りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

池袋演芸場5月上席夜の部

5/8(月)、池袋演芸場5月上席夜の部に行ってきた。
 
・ひでや・やすこ 漫才
・鯉栄「扇の的」
・可龍「粗忽長屋
宮田陽・昇 漫才
・圓馬「小言幸兵衛」
 
鯉栄先生「扇の的(上)」
砕けたまくらで笑わせて、話に入るとがらっとテンションが上がる。このギャップがたまらない。
たたたたたーっとたたみかけたあと、「これ、何言ってるかわからないでしょ」とぶっちゃけて説明してくれるのもいいなぁ。
せっかくだから最後まで聞きたかったけど途中まで。ちょっとまくらが長かった?それともいつも前半で終わらせるのかな。
 
可龍師匠「粗忽長屋
現代的な感じがするんだよな、可龍師匠の落語って。そこは好き嫌いが分かれるところなのかもしれない。
しょっちゅう聞いてる噺なだけに新鮮に感じた。
 
宮田陽・昇先生 漫才
ネタが一新してる!さすがです!
 
 
圓馬師匠「小言幸兵衛」
笑点のまくらはテッパンネタなのかな。別にやらなくてもいいのに…という気がしないでもないけど、「セコな仕掛け」っていうところがいつもツボで吹き出してしまう。こういうセンスが好き。
 
「小言幸兵衛」はそんなに好きな噺じゃないけど、楽しかった!
小言を言い通しの幸兵衛さんとそれに対してべらんめぇな豆腐屋さん、丁寧な仕立て屋さんの対比が楽しい。
妄想がどんどん激しさを増してきて、歌を歌ったり芝居を始めたり…。それが圓馬師匠の独特なリズムと相まってめちゃくちゃ楽しい

淡々としているっていうんでもなく、でもメリハリがすごーくききすぎているのでもなく、声とリズムと調子が本当に心地よくてほどがよくて楽しい。

時々、独自のクスグリと毒がちょこっと入るのが楽しかった!
 

みうらじゅんと宮藤官九郎の世界全体会議

 

みうらじゅんと宮藤官九郎の世界全体会議

みうらじゅんと宮藤官九郎の世界全体会議

 

 ★★★★

日本サブカル界の叡智が人類を代表して交わした“知と恥”の集中論議。その全記録がここに―。全30テーマを収録。  

基本的にバカバカしいんだけど時々「おおっ」っと胸を打つ言葉が出てきたりするので油断できない、この二人の対談。
とんでもないワードが大きめのフォントで出てきたりするのでそちらも油断できない(笑)。

成功しても相変わらず下らなくてB級感を漂わせているクドカンが好きだ。
性欲が衰えてきてからさらに新たな扉が開くとか、もうモテようという欲がなくなったと言いながら、そうするともしかしてモテるようになるんじゃね?と期待するみうらじゅんが好きだ。 

前作同様、まじめに男のエロを語り、まじめにふざけてる。

連雀亭GW特別興行 第一部

5/2(水)、連雀亭GW特別興行 第一部に行ってきた。

・かゑる「都々逸親子」
・昇々「つる」
・正太郎「権助魚」
・まめ平「紙入れ」
~仲入り~
・羽光「教科書の主人公」
・昇吾「ちりとてちん
・竹千代「五重の答」
・三朝「愛宕山

かゑるさん「都々逸親子」
twitterでつぶやきを見ていて、多分苦手だろうなぁと思っていたら案の定苦手だった(笑)。
つぶやきを見て「いいな」と思ったからといって落語が好きとは限らないのだが、つぶやきを見て「うーん…」と思ったらたいてい落語も好きじゃないんだなぁ…。
この日は出演者が多くてまくらが短めだったのでちょっと助かった。


昇々さん「つる」
なんでいつもああいうしゃちこばった喋り方なんだろう。
昇々さん、嫌いじゃないけど、あの口調で古典はちときつい。


正太郎さん「権助魚」
うまいし面白いと思うんだけど、好きじゃないんだよな。
でもめざしの説明には爆笑した。藁を通していてていてて言うのがおかしかった。


昇吾さん「ちりとてちん
今日は私、鬱入ってますから…次に出てくる竹千代さんが明るい人で明るい落語やりますから、こういう人間もいてもいいでしょ、ってことで、って…。
そういう態度ってどうなのよ。いやべつに暗くても鬱でもいいけど…客を引かせるようなことを言って、誰が得をするんだろう。なぞ。


竹千代さん「五重の答」
前に出た羽光さんと二人、落語会の二大エロ担当みたいな言われ方をしてしまっていてやばい。今、検索で「竹千代」って入れると続けて「女好き」って出てしまう。そのせいで自分はよく「女好きなんでしょ?」と言われるんだけど、誰でも人からよく言われることってありますよね。
そんなまくらから「五重の答」。これがすごく面白かった。

お見合いパーティの席で、名前のことや職業のこと、誰からもまったく同じことを言われるのが耐えられない!と思った女が、同じことを答えなくていいように洋服によく聞かれることの答えを貼りつける。そして「それはよく言われる」のポーズと、「それはめったに言われない。ナイス!」のポーズ、この二つだけで会話をする。

すごくバカバカしいんだけど、主人公がすごい女性っぽいのと、男が軽薄な男~って感じがおかしくてツボだった。


三朝師匠「愛宕山
日程が合わずお披露目に行けなかったので、こうして見られて嬉しい。
愛宕山」は三朝師匠の真打が決まってから落語協会で行われている会で見たことがあって、「あ、きっとお披露目でやるんだろうな」と思っていたから、どんぴしゃり。
一八の調子の良さとテンポのよさで気持ちのいい高座だった。

池袋演芸場5月上席夜の部

5/2(火)、池袋演芸場5月上席夜の部に行ってきた。
この間の上野広小路亭ですっかり客いじり恐怖症に。仲入りが寿輔師匠だったので、仲入り後に入場。


・ひでややすこ 漫才
・鯉栄「羽黒の勘六」
・可龍「つる」
・コント青年団 コント
・圓馬「花見の仇討」


鯉栄先生「羽黒の勘六」
貞寿先生のお披露目に通って今までになく大勢の講談師を見て、改めて鯉栄先生を見て思う。
…とても男らしい、と。ここまで男らしい講談師は男の中でもそうはいない。
胸のすくような啖呵に大きな音で叩く張扇。かっこよかった~。


可龍師匠「つる」
「つる」をこんなに面白くできるって可龍師匠ってすごい。笑った。

圓馬師匠「花見の仇討」
せっかくだから?違う噺が良かったけど、二回目だからじっくり見ることができて、それはそれでよかった。
圓馬師匠ってすごくリズムがよくて、それが後打ちっぽい…軽く前に出てからぱっと後ろに下がる、その後ろの方にリズムが乗ってる感じがあって、そこが私は聞いていて気持ちが良くてしょうがない。
声もいいしリズムもいいし、だけどもちろんそれだけじゃなくて、明るくて軽くて端正でちょっと毒があって…。
私はこの師匠の落語のどこにこんなに惹かれるんだろうと、しみじみと見つめてしまった。

好きな人のどこが好きかをあれこれ考えるのってほんと幸せだなぁ。
上席、あと二回ぐらい行けるかな。

ふたつの海のあいだで

 

ふたつの海のあいだで (新潮クレスト・ブックス)

ふたつの海のあいだで (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★

イタリア南部、ふたつの海を見下ろす小高い丘に、かつて存在した“いちじくの館”。主の血を引くジョルジョ・ベッルーシは、焼失した伝説の宿の再建を夢見ていたが、ある日突然、逮捕される。身勝手な祖父ジョルジョの言動に反発を覚えながらも、次第に心を動かされていく孫フロリアン。数世代にわたる登場人物の声により、この土地の来歴を説き明かす、スリリングな長篇小説。  

以前読んだ「風の丘」もそうだったが、なかなかにバイオレンス。太刀打ちできないほどの巨大な暴力…これはゴッドファザーに通じるものがあるかも。

積み上げてきたものが暴力によって粉々にされる。しかし何度壊されても主人公フロリアンの祖父ジョルジョはくじけない。暴力に暴力で応酬したり投獄された後もまた「いちじくの館」の再建に乗り出す。
そんなジョルジョのことを「狂人」と思う人もいれば、「英雄」と思う人もいる。

しかしこの物語の魅力はそういう力強い部分だけではない。
大人になってもまだ父親ジョルジョの関心をひきたいフロリアンの父クラウス。
またジョルジョから見れば友情に熱いハンスもフロリアンから見れば身勝手で情がない、親になりきれなかった男でしかない。

善人悪人と両断することはできない人間の複雑さも描かれていてそれがこの物語の厚みを与えている。

好きなタイプの物語ではないけれど面白かった。

第十二回落語協会大喜利王選手権

4/29(土)、池袋演芸場で行われた「第十二回落語協会大喜利王選手権」に行ってきた。
開場前の16時45分頃に行ってみるとすでにものすごい行列が。ひぃーー。前の方の方たちっていったい何時から並んでいたんだろう。こここれは夏の小三治師匠のトリよりもすごいのでは。人気なんだねぇ、文蔵師匠の大喜利王選手権。
結局席はかろうじて一番後ろに座ることができたけど、席取りの剣幕にちょっと心が折れかける、るるる…。

Aチーム、Bチーム、Cチームの3つに分かれて、問題は3問。これって全部文蔵師匠が問題も考えてきてるんだよねぇ、すごい。

印象に残ったことをつらつらと。

・扇遊師匠が大喜利に出るっていうのも凄いけど、まったく肩に力が入ってなくてマイペースなところも素敵~。時々答えに下ネタが入ったりするところもいいなぁ。
・さすがに扇遊師匠をハリセンでたたくわけにもいかないので、そのたびに文蔵師匠の隣に座った南湖先生がばしばしやられて痛そう~。
ジョーカーを引いたのでA~Cチームすべてに参加の花飛さん。落語やつぶやき@twitterは苦手なんだけど大喜利はほどがよくて面白かった。文蔵師匠も「お前、面白いな」と何回も言っていた。そして最終的に優勝!
・楽一さんが参加?!って驚いたんだけど、なんとお題に紙切りで答えるという新しいパターン。これがすごくいい!そもそも参加する心意気にぐっときちゃうんだけど、決勝の時は扇遊師匠にスケッチブックを持たせちゃったのも面白かった。ただものじゃない。

米粒写経のおふたり。サンキュータツオさんのいけすかなさと、一平さんのほどのよさのギャップがすごい(笑)。
・丈二師匠はさすが優勝経験があるだけあって、時々「うおっ!」っという面白い回答。やはり新作派は大喜利に強い。
・百栄師匠は回答が早いし回答数も多いししかもどれも面白い。才能があふれだしちゃってる。
・たまさんも頑張ってた!でもちょっと頭がよすぎる回答で、ショート落語には向いてるけど大喜利向けではない?
・ぴっかりさん、攻めてた(笑)。


・玉の輔師匠の徹底した下ネタ。面白いんだけどそのたびに文蔵師匠の隣に座ったさん助師匠がハリセンで叩かれるので、途中から憎くなってきて「もうやめれーー」と心の中で叫んでしまった。
・心配でしょうがなかったさん助師匠はちゃんと答えてた!っていうか、なんかすごくいい味出してて決勝にも残ってすごい!でもハリセンで叩かれると、覆うもの(髪の毛)がないだけに、痛そうで痛そうで…。それだけが見ていて辛かった。
・一之輔師匠はさすがにソツがない!テングと言われてもそんなの痛くもかゆくもない太さが素敵。ちゃんとツボを押さえていて安定した面白さ。
・一之輔師匠が抜擢されて真打になったことをいじられてるとき、さん助師匠が「私、抜かれました!」と叫ぶと、文蔵師匠が思わずさん助師匠をハグ。笑った~。
・きく麿師匠の変な中国人みたいな口調が最高におかしかった。決勝をやってる時も客席側の扉から顔を出したりして、楽しい~!

次回はもっと広い会場でもいいかも。
前売りを買って座れないのはちょっと悲しい。長丁場だからゆっくり座って見たいよね。

一龍斎貞寿 真打昇進披露興行 番外編

4/29(土)、お江戸日本橋亭で行われた「貞寿真打昇進披露興行~番外編~」に行ってきた。
まさか講談のお披露目に三回も通うことになるとは。我ながらびっくり。
でも貞寿さんが本当にチャーミングだし、出てくる先生方も本当に豪華だし、なによりもあたたかくて朗らかな雰囲気に満ち溢れていて、ついつい行きたくなっちゃうんだよなぁ。

 

・いちか「渋川伴五郎の頓智」
・南左衛門「赤穂義士銘々伝 赤垣源蔵の婿入り」
・愛山「就活物語」
・貞心「次郎長と伯山」
~仲入り~
・口上(愛山·貞寿·貞心·南左衛門)
・貞寿「赤穂義士銘々伝 赤垣源蔵徳利の別れ」


南左衛門先生「赤穂義士銘々伝 赤垣源蔵の婿入り」
自分が弟子入りした時、師匠は毎日一升酒を飲んでいて、夜飲んだ酒も午前中ですっかりなくなって、午後からまた元気に飲みだすという塩梅。
自分が初めて師匠のもとにおけいこに伺ったとき、午後の1時ぐらいだったんだけど師匠が「お前、稽古の前に酒を飲みたい?それとも稽古が終わってから飲みたい?」と聞いてきた。初めてのことなので「さ、酒?」と驚きながらも「稽古が終わった後にいただけましたら…」と答えると、師匠が明らかに機嫌が悪くなってしまった。これはいかん!と思い「で、では稽古の前に」と言うと「そうかそうか」ととたんにニコニコ顔になり、最初はビール、次は日本酒。あてに出てきたのがインスタントみそ汁。え?汁物?と驚いていると、師匠は味噌汁のわかめを食べてはちびり、お麩を食べてはちびり。自分も真似しながらやっているとそのうち「なんかもう少し食べたいな。じゃ三平のポテトチップスを食べるか」。
三平というのは師匠宅のチワワなんだけど、いったいどうしたらこんなにチワワが大きくなるのかと思っていたら、なんとこの三平、ポテトチップスが大好物。毎日あげてたらこんなになった、と。その三平のポテチがしけないように缶に入っているので、それをつまみに酒。
私の初日の稽古は講談じゃなく酒の稽古でした。

そんな酒飲みの師匠の弟子で自分も酒飲み。
で、貞寿さんが私のところに稽古に来たのが7年前。女流の講談師に稽古をつけたことはなかったので緊張して弟子を全員家に呼び寄せて、弟子がまわりをぐるっと囲んだ中での稽古。
そのあとに親睦もかねて飲みに行くことにしたのだが残った弟子二人が下戸。4人で飲みに行ったのだが、弟子たちはむしゃむしゃ食べてお腹いっぱいになったらぼーーっとしている。
何かいろんな話をしてほしかったから呼んだのに!
一方貞寿さんは酒が好きで話題も豊富で気が付いたら二人で飲んで話をしていて、なんだ、弟子なんか呼ばなくても良かった!

いやぁもう楽しい楽しい。話しはじめた途端に「大好きだーー!」と思った。
表情豊かで明るくて朗らかで優しくて。お稽古に熱心に通ってきて人懐こくてお酒の付き合いもいい貞寿さんをかわいがっているというのが伝わってきて、幸せな気分になる。
トリで貞寿さんが「赤垣源蔵徳利の別れ」をやられるそうなんで、話がつくのはあまりよろしくないですが、源蔵の人となりがわかってよりトリネタが映えることを期待して…と「赤穂義士銘々伝 赤垣源蔵の婿入り」。

赤垣十内の娘のおとくは、背が低くてずんぐりむっくりで「カボチャ娘」と陰口をたたかれていて、お婿さんが来ない。父の十内はそのことに胸を痛め、本人も気にして家に籠っている。
桜の季節になりお花見にでも出かけろと勧められ嫌々ながらでかけたおとく。帰りに酒に酔った浪人者にからかわれ、剣術の心得もあったのでかんざしで応戦すると、頭に血が上った浪人が剣を抜いた。なすすべもなくいるところを、通りかかった若侍が助けてくれた。これが塩山源蔵。
それ以来彼に恋い焦がれやせ細ってきたおとくを心配し事情を知った十内は、出入りの刀屋の与平に間に入ってくれるように頼む。
まとまらなくても10両、まとまれば50両いただけると聞いた与平が脇坂家を訪ね、兄に話をすると…。

もちろん初めて聞いた話だったんだけど、面白い!まるで落語のよう。
そして上方落語が聞きやすいように、上方講談ってすごく聞きやすいんだなぁ。笑いっぱなしで楽しかった~。


愛山先生「就活物語」 
顔も怖いしきっと堅~い講談をされるんだろうなと思っていたら全然そんなことはなくて、まくらも楽しいし、話もなんと新作!
毎日新聞をやめて就職活動の指南をしている中田先生から聞いた話を講談にしたという実話講談。
ちょうど長女が就職活動中ということもあって興味津々で聞いていたのだけれど、いいなぁ…なんかすごくよくわかる。そうだよなぁ、結局は人間を見ているんだよな、企業は。そうであってほしいという想いもあるし、長年勤め人をしている側からすると結局はそこが一番肝心なんだよなとも思う。

まくらでサラリーマン川柳(「サラリーマン やる気はないけどいる気はある」)を紹介されたんだけど、そうそう!わかるわかる!と笑ってしまった。
楽しかった!
きっと苦手と思い込んでいた愛山先生、こんなに面白いとは。もっと見てみたくなった。


貞心先生「次郎長と伯山」
講談師・京伝が次郎長宅を訪れる。着ている着物もぼろぼろで見るからにおちぶれている。博打が好きで身をもちくずしていたのだが、次郎長のことを書いた本が出たことを知っていてもたってもいられずに訪ねたのだという。
それを聞いた次郎長が、今からでも遅くないから、私のことを講談にして私の前でやってくれ、と言う。京伝は「必ず作ってみせます」と約束をする。

それから一生懸命、次郎長のことを講談にしてみるのだが、芸があまり良くないものだからやってみてもお客の反応も良くなくて、出番ももらえず、下足番になりさがってしまう。
そのころ売出し中だった伯山という講談師のもとを訪ねた京伝。自分が書いた次郎長伝をどうか作り直して高座にかけてくれないか、ともちかける。
言われた伯山は快諾し、自分の家の近くに京伝の家を借りてやり何かと面倒をみてやりながら、次郎長の話をあれこれ聞くのだが、ある時女ともめ事を起こした京伝は面目なかったのか書置きを残していなくなってしまう。

それから何年もが過ぎ、次郎長伝を高座でかけるようになった伯山。
熱海で落ちぶれた京伝と再会し、京伝の前で新しい次郎長伝をかける。そして宿の主人に京伝の世話をしてやってくれと金を渡すのだが、しばらくすると京伝は亡くなってしまう。

淡々としたところと、息もつかせぬ迫力のあるところの対比が見事で、じーーーっと集中して聞き入ってしまった。
貞心先生、素敵だなぁ…。特に最後、伯山が次郎長伝を読み始めるところでは、鳥肌がぞわぞわ~。すばらしかった。


真打披露口上(愛山先生:司会、貞寿先生、貞心先生、南左衛門先生)
司会の愛山先生がちょっとブラックで、でも愛嬌があるっていうか愛情があるっていうか…すごく楽しい口上で。
南左衛門先生も自分の弟子のように貞寿さんをかわいがっているのが伝わってきて。
それを聞いて貞心先生がちょっと張り合って見せるのがまたかわいくて。

すごく楽しくて素敵な口上。
三回行ったけど三回ともカラーが違っていて素晴らしかったなぁ。


貞寿先生「赤穂義士銘々伝 赤垣源蔵徳利の別れ」
この三人が口上に並ぶってすごいでしょ!!と貞寿さん。今回の番外編を心の底から楽しんでいるのが伝わってくる。
好かれたかったら好きになるのが一番なんだなぁ、と貞寿さんを見ているとしみじみ思う。こんなに手放しで尊敬して好きでいてくれたら、そして講談が大好きで熱心で稽古ではすっぽんのように食いついてきてくれたら…そりゃこわもての先生でも思わずにっこりしちゃうよなぁ。

貞心先生から二ツ目になった時に教えてもらったという「赤穂義士銘々伝 赤垣源蔵徳利の別れ」 。
今自分ができることを精いっぱいやろうという気合十分で、迫力があって、でもしんみりと悲しくて…とてもよかった。泣いてしまった。


みんながにこにこ顔の口上。

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月刊少年ワサビ 第97号

4/28(金)、らくごカフェで行われた「月刊少年ワサビ 第97号」に行ってきた。


・わさび「道灌」
・わさび「メイドのクイズ」(神対応ミケランジェロ、敗者復活戦)
~仲入り~
・わさび「転宅」


わさびさん「道灌」
この見た目のせいかよく人に軽く見られるというわさびさん。「苦労知らずでしょう」と言われることも多いし、後輩にもなめられている。
木りんさんという後輩がいるんですけど、背が2mあって顔もハンサムで能年ちゃんに似てる。
この間楽屋で一緒になったら「兄さん、BS笑点出てますよね。すごいですね」と言われたので謙遜の気持ちで「あー運がよかったんだよ」と答えたら「そうっすね。あにさんってほんとに運がいいですね」。
え?なに?その言い方?いやでも別に嫌味な気持ちで言ってるわけじゃないのか、と思っていると「ほんとに運がいいですね。運だけは」とダメ押し。

あと協会ちがいますけど宮治さん。この人は年季は結構下なんですけどなにせNHKの新人演芸大賞取ってますから、いつもあからさまになめてるなぁって態度なんです。
この間もとある会で一緒になって、私は前方で彼はトリ。出番が終わった私に「今日はどんなお客さんですか」と聞いてきた。あら珍しやと思い「よく笑って下さるお客様だよ。どちらかというとわかりやすい噺の方がうけるかんじ」と答えると「初天神にするか蒟蒻問答にするか迷ってるんですよ」と言ったあとに、「うーん…でもあれだな、初天神は…蒟蒻問答は…うーん」と自分の世界に入ってしまった。
言ったタイミングも悪かったんだと思いますけどそこで私が「蒟蒻問答より初天神の方が…」と言ったら、宮治さんが「はぁ~?!」。
はぁ?ですよ。心底バカにしたような顔つきで。ほんとにもう…。

…ぶわははは。
わさびさんがそういう態度をとられるってすごくよくわかるなー。見るからに気弱そうだからなー。でもわさびさんって実はすごくスペックが高くて、ああいう大喜利でも抜群にセンスがいいし、気遣いもすごくできるし、一本筋が通ってるんだよね。
なめちゃいけない。

そんなまくらから「道灌」。
特に何か大幅に変えたりはしてないオーソドックスな「道灌」で、なぜ今道灌?とちょっと思いながらも、柳家らしい道灌であった。


わさびさん「メイドのクイズ」(神対応ミケランジェロ、敗者復活戦)
毎月三題噺を作ってくるっていうのをずっと続けているのもすごいし、それが毎回ちゃんと「聞ける」レベルのものになっているっていうのもすごい。
メイドカフェメイドさん。いつも激しくダメ出ししてくるお客さんにへこみがち。
あの人は開店当初から来ていて、歴代のメイドさんのいいところだけ(マイさんの美貌、エリちゃんのアニメ声、シズさん(60歳)の大人の対応)抽出した理想のメイド像が頭の中で出来上がってしまっているから、それと比べるとどうしても文句が出てしまうんだよ、と店長。
そうだ。彼が答えられないようなクイズを出してヘコませればプライドが高いから来なくなるかもしれない。
と考えて、ミケランジェロのクイズをつくって…。

最初の客は初めてで素直、二人目はオタクで変な感じ、三人目がその問題のダメ出しする常連。この造詣がすばらしい(笑)。特にオタクの変な感じがすごくリアルでおかしかった!


わさびさん「転宅」
ネタ卸しとは思えない完成度。
泥棒が色仕掛けされたとたんにかっこつけだすのがたまらなくおかしいし、お菊さんはちゃんと色っぽい。
そこかしこにわさびさんっぽさがちりばめられていて感動。

しのばず寄席 夜の部

4/28(金)、「しのばず寄席 夜の部」に行ってきた。

・伸力「新聞記事」
・羽光「教科書の主人公」
・はらしょう ドキュメンタリー落語「いらっしゃいまピー」
志「試し酒」
・一乃「巴御前
・よし乃 太神楽
・南なん「ねずみ」


羽光さん「教科書の主人公」
面白い!
算数の教科書でおなじみの主人公が居酒屋で教科書の主人公たちと同窓会をするという新作。
ペンを指してわざわざ「Is this a pen?」とか、逃げ出した弟を5分遅れで追いかけたりとか、教科書の例題に感じる細かい「はぁ?」のオンパレードに大笑い。

はらしょうさん「いらっしゃいまピー」
前から気になっていたはらしょうさん。好きか嫌いかどちらかだろうなぁと思っていたんだけど、面白い!好き!
「ドキュメンタリー落語」といって実際にはらしょうさんが経験したことを話してるだけなので、他の新作派の方よりも量産できるのだ、とおっしゃるはらしょうさん。
いやでもそうはいうけどちゃんとそれを「笑える」ものにするっていうのはやっぱり大変なんじゃないかな。

はらしょうさんが地元で通うお店の変な店員さんの真似をしつつ、自分が桜餅を販売するバイトをした時のことをリアルに伝える「いらっしゃいまピー」。
笑った笑った。いるいる、そういう店員。またそれを思いっきり激しく再現するのがおかしくておかしくて。


南なん師匠「ねずみ」
ああ、かわいい、南なん師匠の「ねずみ」。
甚五郎は穏やかで優しくて、宿屋の主人は困窮しているけどどこか悠然としていて、子どもは健気でしっかりしていてかわいらしい。

初めてねずみを見た二人の村人。
「うごいた」「木で彫ったねずみがうごくわけがあんめぇ。お前酒の飲みすぎで動いて見えるんだろう。かくかくかく…」

「ねずみやに泊まらなきゃなんねぇって…おらんとこのかかさま、焼きもちやきだよ。ねずみやに泊まったって言っても信じてくれねぇだよ。悪さぶったんだろうってお仕置きされるだよ。かかさまのお仕置き…こわいだよ」

人のいい村人の姿が浮かんできて、思わず顔がほころんでしまう。

そして動かなくなってねずみに甚五郎が言う台詞「私はお前さんを彫った時は世間のことは全て忘れて魂を打ち込んで作ったつもりだよ」という台詞。なんかとてもじーんとくる。

この間ラジオで聞いて、また南なん師匠の「ねずみ」を見たいなぁと思っていたので、ドンピシャだった。楽しかった。

人生の段階

 

人生の段階 (新潮クレスト・ブックス)

人生の段階 (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★

誰かが死んだことは、その存在が消えることまでは意味しない――。最愛の妻を亡くした作家の思索と回想。気球乗りは空の高みを目指す。恋人たちは地上で愛しあう。そして、ひとつに結ばれた二人が一人になったとき、遺された者はもう生の深さを感じられない。―― 有能な著作権エージェントにして最愛の 

 一部は気球にとりつかれた人たちの史実、二部は一部に出てきた人たちのロマンス(フィクション)、そして三部では最愛の妻を失った作者の想いが綴られる。

三部まで読んで一部、二部はこの物語のための序章だったのだなとわかる。

最愛の人を失うこと、その日は自分にも訪れることはわかってはいるのだが、まるで想像できない。想像することを拒絶してるのかもしれないが。

悲しみにパターンはなく、なんの準備もできないこと。あまりにも喪失感が強いと怒りにも似た感情にとらえられること。淡々とした文章で書かれているけれど、作者の悲しみや喪失感は痛いぐらいで、その言葉は胸を打つ。

さん助ドッポ

4/26(水)、お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」に行ってきた。


・さん助「西海屋騒動」より第七回「霊岸島船松町西海屋」
~仲入り~
・さん助「花見の仇討」

 

さん助師匠「西海屋騒動」より第七回「霊岸島船松町西海屋」
前回はダークヒーロー義松が西海屋に奉公に行くところまで。
いよいよ今回から本編に入るということで、立ち話で今までのあらすじを説明するさん助師匠。
いやこれがわかりにくい(笑)!
初めて来たお客様がいらしたのでその方たちに向けての説明だったんだろうけど、今まで見てきた私でもよくわからなかったよ!
自分でも「私説明が下手で…聞いたらますますわからなくなったと言われるんですが」と言っていたけど、いやほんとに、お前は百栄師匠の「怪談はなしべた」か!と突っ込みたくなるほど。
でもそれがまたおかしくておかしくて。この方はほんとになんというか…生き様が落語っていうか…。

そしこの「西海屋騒動」、こうやって自分で速記本を読み解きながら連続ものでやっているけれど、これで終わらせるつもりはなく、自分でまた練り直して今やられている「牡丹灯籠 お札はがし」や…ええと他にもええと…「お札はがし」しか浮かばないのが情けないんですけど、あんなふうに一話だけでも面白いっていうふうにまとめたくて…今、圓朝物をいろんな噺家がやるように、談州楼燕枝物も広めていきたい。

…そんな野望を持っているのか!すごいな!
なんかこの方は、とても謙虚でとても腰が低くて…でもなんか他の噺家さんと別のところを見ているっていうか、野望の持ち方が独自っていうか…面白いなー。
さていよいよ本編へ。

海鮮問屋の西海屋は大きな店なのだが、ここの主である平兵衛はとても情け深くて「仏の平兵衛」と呼ばれるほどの人物。
その平兵衛があるとき船に乗っていると、橋の上から身投げした男が船の近くに落ちてきた。
船頭が川に飛び込んでどうにか助けると、ボロボロの着物を着てやせこけた男が8歳ぐらいの男の子を抱いている。
目を覚ました男は平兵衛にひれ伏してお礼を言うのだが、平兵衛は「身投げをするというのはよっぽどの訳があるのでしょう、私が助けてあげられるかもしれないからお話しください」と言う。
 
男は徳蔵と名乗り、天城で炭屋を営み妻と二人の男の子に恵まれ貧しいながらも幸せに暮らしていた、と語りだす。
しかしあるとき妻が眼病を患い、高い薬を求めたりして手を尽くしたがどうにも治らない。そのうち金も尽きどうにも立ちいかなくなって、自分は下の子どもと妻を残し、8歳になる清蔵を連れて江戸に出てきた。
しかし江戸に出てきてもいい仕事にはありつけずついには乞食になりもう4日も何も食べていない。
これは妻と子どもを棄てた報いだろう、この世ではもうどうにもならないからと絶望して清蔵を連れて身投げをした。
どうかもう一度身を投げさせてくれ、と言う。
 
それを聞いた平兵衛は、とにかく家に来て腹いっぱい食べなさい。食べてから生きるか死ぬかを考えなさい、そう言って二人を連れて帰る。
ごちそうをしてもてなして、徳蔵を奉公人として西海屋に置いてやり、息子の清蔵は自分の一人息子である宗太郎(6歳)と一緒に手習いに行かせる。
宗太郎の方は出来が悪いのだが、清蔵は非常に利発な子どもで1を聞いて10を知るタイプ。
平兵衛は清蔵をわが子のようにかわいがり、知らない人は二人とも平兵衛の実の子どもと思うほどだった。
 
それから月日が流れ、病に倒れた平兵衛。
枕元に製造と宗太郎の二人を呼び、清蔵に「お前に頼みたいことがある」と言う。
「宗太郎が不出来であることは百も承知だがそれでもたった一人のわが子。店は宗太郎に継がせたい。しかしあいつ一人では何もできないから、清蔵がそばにいてあれの相談にのってくれないか。お前が見ていてくれたら安心だ」
そういわれた清蔵は「私が今日こうしてあるのは全て旦那様のおかげ。もちろん私はずっと宗太郎様のそばで命をかけて宗太郎様とお店をお守りいたします」と約束。
平兵衛はほっとしたのか亡くなってしまう。
それからしばらくして宗太郎はお貞という妻を娶り松太郎という息子も生まれる。
 
ある日、知り合いに品川に連れていかれた宗太郎。飲めない酒を無理やり飲まされボーっとしていると、舞扇のお静という売れっ子の花魁に「これはいい金づるになる」と見込まれてしまう。
介抱すると言ってお静の部屋に連れて行かれた宗太郎は、お静の手練手管に魂を抜かれたようになってしまう。
その日以来品川通いをするようになった宗太郎。店の金を湯水のように使い、近所でも評判になり、店の者たちにも軽蔑されるのだが、一向にやめる気配がない。
妻のお貞は心労のあまり乳が出なくなり松太郎を直十のもとへ預けてしまう。
見かねた清蔵が宗太郎に意見をするのだがまるで聞く耳を持たない宗太郎。
朝から品川へ行ってしまう。
はたして店はどうなってしまうのか…。
 
というところまで。
今回はちょっと今までと雰囲気が変わって落語っぽいところもあります、という最初の言葉通り、品川に行ってフラれた男たちがもてたいもてたいと騒いだり、変な芸を披露したり…とちょっと笑える場面も。
平兵衛はいい人だし、清蔵もちゃんとしているし、一瞬平和な感じだったのに、悪女が出てきて不幸へ転がり始める、るるる~。
そして宗太郎が明け方になって帰ってきたとき、生意気な小僧の口から「よしどんは寝ないで待ってました」という言葉が。そのよしどんとはもしや義松なのでは…。そして宗太郎をそそのかして店をめちゃくちゃにしてしまうのでは、という予感。
 
今回はツッコミどころがそんなになかったけど、きっとまた破たんしていくんだわ、噺が…。
 
さん助師匠「花見の仇討」
楽しかった!
耳の遠いおじさんがすごい大きな声で聴き間違いをするだけでおかしい。
大きな声を出すだけで面白いって最強な気がする。
 
あと立ち回りのシーンのぐだぐだぶりがすごいおかしい。いかにもお仕着せっぽいっていうか、運動神経悪そうっていうか(笑)。

 

次回「さん助ドッポ」5/29(月) 両国亭 18時半開場 19時開演
・おせつ徳三郎
・初代談州楼燕枝の述「西海屋騒動」第八回「舞扇のお静(前編)」

 
その後は、6/28、7/31、8/28

ひとりはん治第二回

4/25(火)、道楽亭で行われた「ひとりはん治第二回」に行ってきた。


・小はぜ「やかん泥」
・はん治「ちはやふる
・はん治「ぼやき酒屋」
~仲入り~
・はん治「ろくろ首」


小はぜさん「やかん泥」
わーい、小はぜさん。
前回は小はださんだったのでもしかして今回は…と期待しながら行ったら、入り口のところに小はぜさんの姿が!「ひとりはん治といいながら僕も出ちゃうんです、すみません」。いやいやいや、そんなことないです!うれしい!

泥棒の小噺から「やかん泥」。これはもしかすると一朝師匠に教わったのかな。
親分親分となつく泥棒のかわいらしさよ。にこにこしていて見ているこちらもうれしくなっちゃう。
頭をひっぱたかれると本気で怒り出すのがまたおかしくて、必死に謝る親分も憎めない。
なのに大釜を渡されると「うわ、これは立派ですね!」とニコニコして、親分が「機嫌がなおりやがった」とつぶやくのがおかしい。

二ツ目になった小はぜさんをこうして大勢のはん治師匠の前で披露できてよかったなぁ。
ってあたしゃ何者だ。


はん治師匠「ちはやふる
小はぜは私と違って勉強熱心でいろんな師匠のところに噺を教わりに行ってますし、筋もいいんです、とはん治師匠。ううう、うれしい。師匠がそんなことばを…。うるうる。

古典二席って私には厳しいです。そんなに噺も持ってないですしね…。でもあの…思い出しながら…やります。と「ちはやふる」。

はん治師匠の語りはいいなぁ。剣がないっていうかこうのんびりしていてそれだけでほっとするっていうか。
時々へんてこなクスグリが入るのがまた楽しくて最初から最後まで大笑いだった。楽しかった!


はん治師匠「ぼやき酒屋」
こちらは定番。といっても最近はほんとに「妻」率が高いので、「ぼやき酒屋」は久しぶり。
これも他の人で聞いた時は客が妙に突っかかるっていう印象があったんだけど、はん治師匠がやると全然嫌味がなくてひたすら楽しい。
やっぱり完成度が高いよねぇ。はん治師匠の文枝新作は。でも私ははん治師匠で古典が聞きたい!「ちはやふる」寄席でもやってほしいな。


はん治師匠「ろくろ首」
およめさんがほしいーーと叫ぶ与太郎がかわいい。
ぱちっと目が覚めておかみさんをうっとりと見つめるところも好きだな。

前回と同様、お客さんがたくさん集まって、打ち上げも大勢が残り、はん治師匠の人気を再確認したのだった。

柏枝ジャパン

4/24(月)、お江戸日本橋亭で行われた「柏枝ジャパン」に行ってきた。

・明楽「粗忽の釘
・柏枝「蝦蟇の油」
・南なん「夢の酒」
~仲入り~
・ナナ マジック
・夢花「寝床」
・柏枝「お玉牛」
 
明楽さん「粗忽の釘
この会に呼ばれて嬉しい、二ツ目でこの会に呼ばれるのはとても名誉なこと、と明楽さん。
なんたってこの会に出られる二ツ目は一人だけですからね。今ニツ目みんな頑張ってますけどその中から選ばれたってことですからね。
兄さんにもそう言ったんです。
そうしたら言われました。「他に空いてるニツ目がいなかったんだよ」
 
…わははは。
しゅっとした見た目に反してちょっと挙動不審な雰囲気がにじみ出ていて面白い。
 
そんなまくらから「粗忽の釘」。
なんだろう。うまいところとそうじゃないところが交じり合ってなんともいえない独特な味わいがあって面白い。
なんか好きかも。
 
柏枝師匠「蝦蟇の油」
小学4年生の時に初めて見世物小屋に入った時の話がおかしい。
蜘蛛男に蛇女。あきらかに太ってる蛇女の食事のシーンをお見せしますと、小さい蛇を食いちぎって生き血を吸ったんだけど、そもそもそれじゃ共食いだし、それだけの食事でその体型にはなりませんよね?っていうツッコミがおかしすぎる。
そして蛇女はなんか火を吐くパフォーマンスも見せたんだけど、それも蛇女に必要ない芸ですね。
ってもう!ぶわははは。
そんなまくらから「蝦蟇の油」。
柏枝師匠ってクールな感じに見えて突然激しく壊れるっていうイメージがあるんだけど、この噺でも酔っぱらってからのぐにゃぐにゃぶりがすごかった。
でも私の好きな柏枝師匠はこんなもんじゃないというのがちょっとあって、少しもやもや…。


南なん師匠「夢の酒」
最近「夢の酒」がお気に入りな南なん師匠。
若旦那が夢の話をしながら本当にうっとりしているのがおかしい。確かにこんな表情でうっとりと話されたら奥さんは面白くないだろう。しかもこの奥さん…きっと美人じゃないよな…というのが南なん師匠のこの若奥さん、なんかへちゃっとした印象なんだな。そこがまたすごくかわいいんだけど。

そして大旦那がとってもやさしい。夢の女に会いに行ってくださいと言われて「女だねぇ。あたしは気づかなかった」と決してばかにしない。

大旦那が夢に入って行ってからの夢感もすごく好き。楽しかった。


夢花師匠「寝床」
おもえば夢花師匠を寄席以外でこうしてたっぷり見るのも初めてなのだった。
癖があって好きなんだけど、ちょっと言葉が聞き取りづらい。早口すぎる?

義太夫に来られない言い訳がいつも聞くのと違うものがあってそれがおかしかった。
え?それ言い訳になってないのでは?っていう…。 


柏枝師匠「お玉牛」
今日のお客様はとてもお上品な方が多いようなので、私今とても迷ってます。
なのでちょっとお客様にお尋ねしますが…下品な話をやってもいいよという方拍手してください…あ、じゃ逆に下品な話は勘弁してくれという方は拍手をしてください…あ、いらっしゃらない…(にやり)。

「お玉牛」、初めて聴く噺。いやもうこれが面白いのなんの。
特に男が夜這いに行くところのしぐさがもうたまらなくおかしくて、笑いっぱなし。
いやでもこれ…柏枝師匠だったから気持ち悪さがなかったけど、確かに…人によっては「いやーーー!!」って悲鳴が上がる可能性もあるな(笑)。少なくともさん助師匠はやらないほうが…もにょもにょ。

下品っていうけど、こういう下品は大丈夫(きっぱり)。最高だった~。

これからお祈りにいきます

 

これからお祈りにいきます (角川文庫)
 

 ★★★★★

高校生シゲルの町には、自分の体の「取られたくない」部分を工作して、神様に捧げる奇妙な祭がある。父親は不倫中、弟は不登校、母親とも不仲の閉塞した日常のなか、彼が神様に託したものとは―(「サイガサマのウィッカーマン」)。大切な誰かのために心を込めて祈ることは、こんなにも愛おしい。芥川賞作家が紡ぐ、不器用な私たちのための物語。地球の裏側に思いを馳せる「バイアブランカの地層と少女」を併録。  

 「これからお祈りにいきます」というタイトルに感じる違和感のようなもの。
一話目「サイガサマのウィッカーマン」を読んで、え?なに?それ?と嫌悪ギリギリの感情を抱き、それはおそらく私の宗教アレルギーによるものなんだけど、でも最後まで読むとなんかこう身につまされるというか、人が人を想う気持ちというのはつまるところは祈りに通じるのかもしれないと静かな感動を覚える。

二話目「バイアブランカの地層と少女」も、恋愛でも友だちでもない…たまたま知り合った地球の裏側に住む少女の恋人のことを心配して、ちょっといい感じになった女の子のことがそっちのけになってしまう主人公。
誰かのことを想って祈るという行為って人間の中にある善の部分なんだなぁ。
心配性の主人公がたまらなく好きだわ。

久しぶりに読んだ津村記久子さん。やっぱりなにかこう独自なものを持っていて好きな作家さんだなぁとの思いを新たにした。

一龍斎貞寿 真打昇進披露興行 三日目

4/22(土)、お江戸日本橋亭で行われた「一龍斎貞寿 真打昇進披露興行」に行ってきた。


・貞奈「三方ヶ原軍記」
・春陽「の海勇蔵出世相撲
・貞友「出世の大盃」
・南北「THE家族 津軽の恋」
・琴調「出世の春駒」
・貞水「王将」
~仲入り~
・口上(貞友:司会、琴調、貞寿、貞心、貞水)
・貞心「石川一夢」
・貞寿「赤穂義士外伝 忠僕勝助」

春陽先生「の海勇蔵出世相撲
初めて見る先生。
とても軽妙で楽しい。話もわかりやすくて面白いし、軽くてギャグも満載で緊張がほぐれる。
いやぁほんとにいろんな講談があるんだなぁ…。講談の世界も奥が深いなぁ。
落語ファンの方々が次々講談の方にも進出?していく気持ちがわかる。


貞友先生「出世の大盃」
いかにもお酒が好きそうな先生がそれはもう気持ちよさそうにお酒の話をされる楽しさよ。
落語の「備前徳利」みたいな話だなぁと思っていたんだけど、後半にはいかにも講談らしい展開になってそれがまた楽しい。


南北先生「THE家族 津軽の恋」
わーーなんか強烈な人が出てきたー(笑)。
しかも講談も「新作」で、強烈ー。うわーーー。
なんかいろんな意味でびっくり仰天。すごいな、講談の世界も。


琴調先生「出世の春駒」
寄席で見るたびに「好きだ」と思っていた琴調先生。
「出世の春駒」は何回か見たことがあったけれど、こういう会にぴったりだし、ほどよく軽くて笑えていいなぁ。
前から好きだったけど、こうやって見るとすごくかっこいいなぁ。すてき。

貞水先生「王将」
うわ、まさか人間国宝をこういうところでこんなに近くで見られるとは思ってなかった。
小三治師匠もそうだけど、全然えらぶるところがないというか、素のままっていうかべらんめぇっていうか子どものまま大人になったみたいな…とても魅力的な人だなぁ。
そして、こういうおめでたい席だから自分が得意としている怪談話をするわけにもいかないし、赤穂浪士はトリでやるらしいし、さてどうしようと思って…自分でもめったにやらないしおそらく講談好きな人もほとんど聞いたことがない話をやります、と言って「王将」。

阪田三吉というもとは職人だったけれど将棋好きが高じてプロになった男が主人公。
プロになって8年目、関根名人と戦って勝つのだが、この人こそ三吉が素人の時に負けて悔しくてどうしても打ち負かしたかった相手だった。
ねぎらってくれる妻とは逆に「あれは関根名人が勝たせてくれたんだ」「関根名人の将棋には品があるけどお父さんの将棋にはそれがない」と三吉に言い切る娘。
そう言われて怒り狂う三吉だったが次の日妻に「あれが言ったことは本当だ」と認める。
それからまた年を重ね真に名人と呼ばれるようになった三吉。
関根名人の祝いに駆けつけ、二人は初めて腹を割って話をする。

講談にまったく詳しくない私でもこれがとても珍しい話だということはわかる。
将棋も勝てばいいというだけのものではなくて、それはきっと落語もそうだし講談もそうで…芸の道や生き方にもつながる話なんじゃないかなぁと感じた。
初めて見た貞水先生。こんな珍しい話を聞けて本当に来た甲斐があったというか…ラッキーだったなぁと思った。


口上(貞友先生:司会、琴調先生、貞寿先生、貞心先生、貞水先生)
司会の貞友先生が顔をあげてもよろしいですかと客席に声をかけてくれたおかげで、この間と違って顔を少し上げた貞寿さん。
表情が見られるのはとてもうれしい。グッジョブ!

琴調先生の優しさとユーモアに溢れる口上のあとの貞水先生。
今日は珍しい話をやって出来は決してよくなかったんですけどあれをやろうと思ったのには理由がありまして…。
というのは自分が真打になった時を思い出しまして…あの時は講談師の数が今よりもっと少なかったし、いわゆる「名人」と言われるような人たちの中に自分も入って行かないといけないということがとても嫌で、真打になんかなりたくないと泣きながらなりました。
この話を新劇で見た時に、これは講談にできるんじゃないかと思って作者の住所を調べて許可をもらいにいきました。
話をしてみると「私はそもそもあなたがどんな芸をやるかも知らないしそれで許可を出せというのは難しい。まずは講談にしてやってみなさい。見に行くから」と言われました。これはまずはやってみなさいと言って下さったわけでとてもありがたい言葉だった。
そしてその会にこの先生見に来てくださって、「これは全部で三巻まである長い話なんです。ぜひ全部やってください」と言って下さった。

口上が始まって顔をあげていた貞寿さん、貞水先生が「自分が真打になった時を思い出して」と言ったとたん、頭がぐっと下がった。
この日が真打披露目だから自分が真打になった時の気持ちを想いだしてこの話をされたと言われて涙がこらえられなかったんだろう。
私もなんか胸がいっぱいになって泣いてしまった。

挨拶を終えた貞水先生に隣に座った貞心先生が頭を下げてお礼をおっしゃっていて、本当に嬉しそうだったのが印象的で、本当に感動的だった。
そのあとに挨拶をされた貞心先生が貞寿さんに向かって「よかったな」と声をかけ、自分はとても明るく軽い挨拶をされたのも素敵だった。多分泣いている貞寿さんがそれ以上泣かないようにされたんだじゃないかな。

 

貞心先生「石川一夢」
これも初めて聴く話。
いいなぁ、こういう話を自分の弟子のお披露目の席でやる師匠って…。見るほどに好きになるなぁ。貞心先生。
あたたかくて柔らか味のある講談。好きだ。

貞寿先生「赤穂義士外伝 忠僕勝助」
自分の憧れの先生方はこうして口上に並んでくださってこれを幸せと呼ばずに何と言ったらいいのか。
私40過ぎて…ほんとに涙もろくなってしまって…泣かずにいれば大丈夫なんですけど一度泣いてしまうともうだめです。

そう言いながらも「講談には必ずダレ場というのがありまして。今日は…ダレ場です」と笑いに変えるのがさすが。
そして前回までのあらすじから「赤穂義士外伝 忠僕勝助」 。

城を明け渡した大石内蔵助が赤穂から山科に出発するところ。長年仕えていた勝助が挨拶に来て蔵助の形見が欲しいと言う。
勝助と話をしているうちに自分の日頃の行いや忠義から仇討をするだろうと世間で言われていることを知った蔵助が…。

地味だけど蔵助の魅力がたっぷり。とてもよかった。
あーあと2日も行きたいなぁ。昼間なんだよねぇ。くー。

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