ある婦人の肖像
★★★★★
舞台は19世紀。アメリカ生まれの美しい娘イザベルは両親を亡くし、イギリスの親戚で裕福なタチェット家に身を寄せていた。利発なイザベルは周囲の人々に愛され、貴族の求婚者も現れた。アメリカ時代の恋人である青年実業家キャスパーも、海を越えてイザベルを追って来た。だが、夫に従属するだけの古風な結婚を嫌うイザベルは、一生独身でも構わないと言い放つ。
面白かった!
主人公のイザベルを最初のうちはあまり好きになれなかった。
出てくる登場人物たちも一癖もふた癖もあるような人物ばかりで、ストーリー自体にも特に魅力を感じることもなく、上巻は少し退屈に感じるくらいだった。
でも中巻から俄然面白くなってきて、もう夢中になって読んだ。
最初は好きになれなかった主人公のイザベルも、彼女の成長とともにその生真面目さや頑なさも含めて愛しく思えてきたし、最初はただの皮肉屋にしか思えなかった従弟のラルフも、ハンサムな貴族だけれどなにかこう決め手に欠けるウォーバトン卿も、頭でっかちでおせっかいなだけに思えた親友のヘンリエッタも読んでいるうちに大好きになっていた。
そして…前途有望な彼女を変えてしまったオズモンドと胡散臭い!と思っていたマール夫人さえも(この二人の食えないことといったら…!)、もうほんとに自分の古くからの知り合いのように生き生きと身近に感じられた。
これが1881年の作品だというのだから驚いてしまう。
時代背景や倫理観など明らかに異質に感じる部分もあるが、それでもなんというかとても生々しく人間が描かれていて躍動していてそこにたまらない魅力を感じる。
これが文学の力なのだなぁ。普遍的なものが描かれているから決して古びない。
読めてよかった。満足。