「面白いね」と珍しく?褒める松之丞さん。
講談ファンの人の中には気に入らない人もいるかもしれないですけど、いいじゃないですか、面白くて。自分が講談を客で見に行ってた頃、ああいう面白い講談ってきいたことがない。うまい人や名人は見たけど、面白いってなかった。
だからいいんじゃないですか。って無責任だから言うんですけど。
 
今回やるのが少し短めということでまくらたっぷりに、前回のあらすじもたっぷり。
紀州の城を出た正雪が今度は昔世話になった軍学者楠不伝と再会し、その道場で「若先生」と呼ばれるほどになる。
見た目も麗しく教え方もうまい正雪はたちまち人気者に。
世話になった不伝を殺してその娘を愛人にしようと企んだ正雪が娘といい仲だった村上をそそのかして不伝を殺させ道場を乗っ取るところまで。

さん助師匠のやってる「西海屋騒動」もそうだけど、ほんとにこの悪人というやつは、人の親切に付け込んで簡単にまわりの人をだましたり殺したりするんだよなぁ…。
「生まれついての悪性で」っていう決まり文句があるけれど、でも今のようになんでもかんでも原因を探って、親とか育ちのせいにするより、ましかもしれない。そういうこともあるよな、って…。
 
全体の8割ぐらいわりと淡々としずかにやって、ここぞというところで、がーーーっとたたみかける。うーん、かっこええ…。
村上をそそのかして嘘八百(これがまたいやらしい嘘なんだ)を並べるところ、多分聞いてる私も「悪い顔」になってた気がする。
 
龍玉師匠「真景累ヶ淵ー深見新五郎」
まくらなしで噺へ。深見新左衛門の長男、新五郎。父親の悪行に嫌気がさして家を出ていたのだが久しぶりに戻ってみると、父親が乱心し母を殺し隣の家へ暴れ込み殺されたことを知る。
なんという恥辱だ、これではもう自分に武士として出世する道はないと思い、死のうとしているところを、親切な小間物屋の旦那に助けられる。
店で働き始めた新五郎はまじめで評判もよかったのだが、同じ店子のお園に夢中になる。実はこのお園は新左衛門が殺した宗悦の娘。もちろんお互いにそんなことは知らないのだが、お園の方は何か感じるところがあったのか新五郎のことを嫌っている。
ある時お園が病に倒れると、それを献身的に看病した新五郎。その甲斐があってお園は全快する。
飲めない酒を飲んで酔っ払った新五郎、二人きりでいるのをあまりにお園が嫌がるので意固地になり「一晩だけでいいから同じ布団で寝てくれ」と頼み込む。
…この頼み込むところがね…龍玉師匠のあの淡々とした口調で、でも何度も何度も執拗に同じことを言うところが、かわいそうなような…でもちょっと怖いようなぞっとするような…ぞわぞわぞわ~。わーーなんだこれー。
そしてついにお園が折れて一緒の布団に入るんだけど、お園はもう嫌いでしょうがないから体を固くして背中を向けるんだよね。そうすると新五郎はそれが切ないやら腹立たしいやら居心地が悪いやら…なんだけど、これもなんかリアルというか…ぞわぞわぞわ…。
で、一回だけお願い言ってたけど、一回一緒のお布団に入ったらもうそれが忘れられなくて…あと一回…と迫る新五郎。
結局無理やり押し倒したその藁の下に刃物があってお園は死んでしまう。
新五郎はとてもここにはいられないと店の金を懐に入れ江戸を出て地方に行き武芸を磨き、そろそろほとぼりが冷めたかと江戸に戻り、昔世話をしたことがある家を訪ねるのだが、そこでだまし討ちに遭い、ついにはお縄になる。

まただよ、またこいつも、助けてもらったのに人殺ししてお金盗むんだよ。
ほんとにあれだ、下手な親切心を起こしちゃいけないんだ。むーん。
いやしかし…松之丞さんがまくらでいってたけど「死刑囚が落語をやってる」感…あるなぁ。
なんかでもほんとに龍玉師匠がこざっぱりしてるから、陰惨な噺だったり濡れ場があっても、不潔感がないんだな。

いやぁ、面白い。この会、ちゃんと毎回通って見届けたい。

柳家小満んの会

5/23(火)、関内ホールで行われた「柳家小満んの会」に行ってきた。
 
・あお馬「やかん」
小満ん「しびん」
~仲入り~
小満ん「お神酒徳利」

 

あお馬さん「やかん」
上手になってるなぁ。
余計なものは何も入れないのに笑いが起きるようになるのはやっぱり間なんだろうか。
最後ちょっと言い間違えて照れ笑いしたのがかわいかった。
 
小満ん師匠「しびん」
小満ん師匠の「しびん」は寄席で見たことがあるけど、いいなぁ。侍が素敵なんだ、侍らしくて。
しびんという物を知らなくて5両も出して買ってご満悦で宿に帰り、はさみをパチパチ入れて花をしびんに飾るおまぬけぶりと、侍らしい気高さが両立している面白さ。
楽しかった。

小満ん師匠「三方一両損
昼に鈴本に行って、少しだけ時間があったから関内で黒ビール+ポテトフライなんかやっちゃったもんだから、途中で意識を失う…。
二列目ど真ん中でほんとにすみませんでした…。

小満ん師匠「お神酒徳利」
楽しかった!
大旦那が八百屋さんの占いを信じ切って「先生」とまで呼ぶのがおかしい。人がいいから宿屋の紛失物と聞いて「だったら占ってもらえばいい」と本気で勧めるおかしさ。
八百屋さんが宿屋で占いを乞われてやけくそになるのが面白かった~。

 

 

 

鈴本演芸場5月下席昼の部

5/23(火)、鈴本演芸場5月下席昼の部に行ってきた。
 
・市坊「たらちね」
・さん若「権助提灯」
仙三郎社中 太神楽
・辰乃助「寄合酒」
・玉の輔「牛ほめ」
・小燕枝「強情灸」
・正朝「紀州
・のだゆき 音楽パフォーマンス
・さん助「道灌」
~仲入り~
・楽一 紙切り
・はん治「ぼやき酒屋」
・喬之助「初天神
・紋之助 曲独楽
・さん喬「寝床」
 
市坊さん「たらちね」
市馬師匠のところ、お弟子さん増えたなぁ。
最近市馬師匠のところに入った前座さん、滑舌が悪い人が多いんだけど、市坊さんはそんなことなかった。
伸びやかな声に伸び伸びした素直な落語。好き好き。
そしてひげが濃くて泥棒顔(←ほめてます…?)。
 
さん若さん「権助提灯」
テッパン。間違いなく面白いんだけど別の噺も聞きたいっ。
 
辰乃助さん「寄合酒」
楽しかった。与太郎の味噌のところ、大笑い。
 
玉の輔師匠「牛ほめ」
初めてかも。玉の輔師匠の「牛ほめ」。
あの口調でやられるともうおかしくってしょうがない。
いつも寄席だと決まった噺ばかりだけど、違う噺を聞けるとうれしいな。
 
小燕枝師匠「強情灸」
楽しい~。
でもこの日のお客さん、ほんとに笑わないお客さんで、なんでこんなに面白いに笑わないのー。でもブレない師匠が素敵~。
 
さん助師匠「道灌」
この重~いお客さんに「道灌」!しかも長いバージョン。
攻めてるね!と思ったけど、あえなく玉砕(笑)。
ただでさえわかりにくい笑いどころの少ない噺なのに蘊蓄の部分の説明がもやもやだし、抜けるし、言い間違いはあるし、汗は吹き出るし鼻水は吹き出るし…。ロープロープ!
 
普段やられる「雨具の断り」のところでも、友だちに何度も言い直させたわりに「提灯貸してくれ」「ようやく言いやがったな」って…おいっ。そこは「雨具」!間違えちゃダメだって!
後ろに座ってたまじめな落語ファンが「え?意味がわからない」と困惑してた…。
 
あーでも「ああっ」「大丈夫?!」「だめっ!」と心配して見ていたのに、こうして書いてみるとすごいおかしいな。ぶわははは。(←大ファンなのにさん助師匠のことを書くと失礼な感じになってしまうのはなぜなんだろう)
 
はん治師匠「ぼやき酒屋」
重いお客さんを意識してかいつもの「妻」じゃなく「ぼやき」だったけど、これがもうしみじみおかしくて最高だった。笑った笑った
 
喬之助師匠「初天神
相変わらずお客さん重くてあまり笑わないんだけど、最後までぶれずにやるって大事なんだなぁと思った。素敵。
 
さん喬師匠「寝床」
最高に面白い「寝床」だった。
お客さんが重かったからなのか、いつもそうなのか、旦那ののど慣らしが頻繁に行われて、それがもうたまらないおかしさ!
おえおえっ言ったり、ヒステリックなほどのうなりになったり、すごーーく大きな声でがなったり…しては「うーん。今日は声が出てない。」って…。すごい出てるよ!出すぎだよっ!っていうのがもうおかしすぎる。
 
また最初は優しくて丁寧だった大旦那が、誰も来ないとわかって気を悪くしてだんだん怒り出すところも、さん喬師匠と重なって見えて二倍おかしい。
 
すごいなぁ。このおもたーーいお客さんを最後こんなに沸かせるなんて。
やっぱり「道灌」じゃなく「寝床」だよな。このお客さんには。ぶわははは。

鈴本演芸場5月下席昼の部

5/21(日)、鈴本演芸場5月下席昼の部に行ってきた。

・たま平「牛ほめ」
・小んぶ「幇間腹
ひびきわたる 漫談
・辰乃助「初天神
・圓太郎「強情灸」
ホンキートンク 漫才
・小燕枝「長短」
・勢朝「紀州
・のだゆき 音楽パフォーマンス
・さん助「へっつい泥」
~仲入り~
・楽一 紙切り
・小ゑん「鉄の男(序)」
・喬之助「堪忍袋」
・世津子 曲独楽
・さん喬「百川」

たま平さん「牛ほめ」
隣に座ったきれいなお姉さんは大ウケだったけど私は全く笑えず。確かにギャグは面白いんだけどそれで流れがぷつっと切れてしまって楽しめない。変に手慣れた感じの語り口調も苦手。

小んぶさん「幇間腹
前にも聞いたことがあったっけ。小んぶさんの「幇間腹」。
なんかすごくばかばかしくてバカみたいに笑ってしまった。
一八が若旦那が最近「凝ってるもの」を挙げるときに、病気の症状を読み上げてその病名を当てる「カルテ取り」って…。
「スラッシュスラッシュドット汗」って…。なんじゃそりゃ!ばかだなー(←ほめてます)。

ひびきわたる先生 漫談
キセルやめちゃってほとんどが立ち話、それもどうということのない…。

辰乃助さん「初天神
祝ニツ目昇進!
新しい羽織を着て「初天神」。ニツ目にあがった時ってよく「初天神」をやるよね。羽織が着られるようになるから、なのかな。
初々しかったけど、結構難しい噺なんだな、という印象。

小燕枝師匠「長短」
初めて小燕枝師匠を見た時が「長短」で、なんてチャーミングなんだ!!とハートを射抜かれたのだが、ほんとに素敵な「長短」。
もうかわいいかわいい。たまらない。

さん助師匠「へっつい泥」
へっついの説明を一生懸命しているので、「へっつい幽霊」かなと思ったんだけど、やたらとその形状や重さについて説明してるので、あれ違うのかな、と。
それにしてもなんて説明が下手なんだ!
本人も「私ほんとに説明が下手で…もごもご…すみません。落語に入ったら落ち着きますんで」。

…ぶわはははは!!自覚してる?!最高!
いやほんとに、さん助師匠ってまくらの最中は声も小さいし暗いし変な間が空くしひやひやするんだけど、落語に入ると声がぱーーっと明るくなって安心するんだよ。…いや、落語に入って余計に心配になるときもたまにあるけど…ぐわははは。

そんなまくらから「へっつい泥」。
友だちの引っ越しの祝いにへっついを送ろうと友だちに言いに来た男。
しかし二人とも懐が非常に寂しい。
だったら道具屋の店先にへっついが置いてあるから、あれを盗んじゃおうということに。
道具屋の近くまで来たら、さぞ重いものを持って運んでいるように二人で声を合わせ、「ちょっと休もう」と荷物をおろすふりをしてから、今度はへっついを縄で縛って盗み出そうという、ばかばかしい作戦。

荒縄に通そうとするんだけどなかなか通せない男と、一人でへっついを持ち上げていてもうどうにもこうにも持っていられなくなった兄貴分…。汗やら鼻水やら流しながらの熱演(笑)。ばかばかしくて楽しかった。

小ゑん師匠「鉄の男(序)」
ICレコーダーやIpod秋葉原のいつものまくら。
大好きなんだけど、でも落語ファンが作ったホームページ「落語好きの部屋」(仮)への攻撃的な言葉に毎回どきっとする。
いいじゃん…素人が落語の感想を書いたって…そんなにきつく言わなくてもいいじゃん…。
実際お会いしてお話したこともあるから全然悪気がなくてすっごく面白くていい人って知ってるけど、多分そういうことがなくあのまくらだけだとちょっと苦手だったかもしれない。

そんなまくらから「鉄の男(序)」。
あーこのマニアックさとめんどくさいこだわり…。大好き!(ころっ)

喬之助師匠「堪忍袋」
喬太郎師匠がよく一門会の時、「楽屋では喬之助がキャーキャー言ってる」っておっしゃってるんだけど、ほんとにそんな感じ。明るくて軽くて大好きな師匠。

女房が亭主を口汚くののしりながら袋を縫ってるときのしぐさがとっても好き。こういう奥さんなら毎日喧嘩が絶えなくても楽しそうだな。

世津子先生 曲独楽
もともと紋之助先生が入っていたところの代演だったので、プログラムを見て「え?世津子 曲独楽?誤植?」と思っていたんだけど、ほんとに独楽を持って登場。え、ええええええ?

しかも!なんちゃってじゃなくて本格的。
刃渡りもあれば風車もあれば板の上に複数独楽を並べて「これ」という独楽だけ回すという、難易度の高いものまで。
紋之助先生のようにキレッキレではないんだけど、こ、これは…最近始めましたという芸ではないよね?!
何者?!世津子先生、もともと大好きなんだけど(って実は最初の頃はぱっとしないマジックだと思っていたのだ。でもあるとき小三治師匠の一門会でイリュージョンをやられて度肝を抜かれたのだ。それからはいつもの寄席の紐のマジックも大好きに。)計り知れないね。いったいどんな過去が!
と思ったら、twitterに世津子先生は「三増紋子」という生で曲独楽もやられているとリプをくださった方がいてびっくり。すごし!

さん喬師匠「百川」
百兵衛さんがかわいい。
今協会でやられている「百川」はさん喬師匠のが元祖なのかな。
文句なく面白かった。

*******

隣に座った方二人がさん喬師匠の大ファンのようだったんだけど、最後の方で隣の女性が「うまいわぁ」と言って連れのおじさんも激しく同意していて、私、落語を聞いていて「うまい」って褒める人ってちょっと苦手だなと思った。
確かにあんまり滑舌が悪かったりしぐさがおかしかったりすると「えええ?」と思うけど、うまいかへたかって私は見ていてそんなに大事じゃなくて、むしろその人の作り出す世界が好きかどうかということのほうが大事。

うまいなぁと思っても全然面白くないって思うこともあるし、へただなぁと思ってもひっくり返るほど面白いこともあるし。
あとそんなに面白いっていうわけじゃないけどすごく好きだなーって思うこともあるんだよね。

でもうまいから好きっていう見方ももちろんありだと思うし、面白くなきゃだめ!っていう見方もありだと思う。
いろんな見方ができるから落語って楽しい。

柳家小三治独演会 調布グリーンホール

5/18(木)、調布グリーンホールでおこなれた「柳家小三治独演会」に行ってきた。
 
・一琴「平林」
小三治「長短」
~仲入り~
・一琴 紙切り
 
小三治師匠「長短」
77歳になって新宿区から祝い金が届いたという話。
その金額が7千円だったか8千円だったか。どうなんですかね。77になった祝いだっていってその金額は。どうせ祝いだっていうならね、7千万円ぐらいもらえれば…。
でもくれない区もあるらしいんでね。新宿区は都庁もあるから…あれですかね、面目ねぇっていうんでくれたんでしょうか。
そういえば東京都の水はうまいんですってね。ほんとですか。そんなこと聞いたことありますか。
私は生まれも育ちも新宿区だけどそんな話聞いたことない。
神田川が流れてますけど、あそこの水がうまい…わけがない。あぶねぇから飲んじゃいけないとは言われたことがありますけど。
それもね、今のお姉ちゃんじゃなくて、その前の前の…石原とかがやったんですかね。それがもう胡散臭い。しかもその水、都庁の地下で売ってるっていうじゃないですか。ますます胡散臭い。
…あー…この話はやめましょう。楽しい話をしましょう。
 
私は明日なにするかといえばね、病院に行って検査です。
いろんな病気で病院行きますけどね、明日はリュウマチの検査。
50歳の時に発症してね。最初は肩が痛かったから五十肩だと思った。小沢昭一に相談したら「五十肩はある日寝ているときに寝返りを打つと、ぐわぁーーーって…のたうつほどの痛みが襲ってきて、次の日けろっと治る」っていうんでね。その日が来るのをずっと待ってたんです。
でも2年たっても5年たってもこない。ずっと痛い。
「なおんねぇぞ」って小沢さんに言ったらね「そんなに長い五十肩はない。病院に行け」って言われてね。
それならそうと最初から言えよ!
 
で、病院行ったらリウマチだっていうんです。
もうそれからずっとですね。
今は薬もずいぶんよくなってきてますし。私のはたいしたことないんです。痛いだけですから。
 
それからあさっては中学の時のクラス会ね。
まだやってるんですよ。
楽しみなのはね…あ、まさかこの中にあさってクラス会に行くやつはいないでしょうね?
男どもはどうでもいいんです。女の中にね…まだこう…胸もちゃんとこうあって、しゃんとした女性がね3名ほどいましてね…。ふふふ。その中の誰が目当てなのは…内緒です。
ま、それだけの話です。
 
…話が政治の方に行きそうになったけど、行かなくてよかった。
小三治師匠も「この話をするとみなさんも私も嫌な気持ちになる」って言っていたけどほんとにそうだから。
それで楽しい話っていうのが病院と同窓会っていうのもおかしいけど、でもそっちの話の方が聞きたかったからよかった。
そしていまも色気のある師匠がすてき。
 
そんなまくらから「気が合わないけど友だちっていうのがいる」と言って「長短」。
長さんの沈黙が長いけどにこーーっと笑ったり深刻そうな顔になったりして表情がとても豊か。
小三治師匠の「長短」、前は長さんが好きだったけど最近は短さんが好きだなー。
ってそんなに回数を見ているわけじゃないけど。
いらいらっとなりながらも長さんのこと嫌いになれない、大切な友達っていう感じがにじみ出てるからだろうか。
噺の魅力がたっぷり伝わる「長短」だった。
 
一琴師匠 紙切り
一琴師匠が紙切りをされることは聞いていたけど、実際に見たのは初めて。
思っていたよりスピードがあるしクオリティが高いのでびっくりした。
またほしい人って言った時、ちゃんと後ろの方の人にも目を配ってたのにもちょっと感動。
 
いろんな気性の人がいて、誰一人同じ人間はいない。
よく「あの人は変わってる」って言ったりするけど、考えてみればみんな変わってる。変わってない人なんかいない。
みんな違うから面白い。
なのに自分と似たような考え方の人だけ集めてそうじゃない人間はのけ者にしたりバカにする人がいる。ああいうのは嫌だ。なんで群れたがるんだろう。
 
小三治師匠のこういうところがほんとに大好き。
だからなんの接点もない雲の上の人だけど、全然遠い感じがしなくて、もしチャンスがあって話をしたらきっと気が合うんじゃないか、なんて妄想してしまうんだな。ふふ。
 
そんなまくらから「粗忽長屋」。
ほんとに落語らしい噺で大好き。
こんな勘違いはどう考えてもありえないんだけど、くまの遺体を他の人に持って行かれちゃいけない!と前に出る粗忽な男が憎めない。善意しかないんだもん。
「またあの人戻ってきちゃったよ」という面倒を見てるおじさんの弱りぶりが楽しい。
何回見ても楽しい小三治師匠の「粗忽長屋」、大好きだ。

夢のなかの魚屋の地図

 

夢のなかの魚屋の地図 (集英社文庫)

夢のなかの魚屋の地図 (集英社文庫)

 

 ★★★★

書けないときに思い出す、小説家だった父の「とにかく二時間、机の前に座ってみろ」という言葉。「誰よりも美しい妻」だった母。古本屋である夫との、驚きと嘆息に満ちた結婚生活。友人たち、食べることへの情熱、家事をしながら聞く音楽、ストーリーを考えながらする家事、仕事部屋に忍び込んでくる愛する猫。そして、書きつづけることへの決意…。直木賞作家・井上荒野の軌跡を知る、初のエッセイ集。  

面白かった。井上光晴のドキュメンタリーを見たことがあったので、余計に面白かった。
あんな強烈な人が父親だったら家族はどんなに大変だっただろうと思っていたが、案外冷静に?作家としての「父」と家庭におさまりきらなかった「父」を受け入れてるように見えた。きっとそれはお母様に依る所が大きいように感じた。
あのドキュメンタリーで、井上氏の文学教室に通う元文学少女の頭いいけれどあまり色気がないような(失礼!)女性たちが、井上氏に「女性」として認められてみな夢中になっているように見えたが、奥様もまさにそういう方だったんだな。貪るように本を読み献身的に尽くした奥様は、井上氏の才能に惚れ込んで彼の欠損も全て受け入れていたような印象を持った。実際はきっとそんな生易しいものではなかったかもしれないが。

お母様の影響なのだろう、荒野さんの食べることへの意欲が凄くて、その食い意地の張りように何度か吹きだした。読んでいていろんなものを飲み食いしたくなった。

浅草演芸ホール5月中席夜の部

5/16(火)、浅草演芸ホール5月中席夜の部に行ってきた。
 
・小蝠 漫談
・とん馬「小言念仏」
宮田陽・昇 漫才
・歌春「鈴ヶ森」
・正二郎 太神楽
・蝠丸「昭和任侠伝」(「任侠への道」)
 
伸治師匠「まんじゅうこわい
なんて楽しい「まんじゅうこわい」なんだろう。
この噺がこんなに面白いなんて!と思ったのは、夢吉さん(今の夢丸師匠)のを見た時以来かもしれない。
あれがこわいこれがこわいと言われた時の兄貴分の反応がすごく楽しそうで、さらに理由を聞いてそれがくだらないダジャレだったりするのがもうばかばかしくて楽しくて。

まんじゅうをほおばるときのうれしそうな顔とうきうき弾む(ほんとに座布団の上で弾んでる!)様子が見ていてほんとに楽しい。
たのしくなさそう~にやる前座さんやニツ目さんは伸治師匠の「まんじゅうこわい」を見た方がいいよ(笑)!
 
蝠丸師匠「昭和任侠伝」(「任侠への道」)
「私が若いころは映画の全盛時代でして、時代劇や任侠映画を夢中になってみたものです。当時人気があったのは…」と「旗本退屈男」、「遠山の金さん」の話をたっぷり。

遠山の金さんはね、二つの顔を持ってるんですよね。遊び人の顔とお奉行様の顔。それで前半はまず遊び人で悪いやつが集まってるところに行くんですよね。そこでね、肩のところから背中にかけて桜吹雪のね、彫り物があってね、それをちらっちらっと見せるんですね。で、後半になって悪者をお白州に呼び出してね、悪者たちは最初しらばっくれるんですよね。そこで「遊び人の金さんが知ってるぞ」って脅すと「誰でしたっけそれは」って悪者がすっとぼけるんですよね。

そうすると奉行様が「この桜吹雪が見えねぇか」ってね、脱ぐんですよね。
でもね、桜吹雪見る前に気付かないのかって話ですよね。顔見てわからないんですね。悪者にはね。
子ども心に、悪いことをすると記憶力が悪くなるんだなって思ってましたね。
 
旗本退屈男」は「額にね、黄色い傷があるんですよね。まるで書いたみたいにね。で、その傷がいつまでたっても直らないんですね。よっぽど傷の治りが悪い人なんですね」。
蝠丸師匠の淡々として口調でこういうことを言われるともうおかしくておかしくて大爆笑。
 
「それからね。これはあんまり話したことないんですけどね。私、映画に出たことがあるんですよ。山田洋二監督がたまたま寄席に来ていてね、この役はあなた以外に考えられないって直々に電話がかかってきましてね」。
薬師丸ひろ子が出たという映画に出演したという蝠丸師匠。この話もおかしかった~。
 
「なんであたしがこういう話をいつまでもしてるかっていうとですね…今日やる噺、短いんです」。
そんなことを言いながら、がらっと声の調子が変わって落語へ。
うわっ!かっこいいっ!
なのにまた声を戻して「あのー落語に入りましたよ」と言うのがおかしい~。ほんとにこの師匠は自由自在というか…上手なのに「うまいだろ」っていうところが全然なくて肩の力がふわっと抜けていて素敵。
 
健さんの映画を見てすっかり健さん気分になって真似をしながら帰ってくる八百屋の息子。
「私なんかも一日中高倉健さんの映画を見てると映画館を出るときは目つきが変わっててね」と話していたまくらが効いていて、その姿が目に浮かぶ。
風呂屋へ行く時、後ろから女に声をかけられて、健さん気分でかっこつけて振り向いたものの、たんに手拭いを落としていたのを教えてくれただけだったり、刺青を入れようと彫り物師のところを訪ねるも、ちょっと触られただけで痛い痛いと大騒ぎ。
やっぱりムショに入らなきゃ!と八百屋でバナナを一本盗むのだが「お前、八百屋のせがれじゃねぇか!」とあきれられる。
 
…とにかく最初から最後までばかばかしくて、でも健さんになりきる様子がさまになっていて、楽しい~。
珍しい噺を聞けて満足満足。

******
実はこの日、満員のお客さんだったんだけど、おじいさんおばあさんが多くていつも以上にざわざわした雰囲気。
私の隣に座ったおじいさんが、「寄席はこういうもんだ」と勘違いをしているのか、一緒に来ているおじいさんに「通」なところをアピールしたいのか、まくらにいちいち大声で野次を飛ばす。
「それじゃつまんねぇぞーーー」「いいぞーーーー」「〇〇じゃなきゃだめだぞーーーー」。
 
…場末のプロ野球じゃないんだから…。これがずっと続くのはとても耐えられそうにない…。帰ろうかな…と思いかけたんだけど、考えるより先に手が動き、おじいさんの腕をつかんで「シーッ」。
初めて寄席で他のお客さんに注意しちゃった。

おじいさん、酔っぱらってるわけでもなかったので、それから少し静かになってくれて、でも野次を飛ばしたくて仕方がなかったみたいで、前座さんが座布団を変えに来るたびに「いいぞーー」「がんばれーー」の野次を飛ばしていた。
 
人に注意するって本当に苦手なんだけど、素直なおじいさんでよかった…。
でもおじいさん、噺の最中には野次を飛ばせないからつまらなくなっちゃったみたいで、静かになったなと思ってみたら寝ちゃってた。
楽しみを奪っちゃってごめんね。

連雀亭日替わり夜席

5/15(月)、連雀亭日替わり夜席に行ってきた。
小はぜさんの名前があったから行ったんだけど、全員がタイプが違っていてそれぞれに面白くて満足~。これで千円なんて申し訳ないっ!
 
・ふう丈「電気家族」
・小はぜ「やかん泥」
・小辰「夢の酒」
・志獅丸「青菜」
 
ふう丈さん「電気家族」
好きだな、ふう丈さん。無駄に声が大きくてすごく明るくふるまってるけど、ほんとは案外内向的な人なんじゃないかなという気がする。
いつもの「二枚目」のまくらから、今このあたりでやっている神田祭の話。
ちょっと話し出してから「あ、落語には何も関係ないまくらですよ!片棒とか持ってねぇし!」って言ったのがおかしかった。
 
神田祭の御神輿に駆り出された話。
連雀亭に出てるニツ目に声がかかったんだけど、私なんかまさに!うってつけな人材じゃないですか!
何がって…何も考えてなくてパーパーしてるバカ。
で、集まってきたのが見事にそういうバカばかりで。
ってみんな先輩なんで差しさわりがありまくりですけど、今の発言。
 
まずは様子を見ていようっていうことになって見てると、そいやっそいやっ神輿を担いで10メートルほど進むとそこでおろして三々七拍子をやって食べ物をもらってなんか飲んでる。
またそいやっそいやっ担いで10メートルほど行ってまた飲み食い
おいおい!もっと長い距離行かないと!
そう思ったんですけど、いざ自分がやってみてわかった。これはきつい。この状態で長い距離は無理。
 
と言いながら。
イメージとしたら神輿の棒みたいなやつが肩にぐーーーっと食い込むって感じじゃないですか。
それが、私とか一緒に担いだ兄さんとか170~175cmぐらいなんですけど、棒が自分の肩よりちょっと上にあるんですよ。
だから食い込むことなくこう…手を添える?感じ?
なんかずるしてる感じがして、女の子も見てるし、これじゃいかん!と思って無理やりこう食い込ませようと棒をこう…おろしてですね、ぐいーーっと自分の肩に食い込ませるとですね…まわりの人に無駄な負担をかけてしまうという…。
 
…ぶわはははは。
ふう丈さん、おかしい~!!
まくらうまいな!さすが新作派。
「あとから出てくるのはみんな本寸法ですから、私は色物っていう扱いで…軽く聞いてください」と、「電気家族」。
 
彼女にプロポーズしようと言う息子に「それはいいが、うちの家系のことは話したのか?」と父親
なんと彼ら、血液だけじゃなく電流も流れる家系。
「話せるわけないだろ!」と言う息子に「ちゃんと話さなきゃだめだ!」と父。
二人のデートに無理やり乱入してきて…。
 
すごくばかばかしいんだけど、扇子の使い方とか激しいしぐさとかがすごく効いてて面白い。
もうおかしくてげらげら笑い通しだった。
 
小はぜさん「やかん泥」
前にも見たどろぼうのまくらで「お、やかん泥だね」と思ったんだけど、なんかちょっとやりづらそうな?ふう丈さんの新作で調子を崩したのか?
 
とちょっと心配しながら見ていたんだけど、この日の「やかん泥」がすごく面白かった!

なんだろう。親分と一緒に仕事に行けるっていうので子分が喜んでウキウキしてるのがもうすごくかわいくて。
はしゃぎっぷりがまたすごく楽しくて。
小はぜさんがどんどんのってきて、お客さんとの波長もあって…楽しかった!

 
小辰さん「夢の酒」
扇辰師匠のお弟子さんらしいなぁという印象。
丁寧で端正な落語。
お花さんがやきもちを焼いてきぃーーーってなるのがかわいらしい
若旦那が明らか鼻の下伸ばしてるからなぁ(笑)。若奥さんならやきもちやくかも。
 
そして止めに入った大旦那がお花さんの剣幕にどんどん押されていくがおかしい。
夢の中に入ってから、大旦那が出されるお酒を心底楽しみにしているのが面白かった~。
 
志獅丸さん「青菜」
初めて見る噺家さん。志らく師匠のお弟子さんなのか。
なーんにもなかった地元駅にようやく「鳥貴族」ができて、一人でふと飲みたくなり行ってみると満員のお客さん。カウンターに一人通されて大好きなバスケの試合をiPadで見ながらビール。
「おれ貴族?」とつぶやきながらも俯瞰してみるとちょっと寂しい。
そんなまくらから「青菜」。
 
「鳥貴族」で「おれ貴族?」とつぶやきながら飲む志獅丸さんと、お屋敷で感動した旦那の言動をそのまま真似する男が重なってなんともおかしい。
大きな身体だけと、押すだけではなくてちょっと引くところもあるので、そこが楽しくて笑いが起きる。
奥様が青菜があるかどうか確かめにいったん部屋を出るんだけど、これが、奥さんが真似するときに2倍楽しくて大爆笑。このためにそういうふうに作りかえたんだろうか。
とっても楽しい「青菜」だった。
 

浅草演芸ホール5月中席夜の部

5/11(木)浅草演芸ホール5月中席夜の部に行ってきた。
 
・鷹治「つる」
・圓馬 漫談
・ひでや・やすこ 漫才
・伸治「お菊の皿
・笑遊「看板の一」
・うめ吉 粋曲
・蝠丸「井戸の茶碗


圓馬師匠 漫談
漫修学旅行生がいたからかなぁ、漫談だけだった。残念…。
 
伸治師匠「お菊の皿
笑顔で出てきて本当に楽しそうに落語をされるんだよねぇ。座布団の上でふわふわっと身体が弾むように浮くのがもうかわいくて楽しくて。
最初にお菊さんが出てくるところで鳴り物が入るんだけど「あーーびっくりした」「びっくりしたなぁ」「三味線に太鼓まで鳴るんだもん」ってにこにこ言ったのがおかしかった~。
 
笑遊師匠「看板の一」
修学旅行生にロックインして、何かと固まって座っていることや席がこんなに空いてるのにそんなに後ろに座らされて…と攻撃が続くので、ひやひや。
落語はノリノリではっちゃけててすごくおかしかったけど、個人攻撃はされる方もつらいし見ていてもつらいからやめてほしいなぁ。
 
蝠丸師匠「井戸の茶碗
笑遊師匠のことを噺に何回か登場させて「ありゃひどい」とつっこむのがおかしくて大笑い。
そういえば前にも同じようなことがあったなぁ。確か末廣亭で蝠丸師匠がトリの時に、桟敷席の団体客がお弁当を食べているのを笑遊師匠がいじり倒して…あとから出てきた蝠丸師匠がさんざんそれをけなしたんだった。けなしても実際は仲がいいことも伝わってくるし全然嫌な感じじゃなくて、すごくほっとしたんだった。
 
蝠丸師匠の「井戸の茶碗」はこれで二回目だけど、清兵衛さんが正直な人だけれどいかにも「庶民」らしく、お侍さん二人とくっきり身分の違いが出ている。
千代田様の暮らし向きは厳しいんだろうねと高木氏に言われると、遠慮なくパーパーその貧乏ぶりについて語ったり、千代田氏に向かって五十両受け取りなさいよと言う時も「ここのお宅は我が家よりひどい」と言ったり。
落ちぶれてしまってもプライドだけは高い侍と、貧しいけれどそれを受け入れて気楽そうな屑屋さんと、どちらの方が幸せだったんだろう、なんてことを思いながら、あっさりしていて楽しい「井戸の茶碗」だった。

 

 

 

ゼロヴィル

 

ゼロヴィル

ゼロヴィル

 

★★★★

「映画自閉症」の青年ヴィカーは、映画『陽のあたる場所』のモンゴメリー・クリフトエリザベス・テイラーを、自分のスキンヘッドに刺青している。フィルム編集の才能が買われ、ハリウッドで監督作品を撮ることになるが…。『裁かるゝジャンヌ』、『めまい』、『ロング・グッドバイ』…映画と現実が錯綜する傑作長篇!

 映画自閉症の青年が主人公のこの物語は前半はエリクソンらしくもなく?時空間がぐにゃぐにゃになったりしない普通の展開なので、戸惑った。
短めのセンテンスで印象的なシーンを重ねていくのは映像的で、ヴィカーと一緒に次々映画を見ているような感覚。

ここに出てくる映画の内容を知らなくても小説自体は楽しめるけど、知っていたらより楽しめることは間違いない。

わかりあえそうでわかりあえない人との出会いと別れを繰り返してきたヴィカー。
彼の本当の気持ちを私は理解できた気がしないのだが、最後モンゴメリーと対話できたヴィッカーはしあわせになれたのだろうか。

桃月庵白酒 25周年記念落語会 銀座2DAYS 2日目

5/9(火)、博品館劇場で行われた「桃月庵白酒 25周年記念落語会 銀座2DAYS 2日目」に行ってきた。

・はまぐり「つる」
・白酒「突き落とし~アニマルハウス発端~」

~仲入り~
・ヘルシー松田 パントマイム
・白酒「大山詣り
 
はまぐりさん「つる」
ご隠居に「粗茶」をすすめられて飲んだ八つぁんが「なるほど、粗茶だ!」と叫ぶのがおかしい。
隠居の噂が出てましたよと目の前にしてパーパー悪口を言うのも面白かった。
 
白酒師匠「突き落とし~アニマルハウス発端~」」
開口一番「〇〇病院はクソ」と毒を吐く白酒師匠。
血痰が出たので慌てて〇〇病院に駆け込んだのだが誤診をされて、もらった薬を飲んでもちっともよくならない。
別の病院に行って検査をしてもらうと「肺炎」と診断され、それからようやく回復に向かったらしい。
 
そういえばうちの次女ちゃんも保育園時代急性肺炎にかかったことがあったんだけど、熱もそんなに出なかったから「ただの風邪」と診断され、でも一向に良くならないしぐったりしているのであれこれ調べて「肺炎じゃないか」と別の病院に行って調べてもらってわかったことがあった。
あの時は入院して点滴受けてようやくよくなったんだよなぁ…。
白酒師匠もおもしろおかしく話していたけど、相当まいっただろうなぁ…。
15周年の独演会2Days、いざとなったら休んで弟子に出てもらおうと思った、なんて言ってたけど、必死になおしたんだろうな。
というかおそらく完全な状態ではなかったんだろうけど、ちょっと弾けきれてないな、ぐらいにしか感じなかったから、すごい。
 
この日のテーマは「アニマルハウス」。
おそらくこの日来ていたお客さんは特に映画に詳しいというわけではなく、白酒師匠の独演会を見に来ていた人が多かったんだろう。
かく言う私も「アニマルハウス」見たことないし、白酒師匠があれこれ名前を出してもほとんど「???」で申し訳ない。
 
大学生の劣等生集団が優等生集団にぼこぼこにされて、あの手この手を使って最終的には勝つという話。
劣等生集団たちはとにかくもうどうしようもないんだけど、でもとんでもない不良というわけじゃなく、ただまあ下の方にいる連中。
その人たちがとことんバカをやって暴れまわるのが爽快なんだ、と白酒師匠。
 
僕も大学時代は落研なんか入って、いわゆるオールラウンドサークル(この言い方懐かしい!)と比べるとあきらかに底辺グループで、僕はいつも甚五郎と部室に寝泊まりしてくすぶってたんだけど、俺らだってテニスの一つもやろうじゃないか!とあるとき落研でテニス合宿に行ったことがあったけど、浴衣を尻っぱしょりして「こんなかな」って適当にボールを打ち合って、コートを管理しているやつに白い目で見られてこともあった。
ああいうのもスケールは違うけどやっぱり同じような精神。だからこそ「アニマルハウス」を見て爽快に感じるんでしょう。
 
落語にもそういう噺っていうのがあって…といって「突き落とし」
金のない男たちが集まって吉原に行ってどんちゃん騒ぎをしてお金を踏み倒して帰ってくる方法を画策。
兄貴分が計略を立て、それをみんなで実行する、というただひたすらにばかばかしい噺。
初めて聞いたんだけど、こういうバカバカしい噺大好き。
そしてサゲがちゃんと「アニマルハウス」につながってた!
 
ヘルシー松田先生 パントマイム
急きょ決まったゲスト。
いやもう一目見てハートを射抜かれたわー。好き好き。
完成度が高いもの、そうでもないもの(笑)、「そっち?!」という驚きと、じわーとくる感動と。
楽しかった~。また見たいなぁ。
 
白酒師匠「大山詣り
ちょっといつもの調子じゃないのかな、というのを感じた一席。
でも嘘をつくととたんに擬音が多くなる熊がおかしい。

「くまの野郎には日ごろからバカにされてなんか仕返しをしてやりたかったんだよ」
「決めたことだから頭を剃られるのは仕方ないけど、何も置いて行くことはないじゃねぇか。」
この台詞に先達さんに内緒でこっそり頭を剃って置いてけぼりにした二人の男の気持ちと、あれほどまでに怒ったくまの気持ちが出ていると思った。

集められたおかみさんたちが実にかわいらしくておかしくてぱーーっと場面が明るくなる。
こういうところが白酒師匠の強味だなぁ。ただただおかしいもの。